好きでいてくれてありがとう

森の妖精

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巻けないマフラー

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「お、来たな」
「来るよ」
 そんなやり取り。律は本当に律だ。
「俺、冬用の帽子とかマフラー欲しいんだ。選んでくんね?」
「私よりセンスいいでしょうが!私も手袋欲しいと思ってたからついでに買おうかなー」
色んなお店へ行った。2人の意見が一致した律の帽子は荒めの編み込みの入ったグレーのニット帽でポイントはツバがあり、可愛くもカッコよくもかぶれる。合わせるように私はグレーの毛糸の5本指の手袋をかった。
 マフラーは深い緑の中に黒と銀のチェック模様の入ったのを気に入ったようだった。
「今日はありがとな。1人で選ぶよりやっぱいいな」
 ストーレートティーにミルクを入れ、氷をカラカラ混ぜながら律が呟く。午後の西陽に照らされ明るいオレンジ色の光を受けたその姿がとても綺麗で眩しい。
「ん」
 と私に紙袋を渡す
「え?なに?なに?」
「今日のお礼」
「開けていい?」
 丁寧に袋を開けると中には、深い緑の生地に銀と赤のチェック柄のマフラーだった。
「わぁ可愛い。あれ?」
「そ。俺と色違い。もし気に入らなかったら、お母さんにでもあげて」
「ううん。ありがとう!今年はこれであったかいね」
 嬉しくて、精一杯感謝の気持ちを伝えた。
「あのさ、俺、咲の事大好きなんだわ」
「うん」
 マフラーに目線を落としたままマフラーをさすりながら返事する
「でも、あの日、ごめんなさいって咲言ったよね」
「……俺振られたんすかね?」
「そんなんじゃないけど」
 顔を上げる
「じゃ、」
「でも、私、付き合うって事ができないの。きっと誰とも。」
 そう言って、気まずくてオレンジジュースを飲んだ。
「もしかして、何か悩んでる?俺で良ければ聞くし」
「実は私、人に触れられるのが苦手なんだよねー。自分で自分を触るのもムリ。変でしょ?親からもダメ。何でだろうねー」
「……」
 律は黙って聞いていた。
「付き合うって、手を繋いだり…その……色々あるでしょ?それがムリなの。ごめんねー」
 精一杯、何も気にしてない風に軽く話した。
「咲が嫌な事は絶対にしないし、言いたくないなら聞かない。でも、いつも近くに居たいんだ。守ってやりたい。」
「律…」
律の真剣な真っ直ぐな瞳を私も見つめ返した。
 私、本当は、律の顔に触れてみたい。髪の毛を触ってみたい。大きな背中に触れてみたい。――頭の中で思う事はできる。
 いつか、こんな日が来るだろうと考えてはいた。恋愛は避けては通れない。好きな人ができて、付き合って、触れ合って、結婚して、赤ちゃんを産んで…………。
 私は好きな人ができて、でストップだ。それ以上には進めない。だから大好きな律を悲しませたくない。
 しばらく考えて
「私って結構めんどくさい女だからなー!律はモテるから大丈夫だよ!」
 冗談混じりで笑ったけど、反対に律は真剣な顔で
「大丈夫って何?俺はいつも咲を見てるよ。入試の日から」
「え?」
「一目惚れだし。バイトがバレた日も遠くから咲が来るの見えたんだ。もしかして気付いてくれるかもって期待したら、声かけてくれて、マジかーって喜んだし」
「…⁈そう…なの?」
 律はにっこり笑いながら
「付き合うとか付き合わないとかどうでもいいや。一緒にいよう。俺が想ってるのは咲って事だけ覚えてくれればいいや。」
「律…」
 どうしようもないのに、私の気持ちを言う訳にはいかない。答えられずに俯いていると「明日も学校とバイトで咲に会えるしな」と、この会話をとまとめてくれた。そんな高校1年の秋だった。

  ――――2年生になった4月、律とはクラスが離れてしまったけど、バイトは続けていたのでよく顔を合わせた。
たまに律が女子と笑顔で話しているのを見かけたり、落ち込んだ日などは律からもらったマフラーを抱いて眠る時もあった。律からもらったマフラーはとても暖かくて、目を閉じると律の顔が浮かんで幸せだった。
 律の告白を断った身では、このマフラーは学校には着けて行かない。でも、こうやって幸せを感じるだけで十分だった。
       
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