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番外編
ご注文は子猫ですか? 7
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「もしかして襲われていた猫と、戦って抵抗していた猫は別だったのかな・・・」
他の猫達とは隔離された部屋のソファの上、ふわふわの毛布を敷き詰めたカゴの中で眠っているミルクそっくりの猫を前に私は呟いた。ミルクもその隣でその子を見守るようにソファの上でくつろいでいる。
結局あの後、ミルクと見間違えたこの子をそのままにしておけなくてプリシラさんのお店に抱いたまま連れ帰った。
ちなみにそれを見ていたミルクも、捕まえるまでもなくおとなしく私達の後をついて一緒にお店に戻って来た。
小さな子猫優先でご飯を食べさせたりする面倒見のいいミルクだ。
もしかすると脱走する前に外をじっと見つめていたのも、眠っているこの子が襲われている物音に気付いて助けに行ったのかも知れない。
二匹はそっくりだから、騎士さん達はてっきり同じ猫だと思っていたけど襲われていた方の猫がこの子で、暴漢だか猫攫いだかに勇敢に立ち向かっていたのがミルクかも。
「一体君はどこの子なんでしょうねー・・・?」
野良猫にしてはキレイな毛並みなのでさっきのミルクみたいにどこかから逃げ出して来た子なのかも知れない。
貴族や裕福な商人に飼われていたなら身代金目当ての猫攫いに遭う可能性もあるんだろうか。
眠っているその子のピンクの鼻先をツンとつつけば、まるでやめろとでも言うように眠るその子を守っていたミルクが私の手をパシッと叩く。
「ええっ、何ですかミルク、ひどい!」
猫相手に本気で文句を言えばそれがうるさかったのか、眠っている猫の瞼がピクピクと動いてうっすらと目を開けた。
「ニャ、ア・・・」
かすれたような小さなか細い鳴き声を上げてこちらを見上げたその瞳の色は綺麗なエメラルドグリーンだ。
見た目はミルクそっくりだけど、ミルクとは目の色が違う。だけど
「良かった、もう大丈夫ですよ!ここには怖い猫攫いはいませんからね」
声をかけた私の言葉が分かっているかのように小首を傾げてこちらを見つめているちょっと人間臭いその感じはミルクに似ている。
「起きたならまずはご飯かな?ええっと・・・」
カフェの厨房から猫用のおやつを分けてもらってこようかと立ち上がった時、ちょうどマリーさんが部屋にやって来た。
「ユーリ様、そろそろカフェの方に出ていただいてもよろしいですか?ユーリ様にお会いするのを楽しみにしているお客様が・・・あら!」
途中で言葉を切ったマリーさんが私の腕を取ってブラウスの袖先を確かめる。
「カフスボタンが取れかけていますよ!すぐに予備の物に着替えましょう!」
「え?あ、ホントだ」
マリーさんの指し示したところを見れば確かにあの金色の猫の顔のシルエットのカフスボタンを留めている糸が緩んで取れかけていた。
「さっき外に出た時どこかに引っ掛けたかも知れません」
話しながら引っ張ったらあっさりとそれは取れてしまう。
「そちらは後でまた縫い付けますので、とりあえず新しい物へお召替えを」
取れたカフスボタンをとりあえずテーブルの上に置いたマリーさんにさあ早く!と促されたので慌ててソファの上のミルクと、ミルクそっくりの子に振り向いた。
「他の人に頼んですぐおやつを持って来てもらいますからね。二匹ともおとなしく待っているんですよ!」
そう声をかければ分かっているのかどうなのか、二匹はそっくりの角度で首を傾げてマリーさんに連れられて行く私を見送っていた。
「・・・あの時はちゃんと聞き分け良く私の言ってることが分かってるみたいに見えたんだけどなあ~・・・」
その日の夕方、奥の院に帰って来た私は夕食のスープを口にしながらため息をついた。
二匹の猫を部屋に残してカフェのお手伝いをしたあの後、お店の忙しさがひと段落した時にちょっと部屋をのぞいてみたらそこにはなんとミルクしかいなかった。
そして僅かに開いた部屋の窓と揺れるカーテン、空っぽのカゴ。
どう見てもあの緑の目のミルクそっくりの子が窓から脱走した形跡が残されていたのだ。
