好きでいてくれてありがとう

森の妖精

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エピローグ 未来への

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エピローグ 未来への手紙
3年生になったら、進路も大詰めで、夏までには決めないとならない。私は関東の大学へ進学希望を出した。
 律とは、あの夜から付き合っている。
 いつも私から律の手に触れる。それが合図で、律は包み込むように手を繋いでくれる。そっと優しく柔らかく。
 それ以上は一度だけ、律の部屋に行った時、何となく無言になり、お互いが近づき、自然に抱き合った。
 大きな肩におでこを預け、私は瞳を閉じた。彼は私を優しく優しく全身で包んでくれた。
 「咲、大好き」
 「うん、私もだよ」
 見つめ合い2人でふふっと笑った。おでことおでこをくっつける。幸せの中にいる感覚がとてもくすぐったい。
 何も怖くなかった。何も思い出さなかった。
 彼は私のおでこに唇を軽くくっつけた。私は目を瞑りながら笑顔になる。そのまま彼は私のほっぺにキスをした。私は目を開けて彼を見た。彼は目を瞑っている。いつもの穏やかで優しい表情。私は彼の唇を触ってみた。暖かくて柔らかい。そして、そのまま私は彼にキスをした。
 長く長く幸せを感じていたかった。
 自然と涙がこぼれ落ちていた。でも、この涙はきっと私に必要な涙だ。――溶けていく。そんな気がした。愛おしいから触れる。愛おしいから触れられて嬉しい。
 唇を離して彼を見つめた。そっと彼はもう一度私を抱きしめた。今度は優しくきつく。この感情は今まで生きてきて知らない感情だった。初めて湧き上がる心からの愛しさはきっと2人同じ気持ちだと思う。
「ゆっくり、この幸せを増やしていこう」
「うん。私、今幸せすぎて怖い」
「大丈夫だよ。咲が幸せなら、俺は幸せだから」


 卒業式――
 律と出会い、友達と多くを学んで、少女から少し大人びた私が居る。
 卒業式の後、校門では写真を撮る親子やグループでごちゃごちゃしていた。少し向こうに母の姿を見つけた。グレーのワンピーススーツで美容院へ行って来たのだろう髪型もフワッと整えられて可愛いピンクの髪飾りで纏めていて若々しい姿だった。手には小さいけれどとても綺麗な白やピンクの色々な花のブーケを持っていた。
「咲、卒業おめでとう」
 ブーケを私に渡しながら母は言った。
「本当に頑張ったね。お母さん、いつも咲には助けられて、こんなに立派になるなんて……本当ありがとう」
 白いハンカチで涙を拭いている。
「お母さん、今までありがとう。お母さん大好き!」
 母に抱きついた。母はそんな私を受け止めて、うんうんと頷いている。
 カシャ!カシャ!
 スマホのシャッター音が聞こえた。律が私たちを撮っていた。
「お母さん、紹介するね。今、お付き合いしている相田律君です。彼も関東の大学へ進学するんだよ」
「相田です。咲さんとは本当に真剣に……」
 言葉に詰まってる律を見て母と2人で笑った。
「そこに2人で並んで!」
 母は私と律を立たせて自分のスマホで写真を撮った!
「はい!撮るよー」
 私と律は卒業証書を目の前に掲げて笑顔でポーズをとった。
「あー!これ動画だったー!まぁいいや、このまま撮っちゃおー!」
「えー!」
 2人で母に向かって行くけど、母はずっと撮り続けたまま笑っている。
「はい、お2人さん、いつまでもお幸せにー」
 撮りながら、おちゃらける母。
「もー、お母さん!あといいよ!」
 へへっと撮り終えると
「いい顔撮れた」
 とすっかり喜んでいる。あの顔は初めから動画を撮るつもりだったな。
「咲とお母さん並んでください。今度、俺が撮りますね」
 私と母は並んでピースをした。
「はい、撮りますよー。3.2.1はいチーズ!」
 ……
「あーー!すみませーん!これ動画でしたー」
 母は「もぉー」と言いながら笑った。

 *



 ゆっくり、少しずつ。
 律が言ってくれたように、私たちは高校生という短い期間でお互いを知り、そして成長と共に心も強くなっていく。
 1人では乗り越えられない重くて苦しい心は、大切な人から大切にされて、見えないけれど確実に少しずつ軽くなっていく。それは周りも巻き込んできっと幸せを増やしていけるはず。私の未来は、私が幸せを沢山見つけていけばいい。
あの日の私に教えてあげたい。
触れることは怖くない。
世界は、思っていたよりずっと優しいから。
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