魔法使いと皇の剣

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1章 出会い

永劫のソルメーラと四眷属

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 ジンは眷属街を抜け、最奥の門へとたどり着いた。

 この先に進むことができるのは、四眷属か、ソルメーラから特別な許しを得た者だけだった。
 ジンはを潜り抜けると、そこには四眷属が揃って待ち構えていた。

 広大な部屋の中は、四眷属の存在を象徴するかのような重厚な設計が施されていた。

 部屋の左右には、均等に配置された四つの席が威圧的な雰囲気を漂わせている。それぞれの席の背後には、眷属が住まう地区へと続く道が備えられており、それが各眷属の権威を示しているようだった。

 ジンの正面には、巨大なベールが存在感を放ち、奥には人影がぼんやりと確認できた。その静かな圧力に、場の空気は張り詰めたものとなっていた。

 部屋の左奥、9本の尻尾を優雅に揺らしながら席を構えるのは、四眷属の一人であるレイコンだった。

 狐の頭を持つ彼は、上質な着物を身にまとい、その佇まいには威厳と冷酷さが入り混じっている。


「ここを何処だと思っているのだ?」
 レイコンが冷たく響く声で問いかけた。

「神聖な謁見の場に来て、ソルメーラ様や我ら四眷属が揃う御前で膝をつくこともできぬのか?」

 その言葉に、ジンは四眷属が全員揃っているという異常な事態に気を取られていた自分を恥じた。慌てて頭を下げながら、膝をついて謝罪の言葉を口にした。

「申し訳ございません、驚きのあまり……」


 レイコンは特段怒っている様子もなく、ただ鼻を鳴らすと、ジンに向けていた視線を正面に座る別の眷属へと移した。

 正面に座るのは、四眷属の一人、シツジョウだった。

 巨大な蛇そのものである彼は、とぐろを巻いて席に収まり、冷たい目でジンをじっと見据えていた。その無表情な視線に、ジンは不気味さと居心地の悪さを感じた。

 その緊張を破るように、隣から微かに押し殺した笑い声が聞こえた。

 声の主は、四眷属の一人であるキヒメだった。

 ジンより少し若いように見える美しい少女で、長い赤い髪と三本の角が印象的だった。その目は赤く、どこか妖艶な雰囲気を漂わせている。その一方で、彼女の笑いには挑発的な響きがあり、ジンをさらに困惑させた。

 キヒメの視線の先に、最後の四眷属、鳩の長がいた。

 彼は他の眷属たちとは異なり、全身を黒い厚手の服で覆い隠し、その顔や身体の特徴すらうかがえない。ジンは彼の名前も性別も種族すらも知らなかった。

 彼がどのような存在であるかは謎に包まれていたが、その静かな佇まいには異様な圧力があった。
 

 このように四眷属が一堂に会している場に呼ばれるのは、ジンにとって初めてのことだった。

 ソルメーラに呼ばれた理由への疑問が膨らんでいたが、ジンが息を潜め、その場の緊張感の中で、ただ黙って様子を窺い続けた――その時
 ベールの奥から透き通る声が響いてきた。


「ジン、お努めありがとう。貴方の隊が果たした功績はよく存じております。」

 その声には親しみが込められ、丁寧ではあるものの、どこか砕けた口調だった。この柔らかさに四眷属の表情は一瞬不満げに見えたが、誰一人として口を開くことはなく、静かに聞き入っていた。


「労いのお言葉、ありがとうございます。今回の任務も、ソルメーラ様のお力添えがあったからこそ達成できたものでございます。今後も鍛錬を怠らず、国とソルメーラ様に尽力できるよう努めて参ります。」


