ショタ魔王と第三皇子

梅雨

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デートの準備

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無様にも踏み外した地面。そのまま前に倒れてビターン。

「痛い......」
「ニオ様。ククシュルト様の屋敷へ到着いたしました。こちらへ、あちらへ、どうぞ」

悶えていようがお構いなしに急かされる。
目の前の男、というかゴーレム以外に影はない。それなのに肌を刺すような屋敷を通り抜ける風はなんだろう。

「......ずっと張り詰めてるみたいな」

案内されるがままに歩きながら辺りをキョロキョロと見回す。屋敷の中は柔らかい色で満ちていた。けれど陽光の中で浮かぶ埃や、窓の向こうで好き勝手に蔓を伸ばす植物達を見てはここに貴族が住んでいるとは想像できない。
清潔という言葉を好み、不潔を嫌うというのが貴族だと教わった。想像力の足りない俺は、不甲斐なく初見はどうしても今までの知識に頼ってしまう。

「この先です。お入りください」

男に合わせる様に足を止める。思わず固唾を飲んで、自分より少し高い扉を見つめた。周りと比べ唯一、この目の前の扉だけ掘りに埃ひとつなくただ堂々とその戸を閉じている。

「失礼します」

扉は案外軽かった。けれど開く音は重い。何か別のものまでくっついているような、重なって崩れてくるような。雪崩の如く押し寄せてきている......よう、な。

「って本当に崩れてきてる⁉︎」

扉の向こうに積まれていたであろう木箱が自分の真横スレスレに倒れる。中からは様々な模様で彩られている布の切れ端。コロコロと転がっていく刺繍糸とそれを追いかける様に散らばる小さな針。
視線を前に戻せば、何も着せられていないトルソーや座るという本来の機能を忘れ物置とかした椅子。かき混ぜられた裁縫箱のような景色が目的地だと言わんばかりに広がっている。

「ククシュルト様。ニオ様をお連れいたしました。ククシュルト様」

ゴーレムの声に反応してどこからともなく呻き声が返ってくる。ガチャガチャと物が倒れる音。布や箱を押し除けて、ひょっこり姿を見せた青年は丸眼鏡を掛け直すとこちらに大きく手を振った。

「いらっしゃいませニオ様~‼︎ボクがククシュルトです~‼︎ククシュルト・ワーグナーです~‼︎」
「ニオ・ムーンヴィストです」
「ごめんなさい‼︎さっきまで準備万端だったんですけど......色々やってたらまた元通りになっちゃって......‼︎すぐ元に戻しますので、少々お待ちくださいね‼︎」




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