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8章・最終章
洞窟25階 究極の錬金
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25階に降りると、冷鱗石がなくなり、壁の所々に水晶の大きな塊が埋まっている。
室内の温度も、冷鱗石がなくなったこともあり比較的 暖かくなっているが、そのせいで暗い迷宮に逆戻りしてしまった。
このあたりの階層になると、緑光苔の数も極端に少なくなっているようだ。
アルルは、壁に埋まっている水晶に近寄り見つめている。
ランタンの明かりに照らされ、光を乱反射する様子は幻想的で、いつまでも見続けてしまいそうだ。
「綺麗な水晶ですね。」
アルルは、壁の水晶を触りながら言う。
ミザリもアルルの横に並び、大きな水晶を見る。
「これ魔水晶だよ。たしか魔法石の原料になるんだよね。」
リリアスは頷き魔水晶に近づき品定めをする。
「ええ、ちょうどよかったわ。
純度も高いようだし、レヴィアが無くした分の魔法石を調合しようかな。」
「ほんとに、ちょうどよかったよね。私も一安心だよ。
これで魔法石の短剣が使い放題だね。」
リリアスの一言に、ホッと胸をなでおろしたレヴィアが答える。
レヴィアは安堵の表情になるが、リリアスは不服そうだ。
「・・・レヴィア姉さん、そういう問題ではないと思うけどね。」
メンバーたちは、調合するために魔水晶を採掘し、砕いてエイトとリリアスに渡す。
「こんな少しの量でいいんですか?」
アルルは、あまりにも少ない魔水晶に驚いている。
2人に渡した量は、それぞれ ひと握り程度の量しかない。
「ええ、大丈夫よ。ここは水晶で存在するけど、地上ではあまりとれない鉱石なのよ。」
「だったら、これを持ち帰ればお金になるんですね。」
リリアスの回答に、アルルは壁に埋まった魔水晶を見上げる。
すると、ミザリがアルルに声をかける。
「残念だけど魔水晶は、1キロ 銀貨3枚で取引されてるんだ。
大きな水晶ではないけど、細かい水晶の結晶は川沿いにたくさんあるからね。」
「・・・持って帰るだけ無駄だな。」
魔装具のタンタンハン・・・狂える海龍王の撃槌を持ったレヴィアが悲しそうに魔装具をしまう。
エイトとリリアスは、魔法石の結晶を砕いて粉状にしている。
先に砕き終わったエイトが次の準備に取り掛かる。
「あとは、砂鉄とアシッドスライムの体液を混ぜればいいんだよ。」
「アシッドスライムなんて、どこにいるんだ?」
エイトの一言にフラウが反応する。
アシッドスライムとは、装備品を腐食させるスライムで、迷宮の5~10階層に生息するスライムである。
こんな迷宮の奥深くでは見たこともない。
フラウの疑問にリリアスが答える。
「ええ、それは水と魔物の血で代用できるわね。」
「そういうことか、それでエイトが魔物の血を集めていたんだね。」
リリアスの答えに、フラウが納得する。
「そうね。さっきエイトが採取してた魔物の血に水を混ぜましょう。」
リリアスも魔法石を砕き終わったようで、疑似的なアシッドスライムの体液の作成にとりかかる。
エイトたちは、レヴィアの魔装具(四次元ポシェット)から小型化された冷倉庫を取り出し、中から水の入った革袋を取り出す。
その様子を見ていたアルルが、エイトの持っていた魔装具(魔法の水差し)を指さし質問する。
「聖水だとダメなんですか?」
「そうだね。
魔法の水差しは便利なんだけど、聖水だと魔物の血を浄化してしまうから、今回の調合では普通の水を使うんだよ。」
そう答えると、エイトとリリアスは疑似的なアシッドスライムの体液に、砂鉄と魔水晶を入れてかき混ぜる。
その様子を見ていたミザリが、リリアスに比べて分量の違うエイトに指摘する。
「エイト、ちょっと砂鉄が多いんじゃない?」
「ええ、それに魔水晶も大きめのかけらのままだとダメなのよ。ちゃんと粉にしないと。」
リリアスもミザリの指摘で気づいたのか、エイトの調合物を見ながら注意する。
「大丈夫、大丈夫!」
楽しそうに、無我夢中で調合をするエイト。
何かを察知した、レヴィアが慌てて距離をとる。
そんなレヴィアの様子を見て、何かを思い出した、他のパーティも距離をとる。
「・・・何か嫌な予感がするわね。」
隣で調合していたリリアスも、エイトから距離をとる。
エイトの調合する瓶からは、なぜか大量の煙が発生している。
「逃げろ!」
レヴィアの掛け声と共に、いっせいに走り出すメンバー!
