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銀河系地球人
024・無知ほど怖いものはない
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幼い人間の少女を寝かしつけるように、40前後の女性もベッドで横になっている。
幼い少女は、5歳前後だろう。寄り添うように横になる女性は、おそらく母親だろう。
部屋の中は暗く、ベッドに据え付けてあるライトが いまにも消えそうなほど弱弱しく明かりを放ち周囲を照らしている。
「ねえ、お母さん。」
「なぁに?」
「あのね、神様の言う通りに頑張れば、もう旅を続けなくてもいいの?」
「もちろんよ。
人類最後の戦いに勝利すれば、約束の地に永住することができる。
そうしたら 一緒に庭いっぱいに花を植えましょうね。」
「うん。
エリーゼは、マリーゴールドの花を植えようと思うんだ。
お母さんと一緒に植えたいな。」
「あら、いいわね。
じゃあ、お母さんは何を植えようかな。
エリーゼの好きなイチゴを植えようかな。」
「イチゴにも花が咲くの?」
「もちろんよ。
地面で育った植物には花が咲くのよ。
機械が管理しなくても、ちゃんと育ててあげれば、自分たちで増えていっちゃうんだよ。」
「すごーい!
じゃあ、訓練ドーム100個分くらいの花畑で、いっぱいイチゴを食べようね。」
ビー、ビー、ビー、ビー!
「エリーゼ ごめんね。
お母さん もう行かなくっちゃいけないの。
もうすぐ 目的の星につくみたい。」
「お母さん、もう少しだけ一緒にいたい。」
「エリーゼ、わがままを言わないで・・・。
お母さんは、いまから 艦長のミネルヴァとしての役目を果たさなくっちゃいけないの。」
「・・・うん。
ミネルヴァ艦長、ミネルヴァお母さんに伝えてください。
無事にエリーゼの所に帰ってきてねって、エリーゼは わがままを言わないでコロニーで待ってますって。」
「分かったわ。
何があってもエリーゼの所に帰ってくるからね。」
母ミネルヴァは ベッドに据え付けてあるライトを消して、部屋をあとにした。
~魔王城・マリーの寝室前~
マリーの寝室前に、ハンたち使い魔が集まっている。
「ハン、早くマリー様に伝えるニャン!」
「で、でも・・・。
いま起こしたら危険ッス。」
「緊急事態だニャン。」
「う、うう・・・。」
ハンが困っていると、食堂に向かう途中のノーサが声をかけてきた。
「みんなでマリーの部屋の前で何してるの?」
「あ、ノーサさん、困ったことがあってマリー様が起きるのを待ってるッス。」
「なんて時間の無駄なの。
ノーサが起こしてあげるわ。」
ドンドンドンッ!
「マリー!
早く起きてきてよ!」
「「「あわわわ、そんな起こし方はヤバイニャン!」」」
「早く逃げるッス!」
蜘蛛の子を散らすように、部屋の前に集まっていた使い魔たちは各自の持ち場へと散らばっていく。
ドアが半分開き、寝癖のついたままのジャスが顔をだした。
ジャスは、眠そうな目をこすりながら、ノーサに朝の挨拶をする。
「ノーサさん、おはようございます。」
「・・・なんでジャスがマリーの寝室にいるの!?
ちょ、ちょっと理由を説明してほしいの!」
「・・・?
理由って、一緒に寝てたからですかね?」
「はぁ!
もう、そんな関係なの!?
・・・マリーが羨ましいの!」
「えっ、な、何を言ってるんですか!?
私たちはゴームのモフモフで寝てただけですよ!」
「・・・怪しい。
今度からノーサも一緒に寝ることにするの。」
そんな やり取りをしている、ノーサとジャスに、部屋の中から普段着に着替え終わったマリーが声をかける。
「ノーサも一緒に寝るの?
もうさ、ゴームを連れて行っていいから、他の部屋で寝てよ。」
「やった!
じゃあ、ジャスは今夜、ノーサと一緒に寝るの!」
「マリーさん、本当にそれでいいんですか!?」
「うん。
ジャスちゃん、聞いてたより寝相が悪いんだよね。」
即答するマリーの耳元で、ジャスがボソボソとつぶやく。
「・・・やっぱり、ゴームは貸せないや。」
「はぁ!
マリーばっかり ジャスを独り占めしてズルい!
職権乱用して、ノーサを虐めてるの?」
「そんな言い方しないでよ!
とにかく、ゴームは貸せないわ!」
「マリーのケチ!威張りんぼ!悪魔!」
「言ったわね!」
喧嘩を始めた2人を ジャスが制止する。
「ほらほら、2人とも!
さっきからハンさんたちが何か言いたそうに ずっと待ってますよ。」
マリーとノーサは、ハンの方を見る。
「ジャスさん、助かったッス。
だいぶ話がそれてて困ってたッス。
ところで マリー様、緊急事態が発生したッス。」
「今度は何?
またベルゼブイが攻めてきたの?」
「違うッス。
今度は空から鉄の塊が攻めてきたッス。
いま、迷いの森 上空に待機してるみたいッス。」
「あれは宇宙戦艦ニャン。」
「また迷いの森?
しかも、宇宙戦艦って何よ。」
マリーとノーサは、不思議そうな顔をしている。
そんな2人に、嬉しそうにジャスが説明する。
「宇宙戦艦っていうのは、銀河英雄物語の主人公たちが乗ってる船です。
銀河英雄物語の主人公たちは、宇宙戦艦に乗って、宇宙を旅して 様々な星に巣くう悪を退治してまわるんです。」
ジャスの説明に、ナオアキが便乗する。
「ちなみに、銀河英雄物語のヒロイン、チヒロは超能力の使い手で念動力を得意としているニャン。
チヒロは、まだ5歳の少女なんだニャン。」
「そうなんですよ、まだ5歳なのに、大人のパイロットに負けないくらい戦闘機の操縦も上手なんですよね!」
「そうだニャン。レッドたちのピンチにヴァルキリーを操縦して助けにくるニャン。」
ジャスとナオアキは、アニメの話で盛り上がり始めた。
「・・・。
ハン、話をまとめると、宇宙戦艦ってのは悪を退治してるってことで間違いないのかな?」
「そうみたいッスね。
たぶん、俺らが悪者みたいッス。」
「まあ、悪魔って言ってるくらいだから仕方ないの。
ノーサは 巻き添えを食う前に、ちょっとマダム・オカミのところに帰ることにす・・・。
ちょっとマリー!腕を掴まないでよ!」
「ノーサ、せっかくだから最後まで魔王城にいなよ。
宇宙戦艦を倒し、魔界を救った英雄を名乗ってみたくない?」
「魔界を救った英雄・・・。」
「そう、魔英雄ノーサ。」
「魔英雄ノーサ。
・・・悪くない響きなの。」
「よし!