「やっぱりどこかのお家で飼われている脱走名人な子だったのかなあ」
賢そうな顔つきをしていたし、自分でお家に帰ったのかも知れない。
まあそれならそれでいいんだけど、また危ない目に遭ってないといいな。
そんな事を考えていたら軽いノックの音と共にレジナスさんがやって来た。
エヴァン様が滞在中リオン様は自分が予定を詰め込んだせいで王宮にずっと行っていて、こちらに顔を見せる余裕がない。
だから自分の代わりにレジナスさんを毎日少しの間だけでもこちらに顔を見せるようにさせたらしい。
私もそんなレジナスさんにその日あった出来事を話してはそれをリオン様に伝えてもらうようにしていた。
なのでさっそくレジナスさんに今日のミルクの脱走劇や裏路地での出来事を伝えれば
「護衛の騎士達からも報告は受けた。ただの猫攫いならいいが、中央騎士団から選ばれてユーリの護衛をしている騎士達に誰一人捕まることなく逃げおおせたというのが少し気にかかっている。だから明日からはユーリの護衛の他にその地区を巡回する者も増やそうと思うが、本当に気を付けてくれ」
生真面目な顔で少し心配そうに眉根を寄せたレジナスさんが頷いた。
言われてみれば確かに。あの時は猫を助けるのに夢中だったけど思い返してみれば猫攫いらしい人達は誰も騎士さんに捕縛されていない。かなり手慣れた犯罪者達だった・・・?
そう考えるとエル君もいるとは言え反射的にお店を飛び出したあの時、何ごともなくて良かった。
「騎士さん達には迷惑をかけて本当に申し訳ないです。もう絶対お店から出たりしませんから」
明日騎士さん達に会ったらまた改めてお礼とお詫びをしよう。
そう心に決めて反省していれば、そこでやっとレジナスさんの雰囲気が和らいだ。
「ああ、そうしてくれ。俺達の目の届かないところでユーリに何かあったらと思うと心配でたまらない。すぐに駆けつけられれば良いんだが、今日はこちらでも一騒ぎがあったのでそういう時はすぐにユーリの元へ向かえないのがもどかしいしな。ユーリ本人が自ら気を付けてもらえるのが一番だ」
僅かに頬を緩ませたレジナスさんが話しながらその大きな手を私の顔に添えると無骨な指で私の頬をすり、と優しく撫でる。
まるで親猫に頬を舐められている子猫の気分で頬を撫でられながらうん?と気付く。
「ひと騒動あった、って何ですか?まさか狩りでリオン様に何かあったんじゃないですよね!?」
馬が暴れて落馬しそうになったとか、突然予想外に大きなクマやイノシシみたいな手強い獲物が現れて大変だったとか。
いやでも、そんなのあのリオン様なら騒ぎにもならずに平然と処理しそうだけど。
思わず頬を撫でるレジナスさんの手を取って確かめれば、一瞬目を丸くしたレジナスさんは慌ててそれを否定した。
「いやリオン様自体には何もなかった。ただ狩りの途中、獲物の数を競うためにリオン様や俺達と別行動したエヴァン様が護衛や共の者とはぐれて一時的に行方不明になったんだ。エヴァン様の乗っていた馬だけが見つかった時は肝を冷やしたが、その後無事に本人とも合流出来たから大丈夫だ」
「そ、それはまた・・・。何ごともなくて良かったですけど確かに大騒ぎですね」
私の方の出来事のミルク脱走劇や猫攫い?騒動がかわいく思える。
他国の王族がルーシャ国の、しかも警備の厳重な王宮管理下の狩り場で行方不明になっていたなんて。
「あ、ケガはなかったんですか?もしどこかケガでもしていたら私が治しますけど」
「いや、それには及ばない。少し髪が乱れたり服が汚れてはいたが本人自体はいたって無事だった。狩りの途中で飛び出して来たウサギに驚いた馬から振り落とされてしまい、一人だけ取り残されたと笑ってはいたが・・・」
状況を教えてくれたレジナスさんはそこで思い出したようにため息をついた。
「だが一時的とはいえ行方不明になったのはまずかった。おかげで万が一に備えて王宮やエヴァン様の警護について見直しをすることになり、そのために明日シグウェルに披露する新魔法や宮廷魔導士院への訪問予定にズレが出たのであいつの機嫌が悪い」
「ああ、なるほど。それはまた・・・」
機嫌が悪くなったあいつっていうのはシグウェルさんのことだよね?