エイトの周囲は白い煙に覆われていて目視することが難しい。
しかし、しばらくたっても何も起きる気配がない。
「まさか、あの煙を吸って死んだとか?」
心配そうにミザリがレヴィアに聞く。
「まったく、なんて無駄な死に方なんだ。」
レヴィアもエイトのミスに呆れている。
「・・・とりあえず、様子を見に行きましょうか。」
アルルの一言で、煙が晴れるのを待って様子を見に行くことに決まった。
煙が晴れるのを待っていると、その中からエイトが何か不思議な物体を持って歩いてくる。
「おーい、みんな!
ちゃんと完成したよー。」
リリアスは魔装具(灯の魔法杖)の明かりで、エイトの物体を確認する。
それは、白銀に輝く魔法石とは違い、黒に近い紫のヌルヌルした塊だった。
「・・・。」
最前列で見てしまった気色の悪い物体に、リリアスは言葉を失う。
レヴィアも、気色悪そうにエイトを見て言う。
「どうやら、上位のスライムを生成した可能性があるね。
でも、よくそれを素手で持とうと思ったね。さすがエイトだよ・・・。」
「おえ、なんか気色悪いね。ちょっと匂いもあるし、吐きそうになってきた。」
ミザリはレヴィアの後ろから見ていたが、気分が悪くなったのか後ろの方に引き下がる。
アルルとフラウも、エイトが持っている物体を気味悪がっている。
「ええ、さすがに引きますね。」
「エイトは、よく手に持てるな。うちでも さすがに無理だよ。」
最後尾のレイザーも口や鼻を覆うように布を当てながら見ている。
「ミザリの言う通り、なんだか血のような匂いもするのー。」
笑顔のエイトは 硬直するパーティに近づき、謎の紫色のヌルヌルした物体をリリアスに手渡す。
「ごめんね。レヴィアが無くした分の弁償だよ。」
リリアスは、全身の毛穴が開く。
いまにも吐き出しそうになるのを我慢している。
エイトに渡された謎の物体は、捨てようと思って手をひっくり返しても、吸い付くように張り付き、手から離れない。
「ご、ごめんなさい・・・。
もう気にしてないから、早く手からどけて!」
涙目のリリアスの手の上で、謎の紫色のヌルヌルした物体は 形を変えようとする。
笑顔のエイトは、リリアスに声をかける。
「ちょっと動かしてみてよ。
隠し要素で、精霊を含んでみたんだ。」
レヴィアが何か思い出したかのように反応する。
「隠し要素!?
・・・そういえば、ルシファーも好きだったな、そういうの。」
リリアスの手の上にある、謎の紫色のヌルヌルした物体は、徐々にリリアスの腕を這い上がっていく。
「イヤーーーーー!
何かわかんないけど、ごめんなさーーーい!」
室内の温度も、冷鱗石がなくなったこともあり比較的 暖かくなっているが、そのせいで暗い迷宮に逆戻りしてしまった。
このあたりの階層になると、緑光苔の数も極端に少なくなっているようだ。
アルルは、壁に埋まっている水晶に近寄り見つめている。
ランタンの明かりに照らされ、光を乱反射する様子は幻想的で、いつまでも見続けてしまいそうだ。
「綺麗な水晶ですね。」
アルルは、壁の水晶を触りながら言う。
ミザリもアルルの横に並び、大きな水晶を見る。
「これ魔水晶だよ。たしか魔法石の原料になるんだよね。」
リリアスは頷き魔水晶に近づき品定めをする。
「ええ、ちょうどよかったわ。
純度も高いようだし、レヴィアが無くした分の魔法石を調合しようかな。」
「ほんとに、ちょうどよかったよね。私も一安心だよ。
これで魔法石の短剣が使い放題だね。」
リリアスの一言に、ホッと胸をなでおろしたレヴィアが答える。
レヴィアは安堵の表情になるが、リリアスは不服そうだ。
「・・・レヴィア姉さん、そういう問題ではないと思うけどね。」
メンバーたちは、調合するために魔水晶を採掘し、砕いてエイトとリリアスに渡す。
「こんな少しの量でいいんですか?」
アルルは、あまりにも少ない魔水晶に驚いている。
2人に渡した量は、それぞれ ひと握り程度の量しかない。
「ええ、大丈夫よ。ここは水晶で存在するけど、地上ではあまりとれない鉱石なのよ。」
「だったら、これを持ち帰ればお金になるんですね。」
リリアスの回答に、アルルは壁に埋まった魔水晶を見上げる。
すると、ミザリがアルルに声をかける。
「残念だけど魔水晶は、1キロ 銀貨3枚で取引されてるんだ。
大きな水晶ではないけど、細かい水晶の結晶は川沿いにたくさんあるからね。」
「・・・持って帰るだけ無駄だな。」
魔装具のタンタンハン・・・狂える海龍王の撃槌を持ったレヴィアが悲しそうに魔装具をしまう。
エイトとリリアスは、魔法石の結晶を砕いて粉状にしている。
先に砕き終わったエイトが次の準備に取り掛かる。
「あとは、砂鉄とアシッドスライムの体液を混ぜればいいんだよ。」
「アシッドスライムなんて、どこにいるんだ?」