メンバーも決まったことだし、さっそく宇宙戦艦を倒す方法を考えてみましょう!」
「しかたないの。
今回はマリーに力を貸すの!」
マリーたちは、とりあえず食堂に移動する。
ジャスとナオアキのアニメ雑談は、まだまだ続きそうだった。
~魔王城・食堂~
朝食を終え、話し合いを始めたところに、宇宙戦艦の監視をしていたハンが駆け寄ってくる。
「マリー様、大変ッス。
宇宙戦艦が南に移動を開始してしまったッス。そして、そのまま魔王ドランサーの領空に入ったッス。
しかも、魔王ドランサーからの使者を撃ち落としたみたいッス。」
【魔王ドランサー。
竜王種の魔王で、電車3両分の大きさがある蛇のような体をし6本の足を持っている。背中にも3対の大きな翼を持ち空を飛び戦うことを得意としたドラゴンである。
性格は がめつく卑しい。そのため、領地・領空への出入りに重い税金をかけている。
公共?の移動手段であるマリーたちの飛竜でさえ迂回して飛ぶ必要があるほど領地・領空に厳しい魔王である。】
「使者を撃墜って、かなりヤバイんじゃない?」
「戦争になるかもしれないッス。」
「ノーサの出番がなさそうなの。
マリー、とりあえず外に出て確認してみるの。」
マリーたちは、魔王城の外に出て宇宙戦艦の様子を確認してみることにした。
外に出てみると、すでに魔王ドランサー配下の空飛ぶ悪魔たちが、宇宙戦艦を襲っている。
宇宙戦艦も戦闘機を出し、悪魔たちと交戦しているのだが、的が小さく素早く動き回る為、かなり苦戦をしているようだ。
ドーン!
ドドーン!
「宇宙戦艦が墜ちるニャン!」
「こっちに墜ちてくるニャン!」
「マリー様、ヤバイッス!」
「魔王城を守る規模の魔法か・・・。
久しぶりに 詠唱が必要だね。」
マリーは とっさに槍を召喚し地面に突き立て防御魔法を展開する。
「お願い力を貸して、皆の笑顔を守りたい・・・。
輝ける尊き生命の光を守護するため、いまここに力を解放する。
さあ、私と共に守り抜こう!
守護天使の大盾力場!」
マリーが詠唱を終え、魔法を展開すると、魔王城の周囲を淡い緑の光が包み込んでいく。
その光は、魔王城だけに留まらず、迷いの森の一部や世界樹まで含む広範囲を覆っていく。
墜ちてきた宇宙戦艦は、淡い緑の光に包まれるようにして、死人の荒野にゆっくりと墜落した。
「マリー様、死人の荒野に墜ちたみたいッス。
あそこは俺らの領土ッス。
どうするッスか?」
ハンの質問にジャスが不思議そうに声をかける。
「どうするってどういう意味ですか?」
「俺らの領土ッスから、あの宇宙戦艦の所有権は俺らに移ったッス。
だけど、魔王ドランサーが襲って墜ちてきた宇宙戦艦ッスから、所有権の半分はドランサーの物ッス。
だから 俺らが宇宙戦艦や乗組員を全員保護しようとするなら、魔王ドランサーから奪い取るか交渉するしかないッス。
それに、マリー様が撃ち落とさなかったところをみると、保護するつもりだったと思ったッス。」
「なるほど。見事な考察ですね。
マリーさん、もちろん保護するんですよね。」
ジャスは、槍を回収するマリーに詰め寄ってくる。
しかし、全員保護することに ノーサは反対しているようだ。
「魔王ドランサーは、がめついの。
交渉すれば足元を見られてしまって大損になるわ。
ノーサは潔く折半する方がいいと思うの。」
「うん、普通に考えれば ノーサの言う通りなんだよね。
とりあえず、宇宙戦艦の場所まで行って、魔王ドランサーと話をしてみよっか。」
~死人の荒野~
マリーは、ベッチやハンといった数名の配下を引き連れ 複数の飛竜に分かれて乗って墜落現場に駆けつける。
墜落現場では、すでに魔王ドランサーや その配下が宇宙戦艦の乗組員を外に整列させ縛っていた。
宇宙戦艦の乗組員は、人間と変わらない姿をしているマリーや、天使の姿をするジャスを見つけると、命乞いを始めた。
マリーたちは捕虜から離れ、魔王ドランサーに近寄り声をかける。
「魔王ドランサー、お久しぶりです。
今回の戦闘おつかれさまでした。」
「うむ。
魔王マリーか。お主とは交渉をせんぞ。
今回の戦利品は、全ていただいて帰る。」
「魔界の盟約をお忘れですか。
もし、覚えていて破るようなことがあれば、多くの血が流れる争いが起きます。」
マリーの言葉に、魔王ドランサー配下の竜王種が魔王ドランサーに耳打ちする。
魔王ドランサーは、 配下の忠告を聞いたのだろうか、マリーの方を向きなおし、再び話し始めた。
「魔王マリーよ。魔界の盟約、忘れていたわけではない。
此度は 吾輩の配下が戦闘で負傷し、治療を受けさせるのにも費用が掛かる。
しかし、お主の配下はどうだ、傷ついている者もいなければ、墜ちた場所も荒野の為、実質的な被害は少ないはず。
そこで お主には理解を得てもらいたいと考えての言動だった。
もし、盟約を破ったと勘違いをさせていたのであれば、それは 詫びよう。」
魔王ドランサーは、詫びはしたが、戦利品は全て自分の物という意見を通そうとしたのだ。
マリーも魔王としての面子があるので、はいそうですか、と引くわけにはいかない。もし引いてしまえば、配下の悪魔たちにも示しがつかないし、他の魔王から下に見られてしまい、多くの争いに巻き込まれてしまうからだ。
マリーは、魔王ドランサーから視線をそらさずに、言い返す言葉を考えていた。
そんなマリーに、ジャスが話しかける。
「マリーさん、それでいいんじゃないですか。」
「・・・!?」
ジャスの一言に、マリーがつい目をそらす。
魔王ドランサーは勝ち誇ったような表情を見せたのだが・・・。
「魔王ドランサーさんには戦利品をあげればいいじゃないですか。
私たちの目的は、人間の保護でしたから問題ないですよね。」
「そ、それもそうね。
今回は、戦闘で負傷した配下に免じて、魔王ドランサーからの条件をのんであげるとしましょう。
私たちは あそこにいる捕虜をもらい受けるわ。
魔王ドランサー、悪魔に 二言はないわよ。」
「・・・な、何を言っておるのだ!
この人間共も戦利品だ!」
「何を言ってるの。
魔界の盟約を破って独り占めするってこと?
魔界の盟約を守れないのであれば、私たちは盟約を守るために徹底的に戦うわよ!」
「うぬぬぬぬ!
魔王マリー、此度は魔界の盟約に従い、吾輩は身を引くことにしよう。
・
・
・
お前たち!
戦利品を回収してこい!
吾輩は先に城に戻るぞ!
魔王マリーと天使の小娘、よく覚えておけよ。」
魔王ドランサーの捨て台詞に、ジャスが反応する。
「私は天使の小娘じゃありません。
・
・
・
私は魔界の秩序を守るため、天空より舞い降りた、
愛と正義の美少女魔界天使、ジャスです!」
「おのれ 言わせておけば・・・。
美少女魔界天使 ジャス!
お主の名は覚えたからな!」
魔王ドランサーは腹を立て、配下の使い魔に当たり散らしたあと 城へと引き返していった。ドランサー配下の悪魔や使い魔たちは、運ぶように命令された宇宙戦艦を目の当たりにして固まっていた。
マリーたちは、ベッチたち戦士に見張りを任せ、捕虜を連れ魔王城へと歩いて引き上げていく。
魔王城への帰り道で、ノーサがジャスに声をかける。
「ジャス、カッコよかった!
