114 / 694
第四章 モントルビアの王宮
現状確認③
しおりを挟む
「それで結局、リィカはどうなるの? 明日まで待ったら、ダメなんだよね?」
緩んだ雰囲気の中でも、強張った表情が解けていない暁斗が、話を元に戻した。
それに、全員が居住まいを正す。
「明日まで待てば、再会できるのは確かです。ですが、その時には王太子らに好き勝手に弄ばれた後でしょうね。逆に言えば、それを許容してしまえるのであれば、何も手を出さずにいていい、と言うことになりますが」
「いいわけないだろう」
ジェラードの言い分に、アレクが睨むように反発する。
ジェラードは素直に謝る。
「悪かった、アレクシス殿。とはいうものの、取れる手段はほとんどない。リィカ嬢がいるのが地下牢である以上、そのうち場所を移すだろう。犯すのも、暴力の一つだからね。
だから地下牢の出入り口を見張って、リィカ嬢が出てきたら、その後を付けて場所を突き止める。見張りが付くのかとかが分からないけれど、後は隙を見て助け出すしかない」
「……大丈夫か、それは?」
割と出たとこ勝負だ。
失敗すると後がない。
「不安がないわけではないけど、他に方法が思い浮かばない。――連れて行かれた場所が分かり次第、連絡するよ。助け出すならアレクシス殿たちの方が確実だろう。それまでは大人しくしていてくれよ」
「……努力はする」
アレクの返答は何とも微妙で、そして暁斗は、悔しそうに唇を噛みしめていた。
「昨晩は、リィカは間違いなく無事なんですね?」
泰基が確認する。
捕らえられて一晩が経っているのだ。そう考えれば、昨晩だって怪しいはずだ。
だが、ジェラードは頷いた。
「それは確かです。……なぜ、と考えれば、確かに不思議ですね」
さすがのジェラードも、完全に王太子の性癖を知っている訳ではなかった。
時間をおくのは、飲まず食わずで弱らせるためだと、想像できるはずもなかった。
「俺たちが留められているのは、要するに、王太子の目的のために国王が協力している、という考えでいいのでしょうか?」
犯すという言葉は使いたくない。
そう思って、目的という言葉に置き換えた泰基に、ジェラードは少し考える。
「大半はそうだと思います。後は、そうですね。おそらく、この後城に戻ったら、魔法師団の見学を勧められると思いますよ」
「…………は?」
突然の話題変換に、疑問しかない。
「我が国も魔王討伐に貢献した、という功績がほしいんでしょう。本来であれば、騎士団や教会も見学させられた所ですよ。ところが、騎士団長のご子息と、神官長のご子息という、我が国としても無視できない方々のご子息が、すでに一行に入っている。
であれば、残るは魔法師団だけです。多分、旅に加えろと言ってくると思います」
アルカトルでも似たような話があったよな、と泰基は思い出す。
「それこそリィカがいますしね。どう考えても必要ないですよ。リィカ以上の魔法の使い手など、いるはずがありません」
「例えリィカがいなくても、嫌だけどな。レイズクルスと仲の良い奴が取り仕切る魔法師団なんか、碌なものじゃない」
「うん、アレクシス殿。まさしくその通り。あんなのが旅に入ったら、マイナスになるだけだ」
うなずき合うアレクとジェラードだ。そんな二人を見て、暁斗は今さらの疑問が浮かぶ。
「アルカトルにいたときも、アレク、似たような事言ってたけど……、具体的に魔法師団の人って、どんな魔法を使うの?」
性格は悪いし、決して一緒に行きたいわけでもないが、具体的な実力のほどは実際の所知らない。
「……ああ、そうだな。何て言えばいいか……」
「魔法師団はね、とにかく上級魔法さえ使っていればいい、という考えの持ち主です」
悩むアレクに代わって、ユーリが説明を始めた。
「彼らの戦術は、自分たちが長々と上級魔法を唱えている間に、騎士団が敵を一ヶ所にまとめて、詠唱が終わった所でまとめられた敵に向かって魔法を放つ、というものです」
その説明に暁斗が首をかしげる。泰基も不思議そうにした。
「……有効な手だと思うけど」
「ああ。まあ状況次第でもあるだろうけど、別に悪い手じゃないよな?」
「ええ。その通りです、タイキさん。状況次第なんですよ、その手って。いつでもどこでも誰が相手でも使えるわけじゃない。だと言うのに、魔法師団はそれだけしかやらないんです」
吐き捨てるように話すユーリは、かなり珍しいな、と頭の隅で思いつつも、泰基は反問した。
「……………それだけしか、しない?」
「ええ。状況なんか関係なく、それしかしません」
暁斗が信じられない、という顔をする。
「何それ、おかしくない? だって、今までユーリもリィカも、ほとんど初級とか中級しか使ってないじゃん。それでフォローしてくれて、すごく助かったよ。上級魔法を使った方がいい場面って、あったっけ?」
「少なくとも、今までにはないですね」
「そうだよね!?」
勢い込む暁斗の脇で、泰基はなるほど、と思う。
「それじゃあ、連れて行きたくなんかないよな。下手したら、前衛が魔法に巻き込まれる事も、あるんじゃないか?」
「ああ、あるぞ。騎士団は、何人も魔法師団の放つ魔法に巻き込まれてる。文句を言っても、詠唱を終わるまでに下がっていない方が悪い、だしな。
それで、巻き込まれて大怪我した奴の治療よりも先に、かすり傷程度しか負ってないような魔法師団が、真っ先に神官に治療を要求するんだよ。神官長がそれを断ったら、嫌がらせされたこともあるようだし」
バルがチラッとユーリを見れば、「ふっふっふっふ」とやたら暗い笑みを浮かべていたので、バルは見なかったことにした。
緩んだ雰囲気の中でも、強張った表情が解けていない暁斗が、話を元に戻した。
それに、全員が居住まいを正す。
