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森の妖精

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あの日の記憶

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 私の1番古い記憶、それは犬がワンワンと吠えていた。部屋の中で…あれは……確か、茶色のダックスフンドだったと思う。私は犬が好きなわけではないのに、いつも近くにそれは居た。
犬の扱いがさっぱり分からないから、とりあえず尻尾を握った。キャン!と犬が吠えたと同時に台所から凄い形相の女が向かって来た。
 「何してるの!?私のアレックスに!!」
 エプロンで手を拭きながら近づいてくる。でも、その人の顔や声は覚えていない。
 「ち、違うの、私のお菓子を取ろうとしたから、やめてって……」
 言い終わらないうちに両わきを掴まれ身体を持ち上げられた。お仕置き部屋へ連れて行かれるのだ。
 
 まだ小さい私は泣きながら謝る。運ばれる途中、同じ部屋のそばに座っていた優しいお婆ちゃんの裾を掴んで、お仕置き部屋へ運ばれないように力を入れて踏ん張る。あの部屋へ閉じ込められると、しばらく出れないのを私は知っていた。私の抵抗は虚しく、力づくてお婆ちゃんから引き剥がされ、そのまま階段を上がる。
 お婆ちゃんは特に何も言わずに動かないで、心配そうに私を見ていた。
 
 1階と2階の階段の途中に中2階部屋があり、そこに入れられるのだ。
 大声で泣いて涙と鼻水と汗でぐちゃぐちゃだ。ほとんど引きずられ、部屋に投げ込まれバタン!と扉が閉まる。
 ガチャっと鍵の閉まる音がした。部屋の中はカーテンの色なのか、壁の色なのか覚えていないけど、何故かピンク色の記憶だ。布団だの座布団だのが積まれている物置き部屋だ。しばらく泣きながら扉を叩いて「開けて!出して!」と叫ぶが、無駄な抵抗だった。諦めて奥の窓のある壁にもたれて座った。泣きじゃっくりが止まらない。

そのまま寝たのか、出してもらったのかは覚えていない。
 この日の記憶が私の1番古い記憶。それ以前は一切覚えていない。あのピンクの部屋は前からとても嫌いだった。お仕置き部屋へ閉じ込める女が私の何なのか私は知らなかった。
 私はこの家では虐げられていたのか?他の記憶が無くてわからない。多分4歳ぐらいだったと思う。
 

 しばらく経ったある日、その女から
 「出かけるよ」
 と告げられ、近くの喫茶店へ連れられて行った。4人がけのテーブルだ。
 大人しく座っていると、初めて見る綺麗でいい香りの飲み物が運ばれてきた。丸いバニラアイスの1番上に赤いサクランボが乗ってるクリームソーダ。何故私にこんな美味しいそうなものをくれるのか、怖くなったが、とても美味しそうで、これを飲んでいいのか迷ったのを覚えている。
「咲、飲みな。美味しいよ」
 横に座っている女は優しく言った。
私はどうやって飲むのか分からず、モジモジしていると女がスプーンでバニラアイスを掬って私の口に運んだ。
ほら、こうやって食べなさいと教えてくれたのだ。
それも怖かったがアイスがとても美味しく夢中で食べたので、いつの間にか目の前に知らない2人の男女が座っていた事に気づかなかった。

「こんにちは咲。大きくなったね。」
 優しい声で女性が私に挨拶した。隣の男性は優しい目で私を見ていた。
「……」
 何と答えればいいのか迷っていると、隣の女の人が「こんにちは、は?」と促すので、私は消え入るような声で
「こんにちは」
と答えた。もう、クリームソーダは飲んでダメなんだと思い、スプーンとストローから手を離した。
 隣の女が私に伝えた言葉は一生忘れない。
「この2人はあなたの本当のお父さんとお母さんよ。今日からこの2人と暮らしなさい」
それを言ったっきり私の返答は聞かず、3人で何やら難しい話を始めた。
「咲、行こうか。あ、クリームソーダ飲んじゃいなさいね。」
お母さんと言われた人が私に優しく微笑みかけた。

 私の荷物など何も無かったのだろう。もしくは、あの女がもうまとめて2人に渡したのだろうか?そのまま初めて会った2人の車の後部座席に乗せられ、父と母と紹介された2人は何度も女に頭を下げていたのを車の中から眺めていた。もう、あのうるさい犬に会わなくていいのは嬉しかった。車の中は何とも言えない気まずい空気だった。
 
 お昼に出発したのに車が止まった時、外は真っ暗だった。寝てしまった私を、お父さんと言われた人が運んでくれた。運ばれている途中、目が覚めたけど、そのまま寝たふりをした。
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