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「まずは、大神様から加護を得るための儀式をいたしましょう。あなたのお名前を教えていただけますか?」
「……佐伯蓮です」
「レン……」と、王子はなぜか俺の名前を噛み締めるように繰り返した。
「いいお名前ですね」
そう優しく微笑んだ王子の眼差しに俺はなんとなく気恥ずかしくなった。
「それでは、こちらの石板に手を触れて、祈りを捧げてください」
王子は祭壇のようなところにある白い大きな石板を示した。
見たこともない文字なのに、不思議と意味がわかる。
どうやら、神々の名前と祈りの言葉が書かれているようだ。
俺はその石板に両手で触れて、石板の文字を読んだ。
「大いなる神々よ、叡智の眼差しを向け、慈愛の手を差し伸べ、勇猛なる歩みを進め、真実の叫びを聞き、我の道に祝福を……」
石板に書かれている文字を読み終わると、石板に記された神々の名前……七つの名前がそれぞれ別の色で光り、その七色の光が俺の方へと飛んできた。
そして、四つの光が俺の右手首の内側に横並びの印をつけ、三つの光は左手首に同じように横並びに印をつけた。
「全ての大神様から加護を授かるなんて……」
俺の様子を見ていた王子が感嘆の声を上げた。
それから、しばし俺のことを見つめていたが、その頬がなぜか徐々に赤くなっていった。
「あの……失礼なことをお聞きしますが、レンは先ほどの女性とは性行為をされておられないのですか?」
王子の唐突な質問に俺は「な!?」と声を漏らし、それと同時に顔が熱くなった。
おそらく、顔は真っ赤になっているだろう。
「すみません。不躾なことを聞いてしまって……しかし、純潔の神からの加護はまさに純潔でなければ授かることはありませんから……」
そう言って俺を見つめる王子の目に熱がこもっている気がする。
「だ、だとしても、あなたには関係ないですよ?」
あまりの恥ずかしさに俺は彼から視線を逸らした。
俺は友達や先輩にカノジョを寝取られてきたけれど、自分自身がそうした行為に及んだことはなかった。
婚活パーティーで婚約者ができても、また誰かに奪われるのかもしれないと思ったら、そうした行為に及ぶことは抵抗感があった。
別に、純潔を大切に守ってきたというわけではないが、結果的に、二十代後半だというのにいまだに童貞のままだったのだ。
「大いに、関係あります!」
王子の手が俺の手を強く握った。
その言葉にも、その行為にも驚いて俺が王子を見ると、王子の熱い眼差しに飲み込まれるかと思った。
「純潔の加護を得た聖女が現れた場合、その聖女と王子は婚姻することになっているのです」
「……え?」
異世界であるにも関わらず、不思議とそれまで不便なく会話ができていたのに、急に王子の言葉がわからなくなってしまった。
「……コンイン?」
それは一体どういう意味なのだろう?
聖女っていうのは、慣例的に男でもそう呼ぶと説明があったから、俺のことでいいよな?
神様からの加護ももらったわけだし。
そして、王子は目の前の美男子だ。
こんな超絶イケメンは前の世界でもなかなかいないし、何よりも纏う空気がもうロイヤル。
こんなロイヤル感出せるのはどう考えても王子だろう。
そして、そんな聖女と王子が……コンイン?
ちょっと誰か、辞書を貸して欲しい。
そうだ。聖女なんて大切な役目を負うのだから、加護を得る前に語学を勉強するべきだったのだ。
なんかすんなり会話できちゃったから、コミュニケーションは問題ないと思っていたけど、日本語に訳すことができない単語だってあるだろう。そりゃそうだ。言語とはそういうものだ。
婚活やサラリーマンという言葉はこの世界では通じなかったわけだし、コンインという言葉もきっとそういう類の言葉だよな?
だって、俺、男だし……俺の知っている言葉とは違うに違いない!!
「あ、あの、コンインとは、一体、どういうものでしょうか?」
俺の質問に王子が訝しむような表情をした。
「それはもちろん、結婚することですよ?」
ケッコン……血痕……ではないよな? 急に不穏だ。
「あの、もっとわかりやすく説明してもらってもいいですか?」
俺の手を握っていた王子がぐいっと俺に体を寄せた。
「王子である私と、聖女であるあなたが、この先の人生を一緒に歩むことを約束する行為です」
あー……意味としては、日本語とほぼ同じだったかな……
「と、とりあえず、一緒にいればいいということですかね?」
俺はもう恋愛とかする気はないし、今回のことで結婚して家庭を築くことも諦めた。
とにかく、そういうことに縁がないようで、運命が邪魔をしてくるのだからしょうがない。
聖女という立場は別段、危険なことをしなければいけないわけでもなさそうだし、先ほど説明された通りにこの部屋で神に祈りを捧げて神との対話をすればいいということならば、この部屋に閉じこもって過ごしていればいいのだろう。
それならば、王子の愛人として名前を載せていたところで、別段、問題はないはずだ。
唐突な話だったから驚きはしたけれど、おそらく、聖女との婚姻は王族の箔付けみたいなものだろう。
「そうですね。常に私の傍にいて、私の寵愛を受けていただくことになります」
王子はそう甘く微笑むと、俺を抱きしめて、俺の頭にキスを落とした。
「……」
えっと……この部屋、鍵はあるかな?
