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大魔王
038・思いの違い
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~魔王城~
ハンとネロは、簡単な荷物を持ったマダム・オカミを連れ 魔王城に帰還していた。
魔王城帰還の道中、大魔王ロロノアの城に立ち寄り、説得を試みたようだが、大魔王ロロノアの同意を得ることはできなかったようだ。
落ち込み暗い表情のまま 魔王城に帰り着くと、マダム・オカミがハンに声をかけてきた。
「これからどうするつもり?
ロロノアの同意が得られなければ、天使たちと正面から戦いあうのは無謀よ。
敵は防御魔法が得意だし、集団で同時に詠唱されたらやっかいよ。
おそらく何年も争うような長期戦になるわ。」
「そうだニャン。
マダム・オカミの言うとおりだニャン。
頭数だけ揃えて、ダラダラ戦っても世界樹が枯れてしまうニャン。」
「なんとか ロロノアを説得する方法を考えるしかないッスね。」
「「「・・・。」」」
とは言っても、何もいい案が浮かんでこない。
ハン、ネロ、マダム・オカミは魔王城の城門を入ったところで動かなくなってしまった。
そんな 3人に目を真っ赤に腫らしたジャスが声をかけてきた。
「ハンさん、エンマさんに聞きました。
いまから 大魔王ロロノアさんの説得に向かうんですか?」
ハンは気まずそうに答える。
「それが・・・。」
固まってしまったハンをフォローするように、マダム・オカミがジャスに説明する。
「ジャスちゃん、大魔王ロロノアは 超強力な悪魔なの。
ただ説得したくらいでは、納得してくれなかったわ。
だけど、安心して!
大魔王ロロノアは、マリーちゃんの父上である エイルシッド様と親友だったんだから、誠意をもって説明をすれば同意を得られるわ。」
「・
・
・
ハンさん、マダム・オカミさん、大魔王ロロノアさんを説得するときは、私も連れて行ってください。
私も マリーさんの為に出来ることをしたいんです。
マリーさんは、私の大切な・・・私たちの大切な仲間ですから。」
ジャスの真剣な表情に、マダム・オカミもハンも、無言で頷く。
マダム・オカミは、持っていた荷物をネロに預けると ハンとジャスに声をかける。
「もう一度、大魔王ロロノアに面会しましょう。
かならず説得するわよ!」
「「「おぉぉぉ!!!」」」
~大魔王ロロノアの城~
マダム・オカミ、ハン、ジャスが大魔王ロロノアの城にたどり着き飛竜を降りると、城の中から数人の獣人が現れた。
「これはこれは、魔王マダム・オカミ。
次は どういった ご用件なんだ?」
「大魔王ロロノアを説得しに来たのよ。」
「先ほど、獣王様は お断りしたはずだ。」
「分かっているわ。
それでも私たちには説得しなくちゃいけない理由があるから。」
「・
・
・
魔王マダム・オカミ、確認してくるから待ってて下さいだ。」
「ええ、待っているわ。」
獣人が城の中に引き返していく。
ジャスは 大魔王ロロノアの城が気になるのか、キョロキョロと周囲を見渡していた。
ロロノアの城は 魔王城と違い、手入れがされていないのか、周囲の地面はえぐれ、城もところどころ壊れているようだ。
「ジャスさん、どうしたんスか?」
「いえ、ちょっと・・・。」
「ジャスちゃん、あまりキョロキョロしてると 無駄に怪しまれるわよ。」
「あ、ごめんなさい。マダム・オカミさん。」
マダム・オカミに注意を受けたジャスは、まっすぐ正面を見直して 大魔王ロロノアの返事を待つ。
暫くすると、先ほどの獣人が戻ってきて マダム・オカミに話しかける。
「やはり、獣王様は お会いにならないそうだ。」
獣人の言葉を聞き、ほほえみながらマダム・オカミは 頷く。
そして、胸いっぱいに 大きく息を吸い込み、大声をあげる。
「犬コロやろー、てめー!
さっさと出てきて話を聞けっつってんだろ!
せっかく来てやったのに面会しねーとか、何様のつもりだ!
上等だ!
この魔王マダム・オカミと また一戦 交えようって思ってんのか!」
青筋をたてて怒鳴るマダム・オカミをハンが必死になだめる。
「マダム・オカミ、これじゃさっきと同じ状況になるッス。
次は、ジャスさんの為にも話し合うって決めたばかりじゃないッスか!」
「ハン、ジャスちゃんを連れて下がってなさい。」
「・・・!?