「明日まで待てば、再会できるのは確かです。ですが、その時には王太子らに好き勝手に弄ばれた後でしょうね。逆に言えば、それを許容してしまえるのであれば、何も手を出さずにいていい、と言うことになりますが」
「いいわけないだろう」
ジェラードの言い分に、アレクが睨むように反発する。
ジェラードは素直に謝る。
「悪かった、アレクシス殿。とはいうものの、取れる手段はほとんどない。リィカ嬢がいるのが地下牢である以上、そのうち場所を移すだろう。犯すのも、暴力の一つだからね。
だから地下牢の出入り口を見張って、リィカ嬢が出てきたら、その後を付けて場所を突き止める。見張りが付くのかとかが分からないけれど、後は隙を見て助け出すしかない」
「……大丈夫か、それは?」
割と出たとこ勝負だ。
失敗すると後がない。
「不安がないわけではないけど、他に方法が思い浮かばない。――連れて行かれた場所が分かり次第、連絡するよ。助け出すならアレクシス殿たちの方が確実だろう。それまでは大人しくしていてくれよ」
「……努力はする」
アレクの返答は何とも微妙で、そして暁斗は、悔しそうに唇を噛みしめていた。
「昨晩は、リィカは間違いなく無事なんですね?」
泰基が確認する。
捕らえられて一晩が経っているのだ。そう考えれば、昨晩だって怪しいはずだ。
だが、ジェラードは頷いた。
「それは確かです。……なぜ、と考えれば、確かに不思議ですね」
さすがのジェラードも、完全に王太子の性癖を知っている訳ではなかった。
時間をおくのは、飲まず食わずで弱らせるためだと、想像できるはずもなかった。
「俺たちが留められているのは、要するに、王太子の目的のために国王が協力している、という考えでいいのでしょうか?」
犯すという言葉は使いたくない。
そう思って、目的という言葉に置き換えた泰基に、ジェラードは少し考える。
「大半はそうだと思います。後は、そうですね。おそらく、この後城に戻ったら、魔法師団の見学を勧められると思いますよ」
「…………は?」
突然の話題変換に、疑問しかない。
「我が国も魔王討伐に貢献した、という功績がほしいんでしょう。本来であれば、騎士団や教会も見学させられた所ですよ。ところが、騎士団長のご子息と、神官長のご子息という、我が国としても無視できない方々のご子息が、すでに一行に入っている。
であれば、残るは魔法師団だけです。多分、旅に加えろと言ってくると思います」
アルカトルでも似たような話があったよな、と泰基は思い出す。
「それこそリィカがいますしね。どう考えても必要ないですよ。リィカ以上の魔法の使い手など、いるはずがありません」
「例えリィカがいなくても、嫌だけどな。レイズクルスと仲の良い奴が取り仕切る魔法師団なんか、碌なものじゃない」
「うん、アレクシス殿。まさしくその通り。あんなのが旅に入ったら、マイナスになるだけだ」
うなずき合うアレクとジェラードだ。そんな二人を見て、暁斗は今さらの疑問が浮かぶ。
「アルカトルにいたときも、アレク、似たような事言ってたけど……、具体的に魔法師団の人って、どんな魔法を使うの?」
性格は悪いし、決して一緒に行きたいわけでもないが、具体的な実力のほどは実際の所知らない。
「……ああ、そうだな。何て言えばいいか……」
「魔法師団はね、とにかく上級魔法さえ使っていればいい、という考えの持ち主です」
悩むアレクに代わって、ユーリが説明を始めた。
「彼らの戦術は、自分たちが長々と上級魔法を唱えている間に、騎士団が敵を一ヶ所にまとめて、詠唱が終わった所でまとめられた敵に向かって魔法を放つ、というものです」
その説明に暁斗が首をかしげる。泰基も不思議そうにした。
「……有効な手だと思うけど」
「ああ。まあ状況次第でもあるだろうけど、別に悪い手じゃないよな?」
「ええ。その通りです、タイキさん。状況次第なんですよ、その手って。いつでもどこでも誰が相手でも使えるわけじゃない。だと言うのに、魔法師団はそれだけしかやらないんです」
吐き捨てるように話すユーリは、かなり珍しいな、と頭の隅で思いつつも、泰基は反問した。
「……………それだけしか、しない?」
「ええ。状況なんか関係なく、それしかしません」
暁斗が信じられない、という顔をする。
「何それ、おかしくない? だって、今までユーリもリィカも、ほとんど初級とか中級しか使ってないじゃん。それでフォローしてくれて、すごく助かったよ。上級魔法を使った方がいい場面って、あったっけ?」
「少なくとも、今までにはないですね」
「そうだよね!?」
勢い込む暁斗の脇で、泰基はなるほど、と思う。
「それじゃあ、連れて行きたくなんかないよな。下手したら、前衛が魔法に巻き込まれる事も、あるんじゃないか?」
「ああ、あるぞ。騎士団は、何人も魔法師団の放つ魔法に巻き込まれてる。文句を言っても、詠唱を終わるまでに下がっていない方が悪い、だしな。
それで、巻き込まれて大怪我した奴の治療よりも先に、かすり傷程度しか負ってないような魔法師団が、真っ先に神官に治療を要求するんだよ。神官長がそれを断ったら、嫌がらせされたこともあるようだし」
バルがチラッとユーリを見れば、「ふっふっふっふ」とやたら暗い笑みを浮かべていたので、バルは見なかったことにした。
0
あなたにおすすめの小説
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました
ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」
優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。
――僕には才能がなかった。
打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる