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第六章 王都テルフレイラ
暁斗VSヘイスト②~固い身体の秘密~
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ヘイストの剣が下に落ちる。剣に掛かっていたエンチャントの効果が消えた。
「……やっぱりそうだ。魔力を体全体に流して、内側から身体強化してるんだ。それが固い体の秘密だね」
左腕を押さえて痛みに耐えているヘイストに、暁斗は語りかけた。
「流れてる以上の魔力をぶつけないと、ダメージを与えられない。剣技が効かないのはそのせいだね。剣技を使うのに必要な魔力って少ないから、それだけじゃ貫けないんだ」
「……貴様」
ヘイストが睨んできたが、暁斗はさらに続けた。
「攻撃される場所に魔力を集めれば、エンチャントも防げる。でもダメージ受けたり、魔力量が少なくなると、流れが乱れる。乱れて魔力の薄い所を攻撃すれば、剣技でも、多分普通に剣で攻撃するだけでも、ダメージは通る。――どう?」
ヘイストに問いかけた。
「……クックックッ。見事だ。カストル様が考案し我々が必死に練習したものを、こんな早くに見破るとはな」
「……カストル?」
知らない名前が出てきた。問いかけるが、返答はなかった。
「だが、私もこのまま負けるつもりはない。見破った程度で勝てると思うな」
「勝てるよ。見破っただけじゃない。魔力を読めるんだから、どこを攻撃すればいいか、手に取るように分かる」
「……ふん、舐めるなよ」
暁斗とヘイスト。二人の戦いは、最終局面に入った。
※ ※ ※
暁斗の説明を聞いて、アレクは脱力した。
「どうしたんだ? せっかく、固い体の秘密が分かったのに」
「分かっても何の意味もないだろう。魔力を読めなければ意味がない」
「ああ、確かにな」
納得したように泰基が頷いた。
全く意味をなさないわけではないが、読めなければ効果は半減だろう。
「いつの間に、暁斗は魔力を読めるようになったんだろうね?」
リィカの魔道具作りを見ているときに、聖剣の力を借りて見えるようになったのだが、リィカ自身もそれを知らなかった。
「――どんどん強くなるな、アキトの奴」
アレクは悔しそうだった。
それに返す言葉は、リィカも泰基も持っていなかった。
だから代わりに、
「……みんなの応援しよう?」
そう声をかけた。
※ ※ ※
「はああああ!」
ヘイストが叫ぶ。
乱れていた魔力が均一に流れ出した。
振り出しに戻ったか、と暁斗は考えたが、すぐに気付く。
均一にはなっても、薄い。これなら通る。
剣に魔力を纏わせた。
「あんたがとやかく言うから、魔法は使わない。剣技だけで決着をつけてあげる」
「………………」
ヘイストは無言だ。だが、その顔が屈辱に染まった。
「《水の付与》」
低く唸る声で、ヘイストが魔法を唱えた。
瞬間、ヘイストが暁斗に斬りかかる。かわし、あるいは受け流す。
右脇腹を負傷し、左腕を失っているとは思えない動きに、暁斗は内心舌を巻いた。
剣と剣がぶつかる。ガギッと音をたてて、鍔迫り合いになった。今度は、暁斗は両手でヘイストが片手。暁斗が一気に押し込もうと力を入れた瞬間。
ヘイストが、剣にさらに魔力を注いだ。
(――魔力付与? できるの!?)
慌てて対抗しようとするが、遅かった。
水のエンチャントの質量が増した。押し込もうとしていたのを逆に押し込まれて、剣を弾かれた。
「しまった……!」
胴体ががら空きになる。そこにヘイストの剣が斬り込まれ…………。
――キィン!
