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5章・英雄の誕生
洞窟12階 落ちたのは(後編)
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ミザリは 暗闇の中で目を覚ます。
周囲は、漆黒の闇に覆われ 緑光苔も生えていない。
遠くの方で水が流れる音がする。
ミザリの全身が激しく痛み、手足は骨折しているようだ。
呼吸をするときにも胸が痛む。肋骨も折れてしまっているのかもしれない。
「まさか、こんな所で死ぬとか考えてなかったな。」
落ちてきた割れ目は 地獄までつながっているのか、底の方からは 人間の悲鳴のような声まで、かすかに聞こえてくる。
「レヴィア姉さん、いまごろ僕を助けようと、穴を降りてきてるんだろうな。危ないから辞めておけばいいのに・・・。」
「レイザー、大丈夫かな。僕とぶつかって落としちゃったから、悔やんで自暴自棄になってないかな・・・。」
ミザリは、恐怖から目を背けようと、仲間の事を考える。
「アルル、うまく告白できたかな。もし結婚するとかなったら、どこで結婚式をあげるのかな・・・。」
「エイト、ちょっと変態だったけど、頼りがいがあったな。僕の事も助けに来てくれないかな・・・。
そういえば、前も穴に落ちたとき、助けに来てくれたっけ・・・。」
「・・・さすがに助けに来ないよね。こんな危険な穴の中だもん。」
目を開けているのか、閉じているのかさえ分からない暗闇の中、遠くで流れる水の音も不気味に感じ始めた。
さらに地底の奥底から聞こえてくる亡者の声が、徐々に大きく聞こえてくる。
「こわいよ。お父さん、お母さん。こんなところで死にたくないよ。」
ミザリの目から涙がこぼれる。
ミザリの、すすり泣く声が穴の中に響く。
その声に反応するように、亡者の声だけでなく、人間の悲鳴のような声も さらに大きくなってくる。
「・・・こわいよ。」
「だれか、私の声が聞こえる・・・?」
「・・・こわいよ。」
「こわいよ。たすけて・・・。」
「ミザリ、もう大丈夫だよ。」
「・・・!」
ミザリは、恐怖で震えている。
エイトは、ミザリの近くに落ちていたランタンに明かりを灯す。
周囲が明るくなり、耳に響いていた声は聞こえなくなった。
「大丈夫?薬は飲めそう?」
ミザリを優しく抱きかかえ、エイトは フルポーションを飲ませる。
ミザリの傷が癒え、痛みも治まる。
「崖のちょっとした岩場だから 動かないでね。」
そういうと、ゆっくりとミザリを起こし、ミザリを背負うようにして、ロープで二人の体を固定する。
ミザリが落ちていたのは、わずか1m四方の崖の岩場で、まだまだ下の方には、穴が深く続いている。
「エイト・・・。」
「なに?」
「ありがとう。」
「ああ、当然でしょ。大切な仲間だからね。」
ミザリは 上を見上げるエイトの横顔がランタンの光に照らし出された時、とても美しく感じた。
「ミザリ、準備はいい?」
「うん。」
エイトは ナイフに強化魔法をかけ、崖を登っていく。
ミザリは 10歳くらいの外見とはいえ、小柄なエイトには 十分重く感じるだろう。
2人は、かなりの時間をかけ、崖を登り切った。
エイトは 持っていたナイフを置き、フルポーションを飲み始める。
地面に置かれたナイフの柄は、血で真っ赤に滲んでいる。
「エイト、その手・・・。」
エイトは、飲みかけのフルポーションを半分残す。
「いいよ。半分こね。」
何を勘違いしたのか、エイトは フルポーションを半分ミザリに渡す。
「いや、その・・・。ありがとう。」
ミザリは、残りのフルポーションを飲み干し、空の小瓶を大事にしまう。
ミザリがフルポーションを飲み干すのを待って、エイトが元気な笑顔を見せ、ミザリの手を引く。
「よし、先に進もうか。みんなが待ってるからね!」
「うん。」
ミザリと手をつないだエイトは、隠密の指輪を発動させ先を急ぐ。
分かれ道の広間にたどり着くと、そこには大型バス程の大きさのケルベロスが何者かを襲っている。