 その言葉に対し、ベールの向こうの反応は伺えなかったものの、少しの間があった後、ソルメーラが話を続けた。


「ジン、今回貴方が成し遂げた功績は、計り知れないものです。理念のバルドを討ったことはもちろんですが、それ以上に――神を殺した。」


 静寂が一瞬、場を支配した。その言葉の重みは、ジンだけでなく、四眷属にも衝撃を与えていた。

「そして、神を殺せる者がこの国にいるという事実は、他の国々にとっても強力な牽制となります。」

 ジンは冷静を保ちながらも、その言葉の意味をかみしめていた。自分が成し遂げた行為の重大さに改めて向き合う形となった。

 しかし、ソルメーラの声は次第に歯切れが悪くなり、言葉を紡ぐことに迷いが感じられた。

「そんな貴方を、この場に呼んだ理由は……次の任務を伝えるためです。これは四眷属たちによる取り決めであり……私も承諾した上での任務です。」

 ソルメーラは、遠回しに拒否権がないことを伝えつつ、話を続けた。

「このゴリョウ大陸の外には、さらに広大な世界が存在します。その昔、私たち神々は眷属を引き連れ、数多くの戦いを繰り広げました。そして、強大な神々の力によって一つの世界は、いくつもの大陸に切り離され、今の形となったのです。」

 ソルメーラの声には、どこか過去を懐かしむような響きがあった。

「そして、私たちは互いの領域に他の眷属たちが侵入できぬよう、それぞれの大陸を封印しました。それは平和のためでもあり、また、新たな争いを防ぐためでもありました……」

 言葉を紡ぐソルメーラの声が徐々に低くなり、話の続きを伝えることを躊躇しているようだった。場に漂う緊張感は、さらに高まっていった。

 ソルメーラが語る内容にジンは耳を傾けつつ、胸の奥に嫌な予感が広がっていた。

「しかし、大陸によっては入ることはおろか、そこを出る者までも縛る結界を持つ場所がいくつか存在します。その一つが、呪われた大陸とも呼ばれるアルベストです。」

 ソルメーラの声は静かだが、その言葉には重みがあった。

「ジン、貴方に告げる任務は、このアルベストに向かい、結界を作り出したアスケラを討ち、そしてある物を持ち帰ることです。それがどのような形をしているのか、我々にも詳細はわかりません。ただと呼ばれているものだとだけお伝えします。」

 その任務の内容にジンは驚きを隠せなかった。

 呪われた大陸、アスケラの討伐、そして謎めいた「神の肉」。全てが前例のない規模の話だった。

 だが、それ以上に、なぜこの場で直接告げなければならないのか、なぜわざわざアルベストまで行き、アスケラを討つ必要があるのか、ジンの胸には疑問が次々と湧き上がっていた。

 しかし、この四眷属が揃う場でそれを尋ねるのは、適切ではないと判断した。

 ジンは深く頭を下げながら、指示に従う意志を示した。だが、任務の詳細について一つだけ確認を求めることにした。

「はっ!恐れながらお伺いします。私一人がこの場にいることを考えますと、今回の任務は私一人で遂行するものと考えてよろしいでしょうか?」

 その問いに応じたのはソルメーラではなく、左奥に座るレイコンだった。冷たく響く声が静寂を破る。

「その通りだ。お主一人で行え。そして、今回の任務は特例中の特例だ。他者に、例え命を分かち合った仲間であろうとも話すことは禁ずる。」

 レイコンはジンを冷たく見据え、さらに続けた。

「今回、お前が選ばれたのは、神を殺したという功績、そして何よりソルメーラ様の信頼があってこその判断だ。結界の外に出た者は、任務を放棄して逃げようが、ソルメーラ様の権威は届かぬ。だが、その刀を握り、ソルメーラ様を裏切らないお前であれば可能と見込んだまでだ。」


 レイコンの言葉にジンはわずかに眉をひそめた。四眷属からの信頼は明らかに薄い。

 重要な詳細や必要性を隠しつつ、ただ任務を押し付ける態度から、四眷属が自分を信用していないことは明白だった。

 同時に、ソルメーラが最初に述べた言葉――「この任務を取り決めたのは四眷属」と「選んだのはソルメーラ」という言葉の間に潜む微妙なズレが、ジンの胸に小さな疑念を生んでいた。

