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魔界姫
010・エン横!
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~執務室~
コンコン!
マリーが暗黒のリッチから渡された膨大な量の積み上げられた書類に目を通していると、部屋をノックする音が聞こえてきた。
マリーは、執務室の扉をあけ、ノックしてきた相手を部屋に招きいれ、再び机へと戻り書類に目を通し始めた。
執務室への来訪者は、使い魔のハンと 暗黒のリッチに使えていた使い魔のナオアキのようだ。
「ん?
どうしたの2人して。」
「マリー様に相談があって来たッス。
相談っていうのも、ジャスさんの件で ナオアキから提案が出たッス。」
「ジャスちゃんの件ね・・・。」
マリーの目からも ジャスは、オコンの一件以来、落ち込んでいるようにも見えた。
それは、人前では普段と変わらないように振る舞っていて分かりにくいのだが、ふと一人になる瞬間に無意識のうちに悲しげな表情をしていたのだ。
マリーは 持っていた書類と印鑑を机の上に置くと、ハンに連れられてやってきた使い魔のナオアキに声をかけた。
「ナオアキ、あなたの提案を聞かせてよ。」
「わかったニャン。
俺の考えは、こうニャン!
まず、ジャスさんを買い物に連れ出すニャン!
行先は、もちろん、エンジェル横丁ニャン!
エン横の露店で買い物をすれば楽しくなって笑顔になるに決まってるニャン!
ちなみに出発は 明日ニャン!」
「・・・なるほど。
気晴らしに買い物ね。
確かに面白いかもしれないわね。
でも、どうしてエン横なの?
せっかく魔界にきたのに、天界の横流し品を買う必要なんてあるのかしら?」
「たしかに そうッスね。
天使のジャスさんが、天界の横流し品を割高な値段で買っても喜ばないッス。
それなら、いっそのこと、魔ジョスコに行った方がいいッス。
あそこは、なんでもそろうッス。」
【※魔ジョスコ。魔界の日用品が揃う魔女グループの店。
魔ONカードのポイントも貯まり、お得に買い物ができる。】
「それは ハンの個人的な意見で、魔ONカードのポイントを貯めたいだけでしょ。
日用品の買い出しじゃないんだから・・・。
やっぱり、キャッスルシティがいいんじゃないかな?」
【※キャッスルシティ。いろいろな専門店が並ぶ複合施設。
広大な敷地に専門店や飲食店、簡単な遊園地まであり、悪魔に人気の施設。】
「いやいや、エン横ニャン!」
「違うッス、魔ジョスコッス!」
「だから、キャッスルシティだって!」
「「「ワイワイ、ガヤガヤ」」」
それぞれの意見が分かれ、なかなか話がまとまらない。
そんな中、使い魔のナオアキが、泣きながら ひときわ大きな声を出す。
「うわーん。
俺は 10年に1度のエン横、アニメ祭りに行きたいニャン!
この日を、ずっとずっと待ち続けて、いままで貯金してきたニャン!
貯めてたお金も、知らない間に減ってたこともあるし、なかなか貯まらなかったけど、やっとやっと80万ヘスト貯めたニャン!
俺の魔界での唯一の希望だったニャン、エン横に行けば ジャスさんもきっと喜ぶニャン!」
泣きながら説得するナオアキに対して否定するのも可哀想になったマリーは、ハンに全権を丸投げした。
「そ、そうかな・・・。
ハン、どう思う?
私はハンに任せるよ。」
「マリー様、ずるっこいッスね。
ジャスさんが喜ぶなら、エン横でもいいッスけど・・・。」
マリーとハンの意見に、ナオアキの声が元気を取り戻す。
「だったら、ジャスさんは喜ぶはずニャン。
前に廊下で会った時、俺の持ってる宝物のスターナイトヴィーナスのフィギアを欲しそうに眺めてたニャン!
【※スターナイトヴィーナス。
天界のアニメ、美少女天使スターナイトのキャラクター。
主役は、圧倒的人気を誇る、
スターナイトジュピターで天魔界のある木星を守護神に持つ。
他にも、数多の美少女天使が登場する。
スターナイトマーキュリー、守護神は水星。
スターナイトヴィーナス、守護神は金星。
スターナイトアスガルド、守護神は地星。
スターナイトマーズ、守護神は火星。
などが登場する。
天界で絶大な人気を誇ったのだが、とある理由から第4クール(全118話)を最後に打ち切りが決定された。
それは 第5クール予告での新メンバーが天使たちの法律に抵触した為だとされている。】
「・・・そういえば、ダークヒロインに憧れてる感じはしたッスね。」
「たしかに・・・。
それに、ジャスちゃんって ちょっと子供っぽいところもあるもんね。」
「じゃあ、エン横のアニメ祭りに決まりニャンか?」
「まあ、いいんじゃない?」
「やった!
やったニャン!」
「ねえ、ハン。
最近、寝れてないんだよね。」
「そうッスね。暗黒のリッチからの決算書が膨大っすもんね。
まあ、それも魔王の務めッスよ。」
「書類は仕方ないんだけどさ。
・・・ヒソヒソヒソヒソ。」
(ナオアキも付いて行くつもりなのかな?)
(そうみたいッスね。連れて行かないと恨まれそうッスね。)
(お祭りって明日だよね。ハンは訓練の日を変更できない?
さすがに、2人のお守りって大変なんだけど。
私も疲れてるし・・・。)
(俺は無理ッスよ。暗黒のリッチとか連れて行ったら どうッスか?)
(ムリムリ、お守りが3人に増えるだけじゃん!
ゾイゾイとかどうかな?
リハビリは順調?)
(ドン・キホーテさんは ナオアキと仲がいいみたいッスけど、まだ完治してないッス。
マリー様、諦めてお守りをやるしかないッス。
これも魔王の務めッス。)
(・・・仕方ないわね。)
こうして、ナオアキの提案通り、エン横のアニメ祭りへと向かうこととなった。
~翌日・マリーの寝室
早朝4:55~
マリーの寝室の前で話し声が聞こえる。
「お願いだから 止めるニャン!
こんな時間に起こしたら俺らまで被害を受けるニャン!」
「大丈夫ニャン。
マリー様が誘ってくれたニャン。」
「ナオアキ、血迷うなッス!
さすがに常識の範囲外ッス!」
「大丈夫ニャン。
ジャスさんも支度を終えてるニャン。」
「わ、私は普段通り起きただけですからね!
でも、マリーさんは まだ起きない時間じゃないかなーって思うんですけど。
普段の朝食も8:00頃に寝癖が付いたまま食堂に来るくらいですから・・・。」
「ジャスさんの推測が正しいッス!
ナオアキ、まずは他の仕事を終わらせてからにするッス!」
「それも大丈夫ニャン!
俺、寝ずに朝食準備も持ち場の清掃も終わらせたニャン。
それに早く出発しないと、エン横まで1時間もかかるニャン。
エン横の祭りは9:00開始ニャン!」
「・・・まだ4時間以上もあるニャン。」
「ナオアキ、張り切りすぎだニャン。」
「そんなことないニャン!
狙ってるフィギアは、即完売レベルニャン!
本当は就寝時間になったら出発したかったくらいニャン!」
「・・・悪魔は前日から並ばないッス。」
「でも、使い魔に並ばせるニャン!」
「・・・確かにあり得るッスね。」
コンコン!
ガチャ!
「マリー様、朝だニャーン!」
「ハン、納得してる場合じゃないニャン!
ナオアキが部屋をノックしてドアを開けてるニャン!」
「あぁぁぁぁ!
お、俺らは止めたッスからね!」
「「「に、逃げるニャン!」」」
蜘蛛の子を散らすように、部屋の前に集まっていた使い魔たちは各自の持ち場へと散らばっていく。
ドアが開き切ると、綺麗に身なりを整えたマリーが立っていた。
「ほら、起きてるニャン。
さすがマリー様だニャン。」
「まだ眠いんですけど・・・。
それに朝から部屋の前で騒がれたら目も覚めちゃうわよ。」
「おはようございます。
マリーさん、今日はアニメ祭りに行くんですよね!
実は、私もアニメが大好きなんです!
よかった、マリーさんもアニメ好きなら話が合いますね!」
「・・・私がアニメ好き?」
「ええ、ナオアキさんから聞きましたよ。
今日のアニメ祭りも本当は楽しみで寝れてないんですよね。
使い魔さんたちの No1話題ワードですよ!」
「諸悪の根源は ナオアキか・・・。」
こうして無事?に準備を終えた 3人は、5:30に エン横のアニメ祭り会場へと移動していった。
城に残された使い魔たちは、朝食準備の終わった食堂に移動しながら話をしていた。
「あれ?