王族を締め出すのは、流石に怒られるだろうか?
しかし、身の安全は確保してくれるという話だったよな?
「……佐伯蓮です」
「レン……」と、王子はなぜか俺の名前を噛み締めるように繰り返した。
「いいお名前ですね」
そう優しく微笑んだ王子の眼差しに俺はなんとなく気恥ずかしくなった。
「それでは、こちらの石板に手を触れて、祈りを捧げてください」
王子は祭壇のようなところにある白い大きな石板を示した。
見たこともない文字なのに、不思議と意味がわかる。
どうやら、神々の名前と祈りの言葉が書かれているようだ。
俺はその石板に両手で触れて、石板の文字を読んだ。
「大いなる神々よ、叡智の眼差しを向け、慈愛の手を差し伸べ、勇猛なる歩みを進め、真実の叫びを聞き、我の道に祝福を……」
石板に書かれている文字を読み終わると、石板に記された神々の名前……七つの名前がそれぞれ別の色で光り、その七色の光が俺の方へと飛んできた。
そして、四つの光が俺の右手首の内側に横並びの印をつけ、三つの光は左手首に同じように横並びに印をつけた。
「全ての大神様から加護を授かるなんて……」
俺の様子を見ていた王子が感嘆の声を上げた。
それから、しばし俺のことを見つめていたが、その頬がなぜか徐々に赤くなっていった。
「あの……失礼なことをお聞きしますが、レンは先ほどの女性とは性行為をされておられないのですか?」
王子の唐突な質問に俺は「な!?」と声を漏らし、それと同時に顔が熱くなった。
おそらく、顔は真っ赤になっているだろう。
「すみません。不躾なことを聞いてしまって……しかし、純潔の神からの加護はまさに純潔でなければ授かることはありませんから……」
そう言って俺を見つめる王子の目に熱がこもっている気がする。
「だ、だとしても、あなたには関係ないですよ?」
あまりの恥ずかしさに俺は彼から視線を逸らした。
俺は友達や先輩にカノジョを寝取られてきたけれど、自分自身がそうした行為に及んだことはなかった。
婚活パーティーで婚約者ができても、また誰かに奪われるのかもしれないと思ったら、そうした行為に及ぶことは抵抗感があった。
別に、純潔を大切に守ってきたというわけではないが、結果的に、二十代後半だというのにいまだに童貞のままだったのだ。
「大いに、関係あります!」
王子の手が俺の手を強く握った。
その言葉にも、その行為にも驚いて俺が王子を見ると、王子の熱い眼差しに飲み込まれるかと思った。
「純潔の加護を得た聖女が現れた場合、その聖女と王子は婚姻することになっているのです」
「……え?」
異世界であるにも関わらず、不思議とそれまで不便なく会話ができていたのに、急に王子の言葉がわからなくなってしまった。
「……コンイン?」
それは一体どういう意味なのだろう?
聖女っていうのは、慣例的に男でもそう呼ぶと説明があったから、俺のことでいいよな?
神様からの加護ももらったわけだし。
そして、王子は目の前の美男子だ。
こんな超絶イケメンは前の世界でもなかなかいないし、何よりも纏う空気がもうロイヤル。
こんなロイヤル感出せるのはどう考えても王子だろう。
そして、そんな聖女と王子が……コンイン?
ちょっと誰か、辞書を貸して欲しい。
そうだ。聖女なんて大切な役目を負うのだから、加護を得る前に語学を勉強するべきだったのだ。
なんかすんなり会話できちゃったから、コミュニケーションは問題ないと思っていたけど、日本語に訳すことができない単語だってあるだろう。そりゃそうだ。言語とはそういうものだ。
婚活やサラリーマンという言葉はこの世界では通じなかったわけだし、コンインという言葉もきっとそういう類の言葉だよな?
だって、俺、男だし……俺の知っている言葉とは違うに違いない!!
「あ、あの、コンインとは、一体、どういうものでしょうか?」
俺の質問に王子が訝しむような表情をした。
「それはもちろん、結婚することですよ?」
ケッコン……血痕……ではないよな? 急に不穏だ。
「あの、もっとわかりやすく説明してもらってもいいですか?」
俺の手を握っていた王子がぐいっと俺に体を寄せた。
「王子である私と、聖女であるあなたが、この先の人生を一緒に歩むことを約束する行為です」
あー……意味としては、日本語とほぼ同じだったかな……
「と、とりあえず、一緒にいればいいということですかね?」
俺はもう恋愛とかする気はないし、今回のことで結婚して家庭を築くことも諦めた。
とにかく、そういうことに縁がないようで、運命が邪魔をしてくるのだからしょうがない。
聖女という立場は別段、危険なことをしなければいけないわけでもなさそうだし、先ほど説明された通りにこの部屋で神に祈りを捧げて神との対話をすればいいということならば、この部屋に閉じこもって過ごしていればいいのだろう。
それならば、王子の愛人として名前を載せていたところで、別段、問題はないはずだ。
唐突な話だったから驚きはしたけれど、おそらく、聖女との婚姻は王族の箔付けみたいなものだろう。
「そうですね。常に私の傍にいて、私の寵愛を受けていただくことになります」
王子はそう甘く微笑むと、俺を抱きしめて、俺の頭にキスを落とした。
「……」
えっと……この部屋、鍵はあるかな?
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