 彼は、ソルメーラと二人きりで話せる時間を作れるのではないか、と一瞬考えたが、その考えが顔に出たのだろう。

 レイコンの言葉がジンの耳に届いた瞬間、その意味を理解するのに時間がかかった。

「故に、早急にゴリョウ大陸を発て。そして今をもってお前は逆賊として、国を追われ大陸を出た者とされる。」


 その言葉をようやく咀嚼し、困惑するジンを見て、キヒメが愉快そうにクスクスと笑い声を上げながら口を挟んだ。


「理解が足りぬかえ?お前が任務で大陸を出たことが知れれば、知る必要のない者どもも興味を持ち、大陸の外へ出ようとする者が現れるだろう。だからこそ、お前は国を追われた逆賊――逃げた者として扱われるのだ。これで分かったかえ?」


 その説明に、ジンはようやく全体の意図を理解した。

 これは逆賊として扱うというよりも、今回の任務に関して秘匿性が最優先であり、この場にいる四眷属以外には一切の情報を漏らさないという徹底ぶりの現れだった。

 しかし、仲間への挨拶や準備の時間すら与えられないこの状況に、ジンは心の中で不満を抱えながらも、それを表に出すことはなかった。

 だが、どうしても確認しておきたい事柄があったため、意を決して問いかけた。

「お許しください。自身の理解が追いつけず、知恵を賜りありがとうございます。ただ、もう一つだけ知恵を頂きたく存じます――アルベストへの入り方について、何か方法をご教示頂けますでしょうか?」

 ジンの言葉に、レイコンは深いため息をつき、呆れたような声で答えた。

「お前の持つ刀は死から生まれた、永劫なるソルメーラ様の力だ。その刀自体が弱いながらもセイクリッドランドの役目を果たしている。そして、それは神をも斬れる力を宿している。結界などどうとでもなるだろう。」

 その答えを聞いたジンは、明確な方法論を聞けなかったことに心の中で怒りを覚えた。

 入れば死ぬとされる大陸に、確証もなく向かわせようとする彼らの態度は、命を軽視しているようにさえ思えた。

 しかし、普段の任務も似たような理不尽さを孕んでいることを思い出し、何とか自分を落ち着かせた。

 ジンは、まだ尋ねたいことが山ほどあったが、四眷属たちの冷たい目線を感じ、これ以上の問いが許されない雰囲気に気付いた。覚悟を決め、短く答えた。

「ありがとうございます。早急に任務を完遂いたします。」

 ジンが部屋を出ようとしたその瞬間、背後から鋭くも悲しみを帯びた声が響いた。

「待って!」

 足を止め、振り返ったジンの目に飛び込んできたのは、ベールの向こうに隠れていたソルメーラが、姿を現し此方へ歩み寄る姿だった。

 その出現に、場の空気が一変した。

 ソルメーラは長く美しい黒髪を持ち、口元以外を隠す仮面をつけていた。身体に沿う黒いドレスは装飾こそなかったものの、そのシンプルさがかえって神々しさを際立たせていた。

