142 / 776
第九章 剣と使徒
15
しおりを挟む
助けに駆け付けてくれたレジナスさんを感謝を込めて
抱き締め返したらぎしっ、と固まってしまった。
それを見たエル君はかぶりを振って、侍女さん達に
行きましょうと声を掛ける。
「もう1人の洗濯室に閉じ込めた侍女も一緒に、
荷馬車の子供達について分かる事を話して下さい。
領主代行の書斎で見つけた証拠書類以外で何か
分かることがあれば助かるので。」
証言をして貰えればそれだけ罪も軽くなりますから。
そう言ったエル君はあの小さな体で眠る騎士さんを
軽々おんぶした。エル君の方がかなり小さいので
覆い被さった騎士さんでその姿がほとんど
見えなくなってるけど。
そうしてエル君が侍女さんや男の子も連れて
部屋を出て行ってしまえば残されたのは
私とレジナスさんだけだ。
相変わらずなんだか固まったままけど、いつもは
自分から抱き上げたり抱き締めたりしてくるくせに
逆に私がそうすると動けなくなるのはどうしてだ。
いくら私に好意を持っているからって、こんなことで
固まってしまって大丈夫なんだろうか。
今誰かに襲われたら危ないんじゃないのかな?
そう思ってレジナスさんの肩をさする。
「レジナスさん?大丈夫ですか?」
おーい、と声を掛けながら肩をさすっていたら
ようやくレジナスさんが我に帰った。
はっとして私を腕から降ろし、ベッドへ座らせると
その前に自分は膝をついた。
ベッドに腰掛ける私の前で両手をついて私の
膝の前で頭をうなだれれば、その綺麗な黒髪の
つむじが目に入る。
その表情は窺い知れないけど、耳が僅かに赤いので
多分顔も赤くなってるんじゃないかな。
「・・・いや、本当に何事もなくて良かった。」
自分の動揺を誤魔化すようにレジナスさんは
そんな事をまた言った。
「心配をかけてごめんなさい。まさか私も、
雨宿りでお世話になったところでこんな目に遭う
なんて思ってもみなかったです。」
あはは、と苦笑いをする。レジナスさんの耳は
まだ赤く、俯いたままだ。どうやら自分の動揺が
おさまるまでその格好でいることにしたらしい。
「ユーリは少し目を離しただけで思いも寄らない事に
巻き込まれてしまうから心臓に悪いな。今回は
エルがいてくれて良かった。」
「エル君にはずいぶん助けられましたよ。」
「護衛としての責務を立派に果たしているようで
良かった。さすがはイリヤ殿下の選んだ剣だ。
お陰でユーリにも早々に会えた。一歩間違えば
ユーリもここに集められている子供達と一緒に
どこかへ連れ去られてしまい会えなくなる
可能性もあった。そうならなくて本当に良かった、
ユーリが俺の目の前から消え去るなどそんなこと、
考えたくもない。」
「あ、ああ、ハイ・・・。大丈夫ですよ。
私はどこにも行きませんから・・・」
レジナスさんの物言いに、ふと王都でのあの夜の
独白を思い出して私も赤くなった。
狼狽えてしまった私の様子がおかしいと思ったのか
レジナスさんが顔を上げる。すでにレジナスさんは
平静を取り戻したのか全然赤くない。
「どうしたユーリ。顔が赤くないか?」
不思議そうに尋ねられた。こ、この人はまた
自分の言ったことを棚に上げて、無意識に私だけを
動揺させている・・・‼︎
そう思ったら、少し腹が立ってちょっといじわるを
したくなった。私も何かレジナスさんを動揺させる
ようなことを言おう。仕返しだ。何がいいかな。
ふと、私を見上げるレジナスさんと自分の着ている
