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81話
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何やら獣のような雄叫びが聞こえてきたかと思えば、すぐに元七英雄がシアンとメナドールを運んできた。真継承の反動か2人とも相当疲労しているように見える。
雄叫びからして高位の魔物が近い場所に迫っているのは間違いないが、その戦いにシアンとメナドールは戦力になりそうにない。
「グラ、今シアンは動けねぇから俺が指示を出す。いいな?」
「うん、いいよ」
「じゃあ中に来い」
そうグラにだけ声をかけると城の中に入って行こうとする。ふざけんな!
「おい!俺たちを無視するんじゃねぇ!」
「あのなぁ、馬鹿に構ってる暇はねぇんだよ」
馬鹿だと?こいつ、元七英雄の分際で上からものを言いやがって。何様のつもりだ。こっちは現七英雄だぞ。いつまでも過去の栄光に縋って見下してるんじゃねぇ!
ムカつくがシアンにグラ、メナドールから指示を仰ぐために城の中に入る。そのまま元七英雄についていって部屋に入った。
すると中には柱の魔物が居た。マルスには手を出すなと言われていた柱と合致するが、柱を目の前にして倒さねぇ理由はねぇ。
そう愛剣を構えた直後、体が氷つくように動かなくなった。
「これ以上、邪魔するならお前から始末するぞ」
何も言い返せなかった。恐怖で言葉が出なかったのだ。これが元とはいえ、七英雄の力か。
「悪いけど今はゼギくん真面目だから邪魔はしないでね」
そうメナドールからも強い圧を感じる。これが七英雄、分かっていたことだが俺よりも強い。負かされたからか纏っている雰囲気が違うように見えた。
「今はって何だ、今はって」
「お主は大概、不真面目であろうが」
「そうです。ご主人様は重要な時以外、不真面目です」
「同意」
「私はノーコメントでお願いします」
柱に続いて金髪の美少女や銀髪の美少女、栗色の髪の美少女が口を挟む。
全員が全員、望めばどんな男でも虜になりそうな容姿だ。それがこんな元七英雄に、って今ご主人様って言ったよな。こんな美少女を従者に…あー、クソ、頭がついていかねぇ。
それはエストも同じようでポカーンと間抜けな面をしている。
「メナ、数は?」
「ちょっと待ってね。ガゼルガとアイリスが並行して先陣を切ってるけど後ろに30万はいるかな。でもガゼルガの配下だけだから後続でアイリスの配下も来るとは思う。ごめん。この数を見逃がしたのは私のミスだね。今から急いで探す」
30万だと?そんなのギルドだけでなく皇国と帝国の軍を出して対応してもどうなるか。すぐにでもマルスに報告して用意させないと間に合わねぇぞ。
それなのに誰も報告をしに行く様子はない。ここにいる戦力だけで対処するつもりか?
「直近でウィンガルにスカー、もうちょい遡れば《賢王》にハオまでやられてるからな。流石に動いてきたか。それに元々、柱共は軍拡してたから気づきにくいしガゼルガの軍は統率も機動力も高いから仕方ねぇ」
「どうするの?おいらが止めてこようか?」
「そうだな。グラはガゼルガの相手をしろ」
「分かった」
返事をするとグラは部屋を出て行く。
この指示に不満はないのだろうか。そう思っていると柱が口を挟む。
「グラならアイリスの方が相性は良かったのではないか?ガゼルガはあまりスキルを使わぬ。対してアイリスはスキルを多用する戦い方じゃ。だから相性がいいのはアイリスであろう?」
何なんだ、この柱。同じ柱の情報を売っただと?騙しているのかとも疑ったが、マルスから聞いていた情報と一致している。訳が分からねぇ。
「せめてカイがいたらな。グラにはガゼルガの配下も倒してもらう」
「ガゼルガ四天王のことじゃな。彼奴等はガゼルガの傍を離れぬ。その忠義には配下に慕われておった父上も認めていたほどじゃ」
「メナもシアンも戦えねぇからな。グラに相手してもらうしかねぇ」
さっきから当てつけみたいに馬鹿にしやがって。そんなにカイゼルが使えて俺たちが使えねぇのかよ。
