神と鬼の物語

鶴野オト

文字の大きさ
4 / 11
二の国(前編)

暗い国

しおりを挟む
神国を囲むようにある七つの国の端にはそれぞれ高い壁が建っている。
別の国へ行くには壁の扉から出て隣の国の壁まで五キロメートルほどの道を歩く必要がある。
今、一の国の扉の外は避難してきた人でごった返していた。

とりあえず、二の国へ行こう。
一の国崩壊から二時間後、俺はようやく方針を定めた。
両親は行方不明だが、別に亡くなっていると決まったわけでは無い。
隣国である二の国に避難している可能性もゼロでは無い。
それに、姉を拐ったものが使っていた探偵が二の国に居ると虚無僧は言っていた。
進もう。

二の国に入って真っ先に感じた感覚は『この国は暗い』と言うことだった。
客商売が盛んな一の国に比べて活気がないのは想像通りなのだが、何故かこの国の人の多くはどんよりとしていた。
俺は避難民の群れに流されないように裏路地へと入った。
後ろからドンとぶつかられた。
視線を向けると異様に痩せた男が目ばかり爛々とさせて俺を抜かしていった。
まるでぶつかった事に気がついていないようだった。
何故か彼の目が気になって追いかけてみる事にした。

そして俺の目に飛び込んだ光景は異様だった。
先程の男のような痩せぎすな人が数人、一人の人物を囲むようにいた。
正確には囲むほどの力もなく縋り付くようにしていたのだが。
中心の人物は般若の面を付けていて、顔は一歳見えなかったが、紫のマントで覆うように体を隠している中からちらつく腕の筋肉さから男では無いかと思われた。
般若はマントから手を出し、縋り付く男たちに白い紙袋を渡していた。
その手も異形で異様に長く灰色の爪で摘むようにして紙袋を持っていた。
簡単に言えば、君が悪い人物だった。
般若が俺に気づいたかのようにこちらを振り向く。
目があった気がした。
それと同時に俺は恐ろしく感じ、逃げ出した。
恐らくあいつは薬物の売人だ。
後ろから足音が聞こえる。
振り向くと般若では無いが、俺を確実に捉えているあたり、あいつの部下か何かだろう。
捕まると確信した。
その瞬間どこかから矢が飛んできた。
矢が刺さったところからは電気がほとばしっているのが見てとれた。
その矢を追うように人影が降りてきた。
般若の仲間か?
俺は必死にそちらを振り向く。
そこに立っていたのは、この世界の女王、女神様だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...