軽い音を立てて、剣が弾かれた。
「…………えっ?」
暁斗が呆然となる。
「――なっ!? 貴様、何をした!」
ヘイストに詰問されるが、そんなのは自分が聞きたい…………。
「……あ、もしかして…………」
左腕の二の腕にはめている腕輪に触れた。
誕生日プレゼントだと、リィカとの合作だと、父からもらった腕輪。
防御力をアップさせるという腕輪の効果だとしたら。
「……ちょっと効果強すぎる気もするけど」
エンチャントに魔力付与までされた剣を弾いたのだ。しかも、痛みも何もなかった。
ぼやきながらも、暁斗の口は嬉しそうに綻んでいた。
「馬鹿な……」
一方、ヘイストは呆然と立ち尽くしていた。
「……馬鹿な。なぜ、魔道具を……。人間は、使っていないはずではないのか……?」
ヘイストの視線は、暁斗の腕輪に向いていた。
その言葉に驚いたのは、暁斗も同じだった。腕輪が魔道具だと、あっさり見抜いた。
「……魔族も、魔道具を使ってるってこと?」
暁斗が低く問いかける。
ヘイストは舌打ちした。
「……まあ良い。倒してしまえば、同じだ」
「オレは答えて欲しいんだけどなぁ」
言ってみたが、残念ながら答えはなく、無言で剣を構えられただけだった。
「決着をつけよう」
静かに宣言されて、暁斗は頷いた。
「そうだね。終わりにしよう」
今度は暁斗から斬り込んだ。
剣技を発動させるために魔力を纏わせた上に、さらに魔力を付与する。
カークスと戦った時は意識してなかったそれを、今度は自分の意思でしっかりできる。
それに満足しつつ、上段から振り下ろされた剣を弾いた。
今度はヘイストの胴体部分ががら空きになる。
軽く息を吐く。
(――やるって決めたんだ。ためらうな)
自らに言い聞かせるように、暁斗は内心呟く。
剣技を発動させた。
「【天馬翼轟閃!】
風の直接攻撃の剣技。
命中の瞬間に発動させる。付与された魔力がヘイストの防御を破り、致命傷を与えた。
ヘイストが地面に倒れる。
ガハッと血を吐いた。
「見事だ。やはり敵わなかったか。だが、構わん」
暁斗を見るヘイストに、暁斗は辛そうに唇を噛んだ。
「なにが構わないの? やはり……って、敵わないと思うなら、どうして戦ったの?」
ヘイストは意外そうに暁斗を見た。
「人間は我ら魔族を憎んでいると思っていたが、貴様は違うのか。ならば貴様こそなぜ戦うのだ?」
「……父さんを助けてもらったから。その恩返しだよ」
ヘイストは苦笑したようだった。
「なるほど。――私は貴様の疑問に答える気はない。知りたくば、魔国へ行け。その目で魔国を見るが良い」
再び、ヘイストが血を吐いた。
「……魔王様が生まれる訳を知って欲しい。可能であれば…………魔国を救って、ほしい」
「………………えっ?」
どういうこと?
そう聞こうとして、ヘイストの頭がガクッと下がったのが見えた。
――パリン
軽い音がする。
結界に細かいヒビが入り、そして崩れた。
「……やっぱりそうだ。魔力を体全体に流して、内側から身体強化してるんだ。それが固い体の秘密だね」
左腕を押さえて痛みに耐えているヘイストに、暁斗は語りかけた。
「流れてる以上の魔力をぶつけないと、ダメージを与えられない。剣技が効かないのはそのせいだね。剣技を使うのに必要な魔力って少ないから、それだけじゃ貫けないんだ」
「……貴様」
ヘイストが睨んできたが、暁斗はさらに続けた。
「攻撃される場所に魔力を集めれば、エンチャントも防げる。でもダメージ受けたり、魔力量が少なくなると、流れが乱れる。乱れて魔力の薄い所を攻撃すれば、剣技でも、多分普通に剣で攻撃するだけでも、ダメージは通る。――どう?」
ヘイストに問いかけた。
「……クックックッ。見事だ。カストル様が考案し我々が必死に練習したものを、こんな早くに見破るとはな」
「……カストル?」
知らない名前が出てきた。問いかけるが、返答はなかった。
「だが、私もこのまま負けるつもりはない。見破った程度で勝てると思うな」
「勝てるよ。見破っただけじゃない。魔力を読めるんだから、どこを攻撃すればいいか、手に取るように分かる」
「……ふん、舐めるなよ」
暁斗とヘイスト。二人の戦いは、最終局面に入った。
※ ※ ※
暁斗の説明を聞いて、アレクは脱力した。
「どうしたんだ? せっかく、固い体の秘密が分かったのに」
「分かっても何の意味もないだろう。魔力を読めなければ意味がない」
「ああ、確かにな」
納得したように泰基が頷いた。
全く意味をなさないわけではないが、読めなければ効果は半減だろう。
「いつの間に、暁斗は魔力を読めるようになったんだろうね?」
リィカの魔道具作りを見ているときに、聖剣の力を借りて見えるようになったのだが、リィカ自身もそれを知らなかった。
「――どんどん強くなるな、アキトの奴」
アレクは悔しそうだった。
それに返す言葉は、リィカも泰基も持っていなかった。
だから代わりに、
「……みんなの応援しよう?」
そう声をかけた。
※ ※ ※
「はああああ!」
ヘイストが叫ぶ。
乱れていた魔力が均一に流れ出した。
振り出しに戻ったか、と暁斗は考えたが、すぐに気付く。
均一にはなっても、薄い。これなら通る。
剣に魔力を纏わせた。
「あんたがとやかく言うから、魔法は使わない。剣技だけで決着をつけてあげる」
「………………」
ヘイストは無言だ。だが、その顔が屈辱に染まった。
「《水の付与》」
低く唸る声で、ヘイストが魔法を唱えた。
瞬間、ヘイストが暁斗に斬りかかる。かわし、あるいは受け流す。
右脇腹を負傷し、左腕を失っているとは思えない動きに、暁斗は内心舌を巻いた。
剣と剣がぶつかる。ガギッと音をたてて、鍔迫り合いになった。今度は、暁斗は両手でヘイストが片手。暁斗が一気に押し込もうと力を入れた瞬間。
ヘイストが、剣にさらに魔力を注いだ。
(――魔力付与? できるの!?)
慌てて対抗しようとするが、遅かった。
水のエンチャントの質量が増した。押し込もうとしていたのを逆に押し込まれて、剣を弾かれた。
「しまった……!」
胴体ががら空きになる。そこにヘイストの剣が斬り込まれ…………。
――キィン!
軽い音を立てて、剣が弾かれた。
「…………えっ?」
暁斗が呆然となる。
「――なっ!? 貴様、何をした!」
ヘイストに詰問されるが、そんなのは自分が聞きたい…………。
「……あ、もしかして…………」
左腕の二の腕にはめている腕輪に触れた。
誕生日プレゼントだと、リィカとの合作だと、父からもらった腕輪。
防御力をアップさせるという腕輪の効果だとしたら。
「……ちょっと効果強すぎる気もするけど」
エンチャントに魔力付与までされた剣を弾いたのだ。しかも、痛みも何もなかった。
ぼやきながらも、暁斗の口は嬉しそうに綻んでいた。
「馬鹿な……」
一方、ヘイストは呆然と立ち尽くしていた。
「……馬鹿な。なぜ、魔道具を……。人間は、使っていないはずではないのか……?」
ヘイストの視線は、暁斗の腕輪に向いていた。
その言葉に驚いたのは、暁斗も同じだった。腕輪が魔道具だと、あっさり見抜いた。
「……魔族も、魔道具を使ってるってこと?」
暁斗が低く問いかける。
ヘイストは舌打ちした。
「……まあ良い。倒してしまえば、同じだ」
「オレは答えて欲しいんだけどなぁ」
言ってみたが、残念ながら答えはなく、無言で剣を構えられただけだった。
「決着をつけよう」
静かに宣言されて、暁斗は頷いた。
「そうだね。終わりにしよう」
今度は暁斗から斬り込んだ。
剣技を発動させるために魔力を纏わせた上に、さらに魔力を付与する。
カークスと戦った時は意識してなかったそれを、今度は自分の意思でしっかりできる。
それに満足しつつ、上段から振り下ろされた剣を弾いた。
今度はヘイストの胴体部分ががら空きになる。
軽く息を吐く。
(――やるって決めたんだ。ためらうな)
自らに言い聞かせるように、暁斗は内心呟く。
剣技を発動させた。
「【天馬翼轟閃!】
風の直接攻撃の剣技。
命中の瞬間に発動させる。付与された魔力がヘイストの防御を破り、致命傷を与えた。
ヘイストが地面に倒れる。
ガハッと血を吐いた。
「見事だ。やはり敵わなかったか。だが、構わん」
暁斗を見るヘイストに、暁斗は辛そうに唇を噛んだ。
「なにが構わないの? やはり……って、敵わないと思うなら、どうして戦ったの?」
ヘイストは意外そうに暁斗を見た。
「人間は我ら魔族を憎んでいると思っていたが、貴様は違うのか。ならば貴様こそなぜ戦うのだ?」
「……父さんを助けてもらったから。その恩返しだよ」
ヘイストは苦笑したようだった。
「なるほど。――私は貴様の疑問に答える気はない。知りたくば、魔国へ行け。その目で魔国を見るが良い」
再び、ヘイストが血を吐いた。
「……魔王様が生まれる訳を知って欲しい。可能であれば…………魔国を救って、ほしい」
「………………えっ?」
どういうこと?
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結界に細かいヒビが入り、そして崩れた。
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