【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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第九章 剣と使徒

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・・・また失敗してしまった。

魔導士院からの帰り道、自分の目の前を侍女と
手を繋いで楽しそうに話しながら歩くユーリ様の
横顔を見つめて僕はそう思う。

せっかくユーリ様が話しかけてくれたのに、
なぜか素直に言葉を返せない。あのきらきら光る
黒い瞳で見つめられると、自分の心の奥まで
覗かれているような落ち着かない気分になって
何にも言えなくなったり、何か言おうとすると
素直に話せない。何でだろう。

俯き加減に歩けば自分の真っ白な髪の毛が
目に入る。そういえばユーリ様とは初対面から
うまく話せなかった。

ユーリ様本人に会う前に、リオン第二王子殿下と
その護衛騎士、レジナス様に先に会って話した時は
ちゃんと受け答えが出来た。

自分の容姿を目にして多少は戸惑われたが
嫌がられてはいないのが分かり少し安心した。

少し前までは大怪我で顔に酷い傷跡のあった
リオン殿下は、あの頃の殿下と同じように
好奇と嫌悪の目を向けられる事の多い僕に
きっと気を遣ったのだろう。

でも、僕の主人になるユーリ様はどうだろうか。
こんな変わった色をした人間は見たことがなくて
嫌がられるかも知れない。

ただでさえ、剣はいらないと言っているらしいという
話は暗部の他の隊員から聞いていた。

残念だったな、まあいくら召喚者と言えど
勇者様と違って女の子だし俺達のような血生臭い
人間は使いたくもないだろうよ、と慰められた。

イリヤ殿下だけは最初に僕にユーリ様の剣になれと
命じた時も物凄く満足げに、

『癒し子の護衛になってその隣にいれば誰もお前を
見ないだろう、癒し子の方が目立つからな、
良かったな‼︎』

などと言っていた。聞きようによっては目立つ容姿の
僕に殿下が嫌味を言っているようにも聞こえるけど、
僕が目立つのを嫌がっていることを知っている故の
殿下なりの気遣いだ。ただ、イリヤ殿下は
言葉の選び方がヘタクソだからよく誤解される。

どうもイリヤ殿下本人は僕をユーリ様に与えるのは
リオン殿下を治してもらった礼を癒し子に返せるし
僕も容姿を気にせず剣としての使命を果たせて
一度で二度おいしい良い考えだと思っている
みたいだった。

でもユーリ様が僕を気に入らずにそばに
置きたがらなかったら?

もしかすると、いらないと言って返される
可能性もある。でもこの容姿ならそれも仕方がない。

その時は、あの王都の夜に降った金色の光で
昔からあった僕の怪我が治ったことと、その
お礼だけを伝えて暗部に帰ろう。

そう思っていた。でもリオン殿下に抱かれて
部屋に入ってきたユーリ様を見たら、そんな
考えはどこかに行ってしまった。

微笑むリオン殿下に掴まりこちらを見ている
ユーリ様はとてもかわいい女の子だった。

リオン殿下の腕に抱えられているからか、
僕より少し歳上のはずなのになぜか幼げに見えて
僕が護らなくちゃ、と思わされた。

まん丸く見開いてこちらを見つめる瞳の形は
猫みたいで、僕を見るその表情もまるで仔猫が
びっくりしてるみたいなのもかわいい。

その瞳の色も漆黒かと思えば不思議な金色が
その中に輝いていて、初めて僕以外の人間で
変わった容姿の人を見た。
なんとなく親近感を覚える。

そんなユーリ様の僕を見る目はなんだかぽかんと
呆気に取られているようで、やっぱりこんなにも
色が抜け落ちている人間を見るのは初めて
なのかなと思う。

だけどその顔に嫌悪の表情は一切ないようだ。
良かった。それに安心する。

そうして名乗れば、長くていい意味もなく
あまり好きじゃない僕の名前をすぐに愛称で
呼んでくれた。それも嬉しかった。

でも長年の訓練で喜怒哀楽が出にくくなっている僕は
その嬉しさをうまく表せない。せめてもの
親しみを持って呼び捨てでも構わないと伝えるのが
精一杯だったけどそれもユーリ様にはうまく
伝わらなかったみたいだ。

そうして簡単な挨拶の後にユーリ様を見ていれば、
リオン殿下とレジナス様の二人にずっと縦抱きを
されている。

これからユーリ様に仕えるなら、僕もそうする
べきなのだろうか?本当は護衛のためにも
両手は空けておきたいんだけど。

でももしかしたら、何か理由があって縦抱きされて
いるのかも知れない。それなら僕もそうしよう。

身長差はあるけどあの位の体格なら僕でも
問題なく縦抱き出来る。そう思って尋ねたら、
すごい勢いでユーリ様に断られた。

もし体調が悪くて抱かれているなら遠慮しなくても
いいのに。一応その点も確かめたけど否定された。

やっぱり僕のことはいらないから遠慮して
いるんだろうか?

気になって、その後二人になった時につい
確かめてしまった。

剣はいらないと言っているのを聞いたと言えば、
慌てて取り繕うように僕がいてくれれば嬉しいと
言われた。気を使ってくれたのだろうか。
それとも本心?