どうして あんな啖呵を切れたの?」
「どうしてって、ほら、それは・・・。
と、とにかく、覚えてもらえたら嬉しいですからね。」
「ねぇマリー、これで ジャスも魔王カードに名前が載るかも知れないの。」
「マリーさん、そんな簡単に載るものなんですか?
もっと活躍しないとダメだと思ってました。」
「・・・無知て素敵よね。」
「・・・?」
マリーがジャスに説明を始める。
「だって、ジャスちゃんが喧嘩を売った相手は、竜王種の大魔王候補だよ。
魔界でも5本指に入るほどの強力な魔王だからね。」
「えっ・・・?」
「しかも、ドランサーは、カンカンに怒ってたの。
ノーサは怖くって目を合わせることも出来なかったの。
あんな恐怖、マダム・オカミだけで十分なの。」
「あわわわわわわわ!
マリーさん、ど、ど、ど、どうしましょーーー!」
「ノーサみたいにバカバカしく考えるしかないよね。
なるようになるの!って。」
「マリー、ノーサをバカにしてるでしょ!」
「バカにしてるんじゃなくて、バカだって言ってるのよ。」
「もう怒ったの!」
マリーとノーサは、朝に引き続き喧嘩を始めた。
そんな様子をみていた捕虜の一人がマリーに声をかけてきた。
声をかけてきたのは、宇宙戦艦艦長のミネルヴァという女性だった。
「ねえ、マリーちゃんだっけ?
私たち、これからどうなるの?」
「あなたたちは捕虜として捕らえられたのよ。
これから色々と質問があるから答えてくれればいいわ。」
「マリー、捕虜と仲良くしない方がいいの。
ちゃんと質問に答えてもらってからじゃないと、あとあと面倒になるの。」
ノーサの一言に、艦長のミネルヴァは、小さく頷き黙ってしまう。
ジャスは、そんなミネルヴァに声をかけた。
「あの、ミネルヴァさん。
他に質問があったんじゃないですか?」
「あ、それは・・・。」
ミネルヴァは、ノーサの方を見ると口を閉ざした。
ノーサは竜人種の特徴である角をもっていた為、ミネルヴァはノーサを警戒しているようだ。
ノーサの角は 可愛らしく小さく巻いた角で恐ろし気なものでもないのだが、人間の目から見れば恐ろしく感じてしまうのだろう。
怯えるミネルヴァに ノーサが声をかける。
「ノーサの事、怖がらなくていいの。
嘘をついたり誤魔化したりしなければ危害を加えることはないの。」
「そうだよ、艦長のミネルヴァだっけ?
さっきの魔王みたいに 危ない悪魔ばっかりじゃないからね。
でも、ミネルヴァも軽率だったよ。魔王ドランサーの使者を有無を言わずに攻撃しちゃうんだから。」
「それは・・・。
すみません。悪魔だったから 使者だと思いませんでした。
それに悪魔は邪悪な存在であり、人類の敵と言われていて 占領するようにと指令があったので・・・。」
「要するに、地球人種は 魔界に先制攻撃をしてきたということ?」
悪魔だから使者だと思わなかったという言葉や 指令に従い魔界を征服しようとしていた思考や行動に、マリーもノーサも嫌な顔をする。
2人は 悪魔の特徴として よく見られる、感情を露骨に表すという癖があるようだ。
そんな2人を諭すように、ジャスが話し始める。
「マリーさん、ノーサさん。
表情に出てますよ。
・
・
・
でも、たしかにミネルヴァさんも差別はよくないですよ。
それに、指令だからって自分の意思を持たずに行動するのも 考え物だと思います。
どうして人間や天使は 差別をするんですかね。
悪魔たちのように寛大になれればいいのに・・・。」
ジャスの言葉にミネルヴァが反応する。
「・・・あの、ジャスさんは天使なんじゃないですか。
「元見習い天使ですよ。
今は 魔界天使として頑張ってます。」
「魔界天使・・・?」
不思議そうな表情を見せたミネルヴァにノーサが質問をする。
「どうしてミネルヴァは、ジャスを天使と認識してたの?
前に合ったことがあるの?
何か天使としての伝承とかあるの?」
「あ、はい、それは・・・。」
ズドーーーン!
ミネルヴァが答えようとしたとき、遠くの方から爆発音が鳴り響いてきた。
爆発音の方を振り返ると、空には数隻の宇宙戦艦と無数の戦闘機が、魔王ドランサーの軍勢と戦闘を繰り広げていた。
その戦闘で墜とされる宇宙戦艦も少なくはないのだが、徐々に現れる宇宙戦艦の数は 墜とされる艦を上回っている。
次第に空は数を増やしていく宇宙戦艦や戦闘機で埋め尽くされ始めた。
しかし、先ほどの戦闘とは違い、魔王ドランサー自身も出撃したようで、憂さを晴らすように激しく暴れまわり始めた。
どうやら今回は 自身の領地内で仕留めてしまうようだ。
魔王ドランサーの出撃により、宇宙戦艦の墜とされる数が圧倒的に増え始める。
「救助に助けに来てくれた?
・
・
・
なぜ母艦までいるの!?
そ、そんな・・・エリーゼ!」
ミネルヴァは、ひときわ大きな宇宙戦艦を見つけると、激しく取り乱し始めた。
他の捕虜たちも、絶望の表情を見せている。
どうやら母艦の中にはコロニーがあり、そこに愛娘のエリーゼが入居しているようだ。
本来であれば後方支援に回るはずの司令艦や航星母艦なのだが、その後方支援に回るはずの航星母艦が戦闘に参加していることから、地球人たちの総攻撃が始まったと考えられる。
【司令艦、航星母艦。
司令艦は、総司令官や 艦隊幹部の搭乗する戦艦で、後方からの作戦指示や 発射まで時間を要するのだが 火力の高い砲を搭載し 遠距離攻撃を行うことができる。
航星母艦は、宇宙戦艦に物資や弾薬を補給するタイプの戦艦。宇宙戦艦と同じ装備をしている為、前線での戦闘も可能であるが、居住区や農産区などを完備している為、戦闘機を搭載する格納庫が一切ない。そのため 単独行動は危険である。】
ミネルヴァは、マリーを魔王ドランサーの配下だと勘違いしているのだろう、そのため マリーに魔王ドランサーを止めるように懇願してきた。
「お願いします!
さっきのドラゴンに攻撃を止めるように頼んでもらえないですか。
あの母艦には、非戦闘要員が・・・。
私の娘が載っているんです。
お願いします!私は何でもします!
お願いします!!
お願い!!!
