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大魔王
047・暗黒騎士 VS 銀月の騎士
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ドン・キホーテは、ジャスとキジと別れた後、慎重に世界樹を探していた。
・・・つもりだった。
ドン!
ドン・キホーテの開けた扉が勢いよく開く。
開けた扉の先にあった部屋は、天使兵たちの詰所のようで、壁には武器を立てかけるための棚があった。
もちろん、地上での戦いの最中だからだろうか、詰所の中は無人で天使兵の姿は見えない。
「ここにも世界樹は無いようですゾイ。」
部屋を後にしようとした、ドン・キホーテの後を追うように一人の騎士が部屋に入ってきた。
その騎士は美しい天界銀で覆われた甲冑を身に着け、ドン・キホーテに対峙したまま動かない。
ドン・キホーテは入口に立っている騎士の只ならぬ殺気を感じ取り、手を剣の柄にかけ ゆっくりと身構える。
そんな ドン・キホーテに天界銀で覆われた甲冑を身に着けた騎士は、殺気こそあるもののドン・キホーテを刺激しないように、ゆっくりと声をかける。
「聖騎士ドン・キホーテ殿、貴方がここに現れることは知っていました。
よもや悪魔の片棒を担ぐ真似をしているとは・・・。」
「そなたには 分かるまい、・・・銀月の騎士よ。」
ドン・キホーテに 銀月の騎士と呼ばれた天界銀で覆われた甲冑を身に着けた騎士は、ゆっくりと顔を横に振り答える。
「貴方の狂態を残念に思っております。
貴方の病気は、静養が何よりです。
天界に帰ってきてくれたらと思い、迎えに来ることが最善だと考えておりました。
・
・
・
いま一度考えを改め、天界の・・・善なる者たちの為に、共に正義の刃を振り上げましょう!」
ドン・キホーテは ゆっくりと鞘から剣を引き抜き 攻撃の構えをとり 銀月の騎士の言葉に答える。
「正義の刃か・・・友よ。
人として会った時は見事に打ち負かされた。
しかし、此度は負けるわけにはいかないゾイ。
我が主の為に。」
「貴方は、悪魔に騙されているだけです!
騎士の務めを忘れてしまったのですか?
悪を成敗するのは、騎士の務め。
私たちは正義の為に悪を打ち滅ぼす騎士。
命に代えても正義を執行する必要があります!」
「銀月の騎士よ・・・。
お主にとっての正義とは?」
「私にとっての正義は悪を打ち滅ぼすことです!」
「では、悪とは?」
「悪魔が世界に存在することです。
奴らを一匹残らず始末することで この世界に秩序がもたらされます。
例え、生まれたばかりの悪魔であったとしても、全て打ち滅ぼさなければなりません。
それが 正義の執行であり、悪を打ち滅ぼす騎士の務めだからです!