よく考えたら、今日は凄い日ニャン!」
「どうかしたニャン?」
「だって、マリー様もジャスさんも エン横に行ったニャン。
戻りは早くても夕方ニャン。
兵士の悪魔たちは、ハンが引率して訓練に行く予定ニャン。
こっちの戻りは夜になるニャン。」
「・・・と、いうことは、朝食の時間が終われば 今日は使い魔パラダイスだニャン!」
「早く皆に知らせて、仕事を午前中で終わらせるニャン!」
「「「ヤッホー!パラダイス万歳ニャン!」」」
使い魔たちが、ウキウキで食堂に入ると、そこには・・・。
「おい、使い魔ども!
私の朝食を部屋に運んでおいてくれ!
今日は激務になるから何匹か雑用を手伝ってくれ!」
暗黒のリッチが、食堂に入ってきた使い魔に指示を出し、自分の部屋へと引き上げていった。
「・・・内勤者を忘れてたニャン。」
「ほんと、リッチには早く成仏してもらいたいニャンね。」
~エン横 ・6:30~
エンジェル横丁は、道の左右に露店が密集する通りで、その名のとおり、天界からの横流し品が売られている。
魔界で手にすることが難しい商品や文化などが人気の秘密で、定期的に行われる、○○祭りと題された専売会の時は、より多くの悪魔や使い魔でにぎわっている。
そんなエンジェル横丁の露店も祭りも、開店が9:00ということもあり、周囲には列に並ばされている使い魔だけが集まる異様な雰囲気の場所となっていた。
列に並んでいる使い魔たちも、不思議な記号の前に整列しており、さらに異様さを醸し出している。
「危ないところだったニャン!
俺、19番目ニャン!」
そんな ナオアキも、さっさと列をみつけ並び始めた。
「ねえ、まだ使い魔たちしか居ないんだけど・・・。
それに、なんなのこの使い魔の行列は?」
「たぶん並ばせられている使い魔とかニャン。」
「それにしても どういった基準で並んでるんですかね?」
「この記号には魔界独自の法則性があるニャン。
例えば、俺が並んだ ACF2089・SNニャン。
最初の2文字が店の名前ニャン。
次の文字が、目玉商品の種類ニャン。
そのあとの数字は、目玉商品の数。
後ろの2桁は、目玉商品の希少値ニャン。
そして最後の記号は、そのアニメの略称ニャン。
つまり、
アリアナクラン商会のフィギア 20体、希少値は89、スターナイトの取り扱いニャン!
希少値85以上は、スターナイトアスガルドや、スターナイトジュピターの可能性が高いニャン!」
「ナオアキ・・・気持ち悪いわよ。」
「大丈夫かニャン?
俺は並んでおくから、近くのベンチで休憩するといいニャン!」
「・・・。」
「マリーさん、とにかくベンチで時間を潰しましょうか。」
「うん。そうだね。」
(並ぶだけなら、こんなに早く来る意味なかったじゃん!)
~エン横 ・8:45~
エン横の列も 並ばされていた使い魔に変わり、悪魔たちが列に並び始め賑わい始めた。
マリーとジャスは、ナオアキの元に戻る。
ナオアキの並ぶ列は、目玉商品20体に対して、36人の悪魔が並んでいた。
「ねえ、ナオアキ、明らかに目玉商品の数より並んでいる人数が多いんですけど。」
「そんなもんニャン!
購入することができた 20人の中には、転売目的の悪魔もいるニャン。
それに、お金が足りずに買うことが出来ない人がいた場合、チャンスが広がるニャン!」
「ふーん。そんなもんなんだ。
でも店で勝った直後の転売って不思議だよね。」
「そうかニャン?
以前、アイドル祭りの時に同行したけど、7万ヘストで売りに出されていた クッキングモンスターのカードが転売に出されて、5分後には 約18倍の124万ヘストになっていたニャン。
同行者も 高い買い物だったって行ってたニャン。」
「クッキングモンスター・・・。
暗黒のリッチさんの同行でしょうね。」
「高い買い物だったって・・・。
その言い方だと、転売屋から買ったのは リッチじゃん・・・。」
「あっ!
マリーさん、お店が開きますよ!」
8:55分になり、店が開き始める。
9:00過ぎには、エン横は いままでの静寂とは 打って変わり、大賑わいを見せ始めた。
そんな中、自分の順番になり最前列にきたナオアキが マリーに助けを求める声が響く。
「マリー様、大変ニャン!
俺の欲しかったフィギアがあるニャン!」
「よかったじゃん。
さっさと買って、露店巡りをしようよ。」
「ダメニャン!
84万もするニャン!」
ナオアキの指さすフィギアの足元についた値札は、確かに84万ヘストとなっていた。
しかし、その横のフィギアは、32万ヘストと、8000ヘストの値が付いたフィギアが残っていた。
「ねえ、その横の人形にしたら?」
マリーは、8000ヘストのフィギアを指さす。
「なに言ってるニャン!
こっちのフィギアは、スターナイトインフィニティっていう別のヒロインニャン!」
「あっ、このヒロイン、見覚えがあります。
確か次回予告に出たけど、その次回が放送されなかったんですよね。
面白いアニメだったのに、残念だった記憶が蘇ってきました。」
「そうニャン!
神の血を引くスターナイトの中で、魔王の血が半分混ざっている異彩なスターナイトニャン。
神と魔王が交わることがないって理由で 放送倫理委員会から講義があり、アニメが打ち切りになってしまったらしいニャン。」
「・・・なんだか、このインフィニティって、マリーさんに似てますよね。」
「そうかな?」
「目元を隠すマスクをしてますから 顔は分からないですけど、綺麗な黒髪だし髪型だって一緒じゃないですか。」
「黒髪に同じ髪型って・・・。
その理論だと、ジャスちゃんも、ちょっと高めのフィギアにそっくりだよ。
っていうか、顔だちも似てるよね。剣を装備してる点も同じだし。」
「確かにそうニャンね。
ジャスさんは、スターナイトヴィーナスに 瓜二つニャン。」
ナオアキの一言に、周囲の悪魔たちが騒めきだす。
「おい、本当にSNヴィーナスに瓜二つだぜ!」
「マジかよ!ちょっと握手してもらえないかな。」
「やばい!俺、ちょっと奴隷になってくる!」
【※SN=スターナイトの略。】
「ジャスさん、SNヴィーナスの決め台詞を言ってみるニャン。
たぶん、違和感ないと思うニャン。」
「「「うぉぉぉ!ご褒美きたぜ!」」」
ナオアキの一言に、周囲の悪魔も盛り上がりを見せる。
「え、でも、そんな・・・。」
「ナオアキ、ジャスちゃん困ってるじゃん。
それに決め台詞なんて・・・。」
マリーがジャスに変わって場を収めようとしたとき、周囲はさらに盛り上がり始めた!
「「「うぉぉぉ!ご褒美きたぜ!」」」
「魔界を乱す不埒な者よ!
私は魔界の民を守るため、空より舞い降りた、
愛と正義の美少女天使、スターナイトヴィーナス!
愛の天罰、落とさせていただきます!」
「ジャ、ジャスちゃん・・・?」
「やだ!
恥ずかしいです!」
「・・・いやいや、結構ノリノリだったじゃん。」
決めポーズを決めたあと、ジャスは両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込む。
周囲の悪魔たちは、大歓声を上げている。
「と、とにかく、ナオアキ、どうするの?
早く決めちゃいなよ。」
「でも俺、SNヴィーナスのフィギアは持ってるニャン。
どうしても、SNジュピターが欲しいニャン!」
「お金が足りないじゃん。」
「分かってるニャン。
だから、マリー様、お金を貸してほしいニャン。
4万ヘストあれば、フィギアが買えるニャン!」
「いやよ!
絶対に嫌!
お金を貸せないわけじゃないけど、あなたの為にならないわ。
また次の機会に買えばいいじゃない。」
「そんなの無理ニャン!
フィギアは水物ニャン!
いま買わなければ市場に流れてこなくなる可能性が高いニャン!