お願・・・。」
ミネルヴァはマリーの前で 泣き崩れてしまった。
他の捕虜たちも涙を流している。
マリーは、考えていた。
攻めてきたはずの人間だったのだが、奪う側に回れば奪われることもあるという覚悟もなく、奪われ始めれば 弱い人間を助けてくれという考え方に共感ができなかったのだ。
マリーの考えが分かったのだろう、ジャスも困惑しながらもマリーに声をかける。
「マリーさんの気持ちは分かります。
もし宇宙戦艦が魔王ドランサーに墜とされなければ、魔王城に被害があったかもしれません。
まだ魔王城ならマリーさんが守ることもできたから いいかもしれませんが、周囲の民家を襲われれば全てを助けることも出来なかったでしょう。
悪魔を攻撃し領土を奪うっていうことは、そういうことですから。
・
・
・
でも。
・
・
・
それでも、私は ミネルヴァさんたちを・・・地球人種を守ってあげたいと思います。
だって・・・。」
「うん。子供たちに罪はないもんね。
・
・
・
ちょっと、いまの状況は 不味いかもね。
ノーサ、敵は強大だから、このまま ジャスちゃんと捕虜を連れて魔王城に引き返してよ。
魔王城に帰ったら、ドン・キホーテに戦闘準備をして来るように伝えて。
ハン、ベッチたちに戦闘準備をさせるのにかかる時間は?」
「すぐに戦闘に入れるッス。」
「マリーさんは どうするんですか?」
「仕方ない・・・よね。
私は魔王ドランサーと戦闘に入る。
・
・
・
ハン、戦闘開始よ!
私たちは 魔王ドランサーに宣戦布告を行うわ!
周辺諸国の魔王たちにも、この宣戦布告を宣言しなさい!」
「戦いの名目はどうするッスか?」
「地球人種からの依頼により、地球人種を保護する戦いでいいわ。」
「了解ッス!」
マリーは魔王ドランサーと戦闘に入るために、飛竜に乗り空へ舞い上がり魔王ドランサーの元へと移動していった。
心配そうに見守るジャスに、ノーサが声をかける。
「ジャス、魔王城のドン・キホーテは、かなり強い部類の人間なの。
いそいで戻って、マリーの援護を頼めば、マリーも安心して戦えると思うの。」
「はい。
ノーサさん、駆け足で魔王城に戻りましょう。
地球人種の皆さん、あなた方の母艦は マリーさんが必ず助けてくれます。
だから、その為に魔王城まで急いで移動しないといけません。
キツイかもしれませんが、頑張って付いてきてください。」
「天使様、ありがとうございます。
我々は軍人です。体力には自信があります。」
「よかった。
魔王城まで5Km程です、約15分の駆け足なので頑張りましょう!」
「・・・命がけでついていきます。」
ノーサやジャスの身体能力は、天魔界では 平均以下だが、人間と比べると かなり高いようだ。
使い魔たちは、比較的余裕がありそうだったのだが、人間は必死に置いて行かれないように全力疾走を続けている。
思ったより足が遅い捕虜にノーサが痺れを切らしてしまったようで、ジャスに声をかける。
「ノーサは 地球人種の人間に合わせて魔王城に向かうわ。
ジャスは 先に行って、早くマリーの元に援軍を連れて行ってほしいの。
魔王ドランサーは強敵だから・・・。」
顔を合わせれば喧嘩を始める2人だが、お互いに気遣うことができる関係に、ジャスは笑みがこぼれる。
「はい!
ノーサさん、私に任せてください!」
ジャスは、ノーサたちと別れると全力疾走で魔王城へと駆けて行った。
一方その頃、魔王ドランサーの領地である、死霊の湖 上空では 地球人の艦隊と魔王ドランサー率いる悪魔の軍勢が戦闘を行っていた。
しかし、魔王ドランサーの強力な攻撃の前に宇宙戦艦は次々と撃墜されていく。
そんな中、マリーは 槍を召喚し手に持ったまま、艦隊攻撃を行う魔王ドランサーに近づき、魔王ドランサーに宣戦布告を行う。
「魔王ドランサー!
この地球人種は、魔王マリーに保護を求めてきたわ!
私は 保護を容認し、地球人種を配下に加えることに決めた!」
「だから何だというんだ!」
「このまま、地球人種に攻撃を加えるのであれば、私の配下への攻撃とみなし、魔王ドランサーを打ち滅ぼすわ!」
「翼を持たない お主に何ができる!
エイルシッドの威光だけで魔王を名乗る小賢しき者よ、飛竜もろとも水面に叩き付けてやる!」
マリーの挑発ともとれる 宣戦布告に 魔王ドランサーは激怒し、マリーに襲い掛かる。
マリーは飛竜を操り、魔王ドランサーの攻撃を回避し、そのまま手に持った槍で魔王ドランサーの翼を攻撃しようと狙うのだが、魔王ドランサーの動きが早く、気流が乱れてしまい上手く攻撃を当てることができない。
「ふはははっ、
自らの意思で空を飛ぶことができない お主に勝ち目はないわ!」
「くっ!」
マリーは飛竜を操りながら魔王ドランサーの攻撃を回避し、何度も何度も反撃を試みるが なかなか攻撃が当たらない。
徐々にマリーの操る飛竜も疲労が見え始めてきた。
マリーが苦戦をしていると、魔王城の方向から声が聞こえてくる。
「マリー様!
助太刀いたしますゾイ!」
声の主は、ドン・キホーテだ!
「やあやあやあ!
我こそは、竜殺しの勇。
暗黒騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ!
いざ、尋常に勝負いたせ!」
ドン・キホーテはナオアキと共に飛竜に乗り魔王ドランサーに戦いを挑む。
ナオアキが飛竜を操り、ドン・キホーテが攻撃と防御を行うスタイルで、阿吽の呼吸で魔王ドランサーを攻め立てる。
ドン・キホーテの参戦に分が悪いと見たのか、宇宙戦艦を攻めていた魔王ドランサーの配下たちも魔王ドランサーの援護に加わり、双方の戦闘は 激しさを増していった。
そんな戦闘の最中、ドン・キホーテが敵の悪魔に攻撃を加えた瞬間の隙をつき、ドランサーの強力な攻撃がドン・キホーテたちを襲う。
ドン・キホーテたちは回避が間に合わず、槍で魔王ドランサーの攻撃を防いだ。
しかし、強力な攻撃を受けたため、体勢を崩してしまった。
魔王ドランサーは、そのまま連続して2回目の攻撃を行ったのだが、その攻撃はドン・キホーテに当たることはなかった。
なぜなら、マリーが身を挺して防御魔法を展開しドン・キホーテを攻撃から救ったからだ。
しかし、攻撃を防いだはずのマリーは 魔王ドランサーの攻撃でバランスを崩してしまい飛竜と共に水面めがけて一直線に落下していく。
「マリー様ぁー!」
ザッパーン!
