【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

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ニートのち魔界王

033・魔界王の仕事

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モモが 竜人種マダム・オカミへと転生し2週間経っていた。
その わずかな期間にエイルシッドは、攻め込んできた魔王を撃退し、いくつかの領土を増やしていた。
この時点でエイルシッドの領土は、魔王城、迷いの森、見晴らしの丘、飛竜の谷、夢幻の熱湯池、死人の荒野(元死人の沼地)、霊廟メルティナ、中央都市グレングレン。以上8拠点を治めていた。
そのうち、死人の荒野、中央都市グレングレンは、任されていた魔王を撃退しただけであり、別に所有者である大魔王が居たため、その所有者である大魔王ロロノアと交渉する為に、エイルシッドは 使い魔のネロとケーンを連れて 大魔王ロロノアの居城がある 灰色の大草原へと向かっていた。
【大魔王ロロノア。
 血統付き獣人種で、自らを獣王と名乗っている。
 本能で行動するタイプの悪魔で戦闘も直感的に行う。
 魔法を受け付けない体質に 超人的な身体能力も合わさり、戦闘力は魔界一と言われている。
 しかし、知能が低く 作戦や策略が苦手な為、他の大魔王に後れをとっている。】





~大魔王ロロノア領土
 ・灰色の大草原~


「本当に交渉するつもりなのかニャン?」

「もちろん。
 隣接している領土だし、大魔王の中で一番強いんだろ。
 彼が賛同してくれれば、魔界は住みやすくなると思うんだ。
 交渉の材料として領土を返納するって言えば納得しやすいだろ。」

「確かに 大魔王ロロノアが賛同すれば、魔界の使い魔たちの地位も安定すると思うニャン。
 だけど・・・。」

「だけど、どうかしたのか?」


「・
 ・
 ・
 大魔王ロロノアは、エイルシッド王以上に おバカさんニャン。
 何も考えずに襲ってくる可能性もあるニャン。」


「そうか、俺以上におバカさんなのか・・・。
 ん?
 ・
 ・
 ・
 それ、どういう意味だ!」


「あ、すまないニャン。
 悪い意味ではないニャン。」

「人が良くって騙されやすいっていうか・・・。
 純粋って意味ニャン。」


「そっか。
 ・
 ・
 ・
 俺って 純粋なのか。」


「・・・ヒソヒソ。」
(エイルシッド王が純粋で助かったニャン。)
(分かっててスルーしてるのか、本当に分からないのか、考えが読めないニャン。)
(たしかに。この話をモモにしたら、俺らぶっ殺されるニャンね。)
(あいつ、エイルシッド王一筋だから、ある意味 危険すぎるニャン。)


ネロとケーンがヒソヒソと話をしていると、エイルシッドが爆笑しながら笑顔で声をかけてきた。


「わはははっ、おいおい、すげーな!
 ありゃなんなんだよ。
 なあ、向こうから凄い勢いで走ってくるのが、大魔王ロロノアかな?」


「「「ギャーー!」」」


「ぶっ殺されるニャン!」
「早く、逃げるニャン!」


慌てふためく使い魔たち。
エイルシッドは、ロロノアが全力疾走で駆けてくるのが、面白かったのか大爆笑している。


「ってか、エイルシッド王も笑うのを辞めるニャン!」
「まだ笑ってるのも気づかれてないかもしれないニャン!
 まだ間に合うかもしれないニャン!」

「わはははっ、いや、無理だろ!
 あんな必死に走ってくるんだぞ。」


「「「助けてー!」」」


そんな3人の前に、大魔王ロロノアが現れる。

「はあ、はあ、はあ、
 お前は、エイルシッドだな!」

「ああ。
 俺が魔王城の主、ニルヴァーナ・アース・エイルシッド・トライアス
 ・
 ・
 ・
 魔界王 エイルシッドだ。」

大魔王ロロノアは、堂々と答えるエイルシッドの目をじっと見つめる。
エイルシッドは、その紅の瞳でロロノアから目をそらすことなく視線を合わせている。
そんなエイルシッドに、大魔王ロロノアが ひれ伏しながら声をあげる。


「魔界王エイルシッド様、俺を配下に加えて下さい。」


「おいおい、いきなりどうしたんだ?
 俺は交渉しに来ただけだぞ。
 お前を配下にしにきたわけじゃないし・・・。」

「俺は、自分より強い悪魔には逆らわないと決めている。
 それに誰かに使えていた方が楽だからな。」

獣人種の本能なのだろうか、群れのボスを決め それに従う。
まさに大魔王ロロノアは、本能のままに行動していた。
しかし、そんな大魔王ロロノアの様子を見て、エイルシッドは困った顔をする。


「うーん。
 困ったな。」


「何を困ってるんだニャン?」
「そうニャン。
 さっさと配下にしてあげればいいニャン。」

「いや、そうじゃないんだよ。
 俺もロロノアのように強い仲間が居れば心強いけど、俺は領土を奪い合ったり、配下を増やしたり、自分の強さを証明するために戦ったり・・・。
 まあ、他の魔王がやっていることに興味がないんだ。
 むしろ、いまのまま大魔王ロロノアには領土を治めてもらって俺の考え方に賛同してもらえればいいんだ。」