俺、4万ヘスト返す為だったら寝ずに働くニャン。
だから、お金を貸してほしいニャン!」
「無理よ。絶対に貸さないわ。」
「・・・仕方ないニャン。
ジャスさん、お金を・・・。」
「ナオアキ!
いい加減にしなさい!
これは命令よ!
今日は何も買わずに城に帰って反省しなさい!」
「そんな・・・。
俺、この日を10年間も楽しみにしてたニャン。
マリー様は、何もわかってないニャン!
俺、マリー様の元で仕えたくないニャン!」
使い魔のナオアキは、マリーたちの元を離れ、人混みの中へ走り去っていった。
「マリーさん、ナオアキさんが・・・。」
「いいわよ。戻ってくるわよ。
・
・
・ごめん、私も疲れたから、ちょっと帰ることにするね。
ジャスちゃんは どうする?」
「わたしは・・・。」
「ナオアキなら大丈夫よ。」
「・・・そうですかね。
私も一緒に帰ります。」
マリーとジャスは、魔王城へと引き上げていった。
~魔王城・10:30~
魔王城に戻ると、まったりと寛いでいた使い魔たちが慌てて作業に戻り始める。
元気のないマリーに、使い魔のネロが声を掛けてきた。
「マリー様、どうしたニャン?
なんだか元気がないニャン。
それに、ナオアキは どこかニャン?」
「何でもないよ。
ナオアキなら、あとで帰ってくるわよ。」
ネロは、マリーとジャスの様子を見て、何か察した様子だ。
「ナオアキが何かやったニャンね。」
「・・・。」
「やっぱりニャン。
あいつ、魔界に向いてないニャン。
でも、それも仕方ないニャン。」
ネロのセリフに、ジャスが反応する。
マリーは、近くにあった椅子に腰かけ、2人の会話に聞き耳を立てている様子だ。
「魔界が向いてないのが仕方ないって、何かあったんですか?」
「ナオアキは、ここがずっと天国だと思ってたニャン。」
「こんなに過酷な環境なのにですか?」
「リッチモンド城にいた他の使い魔から聞いた話だけど、ナオアキは天界に送られる予定が、天使の手違いで魔界にきてしまったらしいニャン。」
「そんな酷い間違えをするなんて、同じ天使として見過ごせませんね!
でも、どういった経緯で手違いが起きてしまったんでしょうか?
普通なら、天使が判断するようなことでもないはずなんですけど・・・。」
「俺も聞いた話だけど、ナオアキは人間だったころ、川で溺れている子供を助けるために、台風で増水する川に飛び込んだらしいニャン。
でも、その子供はライフジャケットを来ていて、自力で川岸まで辿り着いて助かったらしいニャン。
だけど、助けに行ったはずの ナオアキは泳げなかったから、そのまま溺れて死んでしまったらしいニャン。」
「・・・?
なぜ死んだときのことを鮮明に客観的に覚えてるんでしょうかね?」
「たぶん自分から川に飛び込んでたから、自殺扱いになったんじゃないのかニャン?
その後、天使に声を掛けられて、素晴らしい行いだから天界に行けるって言われて魔界に来たらしいニャン!」
「・・・。」
ネロの話を聞いていたジャスの顔が青ざめている。
「ジャスさん、どうしたニャン?
顔色が悪いニャン。」
「・・・いえ、何でもないです。
で、でも、本当にそんなことが あるものなんでしょうかね。」
「事故っていうか事件ニャンね。
魔界に来たばかりの ナオアキの口癖は、天国っていってもキツイニャンってセリフだったらしいニャン。
本当に笑い話ニャン。
ナオアキは ジャスさんみたいに純粋ニャン。
もしかすると、どこかで2人は・・・。」
そこまで話をすると、ジャスが話を遮って頭を下げていた。
「ごめんなさい!
その天使は私です・・・。
マリーさん、私、ナオアキさんを探してきます!」
「・・・わたしは行かないからね。」
マリーはジャスに気づかれないよう、ネロに目配せする。
ネロは 頷きジャスに声をかける。
「俺も付いて行くニャン!
俺、人探しのプロを知ってるニャン!」
「はい!
ネロさん、宜しくお願いします!」
ネロは、部屋に戻ると何か荷物を持ってきた。
そして、ジャスとネロは、エンジェル横丁まで駆け足で移動していった。
~エン横・11:45~
再びエン横に戻ってきたジャスは、はぐれてしまった場所を探し始めた。
「ジャスさん、ナオアキは全財産持ってたニャン。
たぶん誘拐されてしまったニャン。
こんなところで地道に探すより、出会い喫茶にいた方がいいニャン!」
「出会い喫茶?
いまは、そんなところに行ってる場合じゃ・・・。」
「とにかく急ぐニャン!」
ネロは、ジャスの手を引き、出会い喫茶へと走り出した。
~出会い喫茶・12:00~
「ネロさん、いま出会ってる場合じゃないですよ!」
「俺に任せるニャン!
マスター!マスター!」
ネロは、店内に入るなり、骸骨種のマスターを呼び出し、話し始めた。
「マスター、婆さんの状況は、どんなニャン?」
「いまなら手があいてるぞ。」
「だったら見合いをお願いしたいニャン。」
「見合いの仲介料は、2万ヘストだ。」
ネロは、マスターに 2万ヘスト払って奥の部屋に案内された。
「ジャスさん、早く中に入るッス!」
「は?
いまから お見合いですよね?
どうして人探しから こうなったんですか?」
混乱するジャスの手を引き、ネロは奥の部屋に入る。
奥の部屋は6畳ほどの小部屋になっており、部屋には机と、その机の上に水晶玉が置かれた部屋だった。
そして、その机の奥の席には、竜人種の老婆が座っていた。
「婆さん、コレが私物ニャン!
早く見合いを始めるニャン!」
ネロは、持ってきた荷物から、SNヴィーナスのフィギアを取り出し、老婆に渡した。
「これこれ、そんなに焦らすでないわい。」
「そ、そうですよ。
まず、お見合いって自己紹介からだと思いますよ。
それから、えっと、えっと・・・。」
「ジャスさん、何を言ってるニャン?
魔界で見合いと言えば、人探しのことニャン。
この婆さんは、探したい人の見てる景色を同期させ合わせることで、周囲の状況を確認することが出来るニャン。」
戸惑うジャスを気にすることなく、老婆はフィギアを左手に持つと、右手を水晶に近づけて覗き込んだ。
「どうやら倉庫のようだね。
倉庫の番号は・・・13、13といえば、奴隷商人ブレアの倉庫だね。
うん、間違いない。奴隷商人ブレアの姿も映ってるね。」
「婆さん、助かったニャン。
・・・13番倉庫、奴隷商人ブレア。
やっかいな相手ニャン。
ジャスさん、とにかく先を急ぐニャン!」
ジャスとネロは、出会い喫茶をでると、13番倉庫に向かった。
~13番倉庫・12:50~
ガン!
ガン!
ガン!
13番と書かれた倉庫の入り口をネロがノックする。
すると、中から人相の悪い、腐人種の悪魔が顔を出した。
「いま取り込み中だ、帰んな!」
腐人種の悪魔は、そう言うか言わないかのタイミングで扉を閉めようとした。
「ちょっと待つニャン。
俺は奴隷を買い取りにきたニャン!」
「・・・。」
「それとも、客を追い返すのかニャン?」
「・・・少しお待ちください。
上に確認してきます。」
腐人種の悪魔は、扉を一度閉めた。
2分ほど待つと、愛想の良い別の腐人種の悪魔が顔を出した。
「ようこそ、お客様。
先ほどは、うちの従業員が不愛想な態度をとってしまい、申し訳ありません。」
「俺が使い魔だから、仕方ないニャン。」
愛想の良い腐人種の悪魔は、ジャスとネロを倉庫の中へと案内する。
「お客様、今日はどういった奴隷をお探しでしょうか?
戦闘用?ストレス発散用?
もしかして、愛玩用とかですかな?」
「さっき誘拐された使い魔を探しているニャン。
俺の仲間だから、返してほしいニャン。」
ネロの言葉を聞き、愛想の良い腐人種の悪魔の態度が豹変する。
「なに人聞きが悪いこと言ってんだ。
なんだ、てめー!
自分の仲間だから、返せって言ってんのか!?」
「そうです!
私たちの仲間だから、返してください!」
「ジャスさん!
