433 / 681
第十二章 帝都ルベニア
雨を降らすゾウの真実
しおりを挟む
『グラムがいるってことは、キミ、勇者クン?』
「そ、そうだけど」
『そうなんだー。あ、ボクはね、イビーって言うの。よろしくー』
「よ、よろしく。暁斗です」
周囲の反応など何も気にせず、イビーと名乗ったゾウはマイペースだ。
ペースに巻き込まれて名乗ってしまった。「そっかぁ、アキトかぁ」とつぶやいているゾウを見て、次いで手に持つ聖剣を見る。
先ほどの怒号は、間違いなく聖剣グラムの声だった。
いつもは頭に響いてくる声が、あの時は耳から聞こえた。
「しゃべれるんだ」
初めて知ったその事実に驚いて声に出てしまったが、聖剣は何も言わない。
何となく不機嫌な様子だけが伝わってくる。
『それで、どうしてこんなところにいるのー?』
小さい男の子のような可愛らしい声と相まって、無邪気に聞こえる質問に暁斗は口ごもった。
伝わってくる聖剣の不機嫌さが、増した気がする。
「あの、雨が降らないって話があって、それで頼まれて」
言ったのはリィカだった。
イビーと名乗ったゾウの、キョトンとした目が可愛い。
「いつもは、夏の初めに降るのに降らないからって話があったんです。それで……」
『今っていつ?』
説明しかけたリィカの言葉は、イビーに遮られた。
可愛い目の中に、焦りが見える。
「秋になりました」
『うわーん、やっちゃったー! グラム、もっと早く起こしに来てよー!』
叫ばれてリィカは戸惑い、暁斗は『やはりこいつ殺せ』と言う聖剣の言葉に、頬がひくついた。
※ ※ ※
とりあえず、その場の全員が自己紹介を行い、イビーを中心に座る。
そして、事情説明という名の言い訳を聞くことになった。
『魔王が誕生したとき、魔物がボクのところにいっぱい出たんだよー。それで魔力をぶっ放して結界張って寝たんだけど、魔力使い過ぎて寝過ごしちゃったんだー。ごめんねー』
言い訳、以上。
一応、謝罪の言葉を口にはしているが、ものすごく軽い。
本当に悪いと思っているのかと言いたくなる。
「すまない。一ついいか」
『なーにー?』
アレクが聞くと、やたら間延びした返事で促された。
ペースが狂う、と思いながらも質問した。
「魔王が誕生したのは冬の終わりだ。夏が始まるまでに三ヶ月はあったはずだが、それで寝過ごしたのいうのは……」
『いっつもボク五ヶ月寝てるんだよ!? それなのに、たった三ヶ月で起きろっていうの!?』
いや起きろよ、というか三ヶ月がたったなのか。
というツッコミは、呆れが先に来てしまって言葉にならない。
代わりに、ユーリがツッコんだ。
「そもそも、すでに夏も終わって秋ですよ。つまりはもう六ヶ月経ってるわけですが……」
『しょうがないでしょ! ボク、疲れてたんだから!』
イビーにプンスカ怒って言い返され、ユーリはゲンナリする。
思っていた以上に、事情がくだらない。
「つまり、聖剣との約束というのは、寝過ごしてたら起こして、みたいな感じですか?」
『うん、そうだよー』
できれば否定して欲しいと思いながら聞いてみれば、あっさり肯定された。
『でもグラムは剣だから、一人じゃ動けないの。だからしょうがないから、グラムが動けるときだけで良いよって言ってあげたの。ボク偉いでしょ』
「…………」
聖剣がゾウの話になると不機嫌になる、という理由が良く分かった気がする。
偉いでしょ、と言う前に寝過ごさない努力が必要ではないのだろうか。
周囲から白眼視されていることに全く気付かず、イビーは調子よく話し続ける。
『ボク、この世界に来る前も雨を降らすお仕事してたんだけど、面倒くさいんだー。サボると怒られるし。違う世界に召喚されれば、ボクを怒るうるさいヤツいなくなるなぁって思って』
近年ではすっかり忘れられた事実だが、召喚の魔方陣は召喚するときに相手に求める役割を告げることができる。