「では我がアイリスの相手をすればよいのか?」
またしても柱が訳の分からないことを言う。しかし、それに誰も驚いた様子はなく話は進んでいく。
「いや、アルはここに来る魔物の相手をしろ。他所に気を遣うなら自分の城を守れ。四獣は使うなよ。あと、スーを連れてけ」
「分かったのじゃ。では、お主がアイリスと戦うのか?」
「数が数だから俺はシアンとメナの回復を待ちながら臨機応変に動く」
「そうか。では我は先に行くぞ。スーついてくるのじゃ」
柱はそう言うとスライムを連れて行った。ってスライムみてぇな雑魚種までいたのかよ。
元七英雄も結局は自分の身可愛さに後方支援か。七英雄をクビになっただけあって屑だな。何でこんな奴の命令をグラやメナドールは聞くのか分からねぇ。
だが、それよりも気になるのはアイリスの対処だ。30万の魔物も問題だが、やっぱり柱だ。30万の魔物は数で対処できても柱は数だけじゃ対処できねぇ。それにこれだけの数、頭を叩いて指揮を下げねぇと話にならなねぇ。
そう思っているとエストが同じ疑問を口にする。
「じゃあ誰がアイリスの相手をするのよ。まさかアンタが行く気?」
「お前たちに決まってるだろ」
そう元七英雄は俺とエストの方を見る。
ふざけるな!そんなのただの捨て駒じゃねぇか!
「そんな命令に従う訳ねぇだろ!」
「ならお前のせいで旧王国と皇国は半壊するな」
「ふざけんな!お前が戦えよ!」
馬鹿らしい。こんなところで死ねるか!
「本当に馬鹿だな。柱ってのはな七英雄が倒す相手なんだよ。俺はもう七英雄じゃねぇから戦う理由がねぇ。ここに来る魔物の相手をするだけでも有難いと思え」
「お前それでも人間か!元でも七英雄ならその覚悟を見せろよ!自分だけ後方支援に逃げといて人には死にに行けだ?ふざけんじゃねぇ!」
「なら魔物だと思ってろ。お前こそ今の七英雄なんだろ?自分の責務を放棄するな」
責務、そんなものに興味はねぇ。より強くなれるから七英雄になった。ただそれだけだ。
「七英雄をクビになったお前が責務って言うんじゃねぇ」
「メビス黙って。私は戦うよ。だからアイリスと接敵できる場所を教えて」
「おいエスト、お前は死ぬつもりか?」
元七英雄の無謀な指揮に従って戦うということは、ここで命を捨てることになる。それはただの無駄死ににしかならない。
しかし、エストもそのことは分かっているようだ。
「うるさい。私は王国の出なのよ。ここで私たちが戦わなかったら王国領に住んでいる人は全滅する。そんなこと絶対にさせない。シアンとメナドールさんが戦えるくらい回復するまで足止めをする。それが今の私にできることよ」
それは勝てないと自ら認めている言葉だ。それでも戦う。その気持ちは俺には理解できない。
やれ愛国心だ、やれ仲間のためだ。馬鹿馬鹿しい。自分以外は全て他人、全ては自分が生き残るための道具でしかない。道具のために命を捨てるなんてありえねぇ。
「ここの少し東に行けば接敵できるよ。外に私の蠍が居るからそれについて行って。あ、でも、ガゼルガの配下も近いから会敵の仕方には気をつけてね」
「ありがとうございます」
そう頭を下げるとエストは城を出て行った。馬鹿が。
「俺に覚悟だなんだ言っときながらお前は行かねぇのか。情けねぇな」
「お前も同じだろ」
「ゼギくんは貴方とは違う。ゼギくんはこの場で自分にできることをやってる。対して貴方は何もしてない。それを同じだなんて言わせない。戦う意思がないならここから出てってくれないかな」
事実を言ったつもりだが、メナドールに低いトーンでそう言われると睨まれる。視線はメナドールからだけでなく周りからも敵意の強いものが集まってきた。
結局は元七英雄だって同じじゃねぇか。
そう思いながらもこの敵地でそんなことを言っても意味がなく黙って出て行った。
雄叫びからして高位の魔物が近い場所に迫っているのは間違いないが、その戦いにシアンとメナドールは戦力になりそうにない。
「グラ、今シアンは動けねぇから俺が指示を出す。いいな?」
「うん、いいよ」
「じゃあ中に来い」
そうグラにだけ声をかけると城の中に入って行こうとする。ふざけんな!