・・・ヒソヒソ。」
(ちょっと黙っておいてほしいニャン。
悪魔には悪魔の交渉の流儀があるニャン。)
(でも・・・。)
(大丈夫ニャン。俺に任せるニャン。)
(・・・はい、わかりました。
ネロさんに任せます。)
「てめー!
なにコソコソ話し合ってんだ!」
「すまないニャン。
もちろん、タダで返せとか言ってないニャン。
誘拐される方も悪いニャン。」
ネロの言葉を聞き、腐人種の悪魔は、再びニコニコと愛想がよくなる。
「ああ、申し訳ありません。
てっきり私どもの商品を横領しようとしているのかと誤解をしておりました。
先ほど入荷した使い魔の金額は、30万ヘストでございます。
なお、入荷した時点で手ぶらだったので、本体のみのお渡しとなりますが、いかがでしょうか?」
「なに言ってるんですか!
ナオアキさんは、80万ヘスト持ってたんですよ!
それを盗ん、モゴモゴモゴ!」
ネロは ジャスの口を押えながら、交渉を再開する。
「それでいいニャン。
その金額と条件で取引ニャン!」
「・・・わかりました。
では、奥へどうぞ。」
腐人種の悪魔は、明らかに不満を貯めこんでいる態度を示しながら、倉庫の奥の方へと2人を案内した。
倉庫の奥の方には、中央に少し大きめの檻があり、その檻に繋がる通路の先にはいくつもの小さな檻があった。
檻の中には、様々な種類の悪魔や使い魔たちが収容されていた。
2人は少し大きめの檻に通され、暫く待たされた。
すると、奥の方の檻が開き、中から1匹の使い魔が追い出されるように歩いてきた。
「ジャスさん、俺、怖かったニャン。」
「ナオアキさん、大丈夫でしたか?」
「・・・。」
ナオアキは、無言で頷き、ネロとジャスの所へと駆け寄った。
ネロは、背負っていた袋から財布を取り出し、腐人種の悪魔に手渡す。
「これでいいニャンね。」
「・・・いえ、足りないようですな。」
「そんなはずないニャン。
ちゃんと30万ヘストあるはずニャン。」
「いやいや、3000万ヘスト必要ですよ。
なんたって、天使の少女は高値ですからね。」
「何を言ってるニャン。
ジャスさんは、商品じゃないニャン!」
「はぁ?
なに寝ぼけたこと言ってんだ!
うちの商品を横領しようとしてんだな!
おい、お前ら!
この使い魔の身ぐるみ剥いで、追い返しちまえ!
この天使は綺麗な顔立ちしてるから金になる。
傷つけるなよ!」
「「「グエェ、グエェ!」」」
檻の周りにいた、腐人種の悪魔たちが、3人の元に近寄ってくる。
「ジャスさん、怖いニャン。
マリー様の元に戻りたいニャン。」
「ネ、ネロさん、どうしましょう?」
「・・・どうしようもないニャン、マリー様・・・助けて下さい。」
「グエェ、グエェ!使い魔ども覚悟しろよー。」
「わがまま言って、ごめんなさいニャン。
マリー様、助けてニャーン!」
「ちょっと待ちなさーい!」
3人が恐怖のあまり目を閉じたとき、倉庫の屋根付近にある窓の方から、澄んだ声が響いてきた。
ズガガガーン!
「な、何だ今の衝撃は!?」
「あいつだ!あいつがやったんだ!」
「き、貴様、何者だ!」
「仲間を助けたいと思う気持ちを利用し、
天使の少女や 使い魔を騙し罠にはめ、自分たちのものにしようとする悪の権化。
少女たちの命を守るため、天空より舞い降りた守護天使!
愛と真実の美少女天使、スターナイト インフィニティ!
あなたの悪の魂、ここで断ち切らせていただきます。
さあ、あなたの罪を数えなさい!!」
「お、おのれーーーー!」
スターナイトインフィニティと名乗った、神々の翼をもった 黒髪ツインテールに目元を隠すマスクを装備したヒロインは、窓から飛び降りてきて腐人種の悪魔たちと戦闘に突入する。
「あ、あれは・・・。
スターナイトインフィニティ・・・ニャン。」
「まさか本物なんですか?」
「か、かなり強いニャン。
もしかすると、マリー様より強いかもしれないニャン。」
SNインフィニティと名乗った、神々の翼を持った天使は、次々と腐人種の悪魔たちを戦闘不能にしていく。
次々と倒されていく悪魔を見て、3人を案内した腐人種の悪魔が両手をあげ、SNインフィニティに交渉を申し出た。
「ま、待ってくれ、俺の負けだ。
お、俺は奴隷商人ブレア、この界隈では名の通った悪魔だ。
なあ、お前さん、こいつら3人を助けに来たんだろ。
こいつらは返すから、俺だけは見逃してくれよ!」
「あなたの魂の価値って、そんなもの?」
「い、いや、こいつから奪った80万ヘストも返すし、さっき受け取った30万ヘストにも色をつけて返すから。
な、頼むよ。悪い話じゃないだろ。」
「・・・。」
「わ、わかった。
ここに捕らえてる奴隷たちも、お前にやるからさ、な、おい、頼むよ。」
「・・・断るわ。
あなたを殺せば、全て解決するもの。
私は最初に言ったわよね。
あなたの悪の魂、ここで断ち切らせてもらうって。
いままで犯した悪行の数々、決して許されるものではないわ。
命乞いをするのなら、神の前で行いなさい。
・
・
・さあ、あなたの罪を数えなさい!!」」
「ひ、ヒィィィ!」
ズサァァァ!
SNインフィニティは、奴隷商人ブレアに止めを刺し、捕まっていた奴隷たちを開放し倉庫の外に出た。
いま飛び立とうとする彼女に、ナオアキが声を掛けた。
「待ってほしいニャン。
助けてくれて ありがとうニャン。
あなたは、本物のSNインフィニティなのかニャン。」
ナオアキの問いかけに、彼女は小さく頷き、神々の翼を広げ大空へと飛び立っていってしまった。
「ナオアキさん!
絶対に本物ですよ!
きっと悪を成敗するために、別の次元から やってきたんですよ!」
「そうだニャン!
絶対そうに決まってるニャン!
ドン・キホーテさんも、別の時空からきたニャン。
ありえるニャン!」
「・・・。
そんな都合よく馬鹿なことは起きないニャン。
2人とも、アニメに影響されすぎニャン。」
「ネロさん、どうして違うって言いきれるんですか!?
・
・
・はっ!
まさか、SNインフィニティの正体を知ってるんですか!!?」
「それは、本当なのかニャン!?
俺にだけ こっそり教えてほしいニャン!」
「俺も知らないニャン。
そんなことより、マリー様が心配してるから、早く城に戻るニャン!」
ネロは、そういうと逃げるように魔王城への帰路についた。
そんな ネロの後を追うように、付いて行く2人、その様子を見て、行く当てのない元奴隷たちもネロの後を追い、魔王城へと向かった。
~魔王城・15:30~
魔王城にたどり着くと、3人はマリーに事の顛末を説明した。
「ふーん。
なるほど、で、この元奴隷たちも配下に加えたいってこと?」
「そうです。
魔王城なら差別されることなく生きていけるから、この悪魔たちも幸せになれるはずです。
マリーさん、宜しくお願いします。」
「・・・それは別にいいわよ。
でも先に私に言うことがあるんじゃない?
ねえ、ナオアキ。」
ナオアキは、怒られると思ったのか、下を向きながらマリーと目を合わせずに話し始めた。
「マリー様、俺が悪かったニャン。」
マリーは、下を向くナオアキに近づき、声を掛ける。
「誰に謝ってるの。
私は目の前にいるのよ。
前を向きなさい。」
ナオアキは、注意されるまま、マリーの方を向き、再び謝罪をする。
「あ、あの、マリー様、俺が悪かったニャン。
も、もうフィギアを集めたいとか言わないから許してほしいニャン。」
「・・・わかったわ。許してあげる。
でも、好きなことをしないなんて言わないでよ。」
「マリー様・・・?」
「ほら。」
マリーは、背後に隠し持っていたフィギアを、ナオアキに手渡す。
「私のせいで買えなかったからね。」
「このフィギアは、SNインフィニティニャン!」
「ごめん。
もうソレしか残ってなかった。
あまり好きなキャラじゃなかった?」
ナオアキは、首を横に振る。
「俺が一番好きなキャラニャン!
ほんとに天国に来れてよかったニャン!」
顔を上げたナオアキの一言に、ジャスが気まずそうに下を向く。
「次は またジャスちゃんか・・・。」
→011へ
コンコン!
