不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【幼児ブロマンス期→BL期 成長物語】

はぴねこ

文字の大きさ
127 / 286
周遊編

126 ナタリアの誕生日 03

しおりを挟む
 ナタリアの誕生日にはカルロだけを同伴させる予定だったのだが、パーティーが開かれる大広間には護衛が付き添えないだろうという話になり、ヘンリックも従者として同伴させるようにと両親、乳母、グレデン卿などの大人たちから説得され、渋々とヘンリックも連れて行くこととした。
 できるだけヘンリックとナタリアが接点を持たないように気をつけなければならないだろう。

 魔塔主にお願いして、私とグレデン卿、そしてヘンリックをルシエンテ帝国の城の私が以前使っていた部屋に転移させてもらった。
 今回は私だけではないため、オーロ皇帝の執務室に直接転移するのは絶対にやめてほしいと繰り返しお願いしたため、きちんと部屋に転移してくれた。
 部屋に到着してからまたメイドか誰かを捕まえる予定でいたのだが、部屋にはノアールが待っていてくれた。

「リヒト様、ようこそおいでくださいました」
「ノアール、二日間、お世話になります」

 私はノアールにヘンリックを紹介した。
 従者として紹介したのだが、ノアールはすぐにヘンリックが剣を扱えることを見抜いたようだった。

「パーティー会場にグレデン卿は入れませんからな」

 相変わらず鋭い老執事に私は苦笑する。

「ヘンリック様の衣装もこちらでご用意いたします」

 そう言ってくれたノアールに後からカルロも来ることを伝えると、カルロの衣装はすでに用意してくれていると教えてくれた。

 衣装を試着し、サイズに問題がないことを確認の上、髪型や装飾品を決めていく。
 そんなことをしている少しの合間、人がいなくなった隙をついてカルロが私の影から出てきた。

 「リヒト様、お待たせいたしました」

 微笑んだカルロはなんだか大人っぽくなっていた。
 カルロは前と同様に私の部屋の中にある従者専用の部屋を使っていたが、第一補佐官の元で仕事を学んでいるカルロは忙しく、私もフェリックスの研究資料をまとめる手伝いに忙しかったため、最近は顔を合わせる時間が極端に減っていた。

 席を外していた使用人たちが戻ってきてカルロの姿に少し驚いたようだったが、魔塔主をちらりと見てすぐに冷静にカルロの分の衣装や装飾品も準備し始めた。
 ノアールだけはカルロの姿に驚きの表情を見せることもなく淡々としている。

 成長の早い子供の衣装だというのに、私の衣装はピッタリに仕上がっていて直すところなどなかったが、カルロの衣装は少し手直しが必要だった。
 それを不思議に思っていると、「リヒト様は先日、ネグロと会っていますから」とノアールが教えてくれた。
 つまり、私の衣装はネグロの目算でより正確に作ることができたということだった。



「お久しぶりです。リヒト様」

 衣装合わせが終わりノアールの案内で食堂へと向かうとナタリアがいた。
 エトワール王国の後宮、両親の執務室が並ぶ一角でナタリアを叱って以来だ。
 もちろん、その話を蒸し返したりはしない。

「お久しぶりですね。ナタリア様。お元気でしたか?」
「はい。お祖父様の元、平穏な日々を過ごしておりました」

 チラリとナタリアがカルロに視線を向けた。

「カルロ様もお変わりないようですね」
「ナタリア様は少しお変わりになったようですね」

 オーロ皇帝は二人が想い合っているというのは私の誤解だと言っていたけれど、やはり、二人はお互いを意識していると思う。
「変わらずに元気そうでなによりです」「以前より美しくなられましたね」なんて想い合っていなければ交わさない言葉だろう。

「ナタリア様、こちらは新たに私の従者となったヘンリックです」

 少し緊張しながら私はナタリアにヘンリックを紹介したが、二人はよくある挨拶を交わしただけだった。
 特に、お互い何かを意識したような様子はない。



「待たせたな」

 オーロ皇帝が食堂に入ってくるとすぐに料理が運ばれてきた。

 ルシエンテ帝国に滞在していた時同様にカルロは私の隣に座り、そして、私の従者としてヘンリックも席についた。
 グレデン卿は護衛として私の後ろに立っている。

 私がヘンリックを紹介すると、オーロ皇帝は意外そうな顔をした。

「リヒトがカルロ以外に従者をおくとは思わなかったな」

 オーロ皇帝の後ろに控えていたネグロが、オーロ皇帝に何やら耳打ちした。
 すると、オーロ皇帝のヘンリックを見る目が一気に変わった。

「其方、従騎士なのか?」

「はい」とヘンリックは短く明確な返事を返した。

「リヒトは魔法も得意だが、剣技もなかなかのものだ。リヒトに勝てとは言わないが、同程度の腕前でなければ護衛は務まらないぞ?」

 ヘンリックは緊張に表情を固くしたが、その目には強い意志があった。

「はい。心得ております」

 そのヘンリックの眼差しに機嫌をよくしたようで、オーロ皇帝はニィッと口角を上げた。

「いい目だな。明朝にでも手合わせをしてやろう」

 オーロ皇帝の言葉に私は慌てた。

「明日はパーティーのある日でもありますし、そもそもヘンリックはまだ子供です! 剣豪であるオーロ皇帝の相手などさせられません」

 誕生日パーティーに招かれたはずなのに、ヘンリックに怪我などさせてユスティーツ公爵家に帰すわけにはいかない。
 私の慌てぶりが面白かったのか、オーロ皇帝の機嫌はますますよくなった。

「子供相手に怪我などさせぬ。それに、リヒトは6歳の頃に私の相手をしていたではないか?」

 確かに、中身が52歳だからあまり気にしていなかったが、当時6歳の私に本気でなかったにしろそこそこの力で打ち込んできていたオーロ皇帝は大人気ないとも言える。
 それに、今はオーロ皇帝は私の中身の年齢を知っているのだから、私とヘンリックを比べるのはおかしいだろう。

「リヒト様、私もぜひ、オーロ皇帝に稽古をつけていただきたいです!」

 ヘンリックがそう言ったので、私は渋々と了承した。




しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 応援ありがとうございます! 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

処理中です...