「おい!俺たちを無視するんじゃねぇ!」
「あのなぁ、馬鹿に構ってる暇はねぇんだよ」
馬鹿だと?こいつ、元七英雄の分際で上からものを言いやがって。何様のつもりだ。こっちは現七英雄だぞ。いつまでも過去の栄光に縋って見下してるんじゃねぇ!
ムカつくがシアンにグラ、メナドールから指示を仰ぐために城の中に入る。そのまま元七英雄についていって部屋に入った。
すると中には柱の魔物が居た。マルスには手を出すなと言われていた柱と合致するが、柱を目の前にして倒さねぇ理由はねぇ。
そう愛剣を構えた直後、体が氷つくように動かなくなった。
「これ以上、邪魔するならお前から始末するぞ」
何も言い返せなかった。恐怖で言葉が出なかったのだ。これが元とはいえ、七英雄の力か。
「悪いけど今はゼギくん真面目だから邪魔はしないでね」
そうメナドールからも強い圧を感じる。これが七英雄、分かっていたことだが俺よりも強い。負かされたからか纏っている雰囲気が違うように見えた。
「今はって何だ、今はって」
「お主は大概、不真面目であろうが」
「そうです。ご主人様は重要な時以外、不真面目です」
「同意」
「私はノーコメントでお願いします」
柱に続いて金髪の美少女や銀髪の美少女、栗色の髪の美少女が口を挟む。
全員が全員、望めばどんな男でも虜になりそうな容姿だ。それがこんな元七英雄に、って今ご主人様って言ったよな。こんな美少女を従者に…あー、クソ、頭がついていかねぇ。
それはエストも同じようでポカーンと間抜けな面をしている。
「メナ、数は?」
「ちょっと待ってね。ガゼルガとアイリスが並行して先陣を切ってるけど後ろに30万はいるかな。でもガゼルガの配下だけだから後続でアイリスの配下も来るとは思う。ごめん。この数を見逃がしたのは私のミスだね。今から急いで探す」
30万だと?そんなのギルドだけでなく皇国と帝国の軍を出して対応してもどうなるか。すぐにでもマルスに報告して用意させないと間に合わねぇぞ。
それなのに誰も報告をしに行く様子はない。ここにいる戦力だけで対処するつもりか?