飛竜は間一髪で 水面に叩き付けられることなく空中に留まることができたのだが、マリーは そのまま水面に叩き付けられてしまう。
悪魔といえど、高高度から水面に落下すれば即死もありえる。マリーの落下を死霊の湖の水辺で見守っていた魔王城の配下たちが一気に暗い表情になる。
マリーの落下を確認した、魔王ドランサーは 勝利を確信し、高らかに笑いはじめる。
「魔王マリー、逆らうから死を迎えることになるのだ。使い魔として転生することが出来れば、配下として迎えてやるから安心しろ。
ふははははっ!」
飛竜に乗り駆けつけたジャスは、マリーの落下を少し離れたところで見ていた。
しかし、絶望的な表情で飛竜を操る使い魔とは違い、ジャスは 何かを信じている。
その表情は、希望に満ち溢れていた。
→025へ
幼い少女は、5歳前後だろう。寄り添うように横になる女性は、おそらく母親だろう。
部屋の中は暗く、ベッドに据え付けてあるライトが いまにも消えそうなほど弱弱しく明かりを放ち周囲を照らしている。
「ねえ、お母さん。」
「なぁに?」
「あのね、神様の言う通りに頑張れば、もう旅を続けなくてもいいの?」
「もちろんよ。
人類最後の戦いに勝利すれば、約束の地に永住することができる。
そうしたら 一緒に庭いっぱいに花を植えましょうね。」
「うん。
エリーゼは、マリーゴールドの花を植えようと思うんだ。
お母さんと一緒に植えたいな。」
「あら、いいわね。
じゃあ、お母さんは何を植えようかな。
エリーゼの好きなイチゴを植えようかな。」
「イチゴにも花が咲くの?」
「もちろんよ。
地面で育った植物には花が咲くのよ。
機械が管理しなくても、ちゃんと育ててあげれば、自分たちで増えていっちゃうんだよ。」
「すごーい!
じゃあ、訓練ドーム100個分くらいの花畑で、いっぱいイチゴを食べようね。」
ビー、ビー、ビー、ビー!
「エリーゼ ごめんね。
お母さん もう行かなくっちゃいけないの。
もうすぐ 目的の星につくみたい。」
「お母さん、もう少しだけ一緒にいたい。」
「エリーゼ、わがままを言わないで・・・。
お母さんは、いまから 艦長のミネルヴァとしての役目を果たさなくっちゃいけないの。」
「・・・うん。
ミネルヴァ艦長、ミネルヴァお母さんに伝えてください。
無事にエリーゼの所に帰ってきてねって、エリーゼは わがままを言わないでコロニーで待ってますって。」
「分かったわ。
何があってもエリーゼの所に帰ってくるからね。」
母ミネルヴァは ベッドに据え付けてあるライトを消して、部屋をあとにした。
~魔王城・マリーの寝室前~
マリーの寝室前に、ハンたち使い魔が集まっている。
「ハン、早くマリー様に伝えるニャン!」
「で、でも・・・。
いま起こしたら危険ッス。」
「緊急事態だニャン。」
「う、うう・・・。」
ハンが困っていると、食堂に向かう途中のノーサが声をかけてきた。
「みんなでマリーの部屋の前で何してるの?」
「あ、ノーサさん、困ったことがあってマリー様が起きるのを待ってるッス。」
「なんて時間の無駄なの。
ノーサが起こしてあげるわ。」
ドンドンドンッ!
「マリー!
早く起きてきてよ!」
「「「あわわわ、そんな起こし方はヤバイニャン!」」」
「早く逃げるッス!」
蜘蛛の子を散らすように、部屋の前に集まっていた使い魔たちは各自の持ち場へと散らばっていく。
ドアが半分開き、寝癖のついたままのジャスが顔をだした。
ジャスは、眠そうな目をこすりながら、ノーサに朝の挨拶をする。
「ノーサさん、おはようございます。」
「・・・なんでジャスがマリーの寝室にいるの!?
ちょ、ちょっと理由を説明してほしいの!」
「・・・?
理由って、一緒に寝てたからですかね?」
「はぁ!
もう、そんな関係なの!?
・・・マリーが羨ましいの!」
「えっ、な、何を言ってるんですか!?
私たちはゴームのモフモフで寝てただけですよ!」
「・・・怪しい。
今度からノーサも一緒に寝ることにするの。」
そんな やり取りをしている、ノーサとジャスに、部屋の中から普段着に着替え終わったマリーが声をかける。
「ノーサも一緒に寝るの?
もうさ、ゴームを連れて行っていいから、他の部屋で寝てよ。」
「やった!
じゃあ、ジャスは今夜、ノーサと一緒に寝るの!」
「マリーさん、本当にそれでいいんですか!?」
「うん。
ジャスちゃん、聞いてたより寝相が悪いんだよね。」
即答するマリーの耳元で、ジャスがボソボソとつぶやく。
「・・・やっぱり、ゴームは貸せないや。」
「はぁ!
マリーばっかり ジャスを独り占めしてズルい!
職権乱用して、ノーサを虐めてるの?」
「そんな言い方しないでよ!
とにかく、ゴームは貸せないわ!」
「マリーのケチ!威張りんぼ!悪魔!」
「言ったわね!」
喧嘩を始めた2人を ジャスが制止する。
「ほらほら、2人とも!
さっきからハンさんたちが何か言いたそうに ずっと待ってますよ。」
マリーとノーサは、ハンの方を見る。
「ジャスさん、助かったッス。
だいぶ話がそれてて困ってたッス。
ところで マリー様、緊急事態が発生したッス。」
「今度は何?
またベルゼブイが攻めてきたの?」
「違うッス。
今度は空から鉄の塊が攻めてきたッス。
いま、迷いの森 上空に待機してるみたいッス。」
「あれは宇宙戦艦ニャン。」
「また迷いの森?
しかも、宇宙戦艦って何よ。」
マリーとノーサは、不思議そうな顔をしている。
そんな2人に、嬉しそうにジャスが説明する。
「宇宙戦艦っていうのは、銀河英雄物語の主人公たちが乗ってる船です。
銀河英雄物語の主人公たちは、宇宙戦艦に乗って、宇宙を旅して 様々な星に巣くう悪を退治してまわるんです。」
ジャスの説明に、ナオアキが便乗する。
「ちなみに、銀河英雄物語のヒロイン、チヒロは超能力の使い手で念動力を得意としているニャン。
チヒロは、まだ5歳の少女なんだニャン。」
「そうなんですよ、まだ5歳なのに、大人のパイロットに負けないくらい戦闘機の操縦も上手なんですよね!」
「そうだニャン。レッドたちのピンチにヴァルキリーを操縦して助けにくるニャン。」
ジャスとナオアキは、アニメの話で盛り上がり始めた。
「・・・。
ハン、話をまとめると、宇宙戦艦ってのは悪を退治してるってことで間違いないのかな?」
「そうみたいッスね。
たぶん、俺らが悪者みたいッス。」
「まあ、悪魔って言ってるくらいだから仕方ないの。
ノーサは 巻き添えを食う前に、ちょっとマダム・オカミのところに帰ることにす・・・。
ちょっとマリー!腕を掴まないでよ!」
「ノーサ、せっかくだから最後まで魔王城にいなよ。
宇宙戦艦を倒し、魔界を救った英雄を名乗ってみたくない?」
「魔界を救った英雄・・・。」
「そう、魔英雄ノーサ。」
「魔英雄ノーサ。
・・・悪くない響きなの。」
「よし!