 彼女が姿を現すと、四眷属たちは一様に動揺し、次々に声を上げた。

 レイコンは焦りを露わにしながら叫ぶ。
「ソルメーラ様!御姿をお見せになるなど……!」

 キヒメは彼女らしい、敬意の薄い淡々とした口調で言い放つ。

「お控えください、ソルメーラ様。」

 静かだったシツジョウまでもが、低くしわがれた声でゆったりとした調子で諌める。

「いけません、主様……。」

 そして、鴉の長も動きを見せ、無言のままソルメーラに歩み寄ろうとした。

 しかし、そんな四眷属たちの声や動きを一蹴するように、ソルメーラがたった一言、低く厳かな声で命じた。


 〘控えよ〙

 その一言は凄まじい威圧感を放ち、四眷属たちだけでなく、ジンすら萎縮させた。

 先程までジンに親しげな声で話していた人物と同じとは思えない、圧倒的な存在感が場を支配していた。

 その場に漂う威圧感は、神である理念のバルドと相対した時とは全く異なるもので、ジンの心に恐怖すら芽生えさせ。

 部屋全体がその気迫に飲み込まれ、誰もが震え、頭を垂れる以外の選択肢を失っていた。

 そして、ソルメーラが続けて命じる。

 〘四眷属は下がれ〙

 ソルメーラの声に抗える者はいなかった。

 四眷属たちは何か言いたげな様子を見せたが、一言も発することなく頭を下げ、それぞれが後ろの道を通り部屋を後にした。

 その場には、ジンとソルメーラの二人だけが残された。

 四眷属が去ると共に、先程までの圧力が嘘のように消え去り、空気が急に軽くなった。

 ソルメーラは、仮面に手をかけると、それを外しながらジンに向き直った。

 仮面の下から現れた顔は、ジンが最も大切にしていた妹、アマネの顔だった。

 ソルメーラが依代として選んだのがアマネだったのだ。

「兄さん……ごめんなさい。」

 悲しみの表情を浮かべ、静かに頭を下げるアマネの姿に、ジンは複雑な感情を抱えながらも、静かに返した。

「いえ……大丈夫です。」

 ジンの声は震えていなかったが、その胸中は穏やかではなかった。

 目の前のソルメーラ――アマネの姿をした彼女が、自分を大切に思っているのが伝わってくる。それは彼が兄であるからに他ならない。

 しかし、同時にその事実が自らの決断をさらに重くし、苦しめていた。

 今や、アマネとソルメーラは一つの存在。

 彼女のために命を懸ける覚悟はすでに持っていたものの、その想いがさらに揺さぶられる瞬間だった。

 ソルメーラはジンの微妙な表情を見て、心情を察したのか、悲しげな声で語り始めた。

「ごめんなさい……でも、兄さんが無事に帰ってきてくれて、本当に嬉しかった。ソルメーラとしても、アマネとしても、それは嘘じゃないよ……。それなのに、またこうして任務で送り出さなきゃいけないなんて」

 肩を落とし、声を詰まらせるソルメーラの姿に、ジンは静かに歩み寄ると、そっと彼女の肩に手を置いた。

 そして、優しい笑顔を浮かべながら、静かに言葉を紡いだ。


「大丈夫で……大丈夫。必ずまた帰ってくるから、心配するな。」

 その言葉に、ソルメーラは少しの間ジンを見つめた後、ほっとしたように微笑んだ。

 その微笑みは、昔のアマネそのものだった。

 ジンはその表情に懐かしさを感じ、短いながらも穏やかな時間を楽しんだ。しかし、その穏やかな空気も長くは続かなかった。ソルメーラはその時間を惜しみつつも、重い口を開いた。

「兄さん……この任務には、二つの意味があるの。それは、この国にとってとても重要なこと……。もしかしたら、この大陸に戦乱が始まるかもしれないほどの。」


 ジンはソルメーラの話を聞き驚いた。ジン達のゴリョウ大陸は5つの国がそれぞれ大きな力を持ち支配していた。

 その中でもソルメーラが収めるこのスイレンは特に力を誇示し、更に不浄の神ナナクニが治めてる隣国ホウランとは友好であった。

 その事を考えると他の3つの国が同盟を結んだのかと考えたが可能性が低い話だった。

 人が収める国、ジョウラン
 トカゲ頭のリザード族の国ブンガル
 戒禁の神が収めているとされるデンド

 ブンガルもスイレンの横にあるが、戦自体を好んでおらず、それにより中立を保っている国だ

 ジョウランは神に支配されるのを嫌う人々で作られた国
 それ故、隣国であるデンドやホウランと争いが絶えないがその二つの国に挟まれスイレンどころでない


 デンドは閉鎖的な国で、戒禁の神が支配してるとみられるが閉鎖的ゆえ国の内情はジンにはわからなかったが、そもそもが闘いだろうと他の国と関わりあいを持ちたがってはいなかった。