納得してもらった上で、召喚することが可能なのだ。
イビーもそうして納得して召喚されたのだろうが、その理由が不純すぎる。
サボったら怒られるのは当たり前だろう。
全員がそう思っている中、当人(ゾウ?)は気にする事なく、続きを語る。
『この砂漠はさー、死の砂漠って言われてて、全く雨降らなくて生き物生きてけなくて、でもそこで生きていけるようにしてくれって言われたんだー。でも、そんな場所に雨降らすの大変でしょ? だから、半年のうち一ヶ月だけ雨を降らしてあげるって言ったの』
そうしているうちに気温が下がり、オアシスができて、そこには緑が生い茂るようになって、人が住めるようになった。
イビーもその一ヶ月だけ働いて、後は寝ていられる夢の生活を送れるようになった。
『一ヶ月ずっと雨降らせる必要もないから、適当に力ぬくけどねー。最初に雲作っちゃえば、後しばらくは降っててくれるし』
五ヶ月も休むんだから、一ヶ月くらい真面目に働けよ、という無言のツッコミが、イビー以外の全員の内心でされる。
『でもさぁ、雨降らす以外で力使っちゃうと、疲れるんだー。最初にグラムに会った時は、二年くらい寝ちゃってたんだー。それで、人が離れちゃってたみたいでー』
「二年……」
我慢できずリィカがつぶやいた。
何があって二年も寝たのか。というか、そもそもよく二年も寝続けられるものだ。
『別に誰も住んでなくてもいいんだけどー。でも、召喚されたときに半年に一回雨降らす契約してるから、破るのはあんまり良くないんだよー。それなのに、グラムってば来るの遅いんだからー』
まるで聖剣の責任のように言っているが、悪いのはイビーである。
破るのが良くないと分かっているのなら、破らないようにすればいいだけである。
「あの……、わたしが魔力を流したら目を覚ましたのは?」
『キミが魔力くれたんだー。ありがとー』
「は、はい。どういたしまして?」
お礼を言われたのはいいのだが、リィカの質問の答えにはまったくなっていない。
『結界って魔力いっぱい使うからー。なかなか魔力が回復しないんだよねー』
「……なかなか回復しないのに、結界張りっぱなしですか?」
結界とは、あの虹色に輝いていたもののことのはず。
リィカからすれば、本当にどうしようもない場合でもなければ、魔力が回復しない事態に陥ることは絶対に避けたい。
自分たちがここに来た時、魔物がいたわけでも何でもないのだから、結界を張ったままにする必要などなかったはずなのだ。
『そうだよー? だって寝るの邪魔されたくないでしょー?』
「……結界張らないで魔力が早く回復したら、もっと早く目を覚ますんじゃないんですか?」
『別にいいよー。だって寝てたいし』
「………………」
そろそろツッコむのも疲れてきた。
魔力をさっさと回復させれば、契約を破ることもなくなるのではないだろうか。わざわざ起こしてもらう必要だってないはずだ。
「こういうヤツなんだって言ってる。どうやったらより多く寝られるかを最優先で考えるんだって」
「駄目だろう、それは」
暁斗の言葉にアレクが思わず返すが、暁斗も聖剣の言葉を代弁しただけである。
そして一番問題がある者が、全く何も気にしていないのが一番問題だ。
『でもー、さすがにこのまま冬まで何もしないのは問題だからー。今からちょっとだけ雨降らせるねー』
今までのやり取りがやり取りだったので、イビーが自分から動いたのは驚いた。
一応、申し訳なく思う気持ちはあったのか。
四本の足を大きく広げるように立ち、集中するように目を瞑る。まず長い鼻が光り、それが体全体に行き渡り、虹色の輝きを放った。
「パオオオォォォォォォォォォン!!」
大きく、遠くまで行き渡るような鳴き声が響く。
そして、それからそう時間をおかず、空に雲が湧き出て雨が降り出した。
(すごい……!)