襲われているパーティは、岩の割れ目に隠れて、槍でケルベロスを、けん制していた。
エイトたちは、隠密の指輪を発動しているので、気配を察知されることなく無事に通り過ぎることも出来るだろう。
「もしかして、みんなと戦闘してるのかな。」
「いや、誰も槍を持ってないから違うだろうね。
ミザリ、僕が囮になるから、あのパーティから槍を借りてくれないか。」
「槍なんかで戦っても殺されちゃうよ。
エイト、レヴィア姉さんたちも先に行ってるみたいだし、すぐに逃げようよ。」
「安心して、僕は槍と棍棒があれば、ケルベロスには負けない。何度も戦ってるからね。」
そういうと、襲われているパーティの反対側に走っていき、声を上げて注意を引く。
ケルベロスは、急に現れたエイトを見つけ、エイトを襲い始める。
その攻撃は、3つの頭を使い 連続して攻撃をしてくる。
エイトは、棍棒とカタナを使い、器用に回避していく、しかし頭の位置の高いケルベロスには、棍棒とカタナでは致命傷を与えることはできない。
そんな中、ミザリの叫び声が聞こえた。
「エイトー!槍を借りたよ!いまからそっちに投げるから!!」
ミザリは 借り物の槍をエイトに投げる。
それを確認したエイトは、持っていた魔装具のカタナをケルベロスに投げつける。
カタナが眉間に命中し深く突き刺さった、ケルベロスの中央の頭は断末魔をあげ沈黙した。
そのまま投げられた槍を右手で拾い、装備する。
中央の頭を殺されたケルベロスは、まだ動揺している。
エイトは 槍をつかい、ケルベロスの向かって右側の頭をけん制し、襲ってきた左側の頭にカウンターで棍棒の一撃を加える。
そのまま、中央の頭を登るようにケルベロスの背中に移動し、手にする槍を、中央の首の付け根付近に深く差し込む。
痛みから激しく暴れるケルベロス。
しかし、エイトの位置は ケルベロスの牙が届かない場所のようだ。
エイトは、そのままケルベロスの傷口に腕をいれ、燃える血の流れるケルベロスの体内で魔法を詠唱する!!
「獄炎龍の息吹(LV24)」
魔法の一撃で、ケルベロスは全身が硬直し、そのまま崩れ落ちるように、地面に倒れ込む。
「まさか・・・倒し、たの?」
「すごい!ケルベロスを一人で退治するなんて・・・。」
エイトは、ミザリと他のパーティに近づく。
割れ目から出てきたパーティは、11名の冒険者パーティのようだ。
ほかにも、割れ目の中には、息絶えた冒険者の亡骸もある。
「ごめん。槍は燃え尽きちゃった。」
エイトの左腕は 自分の魔法を浴びたからなのか、高温のケルベロスの体内に腕を入れたからなのか、火傷を負っている。
「いや、そんなこと気にしないで下さい。おかげで命が助かりました。」
エイトは 傷の手当てをしてもらい、他の冒険者パーティと別れた。
他の冒険者パーティは、しばらく休んだ後、死亡した仲間を復活させるために地上に戻るそうだ。
エイトたちは 他の冒険者パーティに別れを告げ、急いで先を目指す。
「ねえ、エイト。なんでそんなに優しいの?」
「どうして?ミザリだって優しいでしょ。」
「僕が・・・?」
「うん。レヴィアと仲良くしてくれてたり、アルルの為に商人協会を通して制約の無い冒険者カードを発行しなおしたり、レイザーと一緒に孤児院に寄付してたりしてるでしょ。」
ミザリは、よく仲間の事をみているものだと、エイトに感心している。
と同時に、胸の奥になんとも言えない感情が沸いてくる感覚を受けた。
「よく知ってるね。・・・でも、僕は、君に何もしてないよ。」
「ああ、香水の時も個人売買の制度を教えてくれたりしたじゃない。」
「あの・・・。でも、あの時は・・・。」
ミザリは エイトの事を面倒だと思い、関わりたくなくて エイトに説明しただけだった。
「たしかに、クロックたちみたいに無責任な冒険者もいるけれど、僕たちは助け合って生きているんだよ。
それは、他のパーティでも一緒さ。
もちろん 種族が違うからって置いてかないよ。これからも一緒に頑張ろうね。」