お仕着せの黒いワンピースのスカートが目に入った。
「レジナスさん、疲れてませんか?」
「いや、急いでは来たが別段疲れは・・・」
突然何を言うのかと不思議そうにレジナスさんは
私を見上げている。
「これ、ここの侍女さんのお仕着せなんです。
似合ってますか?」
「あ、ああ。ユーリは何を着ても似合うと思う。」
それを聞くとレジナスさんもリオン様と同じく
私に甘いなあと思いながら言葉を続けた。
「こんな真夜中なのに一生懸命駆け付けてくれた
レジナスさんにお礼がしたいです。どうですか、
私の膝枕で少し休んで行きませんか?」
私の突然の提案に、その意味を掴みかねた
レジナスさんは一瞬ぽかんとした。今までに
見た事のない顔だ。そしてそのすぐ後、みるみる
顔が赤くなるとあの夕陽色の瞳が大きく見開いた。
「ひっ・・・膝枕⁉︎急に何を言い出すんだユーリ!」
「せっかく侍女さんの格好をしてるのに、
それらしい事が何も出来ないのは残念なので。
レジナスさんで侍女さんごっこです!」
「侍女は膝枕なんかしないぞ⁉︎」
「あれ、でもシンシアさんは私を膝枕してくれて
寝るまで頭を撫でてくれたことがありましたけど」
素知らぬ顔でそう言う。まあその時は寝付けなかった
私を眠らせようとしてシンシアさんが特別に
してくれたんだけどね。人の膝枕なんて初めて
だったからどうなんだろうと思ったけど、案外
寝心地は悪くなかった。
ただ、本当に私が膝枕しても痩せてて肉がないから
シンシアさんほど寝心地は良くない気がする。
あれは大人の女性ならではの柔らかな太ももが
あるからこその気持ち良さなんだろう。
今はレジナスさんを動揺させるために提案しただけ
だから本当に膝枕する気はない。
だって絶対私の膝枕はシンシアさんより寝心地が
悪そうだもん。
・・・それにしても思ったより激しくレジナスさんは
動揺している。その顔をじっと観察していると、
ますますレジナスさんは赤くなった。
さっきみたいに耳まで真っ赤だ。面白い。
「シンシアが膝枕したのはユーリだからだろう⁉︎
その格好は良く似合っているが、だからといって
おかしな事を言うんじゃない‼︎」
「おかしいですか?」
あざとく小首を傾げて自分の太ももを撫でてみる。
それを見たレジナスさんはウッと言葉を詰まらせた後
「・・・いいかユーリ。冗談でも他の男にそんな、
じ、侍女ごっこがしたいだとか膝枕を
するだとか言うな。とんでもない事になる。」
赤面したまま、両肩に手を置いて私を説得に
かかった。
そうかなあ。これは真面目なレジナスさんに
言うから効果があると思うんだけど。
他の人に言ったところでまじめに取り合っては
もらえないんじゃないかな。
そんな私を見て、ユーリは全然分かってない。と
紅潮したままレジナスさんの説得は続いた。
「ユーリは冗談のつもりでも、世の中にはそうと
思わない輩もいる。襲われてからでは遅いぞ⁉︎」
「レジナスさんがいるから大丈夫です!」
にっこり笑ってそう言ったら、レジナスさんは
一瞬動きが止まって私からそっと視線を外した。
「いや・・・そこまで信頼されるのは嬉しいが、
それではこの先何も進展させられないというか・・」
「え、襲うつもりでしたか?」
ふざけて言ったらレジナスさんは赤くなったまま
小さく叫ぶように抗議した。
「違う!そうではなくて、騎士としてしか
見られていないのではこの先1人の男として
見られることも、伴侶候補としても意識して
もらえることもないのではないかと思っただけだ!