リィカは素直にそう思う。
先ほどまでの残念な感じはまるでない。雨を降らせる、神々しいまでの姿だ。
『これでいいよー。一週間から十日くらいは雨が降ると思う。あとは冬にねー』
一度神々しさを見てしまうと、この間延びした話し方も、特別のように感じてしまえるのが不思議だった。
『じゃあもう帰ってねー。ボク寝るから』
「ちょっと待って」
感じた神々しさは、一瞬で消え去った。
気付けばリィカは口を挟んでいた。
『なにー? 早く寝たいんだけどー』
「また寝るんですか? 起きてた方がいいと思うんですけど。また起き損ねたらどうするんですか?」
『だいじょうぶー。ちゃんと起きるよー。じゃあねー』
それだけ言って、体を横倒しにしてしまった。
スピー、スピー……
あっという間に聞こえた寝息に、呆然とする。
「……どうしよう」
「……どうしようか」
リィカの困ったつぶやきに、アレクも同じようにつぶやき返す。
何か聖剣が言わないかと思えば、暁斗も困った顔をしていた。
「……聖剣は、これで約束は果たしたから、後は知らないって」
それでは、ますますどうしていいか分からない。
これで問題は解決したと言っていいのだろうか。
皆が困惑する中、トラヴィスが口を開いた。
「皆様方、ありがとうございます。これまできちんと雨季はあったのですから問題ありません。大丈夫です。ご尽力に感謝いたします」
丁寧に礼を取るトラヴィスに、自然とリィカたちの顔がほころぶ。
絶対に大丈夫だという自信が、本当にあるのかは分からない。
それでも、イビーの恩恵を受けてこれまで生活してきたトラヴィスは、何か感じるものがあるのかもしれない。
一行は、帝都ルベニアへ帰ることにしたのだった。
ちなみに帰りは大変だった。
雨の降る砂漠は、それまでとまるで違う世界だった。
来るときは道なき道をまっすぐ来た一行だったが、トラヴィスの案内で近くの街まで行き、そこから正規の道を通っていったのだった。
「そ、そうだけど」
『そうなんだー。あ、ボクはね、イビーって言うの。よろしくー』
「よ、よろしく。暁斗です」
周囲の反応など何も気にせず、イビーと名乗ったゾウはマイペースだ。
ペースに巻き込まれて名乗ってしまった。「そっかぁ、アキトかぁ」とつぶやいているゾウを見て、次いで手に持つ聖剣を見る。
先ほどの怒号は、間違いなく聖剣グラムの声だった。
いつもは頭に響いてくる声が、あの時は耳から聞こえた。
「しゃべれるんだ」
初めて知ったその事実に驚いて声に出てしまったが、聖剣は何も言わない。
何となく不機嫌な様子だけが伝わってくる。
『それで、どうしてこんなところにいるのー?』
小さい男の子のような可愛らしい声と相まって、無邪気に聞こえる質問に暁斗は口ごもった。
伝わってくる聖剣の不機嫌さが、増した気がする。
「あの、雨が降らないって話があって、それで頼まれて」
言ったのはリィカだった。
イビーと名乗ったゾウの、キョトンとした目が可愛い。
「いつもは、夏の初めに降るのに降らないからって話があったんです。それで……」
『今っていつ?』
説明しかけたリィカの言葉は、イビーに遮られた。
可愛い目の中に、焦りが見える。
「秋になりました」
『うわーん、やっちゃったー! グラム、もっと早く起こしに来てよー!』
叫ばれてリィカは戸惑い、暁斗は『やはりこいつ殺せ』と言う聖剣の言葉に、頬がひくついた。
※ ※ ※
とりあえず、その場の全員が自己紹介を行い、イビーを中心に座る。
そして、事情説明という名の言い訳を聞くことになった。
『魔王が誕生したとき、魔物がボクのところにいっぱい出たんだよー。それで魔力をぶっ放して結界張って寝たんだけど、魔力使い過ぎて寝過ごしちゃったんだー。ごめんねー』
言い訳、以上。
一応、謝罪の言葉を口にはしているが、ものすごく軽い。
本当に悪いと思っているのかと言いたくなる。
「すまない。一ついいか」
『なーにー?』
アレクが聞くと、やたら間延びした返事で促された。
ペースが狂う、と思いながらも質問した。