ミザリの目は、涙ぐんでいる。
「あーあ、もったいないことしたな。」
「えっ?」
「もっと早く気づいてれば、私が独占したのに!」
「もしかして・・・。」
「なんでもないよ。レヴィア姉さんたちのところへ戻ろうよ。」
「そうだね。急いで無事を報告してあげよう。」
エイトは、ミザリの言葉の意味を考えていた。
独占・・・ケルベロスの宝石のことかな?ケルベロスには宝石はないのに。
・・・少ない人間関係の中だけで育っていたから仕方がないことなのかもしれないが、やはり エイトは超鈍感なようだ。
~その頃。主父の館~
「ルシファー!あれほど、注意したではないか!」
「主父様、申し訳ありません。つい考え事をしていて地獄の門を守る魔法円を解いたままにしてしまいました。」
「・・・。」
「今後、このようなことが無いように、」
「ああ、そうだな。今後このようなことが無いように、地獄の門の先で番人でもしたらどうだ。
私から兄には言っておくから。」
「・・・まさか!」
「主父様、どうか、どうか堕天だけは、お許しください。」
「エイトたちが無事にたどり着くまで、地獄の門の番人でもしておれ。」
「主父様、どうか落とさないで下さい。ああああああ。」
~ to be continued
【補足】
・小瓶を大事にしまう。
ミザリが、恋に落ちた為にとった行動かもしれない。
死の恐怖と、その恐怖からの解放。吊り橋理論のような事案。
・(ケルベロスと)何度も戦ってるからね。
主父様の気まぐれ試験で連れて来られた モンスター。
・傷口に腕をいれ、魔法を詠唱
ケルベロスの毛皮は、魔法の効果を弱めるので、直に内部から魔法を詠唱した。
ケルベロスも毛皮があるので、魔法を受ける機会がなかったのだろう。
内部からの魔法はダメージが大きく、また体内を流れる 燃える血と魔法の連鎖で死に至った。
・(ミザリ)私が独占したのに!
別に宝石を独占したかったのではない。
エイトの心を独占したと思われる。
ミザリは、優しいエイトに心を奪われたようだ。
・ケルベロスの宝石
魔獣には、宝石がない種類が多い。
このことから、モンスター研究の第一人者でもある、ウィンター会長は、
魔獣は地獄に元から生息していた生物。
魔物は別の場所から連れて来られた生物と考えている。
周囲は、漆黒の闇に覆われ 緑光苔も生えていない。
遠くの方で水が流れる音がする。
ミザリの全身が激しく痛み、手足は骨折しているようだ。
呼吸をするときにも胸が痛む。肋骨も折れてしまっているのかもしれない。
「まさか、こんな所で死ぬとか考えてなかったな。」
落ちてきた割れ目は 地獄までつながっているのか、底の方からは 人間の悲鳴のような声まで、かすかに聞こえてくる。
「レヴィア姉さん、いまごろ僕を助けようと、穴を降りてきてるんだろうな。危ないから辞めておけばいいのに・・・。」
「レイザー、大丈夫かな。僕とぶつかって落としちゃったから、悔やんで自暴自棄になってないかな・・・。」
ミザリは、恐怖から目を背けようと、仲間の事を考える。
「アルル、うまく告白できたかな。もし結婚するとかなったら、どこで結婚式をあげるのかな・・・。」
「エイト、ちょっと変態だったけど、頼りがいがあったな。僕の事も助けに来てくれないかな・・・。
そういえば、前も穴に落ちたとき、助けに来てくれたっけ・・・。」
「・・・さすがに助けに来ないよね。こんな危険な穴の中だもん。」
目を開けているのか、閉じているのかさえ分からない暗闇の中、遠くで流れる水の音も不気味に感じ始めた。
さらに地底の奥底から聞こえてくる亡者の声が、徐々に大きく聞こえてくる。
「こわいよ。お父さん、お母さん。こんなところで死にたくないよ。」
ミザリの目から涙がこぼれる。
ミザリの、すすり泣く声が穴の中に響く。
その声に反応するように、亡者の声だけでなく、人間の悲鳴のような声も さらに大きくなってくる。
「・・・こわいよ。」
「だれか、私の声が聞こえる・・・?」
「・・・こわいよ。」