やっぱり こうなるッスね。」
ジャスは ハンに手を引かれながら、マダム・オカミから距離をとる。
すると、城の城門の上から黒い影が飛びかかってきた!
黒い影は 地面に着地したと思った瞬間、マダム・オカミの頭を鷲掴みにすると、そのまま抵抗するマダム・オカミを遥かに超える力で地面に叩きつけた。
「魔王マダム・オカミ、わしが手を抜いてやっているのも分からないほど弱く愚かな魔王よ。
早々に立ち去れ。
昔なじみの お前だから許してやると言っただけだ。」
地面に叩きつけられたまま マダム・オカミが答える。
「だから、仕えるとか仕えないとか 許すとか許さないとかじゃないって言ってるじゃない。
エイルシッド様のご息女 マリーちゃんの為に力を貸せっていってんのよ!」
「ふん。」
大魔王ロロノアは、地面に抑え込んでいた マダム・オカミの頭部を、鷲掴みにしたまま高く持ち上げ激しく左右に振る。
2m近くあり筋骨隆々のマダム・オカミだが、まるで紙でできた人形のようにブンブンと振られている。
マダム・オカミは、鷲掴みにされている腕にしがみ付くことしかできないようだ。
「ぐははははっ!
マダム・オカミ、わしを従えるのならば、エイルシッド王のように わし以上の力を示せ。」
「ぐぅぬぬぬぅ!」
マダム・オカミは、ロロノアの腕にしがみ付くのが 精一杯のようで、返事をすることもできないようだ。
「ぐははははっ!」
マダム・オカミは、大魔王ロロノアの手の中で気を失ってしまった。
それを見て 豪快に笑う 大魔王ロロノアに ジャスが近づき、大魔王ロロノアを見上げながら 大きく声をあげる。
「大魔王ロロノアさん、私たちは争いに来たわけではありません。
どうか話を聞いてください。」
大魔王ロロノアは、魔王マダム・オカミを鷲掴みにしたまま、動きを止めジャスに背を向けたまま ジャスに言う。
「我々、悪魔は力こそが全て。
ここは天界ではない。
魔界は、弱き者は死に 強き者だけが生き延びる世界。
わしに意見したければ、力を示せ!」
そういうと、気を失ったマダム・オカミを放り投げジャスの方を向き直した。
「ジャスさん、早く逃げるッス!
マダム・オカミが歯が立たないのに、俺らではどうすることもできないッス!」
ハンは、ジャスの手を引き逃げるように促す。
しかし、ジャスは ハンの手を振りほどき、大魔王ロロノアを見上げながら言った。
「お願いします。
私たちと一緒に戦ってください。」
「目障りな天使よ。
そうそうに立ち去れ。」
大魔王ロロノアのプレッシャーに周囲の獣人たちも尻尾を巻いて怯えている。
しかし、ジャスは動こうとしない。それどころか、大魔王ロロノアに対して反論した。
「いやです。
・
・
・
私は貴方が協力してくれるまで立ち去りません。」
「では、わしに天使の力を示すのか。
か弱き天使よ。お前が全力を尽くしても万が一にも奇跡は起きない。
それとも、魔王マダム・オカミのように敗れると分かっていても、その僅かな奇跡に賭けて勝負を挑むのか?」
ジャスは、無言で大魔王ロロノアを見上げている。
そして、ゆっくりと答える。
「確かに私の力は、貴方に遥かに及びません。
でも、私は引きません。」
「状況が分かっていないようだな。」
大魔王ロロノアが大きく腕を振ると、突風が起こる。
ジャスは 大魔王ロロノアが起こした突風でバランスを崩し、その場に倒れてしまった。
しかし、すぐに立ち上がり 再び大魔王ロロノアと対峙する。
その後、何度も何度もジャスは倒されては起き上がり、倒されては起き上がり、着ていた服もボロボロになっていく。
「か弱き天使よ。
なぜ、わしに反撃をしてこない。
なぜ、逃げださない。
なぜ、何度も立ち上がる。」
「それは、貴方が真の敵ではないからです。
それは、私が守りたい者の為に立っているからです。
それは・・・。」
「それは・・・?」
「それが私の考え方・・・信念だからです!」
「お前の考え方・・・信念。
天使よ、お前に問う。お前の言う 信念とは?」
ジャスは 威圧する大魔王ロロノアから目をそらすことなく 信念を語る。
「私は、悪魔も使い魔も天使も、人間たちも。
みんなで一緒に暮らせる天魔界を作りたいんです。
だから、間違った道を進んでいる天使を救い出すことが必要です。