 ソルメーラの言葉に、ジンの胸には新たな疑念が生じた。


「まず兄さんが今回討ったバルドも関係してるの⋯バルドは前の闘いで敗れ、この世界を去ったのに今回顕現しまた闘いを始めようとした。でもバルドが自身を生み出した物に顕現させられたのは、おかしいの」


 ソルメーラの話を聞きジンは思い返していた
 自身がバルドだと思っていたのはバルドから生まれた名前もない神でバルドはムカデに顕現させられていた。

 しかし何故ムカデに顕現させられたのかは、ランの予想でしかなかった 

 ソルメーラは続けた。

「すでにこの世を去り、神の世界に帰ったバルドを顕現させるには、たとえそれが可能だとしても、膨大な数の信仰を集めた者たちが必要なはずなの。でも、報告を読んだ限りでは、バルドの眷属や信仰者は少なすぎる。」

 その言葉に、ジンの頭にはホウランの国での戦いの記憶がよみがえった。

「確かに……ホウランで戦ったのは、700近い数の存在だったが、ほとんどがバルドによって生み出された魔物だった。」

 ソルメーラは頷き、さらに話を続けた。

「それに、バルドが生み出した『名前もない神』――それをこの世に呼び出す術が何かあるのだとしたら、私には見当がつかない。それほど異質で、未知の存在。」

 ジンはいよいよ訳がわからなくなっていた
 しかし考えてみれば、神が信仰により顕現するのは知っていたが、今まで聞いてきた童話や歌から確かに、不思議な事だった。

 そもそも今いる神々は人より前にこの世に現れ、

【自身がこの世に顕現する為、信仰させる為に、眷属達や生き物、魔物等をこの世につくった】

 

 これではまるで逆
 この世を離れていたバルドだけでない、名も無い神までも…

 バルドはソルメーラがいうよう、この世を離れていても信仰の数があれば確かに出来るかもしれない
 だが名も無い神は、、、?

 ジンは今回の任務について詳細を聞くにつれ不穏なもの感じてきた。

「バルドはいくら強い身体を持っていても、自らが作ったムカデに顕現させられたなら、すぐに身体を誓いによって変えるはず……。」

 ソルメーラの声は冷静だったが、その言葉には鋭い分析が含まれていた。

「それをしなかったのは、できなかったから。誓いを立てることができなかったのだと思う。そして恐らく、バルドをこの世に顕現させたのは、彼を利用するため……名前のない神も同じく。」


 ジンの目の前にいるソルメーラは話し方こそアマネのままだが、その雰囲気は先程と同じ神のものになっていた

 ソルメーラは続けた。

「兄さんたちが戻る前に、鴉からいくつかの報告を受けていたの。そして、それが私の推測をどんどん現実のものにしている……。今、この国だけでなく、ゴリョウ大陸全体で同じようなことが意図的に起きているのよ。この大陸を蝕む異変の原因が、アルベスト大陸にあると呼ばれるものだということがわかった。」

 その言葉にジンは胸の奥がざわつくのを感じた。そして、思わず話を遮り、問いかけてしまった。


「信仰者?バルドの信仰者が、なぜアルベストのと呼ばれる存在について……?」
 
 ソルメーラは首を振り

「ううん、バルドのではなく、…
 アスケラの力で作れた結界ならアルベストを簡単にでれるはず⋯そしてこのゴリョウ大陸に入ってきた」

 ジンはソルメーラの話に、ゴリョウ大陸の結界はと聞く前にソルメーラは疑問に答えるよう

「結界を通る為にはセイクリッドランドを作れば通れるの…でも通常は権威が及ぶ場所なら私は感知できる、でも分からなかった。恐らくアスケラの権威が及ぶ場所があって。この大陸の何処かがアスケラの信仰を助けているの、そしてこの地で何かを起こそうとしている」


 ソルメーラの目は、何か確信を得ているかのように鋭く光った。その視線を受けながら、ジンは言葉を飲み込み、ただ聞き入った。

「何故アスケラの信仰者がこの地に来てまで、それを行ったのかそして他の国がそれに加担してるとしたら何故か…仮に人が思うままどんな神も顕現できるようになったら、そしてその力を使えるようになったら⋯」