マリーが暗黒のリッチから渡された膨大な量の積み上げられた書類に目を通していると、部屋をノックする音が聞こえてきた。
マリーは、執務室の扉をあけ、ノックしてきた相手を部屋に招きいれ、再び机へと戻り書類に目を通し始めた。
執務室への来訪者は、使い魔のハンと 暗黒のリッチに使えていた使い魔のナオアキのようだ。
「ん?
どうしたの2人して。」
「マリー様に相談があって来たッス。
相談っていうのも、ジャスさんの件で ナオアキから提案が出たッス。」
「ジャスちゃんの件ね・・・。」
マリーの目からも ジャスは、オコンの一件以来、落ち込んでいるようにも見えた。
それは、人前では普段と変わらないように振る舞っていて分かりにくいのだが、ふと一人になる瞬間に無意識のうちに悲しげな表情をしていたのだ。
マリーは 持っていた書類と印鑑を机の上に置くと、ハンに連れられてやってきた使い魔のナオアキに声をかけた。
「ナオアキ、あなたの提案を聞かせてよ。」
「わかったニャン。
俺の考えは、こうニャン!
まず、ジャスさんを買い物に連れ出すニャン!
行先は、もちろん、エンジェル横丁ニャン!
エン横の露店で買い物をすれば楽しくなって笑顔になるに決まってるニャン!
ちなみに出発は 明日ニャン!」
「・・・なるほど。
気晴らしに買い物ね。
確かに面白いかもしれないわね。
でも、どうしてエン横なの?
せっかく魔界にきたのに、天界の横流し品を買う必要なんてあるのかしら?」
「たしかに そうッスね。
天使のジャスさんが、天界の横流し品を割高な値段で買っても喜ばないッス。
それなら、いっそのこと、魔ジョスコに行った方がいいッス。
あそこは、なんでもそろうッス。」
【※魔ジョスコ。魔界の日用品が揃う魔女グループの店。
魔ONカードのポイントも貯まり、お得に買い物ができる。】
「それは ハンの個人的な意見で、魔ONカードのポイントを貯めたいだけでしょ。
日用品の買い出しじゃないんだから・・・。
やっぱり、キャッスルシティがいいんじゃないかな?」
【※キャッスルシティ。いろいろな専門店が並ぶ複合施設。
広大な敷地に専門店や飲食店、簡単な遊園地まであり、悪魔に人気の施設。】
「いやいや、エン横ニャン!」
「違うッス、魔ジョスコッス!」
「だから、キャッスルシティだって!」
「「「ワイワイ、ガヤガヤ」」」
それぞれの意見が分かれ、なかなか話がまとまらない。
そんな中、使い魔のナオアキが、泣きながら ひときわ大きな声を出す。
「うわーん。
俺は 10年に1度のエン横、アニメ祭りに行きたいニャン!
この日を、ずっとずっと待ち続けて、いままで貯金してきたニャン!
貯めてたお金も、知らない間に減ってたこともあるし、なかなか貯まらなかったけど、やっとやっと80万ヘスト貯めたニャン!
俺の魔界での唯一の希望だったニャン、エン横に行けば ジャスさんもきっと喜ぶニャン!」
泣きながら説得するナオアキに対して否定するのも可哀想になったマリーは、ハンに全権を丸投げした。
「そ、そうかな・・・。
ハン、どう思う?
私はハンに任せるよ。」
「マリー様、ずるっこいッスね。
ジャスさんが喜ぶなら、エン横でもいいッスけど・・・。」
マリーとハンの意見に、ナオアキの声が元気を取り戻す。
「だったら、ジャスさんは喜ぶはずニャン。
前に廊下で会った時、俺の持ってる宝物のスターナイトヴィーナスのフィギアを欲しそうに眺めてたニャン!
【※スターナイトヴィーナス。
天界のアニメ、美少女天使スターナイトのキャラクター。
主役は、圧倒的人気を誇る、
スターナイトジュピターで天魔界のある木星を守護神に持つ。
他にも、数多の美少女天使が登場する。
スターナイトマーキュリー、守護神は水星。
スターナイトヴィーナス、守護神は金星。
スターナイトアスガルド、守護神は地星。
スターナイトマーズ、守護神は火星。
などが登場する。
天界で絶大な人気を誇ったのだが、とある理由から第4クール(全118話)を最後に打ち切りが決定された。
それは 第5クール予告での新メンバーが天使たちの法律に抵触した為だとされている。】
「・・・そういえば、ダークヒロインに憧れてる感じはしたッスね。」
「たしかに・・・。
それに、ジャスちゃんって ちょっと子供っぽいところもあるもんね。」
「じゃあ、エン横のアニメ祭りに決まりニャンか?」
「まあ、いいんじゃない?」
「やった!
やったニャン!」
「ねえ、ハン。
最近、寝れてないんだよね。」
「そうッスね。暗黒のリッチからの決算書が膨大っすもんね。
まあ、それも魔王の務めッスよ。」
「書類は仕方ないんだけどさ。
・・・ヒソヒソヒソヒソ。」
(ナオアキも付いて行くつもりなのかな?)
(そうみたいッスね。連れて行かないと恨まれそうッスね。)
(お祭りって明日だよね。ハンは訓練の日を変更できない?
さすがに、2人のお守りって大変なんだけど。
私も疲れてるし・・・。)
(俺は無理ッスよ。暗黒のリッチとか連れて行ったら どうッスか?)
(ムリムリ、お守りが3人に増えるだけじゃん!
ゾイゾイとかどうかな?
リハビリは順調?)
(ドン・キホーテさんは ナオアキと仲がいいみたいッスけど、まだ完治してないッス。
マリー様、諦めてお守りをやるしかないッス。
これも魔王の務めッス。)
(・・・仕方ないわね。)
こうして、ナオアキの提案通り、エン横のアニメ祭りへと向かうこととなった。
~翌日・マリーの寝室
早朝4:55~
マリーの寝室の前で話し声が聞こえる。
「お願いだから 止めるニャン!
こんな時間に起こしたら俺らまで被害を受けるニャン!」
「大丈夫ニャン。
マリー様が誘ってくれたニャン。」
「ナオアキ、血迷うなッス!
さすがに常識の範囲外ッス!」
「大丈夫ニャン。
ジャスさんも支度を終えてるニャン。」
「わ、私は普段通り起きただけですからね!
でも、マリーさんは まだ起きない時間じゃないかなーって思うんですけど。
普段の朝食も8:00頃に寝癖が付いたまま食堂に来るくらいですから・・・。」
「ジャスさんの推測が正しいッス!
ナオアキ、まずは他の仕事を終わらせてからにするッス!」
「それも大丈夫ニャン!
俺、寝ずに朝食準備も持ち場の清掃も終わらせたニャン。
それに早く出発しないと、エン横まで1時間もかかるニャン。
エン横の祭りは9:00開始ニャン!」
「・・・まだ4時間以上もあるニャン。」
「ナオアキ、張り切りすぎだニャン。」
「そんなことないニャン!
狙ってるフィギアは、即完売レベルニャン!
本当は就寝時間になったら出発したかったくらいニャン!」
「・・・悪魔は前日から並ばないッス。」
「でも、使い魔に並ばせるニャン!」
「・・・確かにあり得るッスね。」
コンコン!
ガチャ!
「マリー様、朝だニャーン!」
「ハン、納得してる場合じゃないニャン!
ナオアキが部屋をノックしてドアを開けてるニャン!」
「あぁぁぁぁ!
お、俺らは止めたッスからね!」
「「「に、逃げるニャン!」」」
蜘蛛の子を散らすように、部屋の前に集まっていた使い魔たちは各自の持ち場へと散らばっていく。
ドアが開き切ると、綺麗に身なりを整えたマリーが立っていた。
「ほら、起きてるニャン。
さすがマリー様だニャン。」
「まだ眠いんですけど・・・。
それに朝から部屋の前で騒がれたら目も覚めちゃうわよ。」
「おはようございます。
マリーさん、今日はアニメ祭りに行くんですよね!
実は、私もアニメが大好きなんです!
