上 下
1 / 4
一章 ヒールが否定されるだけの簡単な世界

ヒーラーと呼ばれた男 前

しおりを挟む

「ここでヒール!!」

・マサのヒール!
・ユートのHPが400回復した

『マサナイス!』

『じゃあここでとどめさしてよ!ヒロ!』

『おっけー!任せろ!』

「じゃあここで防御攻撃バフかけたほうがいいよな…」

Fキーに手を伸ばす。

・マサのアタックアップ!
・パーティ全体の攻撃が上がった!

「まだだ!」

・マサのディフェンスアップ!
・パーティ全体の防御が上がった!

『っしゃあいくぜ!』

・ヒロのファイアスラッシュ!
・ユートのファイアスラッシュ!
・2人の技が合体する!

「勝ったな!!」

・ヒロ、ユートの二連炎撃!!
・敵パーティ全体に590のダメージ!
・敵パーティは倒れた。
・[ファイアパラディンズ]の勝利!

『勝ったー!!!』

『マサナイスー!今日もいい動きー!』

これだ。

『あそこヒールなかったら死んでたわーw』

この快感が好きなのだ。

自分のおかげでチームが勝利する、まるで自分が神かのように。

『いやいや最後のスキルがなかったら結局ダメだったってw』

『俺もそんなこと言ってみてーなー!じゃあ俺落ちるわ!また明日!』

『おう!また明日がんばろーぜ!』

ギルドの皆がログアウトしていく、レベル上げの時間だ。

ヒーラーというのはバトルでは真っ先に狙われる、よって敵のレベル+10はないときつい、と思う。

このゲームは幸いなことにレベルの上限がない、努力すれば誰でも最強を目指せる

猫背になっていた姿勢を正し、手を伸ばす

「よし!頑張るか!」











_______________



「今日はここまででいいか」

結局マサ、もとい正人はレベルを12上げた、そして時間を確認する。

「あれ?もう3時か」

結局皆が落ちてから5時間経ったらしい

「それじゃあそろそろ寝るか」

マウスを動かしログアウトを押す。
続けてシャットダウンを押す

「また強くなったなって褒められるといいなー…ヒロとユート褒めてくれるかな」

そんなくだらない考え事をしているうちに眠りにつく…













目がさめると草の上で寝ていた。

決して野宿をしたというわけではない、パソコンをしていたのだから断じて違う。

しかもここは見慣れた景色はなかった、その代わりに憧れていた景色が広がっていた

「なんだよここ…」

どうやら異世界というところに来てしまったらしい

その証拠と言ってはなんだが村人が魔物に襲われている

……ん?襲われている?

「ひいいいい!助けてくれえええ!」

村人はこちらと目があったのを確認するとマサに言うかのように助けを求めて来た

「助けてって…俺何もできないよ?」

「とにかく助けてくれえええ!」

村人は逃げながらこちらへ叫ぶ、元気なものだ。

だがその元気もしばらくすればなくなってしまったようで、

「ぐあぁぁぁ!!」

めちゃくちゃにされていた。

魔物はストレス発散したかったのか村人をめちゃくちゃにするといなくなってしまった。

「うぅ…いっそのこと殺してくれ…」

村人は自暴自棄になっていた

だがここでマサは考えた

自分にヒールが使えないかと

「えい!ヒール!・・・なんちゃって」

ゲームの中では魔法は使えるものの実際に言ってみると恥ずかしいものだ、顔を赤らめ、村人を確認する


なんと傷が癒えていた、どうやらマサにはヒーラーの素質があるらしい

「あのー…大丈夫ですか?」

「・・・」

「あの「なんてことしてくれたんだ!!!」

初めてだった、ヒールをして怒られるのは。

「傷が治ってしまっている…ということはもう一回あの恐怖の中で生きなければならないのか…」

村人がブツブツ何かを言っている。
しばらくして

「そんなのはごめんだ!俺は自分で命を絶つ!全部お前のせいだ!」

村人は懐からナイフを取り出す、そしてそのまま喉元へ…

ナイフを突き刺しそのまま真下へ降ろす。

降ろしていくスピードが落ちる、どうやら死んでしまったらしい

「っ!どうして…」

『もう一回あの恐怖の中で生きなければならないのか…』

その言葉が引っかかる、そして思った。

魔物に襲われたトラウマまでは回復できないのだと。

冷静になって考えてみると一度襲われたら二度と襲われたくないものだ。

どうやらこの世界はヒールが使えない世界らしい。




しおりを挟む

処理中です...