 ジンは静かに話を聞いていたそして何故自分なのか、わかった。

 今回の出来事は、スイレンの土地で密かに行われたものであり、それを行ったのは少なくともソルメーラへの信仰を持たない者――いや、敵対する者たちの可能性が高い。

 そして、この事実が周囲に知れ渡れば、良くない結果を招くことは明白だった。

 スイレンの住民たちは、多くがソルメーラの加護によって守られている。その信仰も、純粋な崇拝というよりは、平穏を享受していることへの感謝によるものだ。

 もし、ソルメーラに異変が起きたり、その力が脅かされていると知れれば、信仰心が薄い者たちはすぐに恐れや不信へと転じるだろう。

 さらに、眷属たちが動けば、彼らの特徴的な姿から行動がすぐに目立ってしまう。

 それが外部に漏れれば、他国への警戒心を煽り、さらなる混乱を招く恐れがある。

「皇の剣」として活動する者たちを使う手もあるだろう。

 しかし、彼らの多くはジンと同じように、スイレンに尽くしながらも、境遇への不満を抱えている者が少なくない。完全に信頼を寄せられる存在ではなかった。

 それに対して、ジン自身は違った。スイレンを裏切ることなく、ソルメーラ――いや、妹であるアマネを心から信じている。そして、ソルメーラもまた、アマネとして兄であるジンを誰よりも信頼していた。

「そういうことか……」
 ジンは胸中で呟いた。今回の任務を任された理由――それは単に彼が神を殺す力を持つからではない。

 周囲に疑われることなく、確実に任務を遂行できる人物であり、何よりソルメーラ――アマネが心から信用できる唯一の存在。それが自分だったのだ。

 ジンは静かにソルメーラを見つめ、その思いを受け止めた。


「今回の思惑は分からないから、アスケラを討つという名目だけど、あくまで真実の追求、そして神の肉と呼ばれるものが何かを知ること。もしアスケラが単純にこの国で暴れたいだけなら⋯殺すというのが本来の任務」

 ソルメーラはそういい目からは強い意志がみられ
 今や神の威光を隠すことはしていなかった


「今はまだ大きな動きはないから、外ではなく、この大陸内の問題に目を向けて対策を考えようとしていたのがレイコンとシツジョウ。そして、外部の調査と解決を進めるべきだと主張したのがキヒメとヤタだったの。話し合いの結果、中と外、両面の問題に並行して対処することで意見が一致したわ。」


 ソルメーラの話から、ジンは初めて鴉の長の名前がヤタであることを知ったが、その考えに意識を巡らせる暇もなく、ソルメーラの次の言葉に耳を傾けた。

「ゴリョウ大陸では、動きを調べて加担している者を討ち取り、外ではその原因を突き止めて解決する。そして表向きには、私たちが動けないから……兄さんを裏切り者として扱い、一連の動きに加担した者として表向きに触れ込む。それで相手の反応を探ることにしたの。」


 ソルメーラの顔には、兄をそんな形で送り出さねばならない悲しみが浮かんでいた。

 ジンはその表情を見て、無言で彼女の頭に手を置き、優しく撫で

「大丈夫だ、必ずやり遂げる。」

 そう告げた。

 ジンの言葉に、ソルメーラはわずかに笑顔を見せたが、その瞳にはまだ悲しみが残っていた。


 ジンは今回の任務を、今や自身の目的にも照らし合わせていた。

 眷属達が自分を任務に当たらすのは恐らく渋った筈だがソルメーラがそれを決めた。

 眷属達は間違えてはいなかった。
 ジンはソルメーラが妹の姿で、妹と同じ存在でなければすぐに切り捨てていた。

 ジンにとって目の前にいる人物は大事な妹であると共に妹を奪った神であった。

 名も無い神から、と聞いて肩を落としたが、もし何らかで人が不可能だと思われた事がこの裏で、起きているならそのすべを見つけられるかも知れないと

 ジンは嬉しそうなソルメーラを前に固く誓っていた

 
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