「こわいよ。たすけて・・・。」
「ミザリ、もう大丈夫だよ。」
「・・・!」
ミザリは、恐怖で震えている。
エイトは、ミザリの近くに落ちていたランタンに明かりを灯す。
周囲が明るくなり、耳に響いていた声は聞こえなくなった。
「大丈夫?薬は飲めそう?」
ミザリを優しく抱きかかえ、エイトは フルポーションを飲ませる。
ミザリの傷が癒え、痛みも治まる。
「崖のちょっとした岩場だから 動かないでね。」
そういうと、ゆっくりとミザリを起こし、ミザリを背負うようにして、ロープで二人の体を固定する。
ミザリが落ちていたのは、わずか1m四方の崖の岩場で、まだまだ下の方には、穴が深く続いている。
「エイト・・・。」
「なに?」
「ありがとう。」
「ああ、当然でしょ。大切な仲間だからね。」
ミザリは 上を見上げるエイトの横顔がランタンの光に照らし出された時、とても美しく感じた。
「ミザリ、準備はいい?」
「うん。」
エイトは ナイフに強化魔法をかけ、崖を登っていく。
ミザリは 10歳くらいの外見とはいえ、小柄なエイトには 十分重く感じるだろう。
2人は、かなりの時間をかけ、崖を登り切った。
エイトは 持っていたナイフを置き、フルポーションを飲み始める。
地面に置かれたナイフの柄は、血で真っ赤に滲んでいる。
「エイト、その手・・・。」
エイトは、飲みかけのフルポーションを半分残す。
「いいよ。半分こね。」
何を勘違いしたのか、エイトは フルポーションを半分ミザリに渡す。
「いや、その・・・。ありがとう。」
ミザリは、残りのフルポーションを飲み干し、空の小瓶を大事にしまう。
ミザリがフルポーションを飲み干すのを待って、エイトが元気な笑顔を見せ、ミザリの手を引く。
「よし、先に進もうか。みんなが待ってるからね!」
「うん。」
ミザリと手をつないだエイトは、隠密の指輪を発動させ先を急ぐ。
分かれ道の広間にたどり着くと、そこには大型バス程の大きさのケルベロスが何者かを襲っている。
襲われているパーティは、岩の割れ目に隠れて、槍でケルベロスを、けん制していた。
エイトたちは、隠密の指輪を発動しているので、気配を察知されることなく無事に通り過ぎることも出来るだろう。
「もしかして、みんなと戦闘してるのかな。」
「いや、誰も槍を持ってないから違うだろうね。
ミザリ、僕が囮になるから、あのパーティから槍を借りてくれないか。」
「槍なんかで戦っても殺されちゃうよ。
エイト、レヴィア姉さんたちも先に行ってるみたいだし、すぐに逃げようよ。」
「安心して、僕は槍と棍棒があれば、ケルベロスには負けない。何度も戦ってるからね。」
そういうと、襲われているパーティの反対側に走っていき、声を上げて注意を引く。
ケルベロスは、急に現れたエイトを見つけ、エイトを襲い始める。
その攻撃は、3つの頭を使い 連続して攻撃をしてくる。
エイトは、棍棒とカタナを使い、器用に回避していく、しかし頭の位置の高いケルベロスには、棍棒とカタナでは致命傷を与えることはできない。
そんな中、ミザリの叫び声が聞こえた。
「エイトー!槍を借りたよ!いまからそっちに投げるから!!」
ミザリは 借り物の槍をエイトに投げる。
それを確認したエイトは、持っていた魔装具のカタナをケルベロスに投げつける。
カタナが眉間に命中し深く突き刺さった、ケルベロスの中央の頭は断末魔をあげ沈黙した。
そのまま投げられた槍を右手で拾い、装備する。
中央の頭を殺されたケルベロスは、まだ動揺している。
エイトは 槍をつかい、ケルベロスの向かって右側の頭をけん制し、襲ってきた左側の頭にカウンターで棍棒の一撃を加える。
そのまま、中央の頭を登るようにケルベロスの背中に移動し、手にする槍を、中央の首の付け根付近に深く差し込む。
痛みから激しく暴れるケルベロス。
しかし、エイトの位置は ケルベロスの牙が届かない場所のようだ。
エイトは、そのままケルベロスの傷口に腕をいれ、燃える血の流れるケルベロスの体内で魔法を詠唱する!!
