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8章・最終章
洞窟24階 知恵の欲望
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「ねえ、リリアス。」
不意にレヴィアに声をかけられ、リリアスが不思議そうな顔をする。
「レヴィア、どうしたの?」
「ちょっと頼まれてくれないかな?」
そういってくるレヴィアの目がキラキラとしている。
こういう時は面倒ごとに巻き込まれることをリリアスは知ってた。
「・・・絶対いやよ!」
別にレヴィアのことが嫌いとか苦手とかそういった理由ではなく、ただ面倒に巻き込まれるのが嫌なだけだった。
しかし、断られることを想定していたのか、レヴィアは気にする様子もなく普通に話し始める。
「まあ、聞いてよ。」
「今日は何?」
「ありがとう。
じつは相談なんだけど、魔法石で短剣を作ってもらいたいんだ。
できれば5~6本くらいかな。」
「・・・それくらいなら自分でもできるでしょ。」
「ああ、しかし私が作った短剣は動かせないからね。」
「・・・錬金魔法で動かす必要があるの?」
「ああ、実験をしてみたいんだよね。」
リリアスも最初は不思議そうな顔をしていたけれど、レヴィアの考えていることが分かったのか、喜んで同意してくれた。
錬金魔法で出来た短剣をレヴィアに渡す。
レヴィアは完成した短剣をミザリに渡し説明しようとするが、意味が理解できていたのだろう。
レヴィアが説明する前にミザリが口を開く。
「そういうことね。
僕が投げた短剣を通して、魔法を貫通させたり、連鎖したり。
万が一、外したとしても、リリアスが動かせるってことだね!」
「ああ、2人の共同作業には ちょうどいいだろ。」
「・・・レヴィア姉さん、何で知ってるの!?
というより、まだ返事は保留してもら・・・。」
ミザリは 墓穴を掘った事に気づき、慌てて口を閉じる。
「レヴィア、ミザリを困らせないでよ。
アースも、悲しむでしょ。」
リリアスの一言に、不思議そうにアルルが質問する。
「アースも悲しむって、どういう意味ですか?」
レヴィアは不思議そうな顔のアルルに親指を立ててみせ、そのままリリアスに声をかける。
「もう、みんなに話すの?」
「ええ、アースが言ってたから。
でも、アースの口から説明するまで待ってあげて欲しいかな。
ちょうど寝ちゃってるから。寝てる時のことは、アースも気づいてないようだから。」
「では、また後日になりそうだね。」
リリアスとレヴィアの会話にミザリが割り込むように入ってくる。
「ねえ、どういうこと?」
リリアスは少し考えたあと、レヴィアに話す。
「・・・ミザリには知る権利があるわね。」
「分かった。
では、2人を残して少し先に進もう。」
パーティはレヴィアの号令で、リリアスとミザリを置いて少し先に進む。
リリアスは、タイミングをみて口を開く。
「ミザリ、アースは地獄の門に私を封印しに行くのよ。」
「地獄の門に封印?」
「そう、私が望んだのよ。私たち姉弟はね、双子として命を授かったの。
そこからずっと同じように育てられた私たちだったけど、使える魔力に違いがあったのよ。
肉体的には同じ容量だったけれど、アースは魔力をうまく使えなかった。」
「・・・。」
「そんなあるとき、私は死の病に侵されていたことが分かったの。
私が魔力を制限なく使えたのは、死ぬ間際のエルフが生命の炎を燃やして魔法を詠唱するのと同じことだったそうなのよ。
そうして、私は120歳という若さで肉体が死滅したの。」
ミザリは、余計なことを考えてしまった。
(120歳・・・。十分長生きだと思うけどな。)
「だけどね、大魔法を使い続けた私は、魔法の極意に近づいていた。
その魂、その知識、その経験を失わせるのは惜しいと考えた長老衆が、私の魂を弟の体に封印したのよ。
弟の魂を眠らせてね。」
「・・・つまり、アースに身体を返すために、地獄の門を目指してるの?」
「ええそうよ。
弟も最初は私を封印することに反対してた。
でもね、弟の幸せを奪ってまで生き延びたいと思えないのよ。弟にも幸せになってほしい。
私の魂が邪魔をしていて弟は幸せになれない。弟は徐々に眠りから覚める時間が長くなってるの。
だけど、私の魂が肉体を占領しているから、体を動かせるのは 週に2~3時間程度。
自分の体なのに動かしたあと、また眠りにつく。
そんな弟を見るのを、もう私が耐えられないのよ。」
そういうと、リリアスは目に涙を溜めている。
本当に弟のことを思い、いままで苦労してきたようだ。
自身の魂を封印してまで肉体を返したいのは、少しでも弟の為に罪を滅ぼしたいという考えからなのだろう。
「・・・リリアス、一緒に地獄の門を目指そうね。
僕は アースもリリアスも助かる方法を考えてみるよ。」
「・・・レヴィアの仲間は、みんな同じこと考えるのよね。
レヴィアやエイトと同じこと言ってるわよ。」
いままで溜めていた涙が、一気にこぼれ落ちる。
しかし、リリアスの表情は柔らかく、笑顔になっていた。
先に進んだレヴィア達の方が騒がしくなる。
「リリアス、レヴィア姉さんたちがピンチかも!」
「ええ、急ぎましょう!」
2人は、レヴィアたちの元に駆け付けた!