ドン・キホーテ殿、私と一緒に悪魔どもを打ち滅ぼしましょう。
いまなら まだ間に合います。
悔い改め、悪魔との主従関係など無かったことに・・・。」
ドン・キホーテは、銀月の騎士の熱い思いに 首を横に振り答える。
「・・・わしと悪に対する考え方に違いがあるようじゃゾイ。
マリー様は・・・魔界の住人たちは、決して全てが悪ではない。
そして 此度は わしが信じる善なる者たちの為に行動しておる。
悔い改めることなど 何も無いゾイ。」
銀月の騎士は ドン・キホーテの言葉に深く頷くと、腰に携える剣を引いた。
「貴君には失望しました。
正気を失うばかりか、その心を邪悪なものに毒されるとは。
・・・立派な騎士であると信じていたのに。」
「・
・
・
わしの心根は、昔から何も変わっておらゾイ。
ある天使と出会い、物の見方が変わっただけじゃ。」
「・・・済度し難い。」
ドン・キホーテは 銀月の騎士が視線を外した刹那、構えた剣で斬りかかる。
銀月の騎士は この攻撃を予測していたかのように、ドン・キホーテの斬撃を落ち着いて受け流し反撃に出る。
銀月の騎士の斬撃は ドン・キホーテの側頭部を掠めた。
幸いにも兜を掠めただけだが、ドン・キホーテは その攻撃でよろめいてしまう。
銀月の騎士は 追撃を行わず、ドン・キホーテが体勢を立て直すのを待ちながら、こう言い放った。
「貴君では 私に勝てない。
貴君と私では 剣の腕前が違いすぎる。
どんなに 足掻いても、私には勝てません。」
銀月の騎士は剣を高く振り上げて、体勢を立て直した ドン・キホーテに激しく振り下ろす。
ドン・キホーテは なんとか体を捩じるように 攻撃を回避し 距離をとる為に素早く後方に飛び去る。
しかし、銀月の騎士は そんな動きを予測していたのか、そのまま間合いを詰め、ドン・キホーテに頭突きを喰らわせた。
「うぐっ!」
ドン・キホーテは 兜越しの衝撃にも関わらず、一瞬だけ意識を失った。
そのまま後ずさりするように距離を取り、再び剣を構える。
銀月の騎士は 深追いせず、再び武器を構え ドン・キホーテと対峙した。
「力の差は明確です、いまからでも遅くありま・・・。」
「くどい!
わしは、マリー様に忠誠を誓った、竜殺しの勇、暗黒騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ。
主を裏切るなど言語道断。
例え 力量の差があろうとも、主を救う為、必ず お主に勝利し世界樹を取り戻すゾイ!」
ドン・キホーテは、再び剣を構え、薙ぎ払うように剣を振る。
銀月の騎士は、ドン・キホーテの斬撃を受け止め、体当たりで反撃する。
体当たりを受け、よろめきながらも すぐさま体制を立て直し、再び剣を振るう。
しかし、ドン・キホーテの剣は紙一重で空を切り、次の攻撃に移る隙に 銀月の騎士の強烈な一撃を兜に受け、再びよろめく。
銀月の騎士は、攻撃の手を休めることなく、連続でドン・キホーテを斬りつける。
その攻撃は 威力も軽く致命傷になることはないのだが、隙も無く ドン・キホーテは受けに徹することしか出来ない。
「お、おにょれー!」
ドン・キホーテは、傷を受けることを覚悟した上で反撃に出るが、その反撃も読まれてしまっていたのか、銀月の騎士に触れることなく空を切る。
銀月の騎士は、ドン・キホーテの攻撃を回避した直後に前蹴りを放ち、ドン・キホーテの腹部を激しく蹴りつける。
「・・・くっ!」
その場に尻を着くドン・キホーテに銀月の騎士が吐き捨てるように呟く。
「無駄です。
正当な剣の使い手である貴君では、私に勝つことは出来ません。
なぜなら、貴君の剣筋は純粋なまでに基本に忠実な剣ですから。
ドン・キホーテ殿、潔く降参して下さい。
私も他の悪魔たちを征伐に行かなければなりませんから。」
銀月の騎士は そう言い放つと、再び剣を構えた。
ドン・キホーテも基本に忠実な剣と指摘を受けたが、いままでと同じように剣を構える。
二人が争っている間に、騒ぎを聞きつけた天使兵たちが部屋の外に次々と集結していた。
「銀月の騎士よ。
たとえ皆に笑われようとも、わしの信じた・・・わしを信じ、受け入れてくれた仲間たちの為に、わしは 命を捨てる覚悟があるゾイ。
お主が わしの仲間たちを傷つけるというのなら、刺し違えても食い止めるしかないゾイ。」
「貴君が私と刺し違える、
・
・
・
ありえません。」
「やってみなければ分からないゾイ。
それに お主、まだ勝ち越しておるわけではないじゃろう。
・
・
・
なあ、鏡の騎士よ。」
「・・・言い訳はしません。」
両者の間に殺気がみなぎり、通路で待機していた天使兵たちも固唾をのむ。
「「「いざ!」」」
やはり先に仕掛けたのは ドン・キホーテであった。
ドン・キホーテは、大きく頭上に構えた剣を全力で振り下ろす。
銀月の騎士は、少し大きめに間合いを取り、ドン・キホーテの強打をゆとりをもって回避し反撃に出る。
いままでのような様子見の攻撃ではなく、ドン・キホーテの鎧の隙を狙った鋭い突きであった。
銀月の騎士は、ドン・キホーテの次の行動を予測していた。
この予測こそが、銀月の騎士の強さであろう。
銀月の騎士の予測では、連続攻撃に注意して大きめに回避するか、セオリー通りに武器を払うかである。
おそらく正攻法な上に猪突猛進な性格のドン・キホーテは突きを払い反撃を試みると考えていたのだが・・・。
ズサ!