よかった、マリーさんもアニメ好きなら話が合いますね!」
「・・・私がアニメ好き?」
「ええ、ナオアキさんから聞きましたよ。
今日のアニメ祭りも本当は楽しみで寝れてないんですよね。
使い魔さんたちの No1話題ワードですよ!」
「諸悪の根源は ナオアキか・・・。」
こうして無事?に準備を終えた 3人は、5:30に エン横のアニメ祭り会場へと移動していった。
城に残された使い魔たちは、朝食準備の終わった食堂に移動しながら話をしていた。
「あれ?
よく考えたら、今日は凄い日ニャン!」
「どうかしたニャン?」
「だって、マリー様もジャスさんも エン横に行ったニャン。
戻りは早くても夕方ニャン。
兵士の悪魔たちは、ハンが引率して訓練に行く予定ニャン。
こっちの戻りは夜になるニャン。」
「・・・と、いうことは、朝食の時間が終われば 今日は使い魔パラダイスだニャン!」
「早く皆に知らせて、仕事を午前中で終わらせるニャン!」
「「「ヤッホー!パラダイス万歳ニャン!」」」
使い魔たちが、ウキウキで食堂に入ると、そこには・・・。
「おい、使い魔ども!
私の朝食を部屋に運んでおいてくれ!
今日は激務になるから何匹か雑用を手伝ってくれ!」
暗黒のリッチが、食堂に入ってきた使い魔に指示を出し、自分の部屋へと引き上げていった。
「・・・内勤者を忘れてたニャン。」
「ほんと、リッチには早く成仏してもらいたいニャンね。」
~エン横 ・6:30~
エンジェル横丁は、道の左右に露店が密集する通りで、その名のとおり、天界からの横流し品が売られている。
魔界で手にすることが難しい商品や文化などが人気の秘密で、定期的に行われる、○○祭りと題された専売会の時は、より多くの悪魔や使い魔でにぎわっている。
そんなエンジェル横丁の露店も祭りも、開店が9:00ということもあり、周囲には列に並ばされている使い魔だけが集まる異様な雰囲気の場所となっていた。
列に並んでいる使い魔たちも、不思議な記号の前に整列しており、さらに異様さを醸し出している。
「危ないところだったニャン!
俺、19番目ニャン!」
そんな ナオアキも、さっさと列をみつけ並び始めた。
「ねえ、まだ使い魔たちしか居ないんだけど・・・。
それに、なんなのこの使い魔の行列は?」
「たぶん並ばせられている使い魔とかニャン。」
「それにしても どういった基準で並んでるんですかね?」
「この記号には魔界独自の法則性があるニャン。
例えば、俺が並んだ ACF2089・SNニャン。
最初の2文字が店の名前ニャン。
次の文字が、目玉商品の種類ニャン。
そのあとの数字は、目玉商品の数。
後ろの2桁は、目玉商品の希少値ニャン。
そして最後の記号は、そのアニメの略称ニャン。
つまり、
アリアナクラン商会のフィギア 20体、希少値は89、スターナイトの取り扱いニャン!
希少値85以上は、スターナイトアスガルドや、スターナイトジュピターの可能性が高いニャン!」
「ナオアキ・・・気持ち悪いわよ。」
「大丈夫かニャン?
俺は並んでおくから、近くのベンチで休憩するといいニャン!」
「・・・。」
「マリーさん、とにかくベンチで時間を潰しましょうか。」
「うん。そうだね。」
(並ぶだけなら、こんなに早く来る意味なかったじゃん!)
~エン横 ・8:45~
エン横の列も 並ばされていた使い魔に変わり、悪魔たちが列に並び始め賑わい始めた。
マリーとジャスは、ナオアキの元に戻る。
ナオアキの並ぶ列は、目玉商品20体に対して、36人の悪魔が並んでいた。
「ねえ、ナオアキ、明らかに目玉商品の数より並んでいる人数が多いんですけど。」
「そんなもんニャン!
購入することができた 20人の中には、転売目的の悪魔もいるニャン。
それに、お金が足りずに買うことが出来ない人がいた場合、チャンスが広がるニャン!」
「ふーん。そんなもんなんだ。
でも店で勝った直後の転売って不思議だよね。」
「そうかニャン?
以前、アイドル祭りの時に同行したけど、7万ヘストで売りに出されていた クッキングモンスターのカードが転売に出されて、5分後には 約18倍の124万ヘストになっていたニャン。
同行者も 高い買い物だったって行ってたニャン。」
「クッキングモンスター・・・。
暗黒のリッチさんの同行でしょうね。」
「高い買い物だったって・・・。
その言い方だと、転売屋から買ったのは リッチじゃん・・・。」
「あっ!
マリーさん、お店が開きますよ!」
8:55分になり、店が開き始める。
9:00過ぎには、エン横は いままでの静寂とは 打って変わり、大賑わいを見せ始めた。
そんな中、自分の順番になり最前列にきたナオアキが マリーに助けを求める声が響く。
「マリー様、大変ニャン!
俺の欲しかったフィギアがあるニャン!」
「よかったじゃん。
さっさと買って、露店巡りをしようよ。」
「ダメニャン!
84万もするニャン!」
ナオアキの指さすフィギアの足元についた値札は、確かに84万ヘストとなっていた。
しかし、その横のフィギアは、32万ヘストと、8000ヘストの値が付いたフィギアが残っていた。
「ねえ、その横の人形にしたら?」
マリーは、8000ヘストのフィギアを指さす。
「なに言ってるニャン!
こっちのフィギアは、スターナイトインフィニティっていう別のヒロインニャン!」
「あっ、このヒロイン、見覚えがあります。
確か次回予告に出たけど、その次回が放送されなかったんですよね。
面白いアニメだったのに、残念だった記憶が蘇ってきました。」
「そうニャン!
神の血を引くスターナイトの中で、魔王の血が半分混ざっている異彩なスターナイトニャン。
神と魔王が交わることがないって理由で 放送倫理委員会から講義があり、アニメが打ち切りになってしまったらしいニャン。」
「・・・なんだか、このインフィニティって、マリーさんに似てますよね。」
「そうかな?」
「目元を隠すマスクをしてますから 顔は分からないですけど、綺麗な黒髪だし髪型だって一緒じゃないですか。」
「黒髪に同じ髪型って・・・。
その理論だと、ジャスちゃんも、ちょっと高めのフィギアにそっくりだよ。
っていうか、顔だちも似てるよね。剣を装備してる点も同じだし。」
「確かにそうニャンね。
ジャスさんは、スターナイトヴィーナスに 瓜二つニャン。」
ナオアキの一言に、周囲の悪魔たちが騒めきだす。
「おい、本当にSNヴィーナスに瓜二つだぜ!」
「マジかよ!ちょっと握手してもらえないかな。」
「やばい!俺、ちょっと奴隷になってくる!」
【※SN=スターナイトの略。】
「ジャスさん、SNヴィーナスの決め台詞を言ってみるニャン。
たぶん、違和感ないと思うニャン。」
「「「うぉぉぉ!ご褒美きたぜ!」」」
ナオアキの一言に、周囲の悪魔も盛り上がりを見せる。
「え、でも、そんな・・・。」
「ナオアキ、ジャスちゃん困ってるじゃん。
それに決め台詞なんて・・・。」
マリーがジャスに変わって場を収めようとしたとき、周囲はさらに盛り上がり始めた!
「「「うぉぉぉ!ご褒美きたぜ!」」」
「魔界を乱す不埒な者よ!
私は魔界の民を守るため、空より舞い降りた、
愛と正義の美少女天使、スターナイトヴィーナス!
愛の天罰、落とさせていただきます!」
「ジャ、ジャスちゃん・・・?」
「やだ!
恥ずかしいです!」
「・・・いやいや、結構ノリノリだったじゃん。」
決めポーズを決めたあと、ジャスは両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込む。
周囲の悪魔たちは、大歓声を上げている。
「と、とにかく、ナオアキ、どうするの?
早く決めちゃいなよ。」
「でも俺、SNヴィーナスのフィギアは持ってるニャン。
どうしても、SNジュピターが欲しいニャン!」
「お金が足りないじゃん。」
「分かってるニャン。
だから、マリー様、お金を貸してほしいニャン。
4万ヘストあれば、フィギアが買えるニャン!」
「いやよ!
絶対に嫌!
お金を貸せないわけじゃないけど、あなたの為にならないわ。
また次の機会に買えばいいじゃない。」
「そんなの無理ニャン!
フィギアは水物ニャン!
いま買わなければ市場に流れてこなくなる可能性が高いニャン!
