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 思ったよりヤバいらしい

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ヒロインのストーカー行為が発覚した後、私はお兄様とタイガとヴォルクを連れて図書室の方に訪れていた。
何故かって?ただの気まぐれですわ。
授業の方も入学式はあったがあと数日間の間は寮への引越しやその他諸々の準備期間らしい。私は入学式前に引越しも終了しておりますし、他の貴族にも友人なんていませんので。一匹狼という名のボッチですわ。

「……アレン、何で此処に来たの?」

「特に理由はございませんわ。ただの気まぐれです。」

【アレン、俺っち本読んできていい?】
「僕も……」

「いいわよ。タイガ、ヴォルク」

【あーい、行ってきマース。】
「……行ってくる」

ここは魔法学園の図書室。だか、その大きさは前世の世界のショッピングモールの二倍くらいの広さで図書室というよりは要塞。だから、こんな風に声を掛けてから行動しないと迷子になる。声を掛けてからではないと私も魔法でGPSみたいなの付けられないし、あの子達自身もまだ学園に来て日が浅い今、自身の力で帰ってくるのも難しいかもしれない。
まぁ一応三人共、神やら狼やらで何とか出来るだろうが念の為だ。

「……それで、ストーカーの事」

「あぁ、丁度私達だけですしいいですよ」

お兄様はストーカーの件で色々まだ思ってる事があったらしく二人になるのを待っていたのかもしれない。

「で、お兄様。聞きたい事が幾つかあるのですが大丈夫ですか?言いたくないことは言わなくても結構ですから」

「……分かった」

「まずは、一つ。何故そのストーカーの犯人がアリスさんだと分かったのですか?手紙には名前も書いてありませんでしたけど」

これは、私が結構気になってた事の一つ。お兄様は私達にこの事を話した時、犯人の名前は出さなかったが犯人の正体を知っているように見えた。それともう一つ私がという単語だけしか指してないのにアリスさんだと言う事が分かった事。私の勘違いでなければお兄様は元々犯人の目星はついていた。

「…それは、視線だよ。被害にあって間もない頃、そのアリスさんが執拗に絡んできてその時の視線と時々感じる不気味な視線と似ていたからだよ。僕の能力もアレンとまではいかないけど気配を察知する事は出来るからね。それで様子を見ていたら分かった。」

なんというチート。魔法が使えるからってそんなスキル使えるのかよおい。持っていて悪い事はないけれども色々チート過ぎんか?まぁ、それで犯人が分かっていたんでいいんですけど(おまいう)

「二つ目、アリスさんと初めて会ったのはいつか」

「……それは、入学式の後だよ。アレンもその場にいたでしょ?あの時が初めて。」

「三つ目、マトリックス殿下、ブルーラン=ベアトリス様、アルフレッド=サラザール様、ロゼ=カタール様との交流がありますか?」

「マトリックス殿下はアレンの婚約者という名目で、ロゼ=カタールも同様。ブルーラン=ベアトリスも同じ貴族としてなら、アルフレッド=サラザール様とは無い。にしても、何故こんな事を聞くんだ?」

「……それはハイタカが帰ってきたら分かりますわ。私からの質問は以上です。お兄様から疑問は無いですか?」

「……お願いならある」

「応えられる範囲ならなんでもどうぞ」

……怖いな。何だ?今サラッと受け入れたがお兄様からお願いってどんなんだよ。学園に入るまで一切交流がなかった兄弟からのお願いは全然読めない。それも、最近お兄様が私に対して謎に絡んでくるからもっと分からない。

「……抱き締めさせて?」

お兄様は首をコテンッと傾げて手を広げる。

(エッロ)

素直に言っていい?エロい。何だこのお兄様は。うわ、お兄様に抱かれたら(?)腕の中で死ねる。
あぁー、止めてぇ!その仔犬みたいな顔止めてぇ!分かった、していいしていいから。

「分かりました…」

お兄様に身を任せ、その広い胸に顔を埋める。お兄様も、しどろもどろしながらも私の体を抱き締める。時々、力を弱めたり強めたりして痛くないか確認してるみたい。
……やっぱりお兄様も怖かったのだろうか?アレンならきっとお兄様の気持ちも分かったかもしれない。でも、私には分かりそうにないなぁ。

アレンはお兄様の妹で血の繋がった家族だけど、羽場 瑠夏はこの人の妹でもないし、ましてや赤の他人。
それに、私はもうこの人達の知ってるアレンじゃない。いや、そもそもアレンじゃないのかもしれない。だって、アレンがどう生きてきて、その時どう思っていたのかは覚えてるけど、その過ごしてきた日々が私とは思えないもの。なんだがその人の人生を映像で見てるようなそんな感じ。

カラダはアレンだけど、ココロはアレンじゃない。

もう、この人達の知るアレンはいない。

私は本当に誰なんだろう?








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