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第十六章 三年目の始まり
アレクたちのやったこと
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「ハリス先生、一緒に行って、リィカの荷物を平民クラスから取ってきます」
「ああ分かった。行ってこい」
「はい。――行こう、リィカ」
「……………え?」
呼びかけられて手を引かれて、ようやくリィカは我に返る。
辺りを見回した。
いるのは講堂だ。しかし、壇からは降りていた。すでに平民クラスの生徒たちはいなく、三クラスある貴族クラスも、BとCクラスの面々は教室に戻り始めていた。
そして自分はアレクに手を引かれて歩いている。後ろにいるのは、バルとユーリだ。
どこに行くのか。向かう方向は、自分が講堂に来るまでに来た道を戻る形だ。それはつまり……。
『荷物を平民クラスから持ってきます』
アレクの声が、耳に蘇った。
「ま、まってっ……!」
声を出し、引かれる手を引っ張ると、簡単に離れた。足を止めてアレクの顔を真正面から見てしまって、慌ててうつむく。
そうしてしまってから、平民の自分が王子のアレクに対して、失礼な真似をしたんじゃないかと思い、周囲の魔力を探るも、他に人はいないことにホッとする。
そこまで考えて、今度は国王の言葉が蘇った。
『今後はリィカ・フォン・クレールムと名乗るが良い』
何が何やら分からないうちに、自分はどうやら貴族になってしまった……らしい? まともに返事さえできなかったが、国王が決定事項として言った言葉を、覆せるはずもない。
「……なんで」
ポツリとした言葉が、リィカの口からこぼれた。
すると、手が伸びて頬に触れる。そのままその手が強引に、うつむくリィカの顔を上げさせた。
「顔を上げろ、リィカ。もう王子だの平民だのは言わさない。お前はもう貴族なんだから」
「で、でも……」
うつむこうとしても、アレクの手がそれを阻む。せめて視線だけでも、と逸らせるが、それすら許さないとばかりに、アレクの顔が眼前にきた。
「でもじゃない。あんな別れを、俺は絶対に受け入れない」
吐息がかかるくらい、近い距離。アレクの翠色の目が、まっすぐリィカを捉える。けれど、フッとアレクの目の力が緩んだ。頬に当てた手はそのままだが、顔は離れる。
「強引なのは、認める。リィカの意思も確認せず、リィカが絶対に拒否できない方法を、あえて取ったことは確かだ」
頬に当てられていた手が、背中に回る。抱きしめられて、その腕の中に捕らわれる。
「それでも、俺はお前を手放さないと決めた。お前にどう思われても……俺はお前と一緒にいたいんだ」
「わたし……は……」
何かを言おうとして、何も言えない。この腕が自分にまた伸ばされることなど、考えてもいなかった。
嬉しい……んだろうか。よく分からない。迷ってる……戸惑っている……? あまりに突然すぎて、思考が追いつかない。
「いいよリィカ。強引な手を使ったんだ。動揺するのも無理はない。今は、お前が俺の側に戻ってきた事実だけで満足する」
背中に回された手が離され、代わりにリィカの手を取った。
「行こう。あまり遅くなったら、先生に怒られるからな」
「……はい」
頭が回らないまま、とりあえず返事をすると、手を引こうとしていた動きが止まった。
「とりあえずリィカ、これだけは言っておく。旅の間と同じように話せよ。俺たちに敬語なんか使ったら、今後お前の事を『クレールム卿』って呼ぶからな」
「……ふえっ!?」
よく分からないが、とんでもないことを言われた気がした。
「ああ分かった。行ってこい」
「はい。――行こう、リィカ」
「……………え?」
呼びかけられて手を引かれて、ようやくリィカは我に返る。
辺りを見回した。
いるのは講堂だ。しかし、壇からは降りていた。すでに平民クラスの生徒たちはいなく、三クラスある貴族クラスも、BとCクラスの面々は教室に戻り始めていた。
そして自分はアレクに手を引かれて歩いている。後ろにいるのは、バルとユーリだ。
どこに行くのか。向かう方向は、自分が講堂に来るまでに来た道を戻る形だ。それはつまり……。
『荷物を平民クラスから持ってきます』
アレクの声が、耳に蘇った。
「ま、まってっ……!」
声を出し、引かれる手を引っ張ると、簡単に離れた。足を止めてアレクの顔を真正面から見てしまって、慌ててうつむく。
そうしてしまってから、平民の自分が王子のアレクに対して、失礼な真似をしたんじゃないかと思い、周囲の魔力を探るも、他に人はいないことにホッとする。
そこまで考えて、今度は国王の言葉が蘇った。
『今後はリィカ・フォン・クレールムと名乗るが良い』
何が何やら分からないうちに、自分はどうやら貴族になってしまった……らしい? まともに返事さえできなかったが、国王が決定事項として言った言葉を、覆せるはずもない。
「……なんで」
ポツリとした言葉が、リィカの口からこぼれた。
すると、手が伸びて頬に触れる。そのままその手が強引に、うつむくリィカの顔を上げさせた。
「顔を上げろ、リィカ。もう王子だの平民だのは言わさない。お前はもう貴族なんだから」
「で、でも……」
うつむこうとしても、アレクの手がそれを阻む。せめて視線だけでも、と逸らせるが、それすら許さないとばかりに、アレクの顔が眼前にきた。
「でもじゃない。あんな別れを、俺は絶対に受け入れない」
吐息がかかるくらい、近い距離。アレクの翠色の目が、まっすぐリィカを捉える。けれど、フッとアレクの目の力が緩んだ。頬に当てた手はそのままだが、顔は離れる。
「強引なのは、認める。リィカの意思も確認せず、リィカが絶対に拒否できない方法を、あえて取ったことは確かだ」
頬に当てられていた手が、背中に回る。抱きしめられて、その腕の中に捕らわれる。
「それでも、俺はお前を手放さないと決めた。お前にどう思われても……俺はお前と一緒にいたいんだ」
「わたし……は……」
何かを言おうとして、何も言えない。この腕が自分にまた伸ばされることなど、考えてもいなかった。
嬉しい……んだろうか。よく分からない。迷ってる……戸惑っている……? あまりに突然すぎて、思考が追いつかない。
「いいよリィカ。強引な手を使ったんだ。動揺するのも無理はない。今は、お前が俺の側に戻ってきた事実だけで満足する」
背中に回された手が離され、代わりにリィカの手を取った。
「行こう。あまり遅くなったら、先生に怒られるからな」
「……はい」
頭が回らないまま、とりあえず返事をすると、手を引こうとしていた動きが止まった。
「とりあえずリィカ、これだけは言っておく。旅の間と同じように話せよ。俺たちに敬語なんか使ったら、今後お前の事を『クレールム卿』って呼ぶからな」
「……ふえっ!?」
よく分からないが、とんでもないことを言われた気がした。
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