俺、4万ヘスト返す為だったら寝ずに働くニャン。
だから、お金を貸してほしいニャン!」
「無理よ。絶対に貸さないわ。」
「・・・仕方ないニャン。
ジャスさん、お金を・・・。」
「ナオアキ!
いい加減にしなさい!
これは命令よ!
今日は何も買わずに城に帰って反省しなさい!」
「そんな・・・。
俺、この日を10年間も楽しみにしてたニャン。
マリー様は、何もわかってないニャン!
俺、マリー様の元で仕えたくないニャン!」
使い魔のナオアキは、マリーたちの元を離れ、人混みの中へ走り去っていった。
「マリーさん、ナオアキさんが・・・。」
「いいわよ。戻ってくるわよ。
・
・
・ごめん、私も疲れたから、ちょっと帰ることにするね。
ジャスちゃんは どうする?」
「わたしは・・・。」
「ナオアキなら大丈夫よ。」
「・・・そうですかね。
私も一緒に帰ります。」
マリーとジャスは、魔王城へと引き上げていった。
~魔王城・10:30~
魔王城に戻ると、まったりと寛いでいた使い魔たちが慌てて作業に戻り始める。
元気のないマリーに、使い魔のネロが声を掛けてきた。
「マリー様、どうしたニャン?
なんだか元気がないニャン。
それに、ナオアキは どこかニャン?」
「何でもないよ。
ナオアキなら、あとで帰ってくるわよ。」
ネロは、マリーとジャスの様子を見て、何か察した様子だ。
「ナオアキが何かやったニャンね。」
「・・・。」
「やっぱりニャン。
あいつ、魔界に向いてないニャン。
でも、それも仕方ないニャン。」
ネロのセリフに、ジャスが反応する。
マリーは、近くにあった椅子に腰かけ、2人の会話に聞き耳を立てている様子だ。
「魔界が向いてないのが仕方ないって、何かあったんですか?」
「ナオアキは、ここがずっと天国だと思ってたニャン。」
「こんなに過酷な環境なのにですか?」
「リッチモンド城にいた他の使い魔から聞いた話だけど、ナオアキは天界に送られる予定が、天使の手違いで魔界にきてしまったらしいニャン。」
「そんな酷い間違えをするなんて、同じ天使として見過ごせませんね!
でも、どういった経緯で手違いが起きてしまったんでしょうか?
普通なら、天使が判断するようなことでもないはずなんですけど・・・。」
「俺も聞いた話だけど、ナオアキは人間だったころ、川で溺れている子供を助けるために、台風で増水する川に飛び込んだらしいニャン。
でも、その子供はライフジャケットを来ていて、自力で川岸まで辿り着いて助かったらしいニャン。
だけど、助けに行ったはずの ナオアキは泳げなかったから、そのまま溺れて死んでしまったらしいニャン。」
「・・・?
なぜ死んだときのことを鮮明に客観的に覚えてるんでしょうかね?」
「たぶん自分から川に飛び込んでたから、自殺扱いになったんじゃないのかニャン?
その後、天使に声を掛けられて、素晴らしい行いだから天界に行けるって言われて魔界に来たらしいニャン!」
「・・・。」
ネロの話を聞いていたジャスの顔が青ざめている。
「ジャスさん、どうしたニャン?
顔色が悪いニャン。」
「・・・いえ、何でもないです。
で、でも、本当にそんなことが あるものなんでしょうかね。」
「事故っていうか事件ニャンね。
魔界に来たばかりの ナオアキの口癖は、天国っていってもキツイニャンってセリフだったらしいニャン。
本当に笑い話ニャン。
ナオアキは ジャスさんみたいに純粋ニャン。
もしかすると、どこかで2人は・・・。」
そこまで話をすると、ジャスが話を遮って頭を下げていた。
「ごめんなさい!
その天使は私です・・・。
マリーさん、私、ナオアキさんを探してきます!」
「・・・わたしは行かないからね。」
マリーはジャスに気づかれないよう、ネロに目配せする。
ネロは 頷きジャスに声をかける。
「俺も付いて行くニャン!
俺、人探しのプロを知ってるニャン!」
「はい!
ネロさん、宜しくお願いします!」
ネロは、部屋に戻ると何か荷物を持ってきた。
そして、ジャスとネロは、エンジェル横丁まで駆け足で移動していった。
~エン横・11:45~
再びエン横に戻ってきたジャスは、はぐれてしまった場所を探し始めた。
「ジャスさん、ナオアキは全財産持ってたニャン。
たぶん誘拐されてしまったニャン。
こんなところで地道に探すより、出会い喫茶にいた方がいいニャン!」
「出会い喫茶?
いまは、そんなところに行ってる場合じゃ・・・。」
「とにかく急ぐニャン!」
ネロは、ジャスの手を引き、出会い喫茶へと走り出した。
~出会い喫茶・12:00~
「ネロさん、いま出会ってる場合じゃないですよ!」
「俺に任せるニャン!
マスター!マスター!」
ネロは、店内に入るなり、骸骨種のマスターを呼び出し、話し始めた。
「マスター、婆さんの状況は、どんなニャン?」
「いまなら手があいてるぞ。」
「だったら見合いをお願いしたいニャン。」
「見合いの仲介料は、2万ヘストだ。」
ネロは、マスターに 2万ヘスト払って奥の部屋に案内された。
「ジャスさん、早く中に入るッス!」
「は?
いまから お見合いですよね?
どうして人探しから こうなったんですか?」
混乱するジャスの手を引き、ネロは奥の部屋に入る。
奥の部屋は6畳ほどの小部屋になっており、部屋には机と、その机の上に水晶玉が置かれた部屋だった。
そして、その机の奥の席には、竜人種の老婆が座っていた。
「婆さん、コレが私物ニャン!
早く見合いを始めるニャン!」
ネロは、持ってきた荷物から、SNヴィーナスのフィギアを取り出し、老婆に渡した。
「これこれ、そんなに焦らすでないわい。」
「そ、そうですよ。
まず、お見合いって自己紹介からだと思いますよ。
それから、えっと、えっと・・・。」
「ジャスさん、何を言ってるニャン?
魔界で見合いと言えば、人探しのことニャン。
この婆さんは、探したい人の見てる景色を同期させ合わせることで、周囲の状況を確認することが出来るニャン。」
戸惑うジャスを気にすることなく、老婆はフィギアを左手に持つと、右手を水晶に近づけて覗き込んだ。
「どうやら倉庫のようだね。
倉庫の番号は・・・13、13といえば、奴隷商人ブレアの倉庫だね。
うん、間違いない。奴隷商人ブレアの姿も映ってるね。」
「婆さん、助かったニャン。
・・・13番倉庫、奴隷商人ブレア。
やっかいな相手ニャン。
ジャスさん、とにかく先を急ぐニャン!」
ジャスとネロは、出会い喫茶をでると、13番倉庫に向かった。
~13番倉庫・12:50~
ガン!
ガン!
ガン!
13番と書かれた倉庫の入り口をネロがノックする。
すると、中から人相の悪い、腐人種の悪魔が顔を出した。
「いま取り込み中だ、帰んな!」
腐人種の悪魔は、そう言うか言わないかのタイミングで扉を閉めようとした。
「ちょっと待つニャン。
俺は奴隷を買い取りにきたニャン!」
「・・・。」
「それとも、客を追い返すのかニャン?」
「・・・少しお待ちください。
上に確認してきます。」
腐人種の悪魔は、扉を一度閉めた。
2分ほど待つと、愛想の良い別の腐人種の悪魔が顔を出した。
「ようこそ、お客様。
先ほどは、うちの従業員が不愛想な態度をとってしまい、申し訳ありません。」
「俺が使い魔だから、仕方ないニャン。」
愛想の良い腐人種の悪魔は、ジャスとネロを倉庫の中へと案内する。
「お客様、今日はどういった奴隷をお探しでしょうか?
戦闘用?ストレス発散用?
もしかして、愛玩用とかですかな?」
「さっき誘拐された使い魔を探しているニャン。
俺の仲間だから、返してほしいニャン。」
ネロの言葉を聞き、愛想の良い腐人種の悪魔の態度が豹変する。
「なに人聞きが悪いこと言ってんだ。
なんだ、てめー!
自分の仲間だから、返せって言ってんのか!?」
「そうです!
私たちの仲間だから、返してください!」
「ジャスさん!