2人が駆けつけると、気まずそうにレヴィアが駆け寄ってくる。
「すまないリリアス。
魔法石の短剣を何本か割れ目に落としてしまったようなんだ。」
「ほら、レヴィアが投げるからだよ!」
エイトは、そう言いながら割れ目の中に松明を投げ込み深さを調べている。
どうやら割れ目は深く、回収することは不可能のようだ。
「いや、それはエイトの言う通りなんだが、投擲武器を全力で投げたらどうなるか調べてみたかったんだ。」
リリアスは、やはり面倒に巻き込まれたという表情をしてレヴィアを見ている。
割れ目を調べていたエイトが、リリアスに近寄ってくる。
「リリアス、原料が集まれば魔法石を調合して弁償するから。ごめんね。」
「・・・いいのよ。分かってたことだから。
でも、ほんとレヴィアは 無駄な知識の欲望が多いよね。」
不意にレヴィアに声をかけられ、リリアスが不思議そうな顔をする。
「レヴィア、どうしたの?」
「ちょっと頼まれてくれないかな?」
そういってくるレヴィアの目がキラキラとしている。
こういう時は面倒ごとに巻き込まれることをリリアスは知ってた。
「・・・絶対いやよ!」
別にレヴィアのことが嫌いとか苦手とかそういった理由ではなく、ただ面倒に巻き込まれるのが嫌なだけだった。
しかし、断られることを想定していたのか、レヴィアは気にする様子もなく普通に話し始める。
「まあ、聞いてよ。」
「今日は何?」
「ありがとう。
じつは相談なんだけど、魔法石で短剣を作ってもらいたいんだ。
できれば5~6本くらいかな。」
「・・・それくらいなら自分でもできるでしょ。」
「ああ、しかし私が作った短剣は動かせないからね。」
「・・・錬金魔法で動かす必要があるの?」
「ああ、実験をしてみたいんだよね。」
リリアスも最初は不思議そうな顔をしていたけれど、レヴィアの考えていることが分かったのか、喜んで同意してくれた。
錬金魔法で出来た短剣をレヴィアに渡す。
レヴィアは完成した短剣をミザリに渡し説明しようとするが、意味が理解できていたのだろう。
レヴィアが説明する前にミザリが口を開く。
「そういうことね。
僕が投げた短剣を通して、魔法を貫通させたり、連鎖したり。
万が一、外したとしても、リリアスが動かせるってことだね!」
「ああ、2人の共同作業には ちょうどいいだろ。」
「・・・レヴィア姉さん、何で知ってるの!?
