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6章・変革の時
第6話 アルメディシア=ハンニバル
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~秘密の決起、翌日~
アルルの部屋で、ミザリとアルルは相談している。
「ねえ、どんな修行をするの?」
まだ具体的に何をするのか、何をしたいのかが決まっていないミザリがアルルに質問する。
「私は ドーラちゃんに帰ってきた報告をして、アレンさんに剣を習おうと思ってるんだけど。」
アルルの答えに、ミザリは不思議そうな顔をする。
「あれ?アレンさんは、斧を使う戦士なんじゃない?」
「そうなんだよね。・・・でも剣術って独学では、なかなか難しくって。」
「そうだよね・・・。人に習うのか・・・。」
ミザリは、難しい顔をしたかと思うと、すぐに笑顔になり、また難しい顔をし始めた。
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない。私も急いで出発しなきゃ!」
そういうと、ミザリは部屋を飛び出した。
「あ、うん。またね!!!」
ミザリが飛び出すように部屋を出ていくのを見送った後、アルルは悩んでいた。
いままで一人で修業をしたこともなければ、そういったことをする必要性もなかったので、想像もつかない。
誰かに指示を仰ぎたいのだが、騎士養成所に戻り剣を習うことも難しいだろう。
なぜなら、アルルはメンバーの中にいれば強さも目立たないが、片手剣の腕前は立派で、騎士養成所でも教官より優れた腕前を持っていたからだ。
「・・・はあ、どうやって剣術を鍛えればいいのかな。」
アルルは、重い足取りで、メイガスの館を訪れ、ドーラに挨拶をした。
ドーラは、アルルを見つけるなり、その表情を見て声をかけた。
「アルル、どうしたのよ。暗い顔して。」
「それが・・・。」
アルルは、3年後の再出発のことや、剣の修行で悩んでいることを説明した。
ドーラはアルルの話を聞くと、自分の胸を叩き、自信満々に答えた。
「それだったら、私を頼りなさいよ。友達でしょ!」
「ドーラちゃんは、剣も使えるの?」
「はぁ? 教えるのは パパよ。ちょっと待っててよ。」
「パパって、メイガス様でしょ、ちょ、ちょっと!」
アルルが止めるのも無視して、ドーラは館の中に入っていった。
しばらくすると、執事が門の外に出てくる。
執事は アルルを見つけ、声をかけてきた。
「メイガス様と、ドーラお嬢様がお待ちです。」
アルルが通されたのは、立派な執務室だった。
執務室に入ると、騎士団長のメイガスが、娘のドーラに質問する。
「ドーラ、この女性が剣を極めたいと言っているのか?」
「はい、お父様!
アルルは、騎士見習いだったそうなんですが、いまは エイト先生と冒険をしている剣士なんです。」
「そうか、騎士か。名は?」
アルルは、緊張しながらも名を名乗る。
「はい。アルメディシア=ハンニバルです。」
「ハンニバル・・・。」
メイガスは、アルルの顔を覗き込み、更に質問を続ける。
「バルサーク=ハンニバルを知っているか。」
「はい、戦場から逃げ出した。私の祖父です。
私は、必要な逃亡だったと、小さい頃に祖父から聞いています。」
アルルは、汚点である戦場逃亡の実績をもつ祖父を堂々と答える。
その堂々とした態度は、かなりの好感だったのだろうか、メイガス騎士団長の強張った表情が柔らかくなる。
そして、メイガス騎士団長は、アルルに優しく声をかける。
「そうだ。雷神バルサークの逃亡は、敵を欺くためのものだった。
あの御方は、我が心の支えであり、剣の師匠でもある。」
「お父様?」
何かを懐かしむ表情で話をするメイガス騎士団長の表情に、逆に困惑するドーラ。
それほど、難しい事件が起きていたのだろうか。
実の娘であるドーラも、久しぶりに父の笑う姿を見たと言っていた。
「師匠の剣を孫に引き継ぐ、3年での習得は厳しいが、アルメディシア、ついてこれるか。」
「はい、アルメディシア=ハンニバル、祖父より受け継いだ、この剣に誓い、どんな修行も耐え、自信を磨く技を習得します!」