必死になって頬を紅潮させながらあの綺麗な瞳で
真っ直ぐに僕を見つめて言葉をかけてくれる
ユーリ様を見ていると、心の中がほんのりと
暖かくなるような気がする。

それと同時に胸の奥をぎゅっと掴まれたみたいに
なって、甘いような切ないような不思議な気分に
なった。こんな気分になるのは初めてで、
この気持ちが何なのかよく分からない。

分からないけど、必死に僕に話しかけてくる
ユーリ様を見たら、要らないからとイリヤ殿下の
ところに返されるのは嫌だなとその時初めて
強く思った。

ユーリ様をそばでずっと護りたい。

そう思って、返されなくて済むようにイリヤ殿下の
命令でここに来たから迷惑でも置いてくれるように
僕にしては珍しく頑張って伝えた。

でもやっぱりユーリ様にはうまく伝わらない。

その時、僕のこの変わった容姿をユキウサギみたいで
綺麗だと言ってくれた。ユキウサギって何だろう。
よく分からないけど、ユーリ様の話ぶりから
悪いものではなさそうだ。

この真っ白で気味の悪い容姿を綺麗だなんて
誰かに本心から言われたのは初めてだ。

それがとても嬉しかったのに、僕の言い方や
態度からユーリ様は僕が怒っていると思ったようで
機嫌を取るようにお菓子を勧められたけど、
小さな子供扱いされたみたいなのが嫌でつい
それを断ってしまった。

するとユーリ様は縋るような目で僕を見て、
護衛のために距離を取った僕の後を追うように
ついて来る。

『なんでどんどん離れるんですか⁉︎』

そう言ってとととっ、と軽い足音を響かせ
雛鳥みたいに僕の後を追ってくるその様子が何だか
すごくかわいくて、ユーリ様は僕の主だと言うのに
つい意地悪をするように冷たい物言いをしてしまう。

だから頭を冷やしてお茶を淹れようと離れれば
ユーリ様はそんな僕をまた追いかけて来た。

嫌悪の目で見られて暗部の人間やイリヤ殿下以外は
近付こうとする者はいない僕を追いかけてくる人は
初めてで、それがなんだかすごく嬉しかった。



・・・まだ三日ほどしか一緒にいないけど、
ユーリ様は僕より歳上のくせに甘い物に目がなくて
なんだか危なっかしいところがある目の離せない
人だということが段々と分かって来た。

かわいいから目が離せないと言う意味ではなく。
・・・いや、それも少しはあるけれど好奇心旺盛に
あちこちキョロキョロしながら歩くのでたまに
何もないところで転びそうになったり、よそ見を
しているせいで何かにぶつかりそうになったり
していることもある。

こんな風だから、リオン殿下やレジナス様は
心配していつも縦抱きでユーリ様を運んで
いるのかも知れない。

それなのに、うっかりしているだけかと思えば
本が好きで図書館に通いこの国について一生懸命
学んでいたり、魔導士院に行って魔物祓いの
方法を真面目に考えたりしている。

魔導士には昔酷い目に遭わされたので嫌いだけど、
ユーリ様が学ぶためなら我慢しなければならない。

魔導士院に同行すれば、出て来たのは団長と副団長で
そんな身分が上の者には僕のあの長い名前を
きちんと名乗らない訳にもいかず嫌だった。

本当は普段周りに略称で通しているエーギルと
名乗りたかった。

案の定、あの人達は僕の名前から余計な事を
ずけずけと詮索するように色々言ってきたけど、
相手が魔導士団長や副団長だと喧嘩をする訳にも
いかない。何よりユーリ様の学びの場だ、
問題は起こせないので我慢した。

それに、名乗った僕をユーリ様は魔導士団長達に

『エル君です、私の護衛なんですよ‼︎』

と嬉しそうに紹介してくれたのでますます
下手な騒ぎを起こして迷惑はかけられない。

大人しくそんなユーリ様のすることを見守っていれば
なんだか変わった弓矢の使い方を考え出していた。

魔導士団長じゃないけど面白いと思った。
僕も何か手伝えればいいのに。

王宮への帰り道、侍女と手を繋ぎおやつを食べたいと
言うユーリ様は、あどけないただ食いしん坊なだけの
女の子に見える。

そう。ぱっと見はリオン殿下に甘やかされている
だけにも見えるのに、実は色んな事を考えて
それを形にしようと頑張っているのだ。

素直にすごいなと思って、それを言葉にしたつもりが
何だかまたうまく伝わらなくて憎まれ口を叩いた
みたいになってしまい、侍女にまで失礼ですよと
注意された。自分でもそう思う。

それなのに、なぜかユーリ様はそんな僕を
怒るでもなく嬉しそうにニコニコして見つめてくる。

意味が分からないし、そんな目で見られるのは
すごく気恥ずかしい。

でも、少しずつでいいからユーリ様ともっと
親しくなれたらいいなと思う。

何しろ僕はユーリ様の剣。生涯をかけてその身を
護り、ユーリ様に害なす者を斬り伏せて
仕える者なのだから。

だからもう少し頑張って、僕の気持ちが伝わるように
努力して、ユーリ様のことももっときちんと
知らなければ。

僕の前を歩き、さらさら流れる僕とは真逆の色の
黒髪を持つユーリ様を眩しく思いながら、
僕はゆっくりとその後を追って歩いた。










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