警備状況をもう一度確かめて安全に万全を期してから魔導士院を訪れるなんて、早く魔法を見てみたいシグウェルさんにしてみればイライラしているに違いない。
「護衛や警備の状況を整え直すまでの間、エヴァン様は安全のため滞在している宮に数時間留め置かれてしまうんだが・・・。ご本人は喜んで『それなら明日はゆっくり寝坊が出来る、起こしに来ないでくれよ?よし飲もうリオン、そうと決まれば今夜は深酒をしよう!夜更けまでじっくり語り合おうじゃないか』と呑気な事を仰るものだからリオン様に怒られていた」
そんな事まで教えてくれた。
うーん、そんな事を言われたリオン様が『君、一体誰のせいで予定がずれ込むと思ってるのさ!?』と怒って注意をしている姿が目に浮かぶようだ。
まあそれでも目が治ったリオン様とは積もる話もあるだろうし、ゆっくり話したいのは本当かも知れない。
そんな二人のために私も何か出来ないかな。それにエヴァン様からはたくさんの贈り物ももらってしまったし。
少し考えてから、シンシアさんにお願いして奥の院に常備してあるリオン様の好みの銘柄のワインを一本持って来てもらった。
それを両手で包むように持ち、コツンと額を当てる。
「ユーリ?」
不思議そうにしながら私のすることを見守っているレジナスさんの前でそれに加護をつければ、ワインにくっ付けていた額がほのかに熱を持ち、瓶が淡く輝いた。
「多少の体の不調なら治る簡単な加護を付けましたから。あと、飲んでも減らないいつもの豊穣の加護も。これならどんなにたくさん飲んでも悪酔いはしないと思うので、リオン様達への差し入れにお願いします」
はい、とレジナスさんに手渡す。
エヴァン様、馬から振り落とされたなら見た目にケガはなくても後から筋肉痛とかムチウチとか、時間差で体に何か不調が出るかも知れない。
それに楽しくなってお酒を飲み過ぎたら本人もそれに付き合うリオン様の体調も心配だ。
そう話してワインの差し入れをお願いすれば、レジナスさんは快く引き受けてくれた。
他の猫達とは隔離された部屋のソファの上、ふわふわの毛布を敷き詰めたカゴの中で眠っているミルクそっくりの猫を前に私は呟いた。ミルクもその隣でその子を見守るようにソファの上でくつろいでいる。
結局あの後、ミルクと見間違えたこの子をそのままにしておけなくてプリシラさんのお店に抱いたまま連れ帰った。
ちなみにそれを見ていたミルクも、捕まえるまでもなくおとなしく私達の後をついて一緒にお店に戻って来た。
小さな子猫優先でご飯を食べさせたりする面倒見のいいミルクだ。
もしかすると脱走する前に外をじっと見つめていたのも、眠っているこの子が襲われている物音に気付いて助けに行ったのかも知れない。
二匹はそっくりだから、騎士さん達はてっきり同じ猫だと思っていたけど襲われていた方の猫がこの子で、暴漢だか猫攫いだかに勇敢に立ち向かっていたのがミルクかも。
「一体君はどこの子なんでしょうねー・・・?」
野良猫にしてはキレイな毛並みなのでさっきのミルクみたいにどこかから逃げ出して来た子なのかも知れない。
貴族や裕福な商人に飼われていたなら身代金目当ての猫攫いに遭う可能性もあるんだろうか。
眠っているその子のピンクの鼻先をツンとつつけば、まるでやめろとでも言うように眠るその子を守っていたミルクが私の手をパシッと叩く。
「ええっ、何ですかミルク、ひどい!」
猫相手に本気で文句を言えばそれがうるさかったのか、眠っている猫の瞼がピクピクと動いてうっすらと目を開けた。
「ニャ、ア・・・」
かすれたような小さなか細い鳴き声を上げてこちらを見上げたその瞳の色は綺麗なエメラルドグリーンだ。