ただでさえユーリとは歳が離れているのに‼︎」
・・・あっ。
勢いにまかせてレジナスさんが私に告白めいた事を
してしまった。
そんなことさせるつもりはなかったのに。
目を丸くした後に今度は私の方がぶわわっと
赤面した。恥ずかしさで、それこそ猫みたいに
髪の毛も逆立ってしまったような気になる。
私の反応に、今回はさすがのレジナスさんも
自分が何を口走ったのか分かったらしい。
しまったとばかりに、片手で自分の口元を抑えて
どこを見ればいいのか分からなそうに視線は
うろうろと私を見ないようにさまよっている。
うわあ気まずい。どうしよう。
もじもじとスカートの上で手を遊ばせて俯く。
ちょっと私もレジナスさんの方を見られない。
ごめんレジナスさん、そんなこと言わせる
つもりじゃなかった。
少しふざけたかっただけなんだ。
結果、おそらくまだ言うつもりはなかっただろう
私への気持ちを言わせてしまった。申し訳ない。
・・・・でもそうか、今の言葉でどうして
レジナスさんが私に告白して来ないのか
分かったような気がする。
ただでさえ歳が離れてるのにって言ってた。
きっとレジナスさんは私との歳の差を気にしている。
確かに今の私の見た目はレジナスさんと12歳以上
離れているだろう。他の人から見たら不思議に
思われたり変に思われるかも知れないと、
それを気にしているのかも。
でも元の私はアラサーだ。なんなら私の方が
レジナスさんよりもいくつか歳上な位だから
その辺りは全然気にしてなかった。
まあ小さくなってからは精神年齢と行動が
見た目年齢に引っ張られてかなり幼くなって
しまっているから、前より子どもっぽくなった分
レジナスさんから子供に見られているのは
否定しない。
「その・・・」
覚悟を決めたようにレジナスさんが口を開いた。
「もちろん俺はユーリがこの世界に初めて
姿を現して、それを見た時からこの子は絶対に
守らなければならないと思っていた。それは本当だ。
でもそれ以上に、今はユーリを1人の女性として
大切にしたい、愛しいと思う気持ちのほうが強い。
だからその、歳が離れている俺が君に対して
そう思うのを気持ち悪いと思わないでくれれば
それでいいんだが・・・」
なぜか最後の方は弱気になったレジナスさんの声が
ぼそぼそと段々小さくなった。
やっぱり気にしていたのは歳の差かあ。
真面目なレジナスさんらしい。
そう思ったら、私の顔はまだ赤かったけど
思わずくすりと笑いが漏れた。
レジナスさんが一体何を気にして今まで私に
その気持ちを伝えてこなかったのかその理由が
分かった。
じゃあその気持ちを聞いてしまった今、
私もきちんとそれに対する返事をしよう。
そう思って口を開いた。
「私はレジナスさんとの歳の差を考えたことなんて
一度もないですよ。そんな事よりも、私が
危ない時にはいつでも、どんな時でも駆け付けて
くれて頼りになるレジナスさんがこの先も私と
ずっと一緒にいてくれるといいなと思います。」
ヒルダ様の教えの通り、レジナスさんにも自分の
素直な気持ちを伝える。
レジナスさんが私に対して思うほど、私はまだ
レジナスさんのことを愛しいとか大切だとか
思えていない気はする。多分想いの強さは
レジナスさんの方が上だろう。
でもこれだけは言える。
「レジナスさん。私はレジナスさんにもリオン様にも
この先ずっと一緒にいて欲しいと思ってます。
レジナスさんが心配してるみたいに、ある日突然
消えたりなんてしないですよ。むしろレジナスさんの
方こそ、私がおばあちゃんになってもどこにも
行かないでずーっと私の側にいてくれますか?」
私の言葉がよほど思いがけないものだったのか、
レジナスさんは信じられない事を聞いたという風に
パチパチと瞬きを繰り返した。
と、思ったらがばっと抱き締められた。
勢いが良すぎてベッドに押し倒されたみたいになる。
「うわっ‼︎」
「・・・俺には過分な、勿体なさ過ぎる言葉だ。
ありがとうユーリ、こんなにも嬉しいことはない。」
そう言って私を抱き締めたまま、ぱっと顔を上げると
真剣な表情で私を見つめた。
「誓おう。この俺、レジナス・ヴィルヘルムは
いつ如何なる時もユーリを守り、想い、
その生涯をかけて愛し抜き一生その側にいると。
