ショタ魔王と第三皇子

梅雨

文字の大きさ
6 / 48
ショタな魔王様

5

しおりを挟む
本当に大切なものだったことは彼の顔を見ればわかる。
一体何をやらかしたんだ俺はと頭を掻く。
ゆっくり花畑に腰を下ろし、胡座の上で肩肘をついた。
目線が合わせるともちろん目も合う。アルは気まずそうにしているが、目を逸らすことはしなかった。

「ニオは、あそこに帰りたいの?あの白いだけのお城に」

大陸一純粋で純潔な城。アスラトリスの白は永遠のもの。
国の子供でも復唱できる言葉。言い聞かせるように、何度も何度も覚えさせられる。言葉に違いなく、城も国も基本的には白い。
黒いものを無理やり上から塗り潰すみたいに。
......黒にどんなに色を混ぜても、白にはならないことを知ってるくせに。

「帰りたい.....よ」
「どうして?あそこにニオがいる理由は何?」

真っ直ぐで、宝石のような瞳に見つめられて、少したじろいだ。
理由を聞かれた瞬間、すぐに浮かばなかった自分が嫌になる。

「国のため、というか家族のためかな」

血のつながりは消えない。
出来損ないのなり損ないの俺はいつでも国を出ていいと言われていた。自由にしろと、言ってしまえば諦められた。でも捨てられたわけじゃなかった。
皇子としての最低限の教育は受けたいと言えば受けられたし、部屋だって望めば豪華な部屋も用意される。
けれどどこまで行っても空虚な感情はついてまわって。
死にたくない。城にはいたくない。でも一人で生きられるだけの力も勇気もない。俺は本当に情けない奴だった。

「あそこには、父も弟達もいる」

俺がいてもいなくても、何も変わらないあの場所が俺は何よりも大事だということを知っている。
国が回るための全てを担う家族達。
捨てないでいてくれた感謝より、殺さないでいてくれた喜びよりも懐かしい記憶。それは本当に小さい頃の話だ。
笑顔の両親、赤子の弟達。あの小さな手を握った出来損ないじゃなかったときの俺。朧げなのに輝いている幸せの時間。
俺があの国を愛する理由はそれだけだった。
家族のいる国。家族の愛する国。家族が守る国。

「国に俺はいらない。けど俺にはあの国が必要だ。あの場所だけが俺の居場所だから」
「ここをニオの居場所にすればいいじゃない」
「......ここに俺の家族はいないよ」
「僕も家族だよ。君が許してくれるなら家族になる」

ずいっと目の前にオルレアが一輪差し出される。それもすぐ粒に、砂になって消えていってしまうけれど。吹いて浮かんだその先には、揺らがない夜空のような瞳がじぃっと俺を見つめている。

「俺が、許す?」
「僕は無理矢理嫌なこと、あんまりニオにしたくない。だからニオにはずっと自分の意思でここにいてほしい。僕の、お嫁さんになってほしい」

純然たる愛情を向けられたのは初めてだった。
あんなに澄んでいるように感じた国より、暖かい。

「君の守りたいもの、大切なもの。ずっと刺さってるものも。全部共有させて。傷を抱えすぎて苦しそうなニオを僕は見たくない」
「どうしてそこまで」
「僕はニオが好き。言っておくけど、ニオに断られてもお城を壊したりも国を落としたりもしない」

アルが俺の手を握る。
魔王なのにか弱くて人の子と変わらない小さな手だ。俺の体温よりずっと低くて冷たいのに、身体中に広がる熱は一体なんだろう。

「イエスもノーも君が決めて。ニオの大切の天秤はどちらに傾いてる?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

処理中です...