「直近でウィンガルにスカー、もうちょい遡れば《賢王》にハオまでやられてるからな。流石に動いてきたか。それに元々、柱共は軍拡してたから気づきにくいしガゼルガの軍は統率も機動力も高いから仕方ねぇ」
「どうするの?おいらが止めてこようか?」
「そうだな。グラはガゼルガの相手をしろ」
「分かった」
返事をするとグラは部屋を出て行く。
この指示に不満はないのだろうか。そう思っていると柱が口を挟む。
「グラならアイリスの方が相性は良かったのではないか?ガゼルガはあまりスキルを使わぬ。対してアイリスはスキルを多用する戦い方じゃ。だから相性がいいのはアイリスであろう?」
何なんだ、この柱。同じ柱の情報を売っただと?騙しているのかとも疑ったが、マルスから聞いていた情報と一致している。訳が分からねぇ。
「せめてカイがいたらな。グラにはガゼルガの配下も倒してもらう」
「ガゼルガ四天王のことじゃな。彼奴等はガゼルガの傍を離れぬ。その忠義には配下に慕われておった父上も認めていたほどじゃ」
「メナもシアンも戦えねぇからな。グラに相手してもらうしかねぇ」
さっきから当てつけみたいに馬鹿にしやがって。そんなにカイゼルが使えて俺たちが使えねぇのかよ。
「では我がアイリスの相手をすればよいのか?」
またしても柱が訳の分からないことを言う。しかし、それに誰も驚いた様子はなく話は進んでいく。
「いや、アルはここに来る魔物の相手をしろ。他所に気を遣うなら自分の城を守れ。四獣は使うなよ。あと、スーを連れてけ」
「分かったのじゃ。では、お主がアイリスと戦うのか?」
「数が数だから俺はシアンとメナの回復を待ちながら臨機応変に動く」
「そうか。では我は先に行くぞ。スーついてくるのじゃ」
柱はそう言うとスライムを連れて行った。ってスライムみてぇな雑魚種までいたのかよ。
元七英雄も結局は自分の身可愛さに後方支援か。七英雄をクビになっただけあって屑だな。何でこんな奴の命令をグラやメナドールは聞くのか分からねぇ。
だが、それよりも気になるのはアイリスの対処だ。30万の魔物も問題だが、やっぱり柱だ。30万の魔物は数で対処できても柱は数だけじゃ対処できねぇ。それにこれだけの数、頭を叩いて指揮を下げねぇと話にならなねぇ。
そう思っているとエストが同じ疑問を口にする。
「じゃあ誰がアイリスの相手をするのよ。まさかアンタが行く気?」
「お前たちに決まってるだろ」
そう元七英雄は俺とエストの方を見る。
ふざけるな!そんなのただの捨て駒じゃねぇか!
「そんな命令に従う訳ねぇだろ!」
「ならお前のせいで旧王国と皇国は半壊するな」
「ふざけんな!お前が戦えよ!」
馬鹿らしい。こんなところで死ねるか!
「本当に馬鹿だな。柱ってのはな七英雄が倒す相手なんだよ。俺はもう七英雄じゃねぇから戦う理由がねぇ。ここに来る魔物の相手をするだけでも有難いと思え」
「お前それでも人間か!元でも七英雄ならその覚悟を見せろよ!自分だけ後方支援に逃げといて人には死にに行けだ?ふざけんじゃねぇ!」
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責務、そんなものに興味はねぇ。より強くなれるから七英雄になった。ただそれだけだ。
「七英雄をクビになったお前が責務って言うんじゃねぇ」
「メビス黙って。私は戦うよ。だからアイリスと接敵できる場所を教えて」
「おいエスト、お前は死ぬつもりか?」
元七英雄の無謀な指揮に従って戦うということは、ここで命を捨てることになる。それはただの無駄死ににしかならない。
しかし、エストもそのことは分かっているようだ。
「うるさい。私は王国の出なのよ。ここで私たちが戦わなかったら王国領に住んでいる人は全滅する。そんなこと絶対にさせない。シアンとメナドールさんが戦えるくらい回復するまで足止めをする。それが今の私にできることよ」
それは勝てないと自ら認めている言葉だ。それでも戦う。その気持ちは俺には理解できない。
やれ愛国心だ、やれ仲間のためだ。馬鹿馬鹿しい。自分以外は全て他人、全ては自分が生き残るための道具でしかない。道具のために命を捨てるなんてありえねぇ。
「ここの少し東に行けば接敵できるよ。外に私の蠍が居るからそれについて行って。あ、でも、ガゼルガの配下も近いから会敵の仕方には気をつけてね」
「ありがとうございます」
そう頭を下げるとエストは城を出て行った。馬鹿が。
「俺に覚悟だなんだ言っときながらお前は行かねぇのか。情けねぇな」
「お前も同じだろ」
「ゼギくんは貴方とは違う。ゼギくんはこの場で自分にできることをやってる。対して貴方は何もしてない。それを同じだなんて言わせない。戦う意思がないならここから出てってくれないかな」
事実を言ったつもりだが、メナドールに低いトーンでそう言われると睨まれる。視線はメナドールからだけでなく周りからも敵意の強いものが集まってきた。
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