ユーリは俺がこの命を懸けて望む、世界で
たった一人の愛しい人、俺の唯一だ。」
そう言って、そっと私の両頬に口付けを落とし
「・・・唇への口付けを許してもらっても?」
律儀に許可を求めて来た。誠実な夕陽色の瞳に
情熱をたたえて射抜かれるように見つめられ、
そんなことを聞かれたら断れるはずがない。
むしろ断れる人がいたら相当の猛者だ。
真っ赤になったまま小さく頷けば、レジナスさんは
静かに私の唇に口付けた。一度顔が離れて、
今までに見たことがないような柔らかな笑顔を
見せたレジナスさんはまた二度、三度と啄むように
優しく私に口付ける。
ぎしっ、とベッドが軋んで私の体が深く沈み込んだ。
あ、あれ?歯止めが効かない・・・⁉︎
そう思った時、いつぞや前にもこんな事があって
レジナスさんが歯止めが効かないと思ったような
気がした。それはいつのことだろう?思い出せない。
とりあえずストップをかけなければ、これ以上
エスカレートされても困る。
ただでさえ今の私はベッドに押し倒されているし、
ここにいるエル君や他の人達にこんなところを
見られたら大変だ。
私をまだ抱き締めたままのレジナスさんの背中を
バンバン叩いて、苦しいです!と声を上げる。
そこでやっとレジナスさんは我に帰ったようだった。
すまない!と赤面しながら言って私をベッドの上に
引き起こしてくれたその姿はもうすっかり
いつも通りのレジナスさんだ。良かった。
普段は冷静沈着で今の私よりも立派な大人なんだし
お願いだから自重して、レジナスさん・・・。
抱き締め返したらぎしっ、と固まってしまった。
それを見たエル君はかぶりを振って、侍女さん達に
行きましょうと声を掛ける。
「もう1人の洗濯室に閉じ込めた侍女も一緒に、
荷馬車の子供達について分かる事を話して下さい。
領主代行の書斎で見つけた証拠書類以外で何か
分かることがあれば助かるので。」
証言をして貰えればそれだけ罪も軽くなりますから。
そう言ったエル君はあの小さな体で眠る騎士さんを
軽々おんぶした。エル君の方がかなり小さいので
覆い被さった騎士さんでその姿がほとんど
見えなくなってるけど。
そうしてエル君が侍女さんや男の子も連れて
部屋を出て行ってしまえば残されたのは
私とレジナスさんだけだ。
相変わらずなんだか固まったままけど、いつもは
自分から抱き上げたり抱き締めたりしてくるくせに
逆に私がそうすると動けなくなるのはどうしてだ。
いくら私に好意を持っているからって、こんなことで
固まってしまって大丈夫なんだろうか。
今誰かに襲われたら危ないんじゃないのかな?
そう思ってレジナスさんの肩をさする。
「レジナスさん?大丈夫ですか?」
おーい、と声を掛けながら肩をさすっていたら
ようやくレジナスさんが我に帰った。
はっとして私を腕から降ろし、ベッドへ座らせると
その前に自分は膝をついた。
ベッドに腰掛ける私の前で両手をついて私の
膝の前で頭をうなだれれば、その綺麗な黒髪の
つむじが目に入る。
その表情は窺い知れないけど、耳が僅かに赤いので
多分顔も赤くなってるんじゃないかな。
「・・・いや、本当に何事もなくて良かった。」
自分の動揺を誤魔化すようにレジナスさんは
そんな事をまた言った。
「心配をかけてごめんなさい。まさか私も、
雨宿りでお世話になったところでこんな目に遭う
なんて思ってもみなかったです。」
あはは、と苦笑いをする。レジナスさんの耳は
まだ赤く、俯いたままだ。どうやら自分の動揺が
おさまるまでその格好でいることにしたらしい。
「ユーリは少し目を離しただけで思いも寄らない事に
巻き込まれてしまうから心臓に悪いな。今回は
エルがいてくれて良かった。」
「エル君にはずいぶん助けられましたよ。」
「護衛としての責務を立派に果たしているようで
良かった。さすがはイリヤ殿下の選んだ剣だ。
お陰でユーリにも早々に会えた。一歩間違えば
ユーリもここに集められている子供達と一緒に
どこかへ連れ去られてしまい会えなくなる
可能性もあった。そうならなくて本当に良かった、
ユーリが俺の目の前から消え去るなどそんなこと、
考えたくもない。」
「あ、ああ、ハイ・・・。大丈夫ですよ。