そのためには、世界樹を取り戻してマリーさんを救わないといけません。
みんなで協力し合って 理想の天魔界を作り上げていくためには、マリーさんや ロロノアさんの力が必要なんです。
大魔王ロロノアさん!私たちに力を貸してください!」
「・
・
・
本当に天使や悪魔、人間までも一緒に暮らせると?」
「私にもわかりません。
だけど、私は信じていますから。」
はにかんだように笑うジャスの表情に大魔王ロロノアも笑みがこぼれていた。
ジャスの言葉を聞き、大魔王ロロノアは空を見上げた。
「悪魔も使い魔も、天使さえも一緒に暮らせる場所・・・か。
・
・
・
ふふふっ、笑止!」
大魔王ロロノアの言葉に、周囲を囲んでいた獣人たちも笑い始める。
そんな、ロロノアにジャスは、答える。
「何もバカバカしくありません。
私は真剣です。」
笑顔の大魔王ロロノアは ジャスの青く澄み切った澱みない瞳をじっと見つめると、大きく息を吸い、遠吠えを始めた。
「アオォォォォン!
アオォアオォォォ!」
周囲の獣人たちも、大魔王ロロノアの遠吠えに合わせるように遠吠えを始めた。
遥か遠くの方からも、獣人たちの遠吠えが聞こえてくる。
周囲の獣人たちは 疾風のような速さで城の中に駆け込んでいく。
大魔王ロロノアは、暫く遠吠えを聞いた後、ジャスに話しかけてきた。
「気高き天使よ。
魔王マダム・オカミを連れて魔王城に帰るのだ。
わしは 忙しい。」
「待ってください!」
ジャスが呼び止めるのも聞かず、大魔王ロロノアは城壁を飛び越え、城の中へと引き換えしていった。
「そ、そんな・・・。」
落ち込むジャスに ハンが声をかける。
「ジャスさん、ひとまず マダム・オカミの治療も必要になるッスから、魔王城に引き上げましょう。
隣の領土ッスから、また改めて来ればいいッス。」
「・・・はい。」
ハンとジャスの2人がかりで、気を失っているマダム・オカミを飛竜に乗せると、ジャスたちは 暗い表情のまま魔王城へと引き上げていった。
~魔王城~
魔王城に着くころには、マダム・オカミも目を覚ましていた為、3人は飛竜を降り 歩いて城の中に入った。
すると、魔戦長ベッチが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「さすが アネゴだぜ!」
「・・・?
私、何かしましたっけ?」
「何かしましたっけって、獣王が言ってたぜ!
獣王は 魔王城の気高き天使の配下に入るって!」
「・・・えっ!?」
「ジャスちゃん、どうやって魔王ロロノアを手なずけたの?
まさか、殴り合い・・・。
人は見かけによらないものね・・・。」
「ち、違います!
私は暴力で訴えたりしてないです!」
「きっと 大魔王ロロノアもジャスの魅力に負けたと思うの。
お帰り、ジャス、ハン、筋肉ババ・・・。
えっと、マダム・オカミ様。」
嬉しそうに歩いてきたノーサだったのだが、失言があったようで、そのまま奥へと引き換えしていく。
「・
・
・
おい、こら、ノーサ!
テメー、待ちやがれ!」
「ご、ごめんなさいなのー!
悪気はなかったのー!」
走って逃げるノーサを、マダム・オカミは追いかけていった。
そんな様子を見て、ジャスは久しぶりに笑顔になる。
「ハンさん、マリーさんに報告してきますね!」
「お願いするッス。
俺は 世界樹を取り戻す準備を始めるッス。
ベッチ、魔界評議会を開催する旨を全魔王に通達してほしいッス。」
「任されたぜ!」
こうして開催された魔界評議会は、主催魔王である 魔王マリーや その配下、魔界の6鬼神、暗黒騎士ドン・キホーテ、美少女魔界天使ジャス、混血のノーサなどの知名度から優位に話が進んだ。
更に、大魔王ロロノア、魔王マダム・オカミの賛成表明もあり、世界樹の奪還に満場一致で賛成となり可決された。
こうして、魔界から天界への侵攻(世界樹の奪還)が開始されることとなった。
→039へ
ハンとネロは、簡単な荷物を持ったマダム・オカミを連れ 魔王城に帰還していた。
魔王城帰還の道中、大魔王ロロノアの城に立ち寄り、説得を試みたようだが、大魔王ロロノアの同意を得ることはできなかったようだ。
落ち込み暗い表情のまま 魔王城に帰り着くと、マダム・オカミがハンに声をかけてきた。
「これからどうするつもり?
ロロノアの同意が得られなければ、天使たちと正面から戦いあうのは無謀よ。
敵は防御魔法が得意だし、集団で同時に詠唱されたらやっかいよ。
おそらく何年も争うような長期戦になるわ。」
「そうだニャン。
マダム・オカミの言うとおりだニャン。
頭数だけ揃えて、ダラダラ戦っても世界樹が枯れてしまうニャン。」
「なんとか ロロノアを説得する方法を考えるしかないッスね。」
「「「・・・。」」」
とは言っても、何もいい案が浮かんでこない。
ハン、ネロ、マダム・オカミは魔王城の城門を入ったところで動かなくなってしまった。
そんな 3人に目を真っ赤に腫らしたジャスが声をかけてきた。
「ハンさん、エンマさんに聞きました。
いまから 大魔王ロロノアさんの説得に向かうんですか?」
ハンは気まずそうに答える。
「それが・・・。」
固まってしまったハンをフォローするように、マダム・オカミがジャスに説明する。
「ジャスちゃん、大魔王ロロノアは 超強力な悪魔なの。
ただ説得したくらいでは、納得してくれなかったわ。
だけど、安心して!
大魔王ロロノアは、マリーちゃんの父上である エイルシッド様と親友だったんだから、誠意をもって説明をすれば同意を得られるわ。」
「・
・
・
ハンさん、マダム・オカミさん、大魔王ロロノアさんを説得するときは、私も連れて行ってください。
私も マリーさんの為に出来ることをしたいんです。
マリーさんは、私の大切な・・・私たちの大切な仲間ですから。」
ジャスの真剣な表情に、マダム・オカミもハンも、無言で頷く。
マダム・オカミは、持っていた荷物をネロに預けると ハンとジャスに声をかける。
「もう一度、大魔王ロロノアに面会しましょう。
かならず説得するわよ!」
「「「おぉぉぉ!!!」」」
~大魔王ロロノアの城~
マダム・オカミ、ハン、ジャスが大魔王ロロノアの城にたどり着き飛竜を降りると、城の中から数人の獣人が現れた。
「これはこれは、魔王マダム・オカミ。
次は どういった ご用件なんだ?」
「大魔王ロロノアを説得しに来たのよ。」
「先ほど、獣王様は お断りしたはずだ。」
「分かっているわ。
それでも私たちには説得しなくちゃいけない理由があるから。」
「・
・
・
魔王マダム・オカミ、確認してくるから待ってて下さいだ。」
「ええ、待っているわ。」
獣人が城の中に引き返していく。
ジャスは 大魔王ロロノアの城が気になるのか、キョロキョロと周囲を見渡していた。
ロロノアの城は 魔王城と違い、手入れがされていないのか、周囲の地面はえぐれ、城もところどころ壊れているようだ。
「ジャスさん、どうしたんスか?」
「いえ、ちょっと・・・。」
「ジャスちゃん、あまりキョロキョロしてると 無駄に怪しまれるわよ。」
「あ、ごめんなさい。マダム・オカミさん。」
マダム・オカミに注意を受けたジャスは、まっすぐ正面を見直して 大魔王ロロノアの返事を待つ。
暫くすると、先ほどの獣人が戻ってきて マダム・オカミに話しかける。
「やはり、獣王様は お会いにならないそうだ。」
獣人の言葉を聞き、ほほえみながらマダム・オカミは 頷く。
そして、胸いっぱいに 大きく息を吸い込み、大声をあげる。
「犬コロやろー、てめー!
さっさと出てきて話を聞けっつってんだろ!
せっかく来てやったのに面会しねーとか、何様のつもりだ!
上等だ!
この魔王マダム・オカミと また一戦 交えようって思ってんのか!」
青筋をたてて怒鳴るマダム・オカミをハンが必死になだめる。
「マダム・オカミ、これじゃさっきと同じ状況になるッス。
次は、ジャスさんの為にも話し合うって決めたばかりじゃないッスか!」
「ハン、ジャスちゃんを連れて下がってなさい。」
「・・・!?