メンバーも決まったことだし、さっそく宇宙戦艦を倒す方法を考えてみましょう!」
「しかたないの。
今回はマリーに力を貸すの!」
マリーたちは、とりあえず食堂に移動する。
ジャスとナオアキのアニメ雑談は、まだまだ続きそうだった。
~魔王城・食堂~
朝食を終え、話し合いを始めたところに、宇宙戦艦の監視をしていたハンが駆け寄ってくる。
「マリー様、大変ッス。
宇宙戦艦が南に移動を開始してしまったッス。そして、そのまま魔王ドランサーの領空に入ったッス。
しかも、魔王ドランサーからの使者を撃ち落としたみたいッス。」
【魔王ドランサー。
竜王種の魔王で、電車3両分の大きさがある蛇のような体をし6本の足を持っている。背中にも3対の大きな翼を持ち空を飛び戦うことを得意としたドラゴンである。
性格は がめつく卑しい。そのため、領地・領空への出入りに重い税金をかけている。
公共?の移動手段であるマリーたちの飛竜でさえ迂回して飛ぶ必要があるほど領地・領空に厳しい魔王である。】
「使者を撃墜って、かなりヤバイんじゃない?」
「戦争になるかもしれないッス。」
「ノーサの出番がなさそうなの。
マリー、とりあえず外に出て確認してみるの。」
マリーたちは、魔王城の外に出て宇宙戦艦の様子を確認してみることにした。
外に出てみると、すでに魔王ドランサー配下の空飛ぶ悪魔たちが、宇宙戦艦を襲っている。
宇宙戦艦も戦闘機を出し、悪魔たちと交戦しているのだが、的が小さく素早く動き回る為、かなり苦戦をしているようだ。
ドーン!
ドドーン!
「宇宙戦艦が墜ちるニャン!」
「こっちに墜ちてくるニャン!」
「マリー様、ヤバイッス!」
「魔王城を守る規模の魔法か・・・。
久しぶりに 詠唱が必要だね。」
マリーは とっさに槍を召喚し地面に突き立て防御魔法を展開する。
「お願い力を貸して、皆の笑顔を守りたい・・・。
輝ける尊き生命の光を守護するため、いまここに力を解放する。
さあ、私と共に守り抜こう!
守護天使の大盾力場!」
マリーが詠唱を終え、魔法を展開すると、魔王城の周囲を淡い緑の光が包み込んでいく。
その光は、魔王城だけに留まらず、迷いの森の一部や世界樹まで含む広範囲を覆っていく。
墜ちてきた宇宙戦艦は、淡い緑の光に包まれるようにして、死人の荒野にゆっくりと墜落した。
「マリー様、死人の荒野に墜ちたみたいッス。
あそこは俺らの領土ッス。
どうするッスか?」
ハンの質問にジャスが不思議そうに声をかける。
「どうするってどういう意味ですか?」
「俺らの領土ッスから、あの宇宙戦艦の所有権は俺らに移ったッス。
だけど、魔王ドランサーが襲って墜ちてきた宇宙戦艦ッスから、所有権の半分はドランサーの物ッス。
だから 俺らが宇宙戦艦や乗組員を全員保護しようとするなら、魔王ドランサーから奪い取るか交渉するしかないッス。
それに、マリー様が撃ち落とさなかったところをみると、保護するつもりだったと思ったッス。」
「なるほど。見事な考察ですね。
マリーさん、もちろん保護するんですよね。」
ジャスは、槍を回収するマリーに詰め寄ってくる。
しかし、全員保護することに ノーサは反対しているようだ。
「魔王ドランサーは、がめついの。
交渉すれば足元を見られてしまって大損になるわ。
ノーサは潔く折半する方がいいと思うの。」
「うん、普通に考えれば ノーサの言う通りなんだよね。
とりあえず、宇宙戦艦の場所まで行って、魔王ドランサーと話をしてみよっか。」
~死人の荒野~
マリーは、ベッチやハンといった数名の配下を引き連れ 複数の飛竜に分かれて乗って墜落現場に駆けつける。
墜落現場では、すでに魔王ドランサーや その配下が宇宙戦艦の乗組員を外に整列させ縛っていた。
宇宙戦艦の乗組員は、人間と変わらない姿をしているマリーや、天使の姿をするジャスを見つけると、命乞いを始めた。
マリーたちは捕虜から離れ、魔王ドランサーに近寄り声をかける。
「魔王ドランサー、お久しぶりです。
今回の戦闘おつかれさまでした。」
「うむ。
魔王マリーか。お主とは交渉をせんぞ。
今回の戦利品は、全ていただいて帰る。」
「魔界の盟約をお忘れですか。
もし、覚えていて破るようなことがあれば、多くの血が流れる争いが起きます。」
マリーの言葉に、魔王ドランサー配下の竜王種が魔王ドランサーに耳打ちする。
魔王ドランサーは、 配下の忠告を聞いたのだろうか、マリーの方を向きなおし、再び話し始めた。
「魔王マリーよ。魔界の盟約、忘れていたわけではない。
此度は 吾輩の配下が戦闘で負傷し、治療を受けさせるのにも費用が掛かる。
しかし、お主の配下はどうだ、傷ついている者もいなければ、墜ちた場所も荒野の為、実質的な被害は少ないはず。
そこで お主には理解を得てもらいたいと考えての言動だった。
もし、盟約を破ったと勘違いをさせていたのであれば、それは 詫びよう。」
魔王ドランサーは、詫びはしたが、戦利品は全て自分の物という意見を通そうとしたのだ。
マリーも魔王としての面子があるので、はいそうですか、と引くわけにはいかない。もし引いてしまえば、配下の悪魔たちにも示しがつかないし、他の魔王から下に見られてしまい、多くの争いに巻き込まれてしまうからだ。
マリーは、魔王ドランサーから視線をそらさずに、言い返す言葉を考えていた。
そんなマリーに、ジャスが話しかける。
「マリーさん、それでいいんじゃないですか。」
「・・・!?」
ジャスの一言に、マリーがつい目をそらす。
魔王ドランサーは勝ち誇ったような表情を見せたのだが・・・。
「魔王ドランサーさんには戦利品をあげればいいじゃないですか。
私たちの目的は、人間の保護でしたから問題ないですよね。」
「そ、それもそうね。
今回は、戦闘で負傷した配下に免じて、魔王ドランサーからの条件をのんであげるとしましょう。
私たちは あそこにいる捕虜をもらい受けるわ。
魔王ドランサー、悪魔に 二言はないわよ。」
「・・・な、何を言っておるのだ!
この人間共も戦利品だ!」
「何を言ってるの。
魔界の盟約を破って独り占めするってこと?
魔界の盟約を守れないのであれば、私たちは盟約を守るために徹底的に戦うわよ!」
「うぬぬぬぬ!
魔王マリー、此度は魔界の盟約に従い、吾輩は身を引くことにしよう。
・
・
・
お前たち!
戦利品を回収してこい!
吾輩は先に城に戻るぞ!
魔王マリーと天使の小娘、よく覚えておけよ。」
魔王ドランサーの捨て台詞に、ジャスが反応する。
「私は天使の小娘じゃありません。
・
・
・
私は魔界の秩序を守るため、天空より舞い降りた、
愛と正義の美少女魔界天使、ジャスです!」
「おのれ 言わせておけば・・・。
美少女魔界天使 ジャス!
お主の名は覚えたからな!」
魔王ドランサーは腹を立て、配下の使い魔に当たり散らしたあと 城へと引き返していった。ドランサー配下の悪魔や使い魔たちは、運ぶように命令された宇宙戦艦を目の当たりにして固まっていた。
マリーたちは、ベッチたち戦士に見張りを任せ、捕虜を連れ魔王城へと歩いて引き上げていく。
魔王城への帰り道で、ノーサがジャスに声をかける。
「ジャス、カッコよかった!
どうして あんな啖呵を切れたの?」
「どうしてって、ほら、それは・・・。
と、とにかく、覚えてもらえたら嬉しいですからね。」
「ねぇマリー、これで ジャスも魔王カードに名前が載るかも知れないの。」
「マリーさん、そんな簡単に載るものなんですか?
もっと活躍しないとダメだと思ってました。」
「・・・無知て素敵よね。」
「・・・?」
マリーがジャスに説明を始める。
「だって、ジャスちゃんが喧嘩を売った相手は、竜王種の大魔王候補だよ。
魔界でも5本指に入るほどの強力な魔王だからね。」
「えっ・・・?」
「しかも、ドランサーは、カンカンに怒ってたの。
ノーサは怖くって目を合わせることも出来なかったの。
あんな恐怖、マダム・オカミだけで十分なの。」
「あわわわわわわわ!
マリーさん、ど、ど、ど、どうしましょーーー!」
「ノーサみたいにバカバカしく考えるしかないよね。
なるようになるの!って。」
「マリー、ノーサをバカにしてるでしょ!」
「バカにしてるんじゃなくて、バカだって言ってるのよ。」
「もう怒ったの!」
マリーとノーサは、朝に引き続き喧嘩を始めた。
そんな様子をみていた捕虜の一人がマリーに声をかけてきた。
声をかけてきたのは、宇宙戦艦艦長のミネルヴァという女性だった。
「ねえ、マリーちゃんだっけ?
私たち、これからどうなるの?」
「あなたたちは捕虜として捕らえられたのよ。
これから色々と質問があるから答えてくれればいいわ。」
「マリー、捕虜と仲良くしない方がいいの。
ちゃんと質問に答えてもらってからじゃないと、あとあと面倒になるの。」
ノーサの一言に、艦長のミネルヴァは、小さく頷き黙ってしまう。
ジャスは、そんなミネルヴァに声をかけた。
「あの、ミネルヴァさん。
他に質問があったんじゃないですか?」
「あ、それは・・・。」
ミネルヴァは、ノーサの方を見ると口を閉ざした。
ノーサは竜人種の特徴である角をもっていた為、ミネルヴァはノーサを警戒しているようだ。
ノーサの角は 可愛らしく小さく巻いた角で恐ろし気なものでもないのだが、人間の目から見れば恐ろしく感じてしまうのだろう。
怯えるミネルヴァに ノーサが声をかける。
「ノーサの事、怖がらなくていいの。
嘘をついたり誤魔化したりしなければ危害を加えることはないの。」
「そうだよ、艦長のミネルヴァだっけ?
さっきの魔王みたいに 危ない悪魔ばっかりじゃないからね。
でも、ミネルヴァも軽率だったよ。魔王ドランサーの使者を有無を言わずに攻撃しちゃうんだから。」
「それは・・・。
すみません。悪魔だったから 使者だと思いませんでした。
それに悪魔は邪悪な存在であり、人類の敵と言われていて 占領するようにと指令があったので・・・。」
「要するに、地球人種は 魔界に先制攻撃をしてきたということ?」
悪魔だから使者だと思わなかったという言葉や 指令に従い魔界を征服しようとしていた思考や行動に、マリーもノーサも嫌な顔をする。
2人は 悪魔の特徴として よく見られる、感情を露骨に表すという癖があるようだ。
そんな2人を諭すように、ジャスが話し始める。
「マリーさん、ノーサさん。
表情に出てますよ。
・
・
・
でも、たしかにミネルヴァさんも差別はよくないですよ。
それに、指令だからって自分の意思を持たずに行動するのも 考え物だと思います。
どうして人間や天使は 差別をするんですかね。
悪魔たちのように寛大になれればいいのに・・・。」
ジャスの言葉にミネルヴァが反応する。
「・・・あの、ジャスさんは天使なんじゃないですか。
「元見習い天使ですよ。
今は 魔界天使として頑張ってます。」
「魔界天使・・・?」
不思議そうな表情を見せたミネルヴァにノーサが質問をする。
「どうしてミネルヴァは、ジャスを天使と認識してたの?
前に合ったことがあるの?
何か天使としての伝承とかあるの?」
「あ、はい、それは・・・。」
ズドーーーン!
ミネルヴァが答えようとしたとき、遠くの方から爆発音が鳴り響いてきた。
爆発音の方を振り返ると、空には数隻の宇宙戦艦と無数の戦闘機が、魔王ドランサーの軍勢と戦闘を繰り広げていた。
その戦闘で墜とされる宇宙戦艦も少なくはないのだが、徐々に現れる宇宙戦艦の数は 墜とされる艦を上回っている。
次第に空は数を増やしていく宇宙戦艦や戦闘機で埋め尽くされ始めた。
しかし、先ほどの戦闘とは違い、魔王ドランサー自身も出撃したようで、憂さを晴らすように激しく暴れまわり始めた。
どうやら今回は 自身の領地内で仕留めてしまうようだ。
魔王ドランサーの出撃により、宇宙戦艦の墜とされる数が圧倒的に増え始める。
「救助に助けに来てくれた?
・
・
・
なぜ母艦までいるの!?
そ、そんな・・・エリーゼ!」
ミネルヴァは、ひときわ大きな宇宙戦艦を見つけると、激しく取り乱し始めた。
他の捕虜たちも、絶望の表情を見せている。
どうやら母艦の中にはコロニーがあり、そこに愛娘のエリーゼが入居しているようだ。
本来であれば後方支援に回るはずの司令艦や航星母艦なのだが、その後方支援に回るはずの航星母艦が戦闘に参加していることから、地球人たちの総攻撃が始まったと考えられる。
【司令艦、航星母艦。
司令艦は、総司令官や 艦隊幹部の搭乗する戦艦で、後方からの作戦指示や 発射まで時間を要するのだが 火力の高い砲を搭載し 遠距離攻撃を行うことができる。
航星母艦は、宇宙戦艦に物資や弾薬を補給するタイプの戦艦。宇宙戦艦と同じ装備をしている為、前線での戦闘も可能であるが、居住区や農産区などを完備している為、戦闘機を搭載する格納庫が一切ない。そのため 単独行動は危険である。】
ミネルヴァは、マリーを魔王ドランサーの配下だと勘違いしているのだろう、そのため マリーに魔王ドランサーを止めるように懇願してきた。
「お願いします!
さっきのドラゴンに攻撃を止めるように頼んでもらえないですか。
あの母艦には、非戦闘要員が・・・。
私の娘が載っているんです。
お願いします!私は何でもします!
お願いします!!
お願い!!!