「・
・
・
な、なぜ!?」
「なぜじゃろうな。
短い人生 楽しんだ方がいいと言われたことを思い出してしまったんじゃ。」
銀月の騎士の放った突きは、ドン・キホーテの右手の平に突き刺さり、そのまま肘を貫通していた。
ドン・キホーテは、左手に持っていた剣を銀月の騎士の喉元に当てる。
「決まりだゾイ。」
「そのようですね。
しかし、なぜこんな無謀な事をしたんですか。」
「いつだったかのー。
女神ディーテ様が わしに掛けてくれた言葉じゃゾイ。
・
・
・
自分が信じた道、苦労もあるかもしれないけど、もっと楽しんだらいい・・・とな。
その言葉が頭をよぎった。
・
・
・
未来を生きるには、いまを生きのびるしかないんじゃ。
わしが信じた道。マリー様の考える未来を実現させる道・・・。」
「自分の信じた道・・・ですか。」
「そうじゃ、わしの信じた道・・・。
それは、我が主、マリー様の進む道じゃ。
マリー様の願う未来、天使も悪魔も人間も使い魔も、皆が協力し合って暮らしていく世界を作り上げること。
それが わしの信じる道じゃ、マリー様の願いを叶える為なら、この身など惜しくもないゾイ。
・
・
・
それに、すでに魔王城には、天使も悪魔も人間も使い魔も、協力し合える環境が揃いつつあるんじゃ。
どうじゃ、わくわくするじゃろ。」
「・・・やはり、貴方は変人だ。」
銀月の騎士は、左手で自分のこめかみ付近を トントンと指で叩きながら微笑むと、ドン・キホーテに刺さる剣の柄を手放し兜を脱いだ。
「私の知らなかった正義が・・・。
女神ディーテが夢見た未来が魔界にはあるようですね。
しかし、確かに苦労しそうだ。」
銀月の騎士は、部屋の外で待機する天使兵の方を向き直すと、持っていた短剣を引き抜き、身構える。
「ドン・キホーテ殿、私も貴殿の信じた道を共に進んでみたくなりました。」
ドン・キホーテも 右手に刺さった剣を引き抜くと、銀月の騎士の横に並び 答える。
「銀月の騎士よ、共に正義の・・・。
いや、素晴らしき未来の為に戦おうゾイ!」
「ええ、いばらの道でしょうが共に戦いましょう!
我らを導いた、女神ディーテの為に。」
「うむ!
女神ディーテの子、マリー様の為に戦うゾイ!」
「「「・・・え?」」」
ドン・キホーテの言葉に、銀月の騎士を始め、周囲の天使たちも目を丸くして驚きの表情を見せる。
その様子に気付いたドン・キホーテは、何かを思い出したように、照れながら答える。
「そういえばそうじゃった。
マリー様の本当の名前は、マリエル様じゃ。
ニルヴァーナ・マリエル・トライアス様、
わしらを導いてくれたディーテ様の子じゃゾイ。」
「・・・。」
(ドン・キホーテよ!