アルルは、剣の柄の革袋を外した。
剣の柄は、王国近衛兵に与えられる、金獅子が彫刻されている。
アルルの迷うことがない返事に、メイガスは更に頬を緩ませる。
「よろしい。これより王国に移動し、近衛兵の鍛錬を始めよ。
1年で近衛兵の技を習得し、その後は、私が直々に指導する。」
~3年後~
宮殿の騎士団長任命式にて・・・。
そこには、真っ白な髭を長く伸ばした高齢のダンテ国王と王妃、メイガス騎士団長をはじめ各騎士団長の姿もあった。
ダンテ国王が立ち上がり、アルルの前に立つ。
「雷神バルサーク=ハンニバルの、汚名はそそがれた。
今後、アルメディシア=ハンニバルは、ハンニバル家の筆頭となり、第8騎士団を任せるものとする。」
周囲から惜しみない拍手が送られる。
そんな中、アルルが口を開く。
「国王陛下、アルメディシア=ハンニバル、1つだけお願いがあります。」
「うむ。どんな望みだ。」
「一つだけ友との約束が残っています。
それは、地獄の門の先を目指すという約束です。」
アルルが、そういい終えると、大臣が激怒したようにアルルに注意しようと前に出る。
「ええい! 国王陛下の前で・・・。」
大臣が前に出るのを遮るように、王妃が話し始める。
「地獄の門の先を目指す約束があるのね。」
王妃は、訴えるように国王を見る。
「ダンテ国王、皇子の・・・。ご決断を。」
王妃は、涙ぐんでいるのが分かった。
「よろしい。第8騎士団は、アルメディシア=ハンニバルが戻るまで、欠番とし、先に約束を果たすように。
後で、王妃より話があるそうだ。アルメディシアは、任命式が終わり次第、王妃の部屋へ行きたまえ。
大臣は、不服もあろうが、国王の決定である。いますぐ、欠番の手配と、騎士団の再編を急げ。」
「御意。」
アルルの部屋で、ミザリとアルルは相談している。
「ねえ、どんな修行をするの?」
まだ具体的に何をするのか、何をしたいのかが決まっていないミザリがアルルに質問する。
「私は ドーラちゃんに帰ってきた報告をして、アレンさんに剣を習おうと思ってるんだけど。」
アルルの答えに、ミザリは不思議そうな顔をする。
「あれ?アレンさんは、斧を使う戦士なんじゃない?」
「そうなんだよね。・・・でも剣術って独学では、なかなか難しくって。」
「そうだよね・・・。人に習うのか・・・。」
ミザリは、難しい顔をしたかと思うと、すぐに笑顔になり、また難しい顔をし始めた。
「どうしたの?」
「ううん。なんでもない。私も急いで出発しなきゃ!」
そういうと、ミザリは部屋を飛び出した。
「あ、うん。またね!!!」
ミザリが飛び出すように部屋を出ていくのを見送った後、アルルは悩んでいた。
いままで一人で修業をしたこともなければ、そういったことをする必要性もなかったので、想像もつかない。
誰かに指示を仰ぎたいのだが、騎士養成所に戻り剣を習うことも難しいだろう。
なぜなら、アルルはメンバーの中にいれば強さも目立たないが、片手剣の腕前は立派で、騎士養成所でも教官より優れた腕前を持っていたからだ。
「・・・はあ、どうやって剣術を鍛えればいいのかな。」
アルルは、重い足取りで、メイガスの館を訪れ、ドーラに挨拶をした。
ドーラは、アルルを見つけるなり、その表情を見て声をかけた。
「アルル、どうしたのよ。暗い顔して。」
「それが・・・。」
アルルは、3年後の再出発のことや、剣の修行で悩んでいることを説明した。
ドーラはアルルの話を聞くと、自分の胸を叩き、自信満々に答えた。
「それだったら、私を頼りなさいよ。友達でしょ!」
「ドーラちゃんは、剣も使えるの?」
「はぁ? 教えるのは パパよ。ちょっと待っててよ。」
「パパって、メイガス様でしょ、ちょ、ちょっと!」
アルルが止めるのも無視して、ドーラは館の中に入っていった。
しばらくすると、執事が門の外に出てくる。
執事は アルルを見つけ、声をかけてきた。
「メイガス様と、ドーラお嬢様がお待ちです。」
アルルが通されたのは、立派な執務室だった。
執務室に入ると、騎士団長のメイガスが、娘のドーラに質問する。
「ドーラ、この女性が剣を極めたいと言っているのか?」
「はい、お父様!