見た目はミルクそっくりだけど、ミルクとは目の色が違う。だけど
「良かった、もう大丈夫ですよ!ここには怖い猫攫いはいませんからね」
声をかけた私の言葉が分かっているかのように小首を傾げてこちらを見つめているちょっと人間臭いその感じはミルクに似ている。
「起きたならまずはご飯かな?ええっと・・・」
カフェの厨房から猫用のおやつを分けてもらってこようかと立ち上がった時、ちょうどマリーさんが部屋にやって来た。
「ユーリ様、そろそろカフェの方に出ていただいてもよろしいですか?ユーリ様にお会いするのを楽しみにしているお客様が・・・あら!」
途中で言葉を切ったマリーさんが私の腕を取ってブラウスの袖先を確かめる。
「カフスボタンが取れかけていますよ!すぐに予備の物に着替えましょう!」
「え?あ、ホントだ」
マリーさんの指し示したところを見れば確かにあの金色の猫の顔のシルエットのカフスボタンを留めている糸が緩んで取れかけていた。
「さっき外に出た時どこかに引っ掛けたかも知れません」
話しながら引っ張ったらあっさりとそれは取れてしまう。
「そちらは後でまた縫い付けますので、とりあえず新しい物へお召替えを」
取れたカフスボタンをとりあえずテーブルの上に置いたマリーさんにさあ早く!と促されたので慌ててソファの上のミルクと、ミルクそっくりの子に振り向いた。
「他の人に頼んですぐおやつを持って来てもらいますからね。二匹ともおとなしく待っているんですよ!」
そう声をかければ分かっているのかどうなのか、二匹はそっくりの角度で首を傾げてマリーさんに連れられて行く私を見送っていた。
「・・・あの時はちゃんと聞き分け良く私の言ってることが分かってるみたいに見えたんだけどなあ~・・・」
その日の夕方、奥の院に帰って来た私は夕食のスープを口にしながらため息をついた。
二匹の猫を部屋に残してカフェのお手伝いをしたあの後、お店の忙しさがひと段落した時にちょっと部屋をのぞいてみたらそこにはなんとミルクしかいなかった。
そして僅かに開いた部屋の窓と揺れるカーテン、空っぽのカゴ。
どう見てもあの緑の目のミルクそっくりの子が窓から脱走した形跡が残されていたのだ。
「やっぱりどこかのお家で飼われている脱走名人な子だったのかなあ」
賢そうな顔つきをしていたし、自分でお家に帰ったのかも知れない。
まあそれならそれでいいんだけど、また危ない目に遭ってないといいな。
そんな事を考えていたら軽いノックの音と共にレジナスさんがやって来た。
エヴァン様が滞在中リオン様は自分が予定を詰め込んだせいで王宮にずっと行っていて、こちらに顔を見せる余裕がない。
だから自分の代わりにレジナスさんを毎日少しの間だけでもこちらに顔を見せるようにさせたらしい。
私もそんなレジナスさんにその日あった出来事を話してはそれをリオン様に伝えてもらうようにしていた。
なのでさっそくレジナスさんに今日のミルクの脱走劇や裏路地での出来事を伝えれば
「護衛の騎士達からも報告は受けた。ただの猫攫いならいいが、中央騎士団から選ばれてユーリの護衛をしている騎士達に誰一人捕まることなく逃げおおせたというのが少し気にかかっている。だから明日からはユーリの護衛の他にその地区を巡回する者も増やそうと思うが、本当に気を付けてくれ」
生真面目な顔で少し心配そうに眉根を寄せたレジナスさんが頷いた。
言われてみれば確かに。あの時は猫を助けるのに夢中だったけど思い返してみれば猫攫いらしい人達は誰も騎士さんに捕縛されていない。かなり手慣れた犯罪者達だった・・・?
