魔法使いと皇の剣

1111

文字の大きさ
148 / 169
5章 運命

語る賢者

しおりを挟む
 イランカランはミエラを見つめ、静かに問いかけた。​

「お前は、自分が何者であるかを理解しているか?」

 ミエラは一瞬、視線を逸らしながら答えた。​

「……今の私が持ち合わせている答えでは、満足いただけないかと」​

 イランカランは口元に薄く笑みを浮かべ、語り始めた。​

「古来より、生まれながらにして神の庇護を強く受ける者がいた。見た目ではない、内に秘めたるものに神々は惹かれる。そうした者たちは、様々な名で呼ばれてきたが、ここでは『神子』と呼ばれている」​

 ミエラはその言葉に眉をひそめた。​

「お前は、その神子であると同時に、数奇な運命を持つ者だ。これまでに眷属たちが、お前に異様な関心を示したことはなかったか? あの竜族を除いて」​

 ミエラは過去の出来事を思い出し、静かに頷いた。​

 イランカランは不気味な笑みを浮かべながら続けた。​

「神が焦がれる神子として生まれ、さらに慈愛の血を引いているからだ」​

 ミエラは驚き、周囲を見渡した。​ロスティンは手持ち無沙汰にしていた木の実の手遊びを止め、アイリーンは心配そうにミエラを見つめ、アーベンは何かを考えるように視線を落としていた。​

「私が……?」

 イランカランは頷きながら言った。​

「お前も、お前の母も、ケンニグとオルフィーナの血を引く子孫だ」

 ミエラは動揺しながら口を開いた。​

「それでは、サイスルは……?」

 イランカランはその名を聞くと、忌々しげに答えた。

「あやつは、お前の叔父だ」

 そう言うと、独り言のように呟いた。​

「巧妙で……誰も気づかなかった」

 ミエラは戸惑いながら言った。​

「母からは、そんな話は……」

 イランカランは説明を続けた。​

「お前の母は知らぬ。彼女は孤児としてオステリィアに売られ、育てられたのだ」

 ミエラは自身の知らなかった事実を目の前で聞かされ、困惑していた。なぜ母は教えてくれなかったのか。​

「そして、サイスルはどこでそれを知ったのか。今やオーデントで玉座についている。だが、それは問題ではない。いや、その前が問題だったのだ」

 ミエラが訝しげにイランカランを見つめると、彼は続けた。​

「かつて、そこにいるアーベン・オーデント。愚かなお前の父は、神の庇護を求めて神を顕現しようとした」

 アーベンは静かに口を開いた。​

「そして、失敗した」

 イランカランはその言葉に怒るかと思ったが、頷いた。​

「そうだ……そして、生み出した。歪みの神を」

 ミエラは疑問を口にした。​

「ですが、聞けばオステリィアや他の国もその場にいたと。そして、ベイルガルドも」

 イランカランは面倒くさそうに答えた。​

「そこが間違いだった。いや……変わらぬか」

 そして、イランカランは問いかけた。​

「生み出された者が何かわかるか?」

 ミエラは答えた。​

「歪みの神ノストール……ではないのですか?」

 イランカランは愉快そうに笑った。

「違う。それこそケンニグ。あやつの凄まじさにおののくぞ……素晴らしい、実に素晴らしい……叡智だ」

 ミエラは不気味に笑うイランカランに不愉快な気持ちであふれた。​そして、イランカランは続けた。​

「生み出されたのは紛れもなく神だ。そして、オルフィーナを顕現させるのはまさしく成功したのだろう。そして、病と共に」

 イランカランは結論づけた。​

「歪みの神ノストール。あれこそが慈愛の神であり、そして病の神でもある。歪みにより生まれた哀れな神の果てにして完成形だ」​
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...