エイルシッドが腕を組み 考え事をしていると、大魔王ロロノアが声をかけてきた。

「魔界王エイルシッド様の考え方とは?」

「・
 ・
 ・
 俺は、悪魔も使い魔も、天使さえも一緒に暮らせる場所を作りたい。
 それは魔王城だけではなく、この魔界全土をそうしたいんだ。」

「悪魔も天使も使い魔も・・・。
 いや、無理でしょう。
 そもそも天使が我々悪魔を毛嫌いしております。
 中には、理解のある天使も心当たりがありますが・・・。」

「へぇー、そんな天使がいるんだ。
 もしかして堕天使とか何か?」

「いえ、天界に住む天使、ミロキアスという男です。」

「ミロリアス・・・。
 聞いたことないな。」

「ミロキアスです。
 ミロキアスは、我が配下である獣人種の悪魔を妻に娶り、天使と悪魔の混血児を天界で育てております。
 名はたしか・・・ザイルだったと思いますが。」

「天使と悪魔の混血・・・。」


「・・・ヒソヒソ。」
(エイルシッド王の目がキラキラし始めたニャン。)
(自分と同じような境遇だからじゃないかニャン?)
(同じ混血なら、娘さんとも仲良くやれそうだニャン。)
(俺、エイルシッド王が次にいう言葉が分かったニャン。)
(ネロ、俺も実は分かったニャン。)

(((よし、天界に・・・。)))



「よし!
 天界に戻ろう!」

(((やっぱり。)))



「大魔王ロロノア、お前とは仲良くなれそうだ!
 今後、俺の配下になりたいなら、そう名乗れ。
 そして、このエイルシッドの考えを国中に広めろ!
 しかし、形式的には同盟でいいかな?
 あとあと面倒なのは勘弁してほしいから。
 それと、俺の配下を名乗るのであれば、今後、他国の領土への侵攻を禁じる。
 もし戦わねばいけない場合は、俺に伺いを立ててくれ。」

「畏まりました。
 大魔王ロロノア、魔界王エイルシッド様の配下を名乗らせていただきます。
 しかし、配下と同盟とは、周囲の魔王共も納得しますまい。
 そこで俺からの提案ですが、俺を領土ごと 魔界王エイルシッド様の傘下に加えていただく方が周囲も納得できると思います。」


「・・・そうなのか?」


エイルシッドは、使い魔のケーンを見る。
使い魔のケーンは、人間だった頃、呉服商として財を築いていた人物だったらしく、かなり頭の回転が早い。


「なるほど・・・。
 それは、いい考えだと思うニャン。
 大魔王ロロノア様を 領土ごとエイルシッド王の傘下として加える。
 そうすれば、実質的な支配権は変わらないけど、エイルシッド王の意思を伝えることはできるはずだニャン。」


「よし!
 では、そうしよう。
 あと1つだけ忘れないでほしい。
 俺は絶対に契約はしない。俺に契約を せがめば殺す。」


エイルシッドの紅の瞳は、殺すと発言した瞬間、殺意を帯びていた。
大魔王ロロノアは、とっさに視線を反らし下を向く。
使い魔たちも 自分たちに向けられた殺意でないと分かっていても震えが止まらない。


「・・・か、畏まりました。
 配下にも徹底して、我が主様の意思を叩き込みます。」




魔王エイルシッドは、大魔王ロロノアとの正式な調停式の日取りを決め、早急に魔王城へと引き返していった。
その後、無事に調停式を終えた後、周囲の魔王たちは 水面下で競い合って領土を奪いあう。
ある程度の領土を持てば、魔王エイルシッドの傘下に入り、その領土が保障されるからである。
この調停式から、わずか2か月で、魔界全土は魔界王エイルシッドの傘下に入ることとなった。


エイルシッドは、大魔王ロロノアとの調停式を終えると、天界へと出かけて行った。




~数日後~

「ただいまー!」

「あ、エイルシッド王ニャン!」


「「「おかえりなさいニャーン!」」」


「おう!
 みんなに嬉しいお知らせだぞ!」


「「「なんなんだニャン?」」」


「なんと、もうすぐ愛しのマリーたちが魔界に来るぞ!」


「「「おおお!」」」



「・・・ヒソヒソ。」
(マリー様、エイルシッド王に似てたら絶対に可愛いニャン。)
(楽しみだニャン。)
(でも、あまり無礼な態度を取れば・・・。)
(恐ろしいニャン。)





「しかも、天使のミロリアスとザイルたち親子も魔王城に招いたんだぞー!」


「・・・ヒソヒソ。」
(ロロノアは、ミロキアスって言ってたはずだニャン。)
(仕方ないニャン。
 エイルシッド王だから。)


(((納得だニャン。)))


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