・・・ヒソヒソ。」
(ちょっと黙っておいてほしいニャン。
悪魔には悪魔の交渉の流儀があるニャン。)
(でも・・・。)
(大丈夫ニャン。俺に任せるニャン。)
(・・・はい、わかりました。
ネロさんに任せます。)
「てめー!
なにコソコソ話し合ってんだ!」
「すまないニャン。
もちろん、タダで返せとか言ってないニャン。
誘拐される方も悪いニャン。」
ネロの言葉を聞き、腐人種の悪魔は、再びニコニコと愛想がよくなる。
「ああ、申し訳ありません。
てっきり私どもの商品を横領しようとしているのかと誤解をしておりました。
先ほど入荷した使い魔の金額は、30万ヘストでございます。
なお、入荷した時点で手ぶらだったので、本体のみのお渡しとなりますが、いかがでしょうか?」
「なに言ってるんですか!
ナオアキさんは、80万ヘスト持ってたんですよ!
それを盗ん、モゴモゴモゴ!」
ネロは ジャスの口を押えながら、交渉を再開する。
「それでいいニャン。
その金額と条件で取引ニャン!」
「・・・わかりました。
では、奥へどうぞ。」
腐人種の悪魔は、明らかに不満を貯めこんでいる態度を示しながら、倉庫の奥の方へと2人を案内した。
倉庫の奥の方には、中央に少し大きめの檻があり、その檻に繋がる通路の先にはいくつもの小さな檻があった。
檻の中には、様々な種類の悪魔や使い魔たちが収容されていた。
2人は少し大きめの檻に通され、暫く待たされた。
すると、奥の方の檻が開き、中から1匹の使い魔が追い出されるように歩いてきた。
「ジャスさん、俺、怖かったニャン。」
「ナオアキさん、大丈夫でしたか?」
「・・・。」
ナオアキは、無言で頷き、ネロとジャスの所へと駆け寄った。
ネロは、背負っていた袋から財布を取り出し、腐人種の悪魔に手渡す。
「これでいいニャンね。」
「・・・いえ、足りないようですな。」
「そんなはずないニャン。
ちゃんと30万ヘストあるはずニャン。」
「いやいや、3000万ヘスト必要ですよ。
なんたって、天使の少女は高値ですからね。」
「何を言ってるニャン。
ジャスさんは、商品じゃないニャン!」
「はぁ?
なに寝ぼけたこと言ってんだ!
うちの商品を横領しようとしてんだな!
おい、お前ら!
この使い魔の身ぐるみ剥いで、追い返しちまえ!
この天使は綺麗な顔立ちしてるから金になる。
傷つけるなよ!」
「「「グエェ、グエェ!」」」
檻の周りにいた、腐人種の悪魔たちが、3人の元に近寄ってくる。
「ジャスさん、怖いニャン。
マリー様の元に戻りたいニャン。」
「ネ、ネロさん、どうしましょう?」
「・・・どうしようもないニャン、マリー様・・・助けて下さい。」
「グエェ、グエェ!使い魔ども覚悟しろよー。」
「わがまま言って、ごめんなさいニャン。
マリー様、助けてニャーン!」
「ちょっと待ちなさーい!」
3人が恐怖のあまり目を閉じたとき、倉庫の屋根付近にある窓の方から、澄んだ声が響いてきた。
ズガガガーン!
「な、何だ今の衝撃は!?」
「あいつだ!あいつがやったんだ!」
「き、貴様、何者だ!」
「仲間を助けたいと思う気持ちを利用し、
天使の少女や 使い魔を騙し罠にはめ、自分たちのものにしようとする悪の権化。
少女たちの命を守るため、天空より舞い降りた守護天使!
愛と真実の美少女天使、スターナイト インフィニティ!
あなたの悪の魂、ここで断ち切らせていただきます。
さあ、あなたの罪を数えなさい!!」
「お、おのれーーーー!」
スターナイトインフィニティと名乗った、神々の翼をもった 黒髪ツインテールに目元を隠すマスクを装備したヒロインは、窓から飛び降りてきて腐人種の悪魔たちと戦闘に突入する。
「あ、あれは・・・。
スターナイトインフィニティ・・・ニャン。」
「まさか本物なんですか?」
「か、かなり強いニャン。
もしかすると、マリー様より強いかもしれないニャン。」
SNインフィニティと名乗った、神々の翼を持った天使は、次々と腐人種の悪魔たちを戦闘不能にしていく。
次々と倒されていく悪魔を見て、3人を案内した腐人種の悪魔が両手をあげ、SNインフィニティに交渉を申し出た。
「ま、待ってくれ、俺の負けだ。
お、俺は奴隷商人ブレア、この界隈では名の通った悪魔だ。
なあ、お前さん、こいつら3人を助けに来たんだろ。
こいつらは返すから、俺だけは見逃してくれよ!」
「あなたの魂の価値って、そんなもの?」
「い、いや、こいつから奪った80万ヘストも返すし、さっき受け取った30万ヘストにも色をつけて返すから。
な、頼むよ。悪い話じゃないだろ。」
「・・・。」
「わ、わかった。
ここに捕らえてる奴隷たちも、お前にやるからさ、な、おい、頼むよ。」
「・・・断るわ。
あなたを殺せば、全て解決するもの。
私は最初に言ったわよね。
あなたの悪の魂、ここで断ち切らせてもらうって。
いままで犯した悪行の数々、決して許されるものではないわ。
命乞いをするのなら、神の前で行いなさい。
・
・
・さあ、あなたの罪を数えなさい!!」」
「ひ、ヒィィィ!」
ズサァァァ!
SNインフィニティは、奴隷商人ブレアに止めを刺し、捕まっていた奴隷たちを開放し倉庫の外に出た。
いま飛び立とうとする彼女に、ナオアキが声を掛けた。
「待ってほしいニャン。
助けてくれて ありがとうニャン。
あなたは、本物のSNインフィニティなのかニャン。」
ナオアキの問いかけに、彼女は小さく頷き、神々の翼を広げ大空へと飛び立っていってしまった。
「ナオアキさん!
絶対に本物ですよ!
きっと悪を成敗するために、別の次元から やってきたんですよ!」
「そうだニャン!
絶対そうに決まってるニャン!
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ありえるニャン!」
「・・・。
そんな都合よく馬鹿なことは起きないニャン。
2人とも、アニメに影響されすぎニャン。」
「ネロさん、どうして違うって言いきれるんですか!?
・
・
・はっ!
まさか、SNインフィニティの正体を知ってるんですか!!?」
「それは、本当なのかニャン!?
俺にだけ こっそり教えてほしいニャン!」
「俺も知らないニャン。
そんなことより、マリー様が心配してるから、早く城に戻るニャン!」
ネロは、そういうと逃げるように魔王城への帰路についた。
そんな ネロの後を追うように、付いて行く2人、その様子を見て、行く当てのない元奴隷たちもネロの後を追い、魔王城へと向かった。
~魔王城・15:30~
魔王城にたどり着くと、3人はマリーに事の顛末を説明した。
「ふーん。
なるほど、で、この元奴隷たちも配下に加えたいってこと?」
「そうです。
魔王城なら差別されることなく生きていけるから、この悪魔たちも幸せになれるはずです。
マリーさん、宜しくお願いします。」
「・・・それは別にいいわよ。
でも先に私に言うことがあるんじゃない?
ねえ、ナオアキ。」
ナオアキは、怒られると思ったのか、下を向きながらマリーと目を合わせずに話し始めた。
「マリー様、俺が悪かったニャン。」
マリーは、下を向くナオアキに近づき、声を掛ける。
「誰に謝ってるの。
私は目の前にいるのよ。
前を向きなさい。」
ナオアキは、注意されるまま、マリーの方を向き、再び謝罪をする。
「あ、あの、マリー様、俺が悪かったニャン。
も、もうフィギアを集めたいとか言わないから許してほしいニャン。」
「・・・わかったわ。許してあげる。
でも、好きなことをしないなんて言わないでよ。」
「マリー様・・・?」
「ほら。」
マリーは、背後に隠し持っていたフィギアを、ナオアキに手渡す。
「私のせいで買えなかったからね。」
「このフィギアは、SNインフィニティニャン!」
「ごめん。
もうソレしか残ってなかった。
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ナオアキは、首を横に振る。
「俺が一番好きなキャラニャン!
ほんとに天国に来れてよかったニャン!」
顔を上げたナオアキの一言に、ジャスが気まずそうに下を向く。
「次は またジャスちゃんか・・・。」
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