「獄炎龍の息吹(LV24)」
魔法の一撃で、ケルベロスは全身が硬直し、そのまま崩れ落ちるように、地面に倒れ込む。
「まさか・・・倒し、たの?」
「すごい!ケルベロスを一人で退治するなんて・・・。」
エイトは、ミザリと他のパーティに近づく。
割れ目から出てきたパーティは、11名の冒険者パーティのようだ。
ほかにも、割れ目の中には、息絶えた冒険者の亡骸もある。
「ごめん。槍は燃え尽きちゃった。」
エイトの左腕は 自分の魔法を浴びたからなのか、高温のケルベロスの体内に腕を入れたからなのか、火傷を負っている。
「いや、そんなこと気にしないで下さい。おかげで命が助かりました。」
エイトは 傷の手当てをしてもらい、他の冒険者パーティと別れた。
他の冒険者パーティは、しばらく休んだ後、死亡した仲間を復活させるために地上に戻るそうだ。
エイトたちは 他の冒険者パーティに別れを告げ、急いで先を目指す。
「ねえ、エイト。なんでそんなに優しいの?」
「どうして?ミザリだって優しいでしょ。」
「僕が・・・?」
「うん。レヴィアと仲良くしてくれてたり、アルルの為に商人協会を通して制約の無い冒険者カードを発行しなおしたり、レイザーと一緒に孤児院に寄付してたりしてるでしょ。」
ミザリは、よく仲間の事をみているものだと、エイトに感心している。
と同時に、胸の奥になんとも言えない感情が沸いてくる感覚を受けた。
「よく知ってるね。・・・でも、僕は、君に何もしてないよ。」
「ああ、香水の時も個人売買の制度を教えてくれたりしたじゃない。」
「あの・・・。でも、あの時は・・・。」
ミザリは エイトの事を面倒だと思い、関わりたくなくて エイトに説明しただけだった。
「たしかに、クロックたちみたいに無責任な冒険者もいるけれど、僕たちは助け合って生きているんだよ。
それは、他のパーティでも一緒さ。
もちろん 種族が違うからって置いてかないよ。これからも一緒に頑張ろうね。」
ミザリの目は、涙ぐんでいる。
「あーあ、もったいないことしたな。」
「えっ?」
「もっと早く気づいてれば、私が独占したのに!」
「もしかして・・・。」
「なんでもないよ。レヴィア姉さんたちのところへ戻ろうよ。」
「そうだね。急いで無事を報告してあげよう。」
エイトは、ミザリの言葉の意味を考えていた。
独占・・・ケルベロスの宝石のことかな?ケルベロスには宝石はないのに。
・・・少ない人間関係の中だけで育っていたから仕方がないことなのかもしれないが、やはり エイトは超鈍感なようだ。
~その頃。主父の館~
「ルシファー!あれほど、注意したではないか!」
「主父様、申し訳ありません。つい考え事をしていて地獄の門を守る魔法円を解いたままにしてしまいました。」
「・・・。」
「今後、このようなことが無いように、」
「ああ、そうだな。今後このようなことが無いように、地獄の門の先で番人でもしたらどうだ。
私から兄には言っておくから。」
「・・・まさか!」
「主父様、どうか、どうか堕天だけは、お許しください。」
「エイトたちが無事にたどり着くまで、地獄の門の番人でもしておれ。」
「主父様、どうか落とさないで下さい。ああああああ。」
~ to be continued
【補足】
・小瓶を大事にしまう。
ミザリが、恋に落ちた為にとった行動かもしれない。
死の恐怖と、その恐怖からの解放。吊り橋理論のような事案。
・(ケルベロスと)何度も戦ってるからね。
主父様の気まぐれ試験で連れて来られた モンスター。
・傷口に腕をいれ、魔法を詠唱
ケルベロスの毛皮は、魔法の効果を弱めるので、直に内部から魔法を詠唱した。
ケルベロスも毛皮があるので、魔法を受ける機会がなかったのだろう。
内部からの魔法はダメージが大きく、また体内を流れる 燃える血と魔法の連鎖で死に至った。
・(ミザリ)私が独占したのに!
別に宝石を独占したかったのではない。
エイトの心を独占したと思われる。
ミザリは、優しいエイトに心を奪われたようだ。
・ケルベロスの宝石
魔獣には、宝石がない種類が多い。
このことから、モンスター研究の第一人者でもある、ウィンター会長は、
魔獣は地獄に元から生息していた生物。
魔物は別の場所から連れて来られた生物と考えている。
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