そう考えるとエル君もいるとは言え反射的にお店を飛び出したあの時、何ごともなくて良かった。
「騎士さん達には迷惑をかけて本当に申し訳ないです。もう絶対お店から出たりしませんから」
明日騎士さん達に会ったらまた改めてお礼とお詫びをしよう。
そう心に決めて反省していれば、そこでやっとレジナスさんの雰囲気が和らいだ。
「ああ、そうしてくれ。俺達の目の届かないところでユーリに何かあったらと思うと心配でたまらない。すぐに駆けつけられれば良いんだが、今日はこちらでも一騒ぎがあったのでそういう時はすぐにユーリの元へ向かえないのがもどかしいしな。ユーリ本人が自ら気を付けてもらえるのが一番だ」
僅かに頬を緩ませたレジナスさんが話しながらその大きな手を私の顔に添えると無骨な指で私の頬をすり、と優しく撫でる。
まるで親猫に頬を舐められている子猫の気分で頬を撫でられながらうん?と気付く。
「ひと騒動あった、って何ですか?まさか狩りでリオン様に何かあったんじゃないですよね!?」
馬が暴れて落馬しそうになったとか、突然予想外に大きなクマやイノシシみたいな手強い獲物が現れて大変だったとか。
いやでも、そんなのあのリオン様なら騒ぎにもならずに平然と処理しそうだけど。
思わず頬を撫でるレジナスさんの手を取って確かめれば、一瞬目を丸くしたレジナスさんは慌ててそれを否定した。
「いやリオン様自体には何もなかった。ただ狩りの途中、獲物の数を競うためにリオン様や俺達と別行動したエヴァン様が護衛や共の者とはぐれて一時的に行方不明になったんだ。エヴァン様の乗っていた馬だけが見つかった時は肝を冷やしたが、その後無事に本人とも合流出来たから大丈夫だ」
「そ、それはまた・・・。何ごともなくて良かったですけど確かに大騒ぎですね」
私の方の出来事のミルク脱走劇や猫攫い?騒動がかわいく思える。
他国の王族がルーシャ国の、しかも警備の厳重な王宮管理下の狩り場で行方不明になっていたなんて。
「あ、ケガはなかったんですか?もしどこかケガでもしていたら私が治しますけど」
「いや、それには及ばない。少し髪が乱れたり服が汚れてはいたが本人自体はいたって無事だった。狩りの途中で飛び出して来たウサギに驚いた馬から振り落とされてしまい、一人だけ取り残されたと笑ってはいたが・・・」
状況を教えてくれたレジナスさんはそこで思い出したようにため息をついた。
「だが一時的とはいえ行方不明になったのはまずかった。おかげで万が一に備えて王宮やエヴァン様の警護について見直しをすることになり、そのために明日シグウェルに披露する新魔法や宮廷魔導士院への訪問予定にズレが出たのであいつの機嫌が悪い」
「ああ、なるほど。それはまた・・・」
機嫌が悪くなったあいつっていうのはシグウェルさんのことだよね?
警備状況をもう一度確かめて安全に万全を期してから魔導士院を訪れるなんて、早く魔法を見てみたいシグウェルさんにしてみればイライラしているに違いない。
「護衛や警備の状況を整え直すまでの間、エヴァン様は安全のため滞在している宮に数時間留め置かれてしまうんだが・・・。ご本人は喜んで『それなら明日はゆっくり寝坊が出来る、起こしに来ないでくれよ?よし飲もうリオン、そうと決まれば今夜は深酒をしよう!夜更けまでじっくり語り合おうじゃないか』と呑気な事を仰るものだからリオン様に怒られていた」
そんな事まで教えてくれた。
うーん、そんな事を言われたリオン様が『君、一体誰のせいで予定がずれ込むと思ってるのさ!?』と怒って注意をしている姿が目に浮かぶようだ。
まあそれでも目が治ったリオン様とは積もる話もあるだろうし、ゆっくり話したいのは本当かも知れない。
そんな二人のために私も何か出来ないかな。それにエヴァン様からはたくさんの贈り物ももらってしまったし。
少し考えてから、シンシアさんにお願いして奥の院に常備してあるリオン様の好みの銘柄のワインを一本持って来てもらった。
それを両手で包むように持ち、コツンと額を当てる。
「ユーリ?」
不思議そうにしながら私のすることを見守っているレジナスさんの前でそれに加護をつければ、ワインにくっ付けていた額がほのかに熱を持ち、瓶が淡く輝いた。
「多少の体の不調なら治る簡単な加護を付けましたから。あと、飲んでも減らないいつもの豊穣の加護も。これならどんなにたくさん飲んでも悪酔いはしないと思うので、リオン様達への差し入れにお願いします」
はい、とレジナスさんに手渡す。
エヴァン様、馬から振り落とされたなら見た目にケガはなくても後から筋肉痛とかムチウチとか、時間差で体に何か不調が出るかも知れない。
それに楽しくなってお酒を飲み過ぎたら本人もそれに付き合うリオン様の体調も心配だ。
そう話してワインの差し入れをお願いすれば、レジナスさんは快く引き受けてくれた。
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