というより、まだ返事は保留してもら・・・。」
ミザリは 墓穴を掘った事に気づき、慌てて口を閉じる。
「レヴィア、ミザリを困らせないでよ。
アースも、悲しむでしょ。」
リリアスの一言に、不思議そうにアルルが質問する。
「アースも悲しむって、どういう意味ですか?」
レヴィアは不思議そうな顔のアルルに親指を立ててみせ、そのままリリアスに声をかける。
「もう、みんなに話すの?」
「ええ、アースが言ってたから。
でも、アースの口から説明するまで待ってあげて欲しいかな。
ちょうど寝ちゃってるから。寝てる時のことは、アースも気づいてないようだから。」
「では、また後日になりそうだね。」
リリアスとレヴィアの会話にミザリが割り込むように入ってくる。
「ねえ、どういうこと?」
リリアスは少し考えたあと、レヴィアに話す。
「・・・ミザリには知る権利があるわね。」
「分かった。
では、2人を残して少し先に進もう。」
パーティはレヴィアの号令で、リリアスとミザリを置いて少し先に進む。
リリアスは、タイミングをみて口を開く。
「ミザリ、アースは地獄の門に私を封印しに行くのよ。」
「地獄の門に封印?」
「そう、私が望んだのよ。私たち姉弟はね、双子として命を授かったの。
そこからずっと同じように育てられた私たちだったけど、使える魔力に違いがあったのよ。
肉体的には同じ容量だったけれど、アースは魔力をうまく使えなかった。」
「・・・。」
「そんなあるとき、私は死の病に侵されていたことが分かったの。
私が魔力を制限なく使えたのは、死ぬ間際のエルフが生命の炎を燃やして魔法を詠唱するのと同じことだったそうなのよ。
そうして、私は120歳という若さで肉体が死滅したの。」
ミザリは、余計なことを考えてしまった。
(120歳・・・。十分長生きだと思うけどな。)
「だけどね、大魔法を使い続けた私は、魔法の極意に近づいていた。
その魂、その知識、その経験を失わせるのは惜しいと考えた長老衆が、私の魂を弟の体に封印したのよ。
弟の魂を眠らせてね。」
「・・・つまり、アースに身体を返すために、地獄の門を目指してるの?」
「ええそうよ。
弟も最初は私を封印することに反対してた。
でもね、弟の幸せを奪ってまで生き延びたいと思えないのよ。弟にも幸せになってほしい。
私の魂が邪魔をしていて弟は幸せになれない。弟は徐々に眠りから覚める時間が長くなってるの。
だけど、私の魂が肉体を占領しているから、体を動かせるのは 週に2~3時間程度。
自分の体なのに動かしたあと、また眠りにつく。
そんな弟を見るのを、もう私が耐えられないのよ。」
そういうと、リリアスは目に涙を溜めている。
本当に弟のことを思い、いままで苦労してきたようだ。
自身の魂を封印してまで肉体を返したいのは、少しでも弟の為に罪を滅ぼしたいという考えからなのだろう。
「・・・リリアス、一緒に地獄の門を目指そうね。
僕は アースもリリアスも助かる方法を考えてみるよ。」
「・・・レヴィアの仲間は、みんな同じこと考えるのよね。
レヴィアやエイトと同じこと言ってるわよ。」
いままで溜めていた涙が、一気にこぼれ落ちる。
しかし、リリアスの表情は柔らかく、笑顔になっていた。
先に進んだレヴィア達の方が騒がしくなる。
「リリアス、レヴィア姉さんたちがピンチかも!」
「ええ、急ぎましょう!」
2人は、レヴィアたちの元に駆け付けた!
2人が駆けつけると、気まずそうにレヴィアが駆け寄ってくる。
「すまないリリアス。
魔法石の短剣を何本か割れ目に落としてしまったようなんだ。」
「ほら、レヴィアが投げるからだよ!」
エイトは、そう言いながら割れ目の中に松明を投げ込み深さを調べている。
どうやら割れ目は深く、回収することは不可能のようだ。
「いや、それはエイトの言う通りなんだが、投擲武器を全力で投げたらどうなるか調べてみたかったんだ。」
リリアスは、やはり面倒に巻き込まれたという表情をしてレヴィアを見ている。
割れ目を調べていたエイトが、リリアスに近寄ってくる。
「リリアス、原料が集まれば魔法石を調合して弁償するから。ごめんね。」
「・・・いいのよ。分かってたことだから。
でも、ほんとレヴィアは 無駄な知識の欲望が多いよね。」
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