「魔王が誕生したのは冬の終わりだ。夏が始まるまでに三ヶ月はあったはずだが、それで寝過ごしたのいうのは……」
『いっつもボク五ヶ月寝てるんだよ!? それなのに、たった三ヶ月で起きろっていうの!?』
いや起きろよ、というか三ヶ月がたったなのか。
というツッコミは、呆れが先に来てしまって言葉にならない。
代わりに、ユーリがツッコんだ。
「そもそも、すでに夏も終わって秋ですよ。つまりはもう六ヶ月経ってるわけですが……」
『しょうがないでしょ! ボク、疲れてたんだから!』
イビーにプンスカ怒って言い返され、ユーリはゲンナリする。
思っていた以上に、事情がくだらない。
「つまり、聖剣との約束というのは、寝過ごしてたら起こして、みたいな感じですか?」
『うん、そうだよー』
できれば否定して欲しいと思いながら聞いてみれば、あっさり肯定された。
『でもグラムは剣だから、一人じゃ動けないの。だからしょうがないから、グラムが動けるときだけで良いよって言ってあげたの。ボク偉いでしょ』
「…………」
聖剣がゾウの話になると不機嫌になる、という理由が良く分かった気がする。
偉いでしょ、と言う前に寝過ごさない努力が必要ではないのだろうか。
周囲から白眼視されていることに全く気付かず、イビーは調子よく話し続ける。
『ボク、この世界に来る前も雨を降らすお仕事してたんだけど、面倒くさいんだー。サボると怒られるし。違う世界に召喚されれば、ボクを怒るうるさいヤツいなくなるなぁって思って』
近年ではすっかり忘れられた事実だが、召喚の魔方陣は召喚するときに相手に求める役割を告げることができる。
納得してもらった上で、召喚することが可能なのだ。
イビーもそうして納得して召喚されたのだろうが、その理由が不純すぎる。
サボったら怒られるのは当たり前だろう。
全員がそう思っている中、当人(ゾウ?)は気にする事なく、続きを語る。
『この砂漠はさー、死の砂漠って言われてて、全く雨降らなくて生き物生きてけなくて、でもそこで生きていけるようにしてくれって言われたんだー。でも、そんな場所に雨降らすの大変でしょ? だから、半年のうち一ヶ月だけ雨を降らしてあげるって言ったの』
そうしているうちに気温が下がり、オアシスができて、そこには緑が生い茂るようになって、人が住めるようになった。
イビーもその一ヶ月だけ働いて、後は寝ていられる夢の生活を送れるようになった。
『一ヶ月ずっと雨降らせる必要もないから、適当に力ぬくけどねー。最初に雲作っちゃえば、後しばらくは降っててくれるし』
五ヶ月も休むんだから、一ヶ月くらい真面目に働けよ、という無言のツッコミが、イビー以外の全員の内心でされる。
『でもさぁ、雨降らす以外で力使っちゃうと、疲れるんだー。最初にグラムに会った時は、二年くらい寝ちゃってたんだー。それで、人が離れちゃってたみたいでー』
「二年……」
我慢できずリィカがつぶやいた。
何があって二年も寝たのか。というか、そもそもよく二年も寝続けられるものだ。
『別に誰も住んでなくてもいいんだけどー。でも、召喚されたときに半年に一回雨降らす契約してるから、破るのはあんまり良くないんだよー。それなのに、グラムってば来るの遅いんだからー』
まるで聖剣の責任のように言っているが、悪いのはイビーである。
破るのが良くないと分かっているのなら、破らないようにすればいいだけである。
「あの……、わたしが魔力を流したら目を覚ましたのは?」
『キミが魔力くれたんだー。ありがとー』
「は、はい。どういたしまして?」
お礼を言われたのはいいのだが、リィカの質問の答えにはまったくなっていない。
『結界って魔力いっぱい使うからー。なかなか魔力が回復しないんだよねー』
「……なかなか回復しないのに、結界張りっぱなしですか?」
結界とは、あの虹色に輝いていたもののことのはず。
リィカからすれば、本当にどうしようもない場合でもなければ、魔力が回復しない事態に陥ることは絶対に避けたい。
自分たちがここに来た時、魔物がいたわけでも何でもないのだから、結界を張ったままにする必要などなかったはずなのだ。
『そうだよー? だって寝るの邪魔されたくないでしょー?』
「……結界張らないで魔力が早く回復したら、もっと早く目を覚ますんじゃないんですか?」
『別にいいよー。だって寝てたいし』
「………………」
そろそろツッコむのも疲れてきた。
魔力をさっさと回復させれば、契約を破ることもなくなるのではないだろうか。わざわざ起こしてもらう必要だってないはずだ。
「こういうヤツなんだって言ってる。どうやったらより多く寝られるかを最優先で考えるんだって」
「駄目だろう、それは」
暁斗の言葉にアレクが思わず返すが、暁斗も聖剣の言葉を代弁しただけである。
そして一番問題がある者が、全く何も気にしていないのが一番問題だ。
『でもー、さすがにこのまま冬まで何もしないのは問題だからー。今からちょっとだけ雨降らせるねー』
今までのやり取りがやり取りだったので、イビーが自分から動いたのは驚いた。
一応、申し訳なく思う気持ちはあったのか。
四本の足を大きく広げるように立ち、集中するように目を瞑る。まず長い鼻が光り、それが体全体に行き渡り、虹色の輝きを放った。
「パオオオォォォォォォォォォン!!」
大きく、遠くまで行き渡るような鳴き声が響く。
そして、それからそう時間をおかず、空に雲が湧き出て雨が降り出した。
(すごい……!)
リィカは素直にそう思う。
先ほどまでの残念な感じはまるでない。雨を降らせる、神々しいまでの姿だ。
『これでいいよー。一週間から十日くらいは雨が降ると思う。あとは冬にねー』
一度神々しさを見てしまうと、この間延びした話し方も、特別のように感じてしまえるのが不思議だった。
『じゃあもう帰ってねー。ボク寝るから』
「ちょっと待って」
感じた神々しさは、一瞬で消え去った。
気付けばリィカは口を挟んでいた。
『なにー? 早く寝たいんだけどー』
「また寝るんですか? 起きてた方がいいと思うんですけど。また起き損ねたらどうするんですか?」
『だいじょうぶー。ちゃんと起きるよー。じゃあねー』
それだけ言って、体を横倒しにしてしまった。
スピー、スピー……
あっという間に聞こえた寝息に、呆然とする。
「……どうしよう」
「……どうしようか」
リィカの困ったつぶやきに、アレクも同じようにつぶやき返す。
何か聖剣が言わないかと思えば、暁斗も困った顔をしていた。
「……聖剣は、これで約束は果たしたから、後は知らないって」
それでは、ますますどうしていいか分からない。
これで問題は解決したと言っていいのだろうか。
皆が困惑する中、トラヴィスが口を開いた。
「皆様方、ありがとうございます。これまできちんと雨季はあったのですから問題ありません。大丈夫です。ご尽力に感謝いたします」
丁寧に礼を取るトラヴィスに、自然とリィカたちの顔がほころぶ。
絶対に大丈夫だという自信が、本当にあるのかは分からない。
それでも、イビーの恩恵を受けてこれまで生活してきたトラヴィスは、何か感じるものがあるのかもしれない。
一行は、帝都ルベニアへ帰ることにしたのだった。
ちなみに帰りは大変だった。
雨の降る砂漠は、それまでとまるで違う世界だった。
来るときは道なき道をまっすぐ来た一行だったが、トラヴィスの案内で近くの街まで行き、そこから正規の道を通っていったのだった。
10
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
生贄公爵と蛇の王
荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。
「お願いします、私と結婚してください!」
「はあ?」
幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。
そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。
しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる