【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

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第十三章 魔国への道

結界を突き破れ

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 リィカは、唇を噛んだ。

 剣を突き立てた所から、結界がバチバチと音を立てている。手応えはあると思ったのに、どれだけ刺しても魔力を込めても、反応が変わらない。
 だというのに、すでに魔力は半分を切っている。

(もっと、もっと魔力を研ぎ澄ませて)

 さらに魔力を注ぎ込む。
 より濃密に、より凝縮させて。結界を突き破らんと、さらにその先端が細く、鋭くなっていく。

 バチバチという音が、大きくなった。
 ようやく、反応が変わってきた。

「このまま、いけば……」

 きっと壊せる。結界を、突き破れる。
 だが、すでにもう魔力の残りは、ほとんどなかった。

「……なんで、わたしは、いつもこう、なの」

 肝心な時に、魔力が足りない。魔力量は増えているはずなのに、それでも足りない。
 魔封陣を壊すときは、ユーリからマジックポーションをもらえた。でも、今もらうのは無理だ。

 ならば、方法は一つだ。

『あまりに生命力を多用しすぎると、寿命が縮み、体が壊れる。人にとっては命取りとなる。程々にしておくことだな』

 かつて、ユグドラシルの島でバナスパティに言われたことが頭をよぎる。それでも、例え体が壊れても、絶対に譲れないことがあるのだ。

 リィカの全身が光った。途端に、力が入らず崩れ落ちそうになる足を、必死に支える。
 生命力を剣に込める。使い過ぎないように、なんて考えていられない。そんなことを考えていたら、この結界は破れない。

 歯を食いしばる。
 バチバチ、という音がさらに大きくなった。

「――!! いけえええぇぇぇぇぇぇっ!!」

 行ける、と思った瞬間、リィカはその全てを剣の切っ先に注ぎ込んだ。
 切っ先が、結界を突き破った。その瞬間。

 ――バリイィィィィィン!!

 結界が崩れ落ちる。それを確認して……リィカに限界が訪れた。
 そのまま、リィカは倒れた。


※ ※ ※


「あ……」

 暁斗は、大きく目を見開いた。
 結界が壊れた。――リィカが、壊した。

 そして、そのリィカが倒れている。

「リィカ!!!」

 暁斗は叫んだ。
 自らを蝕む《ポイズン》も、上級魔法二発を受けて傷を負っていることも、すべて頭から抜け落ちた。


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