それを早く言って下さい。
おお、ディーテ様、不敬な私に罰を与えて下さい。)
→048へ
・・・つもりだった。
ドン!
ドン・キホーテの開けた扉が勢いよく開く。
開けた扉の先にあった部屋は、天使兵たちの詰所のようで、壁には武器を立てかけるための棚があった。
もちろん、地上での戦いの最中だからだろうか、詰所の中は無人で天使兵の姿は見えない。
「ここにも世界樹は無いようですゾイ。」
部屋を後にしようとした、ドン・キホーテの後を追うように一人の騎士が部屋に入ってきた。
その騎士は美しい天界銀で覆われた甲冑を身に着け、ドン・キホーテに対峙したまま動かない。
ドン・キホーテは入口に立っている騎士の只ならぬ殺気を感じ取り、手を剣の柄にかけ ゆっくりと身構える。
そんな ドン・キホーテに天界銀で覆われた甲冑を身に着けた騎士は、殺気こそあるもののドン・キホーテを刺激しないように、ゆっくりと声をかける。
「聖騎士ドン・キホーテ殿、貴方がここに現れることは知っていました。
よもや悪魔の片棒を担ぐ真似をしているとは・・・。」
「そなたには 分かるまい、・・・銀月の騎士よ。」
ドン・キホーテに 銀月の騎士と呼ばれた天界銀で覆われた甲冑を身に着けた騎士は、ゆっくりと顔を横に振り答える。
「貴方の狂態を残念に思っております。
貴方の病気は、静養が何よりです。
天界に帰ってきてくれたらと思い、迎えに来ることが最善だと考えておりました。
・
・
・
いま一度考えを改め、天界の・・・善なる者たちの為に、共に正義の刃を振り上げましょう!」
ドン・キホーテは ゆっくりと鞘から剣を引き抜き 攻撃の構えをとり 銀月の騎士の言葉に答える。
「正義の刃か・・・友よ。
人として会った時は見事に打ち負かされた。
しかし、此度は負けるわけにはいかないゾイ。
我が主の為に。」
「貴方は、悪魔に騙されているだけです!
騎士の務めを忘れてしまったのですか?
悪を成敗するのは、騎士の務め。
私たちは正義の為に悪を打ち滅ぼす騎士。
命に代えても正義を執行する必要があります!」
「銀月の騎士よ・・・。
お主にとっての正義とは?」
「私にとっての正義は悪を打ち滅ぼすことです!」
「では、悪とは?」
「悪魔が世界に存在することです。
奴らを一匹残らず始末することで この世界に秩序がもたらされます。
例え、生まれたばかりの悪魔であったとしても、全て打ち滅ぼさなければなりません。
それが 正義の執行であり、悪を打ち滅ぼす騎士の務めだからです!
ドン・キホーテ殿、私と一緒に悪魔どもを打ち滅ぼしましょう。
いまなら まだ間に合います。
悔い改め、悪魔との主従関係など無かったことに・・・。」
ドン・キホーテは、銀月の騎士の熱い思いに 首を横に振り答える。
「・・・わしと悪に対する考え方に違いがあるようじゃゾイ。
マリー様は・・・魔界の住人たちは、決して全てが悪ではない。
そして 此度は わしが信じる善なる者たちの為に行動しておる。
悔い改めることなど 何も無いゾイ。」
銀月の騎士は ドン・キホーテの言葉に深く頷くと、腰に携える剣を引いた。
「貴君には失望しました。
正気を失うばかりか、その心を邪悪なものに毒されるとは。
・・・立派な騎士であると信じていたのに。」
「・
・
・
わしの心根は、昔から何も変わっておらゾイ。
ある天使と出会い、物の見方が変わっただけじゃ。」
「・・・済度し難い。」
ドン・キホーテは 銀月の騎士が視線を外した刹那、構えた剣で斬りかかる。
銀月の騎士は この攻撃を予測していたかのように、ドン・キホーテの斬撃を落ち着いて受け流し反撃に出る。
銀月の騎士の斬撃は ドン・キホーテの側頭部を掠めた。
幸いにも兜を掠めただけだが、ドン・キホーテは その攻撃でよろめいてしまう。
銀月の騎士は 追撃を行わず、ドン・キホーテが体勢を立て直すのを待ちながら、こう言い放った。
「貴君では 私に勝てない。
貴君と私では 剣の腕前が違いすぎる。
どんなに 足掻いても、私には勝てません。」
銀月の騎士は剣を高く振り上げて、体勢を立て直した ドン・キホーテに激しく振り下ろす。
ドン・キホーテは なんとか体を捩じるように 攻撃を回避し 距離をとる為に素早く後方に飛び去る。
しかし、銀月の騎士は そんな動きを予測していたのか、そのまま間合いを詰め、ドン・キホーテに頭突きを喰らわせた。
「うぐっ!」
ドン・キホーテは 兜越しの衝撃にも関わらず、一瞬だけ意識を失った。
そのまま後ずさりするように距離を取り、再び剣を構える。
銀月の騎士は 深追いせず、再び武器を構え ドン・キホーテと対峙した。
「力の差は明確です、いまからでも遅くありま・・・。」
「くどい!
わしは、マリー様に忠誠を誓った、竜殺しの勇、暗黒騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ。
主を裏切るなど言語道断。
例え 力量の差があろうとも、主を救う為、必ず お主に勝利し世界樹を取り戻すゾイ!」
ドン・キホーテは、再び剣を構え、薙ぎ払うように剣を振る。
銀月の騎士は、ドン・キホーテの斬撃を受け止め、体当たりで反撃する。
体当たりを受け、よろめきながらも すぐさま体制を立て直し、再び剣を振るう。
しかし、ドン・キホーテの剣は紙一重で空を切り、次の攻撃に移る隙に 銀月の騎士の強烈な一撃を兜に受け、再びよろめく。
銀月の騎士は、攻撃の手を休めることなく、連続でドン・キホーテを斬りつける。
その攻撃は 威力も軽く致命傷になることはないのだが、隙も無く ドン・キホーテは受けに徹することしか出来ない。
「お、おにょれー!」
ドン・キホーテは、傷を受けることを覚悟した上で反撃に出るが、その反撃も読まれてしまっていたのか、銀月の騎士に触れることなく空を切る。
銀月の騎士は、ドン・キホーテの攻撃を回避した直後に前蹴りを放ち、ドン・キホーテの腹部を激しく蹴りつける。
「・・・くっ!」
その場に尻を着くドン・キホーテに銀月の騎士が吐き捨てるように呟く。
「無駄です。
正当な剣の使い手である貴君では、私に勝つことは出来ません。
なぜなら、貴君の剣筋は純粋なまでに基本に忠実な剣ですから。
ドン・キホーテ殿、潔く降参して下さい。
私も他の悪魔たちを征伐に行かなければなりませんから。」
銀月の騎士は そう言い放つと、再び剣を構えた。
ドン・キホーテも基本に忠実な剣と指摘を受けたが、いままでと同じように剣を構える。
二人が争っている間に、騒ぎを聞きつけた天使兵たちが部屋の外に次々と集結していた。
「銀月の騎士よ。
たとえ皆に笑われようとも、わしの信じた・・・わしを信じ、受け入れてくれた仲間たちの為に、わしは 命を捨てる覚悟があるゾイ。
お主が わしの仲間たちを傷つけるというのなら、刺し違えても食い止めるしかないゾイ。」
「貴君が私と刺し違える、
・
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ありえません。」
「やってみなければ分からないゾイ。
それに お主、まだ勝ち越しておるわけではないじゃろう。
・
・
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なあ、鏡の騎士よ。」
「・・・言い訳はしません。」
両者の間に殺気がみなぎり、通路で待機していた天使兵たちも固唾をのむ。
「「「いざ!」」」
やはり先に仕掛けたのは ドン・キホーテであった。
ドン・キホーテは、大きく頭上に構えた剣を全力で振り下ろす。
銀月の騎士は、少し大きめに間合いを取り、ドン・キホーテの強打をゆとりをもって回避し反撃に出る。
いままでのような様子見の攻撃ではなく、ドン・キホーテの鎧の隙を狙った鋭い突きであった。
銀月の騎士は、ドン・キホーテの次の行動を予測していた。
この予測こそが、銀月の騎士の強さであろう。
銀月の騎士の予測では、連続攻撃に注意して大きめに回避するか、セオリー通りに武器を払うかである。
おそらく正攻法な上に猪突猛進な性格のドン・キホーテは突きを払い反撃を試みると考えていたのだが・・・。
ズサ!
「・
・
・
な、なぜ!?」
「なぜじゃろうな。
短い人生 楽しんだ方がいいと言われたことを思い出してしまったんじゃ。」
銀月の騎士の放った突きは、ドン・キホーテの右手の平に突き刺さり、そのまま肘を貫通していた。
ドン・キホーテは、左手に持っていた剣を銀月の騎士の喉元に当てる。
「決まりだゾイ。」
「そのようですね。
しかし、なぜこんな無謀な事をしたんですか。」
「いつだったかのー。
女神ディーテ様が わしに掛けてくれた言葉じゃゾイ。
・
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自分が信じた道、苦労もあるかもしれないけど、もっと楽しんだらいい・・・とな。
その言葉が頭をよぎった。
・
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未来を生きるには、いまを生きのびるしかないんじゃ。
わしが信じた道。マリー様の考える未来を実現させる道・・・。」
「自分の信じた道・・・ですか。」
「そうじゃ、わしの信じた道・・・。
それは、我が主、マリー様の進む道じゃ。
マリー様の願う未来、天使も悪魔も人間も使い魔も、皆が協力し合って暮らしていく世界を作り上げること。
それが わしの信じる道じゃ、マリー様の願いを叶える為なら、この身など惜しくもないゾイ。
・
・
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それに、すでに魔王城には、天使も悪魔も人間も使い魔も、協力し合える環境が揃いつつあるんじゃ。
どうじゃ、わくわくするじゃろ。」
「・・・やはり、貴方は変人だ。」
銀月の騎士は、左手で自分のこめかみ付近を トントンと指で叩きながら微笑むと、ドン・キホーテに刺さる剣の柄を手放し兜を脱いだ。
「私の知らなかった正義が・・・。
女神ディーテが夢見た未来が魔界にはあるようですね。
しかし、確かに苦労しそうだ。」
銀月の騎士は、部屋の外で待機する天使兵の方を向き直すと、持っていた短剣を引き抜き、身構える。
「ドン・キホーテ殿、私も貴殿の信じた道を共に進んでみたくなりました。」
ドン・キホーテも 右手に刺さった剣を引き抜くと、銀月の騎士の横に並び 答える。
「銀月の騎士よ、共に正義の・・・。
いや、素晴らしき未来の為に戦おうゾイ!」
「ええ、いばらの道でしょうが共に戦いましょう!
我らを導いた、女神ディーテの為に。」
「うむ!
女神ディーテの子、マリー様の為に戦うゾイ!」
「「「・・・え?」」」
ドン・キホーテの言葉に、銀月の騎士を始め、周囲の天使たちも目を丸くして驚きの表情を見せる。
その様子に気付いたドン・キホーテは、何かを思い出したように、照れながら答える。
「そういえばそうじゃった。
マリー様の本当の名前は、マリエル様じゃ。
ニルヴァーナ・マリエル・トライアス様、
わしらを導いてくれたディーテ様の子じゃゾイ。」
「・・・。」
(ドン・キホーテよ!
それを早く言って下さい。
おお、ディーテ様、不敬な私に罰を与えて下さい。)
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