エイトの一言にフラウが反応する。
アシッドスライムとは、装備品を腐食させるスライムで、迷宮の5~10階層に生息するスライムである。
こんな迷宮の奥深くでは見たこともない。
フラウの疑問にリリアスが答える。
「ええ、それは水と魔物の血で代用できるわね。」
「そういうことか、それでエイトが魔物の血を集めていたんだね。」
リリアスの答えに、フラウが納得する。
「そうね。さっきエイトが採取してた魔物の血に水を混ぜましょう。」
リリアスも魔法石を砕き終わったようで、疑似的なアシッドスライムの体液の作成にとりかかる。
エイトたちは、レヴィアの魔装具(四次元ポシェット)から小型化された冷倉庫を取り出し、中から水の入った革袋を取り出す。
その様子を見ていたアルルが、エイトの持っていた魔装具(魔法の水差し)を指さし質問する。
「聖水だとダメなんですか?」
「そうだね。
魔法の水差しは便利なんだけど、聖水だと魔物の血を浄化してしまうから、今回の調合では普通の水を使うんだよ。」
そう答えると、エイトとリリアスは疑似的なアシッドスライムの体液に、砂鉄と魔水晶を入れてかき混ぜる。
その様子を見ていたミザリが、リリアスに比べて分量の違うエイトに指摘する。
「エイト、ちょっと砂鉄が多いんじゃない?」
「ええ、それに魔水晶も大きめのかけらのままだとダメなのよ。ちゃんと粉にしないと。」
リリアスもミザリの指摘で気づいたのか、エイトの調合物を見ながら注意する。
「大丈夫、大丈夫!」
楽しそうに、無我夢中で調合をするエイト。
何かを察知した、レヴィアが慌てて距離をとる。
そんなレヴィアの様子を見て、何かを思い出した、他のパーティも距離をとる。
「・・・何か嫌な予感がするわね。」
隣で調合していたリリアスも、エイトから距離をとる。
エイトの調合する瓶からは、なぜか大量の煙が発生している。
「逃げろ!」
レヴィアの掛け声と共に、いっせいに走り出すメンバー!
エイトの周囲は白い煙に覆われていて目視することが難しい。
しかし、しばらくたっても何も起きる気配がない。
「まさか、あの煙を吸って死んだとか?」
心配そうにミザリがレヴィアに聞く。
「まったく、なんて無駄な死に方なんだ。」
レヴィアもエイトのミスに呆れている。
「・・・とりあえず、様子を見に行きましょうか。」
アルルの一言で、煙が晴れるのを待って様子を見に行くことに決まった。
煙が晴れるのを待っていると、その中からエイトが何か不思議な物体を持って歩いてくる。
「おーい、みんな!
ちゃんと完成したよー。」
リリアスは魔装具(灯の魔法杖)の明かりで、エイトの物体を確認する。
それは、白銀に輝く魔法石とは違い、黒に近い紫のヌルヌルした塊だった。
「・・・。」
最前列で見てしまった気色の悪い物体に、リリアスは言葉を失う。
レヴィアも、気色悪そうにエイトを見て言う。
「どうやら、上位のスライムを生成した可能性があるね。
でも、よくそれを素手で持とうと思ったね。さすがエイトだよ・・・。」
「おえ、なんか気色悪いね。ちょっと匂いもあるし、吐きそうになってきた。」
ミザリはレヴィアの後ろから見ていたが、気分が悪くなったのか後ろの方に引き下がる。
アルルとフラウも、エイトが持っている物体を気味悪がっている。
「ええ、さすがに引きますね。」
「エイトは、よく手に持てるな。うちでも さすがに無理だよ。」
最後尾のレイザーも口や鼻を覆うように布を当てながら見ている。
「ミザリの言う通り、なんだか血のような匂いもするのー。」
笑顔のエイトは 硬直するパーティに近づき、謎の紫色のヌルヌルした物体をリリアスに手渡す。
「ごめんね。レヴィアが無くした分の弁償だよ。」
リリアスは、全身の毛穴が開く。
いまにも吐き出しそうになるのを我慢している。
エイトに渡された謎の物体は、捨てようと思って手をひっくり返しても、吸い付くように張り付き、手から離れない。
「ご、ごめんなさい・・・。
もう気にしてないから、早く手からどけて!」
涙目のリリアスの手の上で、謎の紫色のヌルヌルした物体は 形を変えようとする。
笑顔のエイトは、リリアスに声をかける。
「ちょっと動かしてみてよ。
隠し要素で、精霊を含んでみたんだ。」
レヴィアが何か思い出したかのように反応する。
「隠し要素!?
・・・そういえば、ルシファーも好きだったな、そういうの。」
リリアスの手の上にある、謎の紫色のヌルヌルした物体は、徐々にリリアスの腕を這い上がっていく。
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何かわかんないけど、ごめんなさーーーい!」
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