やっぱり こうなるッスね。」
ジャスは ハンに手を引かれながら、マダム・オカミから距離をとる。
すると、城の城門の上から黒い影が飛びかかってきた!
黒い影は 地面に着地したと思った瞬間、マダム・オカミの頭を鷲掴みにすると、そのまま抵抗するマダム・オカミを遥かに超える力で地面に叩きつけた。
「魔王マダム・オカミ、わしが手を抜いてやっているのも分からないほど弱く愚かな魔王よ。
早々に立ち去れ。
昔なじみの お前だから許してやると言っただけだ。」
地面に叩きつけられたまま マダム・オカミが答える。
「だから、仕えるとか仕えないとか 許すとか許さないとかじゃないって言ってるじゃない。
エイルシッド様のご息女 マリーちゃんの為に力を貸せっていってんのよ!」
「ふん。」
大魔王ロロノアは、地面に抑え込んでいた マダム・オカミの頭部を、鷲掴みにしたまま高く持ち上げ激しく左右に振る。
2m近くあり筋骨隆々のマダム・オカミだが、まるで紙でできた人形のようにブンブンと振られている。
マダム・オカミは、鷲掴みにされている腕にしがみ付くことしかできないようだ。
「ぐははははっ!
マダム・オカミ、わしを従えるのならば、エイルシッド王のように わし以上の力を示せ。」
「ぐぅぬぬぬぅ!」
マダム・オカミは、ロロノアの腕にしがみ付くのが 精一杯のようで、返事をすることもできないようだ。
「ぐははははっ!」
マダム・オカミは、大魔王ロロノアの手の中で気を失ってしまった。
それを見て 豪快に笑う 大魔王ロロノアに ジャスが近づき、大魔王ロロノアを見上げながら 大きく声をあげる。
「大魔王ロロノアさん、私たちは争いに来たわけではありません。
どうか話を聞いてください。」
大魔王ロロノアは、魔王マダム・オカミを鷲掴みにしたまま、動きを止めジャスに背を向けたまま ジャスに言う。
「我々、悪魔は力こそが全て。
ここは天界ではない。
魔界は、弱き者は死に 強き者だけが生き延びる世界。
わしに意見したければ、力を示せ!」
そういうと、気を失ったマダム・オカミを放り投げジャスの方を向き直した。
「ジャスさん、早く逃げるッス!
マダム・オカミが歯が立たないのに、俺らではどうすることもできないッス!」
ハンは、ジャスの手を引き逃げるように促す。
しかし、ジャスは ハンの手を振りほどき、大魔王ロロノアを見上げながら言った。
「お願いします。
私たちと一緒に戦ってください。」
「目障りな天使よ。
そうそうに立ち去れ。」
大魔王ロロノアのプレッシャーに周囲の獣人たちも尻尾を巻いて怯えている。
しかし、ジャスは動こうとしない。それどころか、大魔王ロロノアに対して反論した。
「いやです。
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・
私は貴方が協力してくれるまで立ち去りません。」
「では、わしに天使の力を示すのか。
か弱き天使よ。お前が全力を尽くしても万が一にも奇跡は起きない。
それとも、魔王マダム・オカミのように敗れると分かっていても、その僅かな奇跡に賭けて勝負を挑むのか?」
ジャスは、無言で大魔王ロロノアを見上げている。
そして、ゆっくりと答える。
「確かに私の力は、貴方に遥かに及びません。
でも、私は引きません。」
「状況が分かっていないようだな。」
大魔王ロロノアが大きく腕を振ると、突風が起こる。
ジャスは 大魔王ロロノアが起こした突風でバランスを崩し、その場に倒れてしまった。
しかし、すぐに立ち上がり 再び大魔王ロロノアと対峙する。
その後、何度も何度もジャスは倒されては起き上がり、倒されては起き上がり、着ていた服もボロボロになっていく。
「か弱き天使よ。
なぜ、わしに反撃をしてこない。
なぜ、逃げださない。
なぜ、何度も立ち上がる。」
「それは、貴方が真の敵ではないからです。
それは、私が守りたい者の為に立っているからです。
それは・・・。」
「それは・・・?」
「それが私の考え方・・・信念だからです!」
「お前の考え方・・・信念。
天使よ、お前に問う。お前の言う 信念とは?」
ジャスは 威圧する大魔王ロロノアから目をそらすことなく 信念を語る。
「私は、悪魔も使い魔も天使も、人間たちも。
みんなで一緒に暮らせる天魔界を作りたいんです。