私はどこにも行きませんから・・・」
レジナスさんの物言いに、ふと王都でのあの夜の
独白を思い出して私も赤くなった。
狼狽えてしまった私の様子がおかしいと思ったのか
レジナスさんが顔を上げる。すでにレジナスさんは
平静を取り戻したのか全然赤くない。
「どうしたユーリ。顔が赤くないか?」
不思議そうに尋ねられた。こ、この人はまた
自分の言ったことを棚に上げて、無意識に私だけを
動揺させている・・・‼︎
そう思ったら、少し腹が立ってちょっといじわるを
したくなった。私も何かレジナスさんを動揺させる
ようなことを言おう。仕返しだ。何がいいかな。
ふと、私を見上げるレジナスさんと自分の着ている
お仕着せの黒いワンピースのスカートが目に入った。
「レジナスさん、疲れてませんか?」
「いや、急いでは来たが別段疲れは・・・」
突然何を言うのかと不思議そうにレジナスさんは
私を見上げている。
「これ、ここの侍女さんのお仕着せなんです。
似合ってますか?」
「あ、ああ。ユーリは何を着ても似合うと思う。」
それを聞くとレジナスさんもリオン様と同じく
私に甘いなあと思いながら言葉を続けた。
「こんな真夜中なのに一生懸命駆け付けてくれた
レジナスさんにお礼がしたいです。どうですか、
私の膝枕で少し休んで行きませんか?」
私の突然の提案に、その意味を掴みかねた
レジナスさんは一瞬ぽかんとした。今までに
見た事のない顔だ。そしてそのすぐ後、みるみる
顔が赤くなるとあの夕陽色の瞳が大きく見開いた。
「ひっ・・・膝枕⁉︎急に何を言い出すんだユーリ!」
「せっかく侍女さんの格好をしてるのに、
それらしい事が何も出来ないのは残念なので。
レジナスさんで侍女さんごっこです!」
「侍女は膝枕なんかしないぞ⁉︎」
「あれ、でもシンシアさんは私を膝枕してくれて
寝るまで頭を撫でてくれたことがありましたけど」
素知らぬ顔でそう言う。まあその時は寝付けなかった
私を眠らせようとしてシンシアさんが特別に
してくれたんだけどね。人の膝枕なんて初めて
だったからどうなんだろうと思ったけど、案外
寝心地は悪くなかった。
ただ、本当に私が膝枕しても痩せてて肉がないから
シンシアさんほど寝心地は良くない気がする。
あれは大人の女性ならではの柔らかな太ももが
あるからこその気持ち良さなんだろう。
今はレジナスさんを動揺させるために提案しただけ
だから本当に膝枕する気はない。
だって絶対私の膝枕はシンシアさんより寝心地が
悪そうだもん。
・・・それにしても思ったより激しくレジナスさんは
動揺している。その顔をじっと観察していると、
ますますレジナスさんは赤くなった。
さっきみたいに耳まで真っ赤だ。面白い。
「シンシアが膝枕したのはユーリだからだろう⁉︎
その格好は良く似合っているが、だからといって
おかしな事を言うんじゃない‼︎」
「おかしいですか?」
あざとく小首を傾げて自分の太ももを撫でてみる。
それを見たレジナスさんはウッと言葉を詰まらせた後
「・・・いいかユーリ。冗談でも他の男にそんな、
じ、侍女ごっこがしたいだとか膝枕を
するだとか言うな。とんでもない事になる。」
赤面したまま、両肩に手を置いて私を説得に
かかった。
そうかなあ。これは真面目なレジナスさんに
言うから効果があると思うんだけど。
他の人に言ったところでまじめに取り合っては
もらえないんじゃないかな。
そんな私を見て、ユーリは全然分かってない。と
紅潮したままレジナスさんの説得は続いた。
「ユーリは冗談のつもりでも、世の中にはそうと
思わない輩もいる。襲われてからでは遅いぞ⁉︎」
「レジナスさんがいるから大丈夫です!」
にっこり笑ってそう言ったら、レジナスさんは
一瞬動きが止まって私からそっと視線を外した。
「いや・・・そこまで信頼されるのは嬉しいが、
それではこの先何も進展させられないというか・・」
「え、襲うつもりでしたか?」
ふざけて言ったらレジナスさんは赤くなったまま
小さく叫ぶように抗議した。
「違う!そうではなくて、騎士としてしか
見られていないのではこの先1人の男として
見られることも、伴侶候補としても意識して
もらえることもないのではないかと思っただけだ!