アルルは、騎士見習いだったそうなんですが、いまは エイト先生と冒険をしている剣士なんです。」
「そうか、騎士か。名は?」
アルルは、緊張しながらも名を名乗る。
「はい。アルメディシア=ハンニバルです。」
「ハンニバル・・・。」
メイガスは、アルルの顔を覗き込み、更に質問を続ける。
「バルサーク=ハンニバルを知っているか。」
「はい、戦場から逃げ出した。私の祖父です。
私は、必要な逃亡だったと、小さい頃に祖父から聞いています。」
アルルは、汚点である戦場逃亡の実績をもつ祖父を堂々と答える。
その堂々とした態度は、かなりの好感だったのだろうか、メイガス騎士団長の強張った表情が柔らかくなる。
そして、メイガス騎士団長は、アルルに優しく声をかける。
「そうだ。雷神バルサークの逃亡は、敵を欺くためのものだった。
あの御方は、我が心の支えであり、剣の師匠でもある。」
「お父様?」
何かを懐かしむ表情で話をするメイガス騎士団長の表情に、逆に困惑するドーラ。
それほど、難しい事件が起きていたのだろうか。
実の娘であるドーラも、久しぶりに父の笑う姿を見たと言っていた。
「師匠の剣を孫に引き継ぐ、3年での習得は厳しいが、アルメディシア、ついてこれるか。」
「はい、アルメディシア=ハンニバル、祖父より受け継いだ、この剣に誓い、どんな修行も耐え、自信を磨く技を習得します!」
アルルは、剣の柄の革袋を外した。
剣の柄は、王国近衛兵に与えられる、金獅子が彫刻されている。
アルルの迷うことがない返事に、メイガスは更に頬を緩ませる。
「よろしい。これより王国に移動し、近衛兵の鍛錬を始めよ。
1年で近衛兵の技を習得し、その後は、私が直々に指導する。」
~3年後~
宮殿の騎士団長任命式にて・・・。
そこには、真っ白な髭を長く伸ばした高齢のダンテ国王と王妃、メイガス騎士団長をはじめ各騎士団長の姿もあった。
ダンテ国王が立ち上がり、アルルの前に立つ。
「雷神バルサーク=ハンニバルの、汚名はそそがれた。
今後、アルメディシア=ハンニバルは、ハンニバル家の筆頭となり、第8騎士団を任せるものとする。」
周囲から惜しみない拍手が送られる。
そんな中、アルルが口を開く。
「国王陛下、アルメディシア=ハンニバル、1つだけお願いがあります。」
「うむ。どんな望みだ。」
「一つだけ友との約束が残っています。
それは、地獄の門の先を目指すという約束です。」
アルルが、そういい終えると、大臣が激怒したようにアルルに注意しようと前に出る。
「ええい! 国王陛下の前で・・・。」
大臣が前に出るのを遮るように、王妃が話し始める。
「地獄の門の先を目指す約束があるのね。」
王妃は、訴えるように国王を見る。
「ダンテ国王、皇子の・・・。ご決断を。」
王妃は、涙ぐんでいるのが分かった。
「よろしい。第8騎士団は、アルメディシア=ハンニバルが戻るまで、欠番とし、先に約束を果たすように。
後で、王妃より話があるそうだ。アルメディシアは、任命式が終わり次第、王妃の部屋へ行きたまえ。
大臣は、不服もあろうが、国王の決定である。いますぐ、欠番の手配と、騎士団の再編を急げ。」
「御意。」
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