だから、間違った道を進んでいる天使を救い出すことが必要です。
そのためには、世界樹を取り戻してマリーさんを救わないといけません。
みんなで協力し合って 理想の天魔界を作り上げていくためには、マリーさんや ロロノアさんの力が必要なんです。
大魔王ロロノアさん!私たちに力を貸してください!」
「・
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・
本当に天使や悪魔、人間までも一緒に暮らせると?」
「私にもわかりません。
だけど、私は信じていますから。」
はにかんだように笑うジャスの表情に大魔王ロロノアも笑みがこぼれていた。
ジャスの言葉を聞き、大魔王ロロノアは空を見上げた。
「悪魔も使い魔も、天使さえも一緒に暮らせる場所・・・か。
・
・
・
ふふふっ、笑止!」
大魔王ロロノアの言葉に、周囲を囲んでいた獣人たちも笑い始める。
そんな、ロロノアにジャスは、答える。
「何もバカバカしくありません。
私は真剣です。」
笑顔の大魔王ロロノアは ジャスの青く澄み切った澱みない瞳をじっと見つめると、大きく息を吸い、遠吠えを始めた。
「アオォォォォン!
アオォアオォォォ!」
周囲の獣人たちも、大魔王ロロノアの遠吠えに合わせるように遠吠えを始めた。
遥か遠くの方からも、獣人たちの遠吠えが聞こえてくる。
周囲の獣人たちは 疾風のような速さで城の中に駆け込んでいく。
大魔王ロロノアは、暫く遠吠えを聞いた後、ジャスに話しかけてきた。
「気高き天使よ。
魔王マダム・オカミを連れて魔王城に帰るのだ。
わしは 忙しい。」
「待ってください!」
ジャスが呼び止めるのも聞かず、大魔王ロロノアは城壁を飛び越え、城の中へと引き換えしていった。
「そ、そんな・・・。」
落ち込むジャスに ハンが声をかける。
「ジャスさん、ひとまず マダム・オカミの治療も必要になるッスから、魔王城に引き上げましょう。
隣の領土ッスから、また改めて来ればいいッス。」
「・・・はい。」
ハンとジャスの2人がかりで、気を失っているマダム・オカミを飛竜に乗せると、ジャスたちは 暗い表情のまま魔王城へと引き上げていった。
~魔王城~
魔王城に着くころには、マダム・オカミも目を覚ましていた為、3人は飛竜を降り 歩いて城の中に入った。
すると、魔戦長ベッチが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「さすが アネゴだぜ!」
「・・・?
私、何かしましたっけ?」
「何かしましたっけって、獣王が言ってたぜ!
獣王は 魔王城の気高き天使の配下に入るって!」
「・・・えっ!?」
「ジャスちゃん、どうやって魔王ロロノアを手なずけたの?
まさか、殴り合い・・・。
人は見かけによらないものね・・・。」
「ち、違います!
私は暴力で訴えたりしてないです!」
「きっと 大魔王ロロノアもジャスの魅力に負けたと思うの。
お帰り、ジャス、ハン、筋肉ババ・・・。
えっと、マダム・オカミ様。」
嬉しそうに歩いてきたノーサだったのだが、失言があったようで、そのまま奥へと引き換えしていく。
「・
・
・
おい、こら、ノーサ!
テメー、待ちやがれ!」
「ご、ごめんなさいなのー!
悪気はなかったのー!」
走って逃げるノーサを、マダム・オカミは追いかけていった。
そんな様子を見て、ジャスは久しぶりに笑顔になる。
「ハンさん、マリーさんに報告してきますね!」
「お願いするッス。
俺は 世界樹を取り戻す準備を始めるッス。
ベッチ、魔界評議会を開催する旨を全魔王に通達してほしいッス。」
「任されたぜ!」
こうして開催された魔界評議会は、主催魔王である 魔王マリーや その配下、魔界の6鬼神、暗黒騎士ドン・キホーテ、美少女魔界天使ジャス、混血のノーサなどの知名度から優位に話が進んだ。
更に、大魔王ロロノア、魔王マダム・オカミの賛成表明もあり、世界樹の奪還に満場一致で賛成となり可決された。
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そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
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