お願・・・。」
ミネルヴァはマリーの前で 泣き崩れてしまった。
他の捕虜たちも涙を流している。
マリーは、考えていた。
攻めてきたはずの人間だったのだが、奪う側に回れば奪われることもあるという覚悟もなく、奪われ始めれば 弱い人間を助けてくれという考え方に共感ができなかったのだ。
マリーの考えが分かったのだろう、ジャスも困惑しながらもマリーに声をかける。
「マリーさんの気持ちは分かります。
もし宇宙戦艦が魔王ドランサーに墜とされなければ、魔王城に被害があったかもしれません。
まだ魔王城ならマリーさんが守ることもできたから いいかもしれませんが、周囲の民家を襲われれば全てを助けることも出来なかったでしょう。
悪魔を攻撃し領土を奪うっていうことは、そういうことですから。
・
・
・
でも。
・
・
・
それでも、私は ミネルヴァさんたちを・・・地球人種を守ってあげたいと思います。
だって・・・。」
「うん。子供たちに罪はないもんね。
・
・
・
ちょっと、いまの状況は 不味いかもね。
ノーサ、敵は強大だから、このまま ジャスちゃんと捕虜を連れて魔王城に引き返してよ。
魔王城に帰ったら、ドン・キホーテに戦闘準備をして来るように伝えて。
ハン、ベッチたちに戦闘準備をさせるのにかかる時間は?」
「すぐに戦闘に入れるッス。」
「マリーさんは どうするんですか?」
「仕方ない・・・よね。
私は魔王ドランサーと戦闘に入る。
・
・
・
ハン、戦闘開始よ!
私たちは 魔王ドランサーに宣戦布告を行うわ!
周辺諸国の魔王たちにも、この宣戦布告を宣言しなさい!」
「戦いの名目はどうするッスか?」
「地球人種からの依頼により、地球人種を保護する戦いでいいわ。」
「了解ッス!」
マリーは魔王ドランサーと戦闘に入るために、飛竜に乗り空へ舞い上がり魔王ドランサーの元へと移動していった。
心配そうに見守るジャスに、ノーサが声をかける。
「ジャス、魔王城のドン・キホーテは、かなり強い部類の人間なの。
いそいで戻って、マリーの援護を頼めば、マリーも安心して戦えると思うの。」
「はい。
ノーサさん、駆け足で魔王城に戻りましょう。
地球人種の皆さん、あなた方の母艦は マリーさんが必ず助けてくれます。
だから、その為に魔王城まで急いで移動しないといけません。
キツイかもしれませんが、頑張って付いてきてください。」
「天使様、ありがとうございます。
我々は軍人です。体力には自信があります。」
「よかった。
魔王城まで5Km程です、約15分の駆け足なので頑張りましょう!」
「・・・命がけでついていきます。」
ノーサやジャスの身体能力は、天魔界では 平均以下だが、人間と比べると かなり高いようだ。
使い魔たちは、比較的余裕がありそうだったのだが、人間は必死に置いて行かれないように全力疾走を続けている。
思ったより足が遅い捕虜にノーサが痺れを切らしてしまったようで、ジャスに声をかける。
「ノーサは 地球人種の人間に合わせて魔王城に向かうわ。
ジャスは 先に行って、早くマリーの元に援軍を連れて行ってほしいの。
魔王ドランサーは強敵だから・・・。」
顔を合わせれば喧嘩を始める2人だが、お互いに気遣うことができる関係に、ジャスは笑みがこぼれる。
「はい!
ノーサさん、私に任せてください!」
ジャスは、ノーサたちと別れると全力疾走で魔王城へと駆けて行った。
一方その頃、魔王ドランサーの領地である、死霊の湖 上空では 地球人の艦隊と魔王ドランサー率いる悪魔の軍勢が戦闘を行っていた。
しかし、魔王ドランサーの強力な攻撃の前に宇宙戦艦は次々と撃墜されていく。
そんな中、マリーは 槍を召喚し手に持ったまま、艦隊攻撃を行う魔王ドランサーに近づき、魔王ドランサーに宣戦布告を行う。
「魔王ドランサー!
この地球人種は、魔王マリーに保護を求めてきたわ!
私は 保護を容認し、地球人種を配下に加えることに決めた!」
「だから何だというんだ!」
「このまま、地球人種に攻撃を加えるのであれば、私の配下への攻撃とみなし、魔王ドランサーを打ち滅ぼすわ!」
「翼を持たない お主に何ができる!
エイルシッドの威光だけで魔王を名乗る小賢しき者よ、飛竜もろとも水面に叩き付けてやる!」
マリーの挑発ともとれる 宣戦布告に 魔王ドランサーは激怒し、マリーに襲い掛かる。
マリーは飛竜を操り、魔王ドランサーの攻撃を回避し、そのまま手に持った槍で魔王ドランサーの翼を攻撃しようと狙うのだが、魔王ドランサーの動きが早く、気流が乱れてしまい上手く攻撃を当てることができない。
「ふはははっ、
自らの意思で空を飛ぶことができない お主に勝ち目はないわ!」
「くっ!」
マリーは飛竜を操りながら魔王ドランサーの攻撃を回避し、何度も何度も反撃を試みるが なかなか攻撃が当たらない。
徐々にマリーの操る飛竜も疲労が見え始めてきた。
マリーが苦戦をしていると、魔王城の方向から声が聞こえてくる。
「マリー様!
助太刀いたしますゾイ!」
声の主は、ドン・キホーテだ!
「やあやあやあ!
我こそは、竜殺しの勇。
暗黒騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ!
いざ、尋常に勝負いたせ!」
ドン・キホーテはナオアキと共に飛竜に乗り魔王ドランサーに戦いを挑む。
ナオアキが飛竜を操り、ドン・キホーテが攻撃と防御を行うスタイルで、阿吽の呼吸で魔王ドランサーを攻め立てる。
ドン・キホーテの参戦に分が悪いと見たのか、宇宙戦艦を攻めていた魔王ドランサーの配下たちも魔王ドランサーの援護に加わり、双方の戦闘は 激しさを増していった。
そんな戦闘の最中、ドン・キホーテが敵の悪魔に攻撃を加えた瞬間の隙をつき、ドランサーの強力な攻撃がドン・キホーテたちを襲う。
ドン・キホーテたちは回避が間に合わず、槍で魔王ドランサーの攻撃を防いだ。
しかし、強力な攻撃を受けたため、体勢を崩してしまった。
魔王ドランサーは、そのまま連続して2回目の攻撃を行ったのだが、その攻撃はドン・キホーテに当たることはなかった。
なぜなら、マリーが身を挺して防御魔法を展開しドン・キホーテを攻撃から救ったからだ。
しかし、攻撃を防いだはずのマリーは 魔王ドランサーの攻撃でバランスを崩してしまい飛竜と共に水面めがけて一直線に落下していく。
「マリー様ぁー!」
ザッパーン!
飛竜は間一髪で 水面に叩き付けられることなく空中に留まることができたのだが、マリーは そのまま水面に叩き付けられてしまう。
悪魔といえど、高高度から水面に落下すれば即死もありえる。マリーの落下を死霊の湖の水辺で見守っていた魔王城の配下たちが一気に暗い表情になる。
マリーの落下を確認した、魔王ドランサーは 勝利を確信し、高らかに笑いはじめる。
「魔王マリー、逆らうから死を迎えることになるのだ。使い魔として転生することが出来れば、配下として迎えてやるから安心しろ。
ふははははっ!」
飛竜に乗り駆けつけたジャスは、マリーの落下を少し離れたところで見ていた。
しかし、絶望的な表情で飛竜を操る使い魔とは違い、ジャスは 何かを信じている。
その表情は、希望に満ち溢れていた。
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大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
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