ただでさえユーリとは歳が離れているのに‼︎」
・・・あっ。
勢いにまかせてレジナスさんが私に告白めいた事を
してしまった。
そんなことさせるつもりはなかったのに。
目を丸くした後に今度は私の方がぶわわっと
赤面した。恥ずかしさで、それこそ猫みたいに
髪の毛も逆立ってしまったような気になる。
私の反応に、今回はさすがのレジナスさんも
自分が何を口走ったのか分かったらしい。
しまったとばかりに、片手で自分の口元を抑えて
どこを見ればいいのか分からなそうに視線は
うろうろと私を見ないようにさまよっている。
うわあ気まずい。どうしよう。
もじもじとスカートの上で手を遊ばせて俯く。
ちょっと私もレジナスさんの方を見られない。
ごめんレジナスさん、そんなこと言わせる
つもりじゃなかった。
少しふざけたかっただけなんだ。
結果、おそらくまだ言うつもりはなかっただろう
私への気持ちを言わせてしまった。申し訳ない。
・・・・でもそうか、今の言葉でどうして
レジナスさんが私に告白して来ないのか
分かったような気がする。
ただでさえ歳が離れてるのにって言ってた。
きっとレジナスさんは私との歳の差を気にしている。
確かに今の私の見た目はレジナスさんと12歳以上
離れているだろう。他の人から見たら不思議に
思われたり変に思われるかも知れないと、
それを気にしているのかも。
でも元の私はアラサーだ。なんなら私の方が
レジナスさんよりもいくつか歳上な位だから
その辺りは全然気にしてなかった。
まあ小さくなってからは精神年齢と行動が
見た目年齢に引っ張られてかなり幼くなって
しまっているから、前より子どもっぽくなった分
レジナスさんから子供に見られているのは
否定しない。
「その・・・」
覚悟を決めたようにレジナスさんが口を開いた。
「もちろん俺はユーリがこの世界に初めて
姿を現して、それを見た時からこの子は絶対に
守らなければならないと思っていた。それは本当だ。
でもそれ以上に、今はユーリを1人の女性として
大切にしたい、愛しいと思う気持ちのほうが強い。
だからその、歳が離れている俺が君に対して
そう思うのを気持ち悪いと思わないでくれれば
それでいいんだが・・・」
なぜか最後の方は弱気になったレジナスさんの声が
ぼそぼそと段々小さくなった。
やっぱり気にしていたのは歳の差かあ。
真面目なレジナスさんらしい。
そう思ったら、私の顔はまだ赤かったけど
思わずくすりと笑いが漏れた。
レジナスさんが一体何を気にして今まで私に
その気持ちを伝えてこなかったのかその理由が
分かった。
じゃあその気持ちを聞いてしまった今、
私もきちんとそれに対する返事をしよう。
そう思って口を開いた。
「私はレジナスさんとの歳の差を考えたことなんて
一度もないですよ。そんな事よりも、私が
危ない時にはいつでも、どんな時でも駆け付けて
くれて頼りになるレジナスさんがこの先も私と
ずっと一緒にいてくれるといいなと思います。」
ヒルダ様の教えの通り、レジナスさんにも自分の
素直な気持ちを伝える。
レジナスさんが私に対して思うほど、私はまだ
レジナスさんのことを愛しいとか大切だとか
思えていない気はする。多分想いの強さは
レジナスさんの方が上だろう。
でもこれだけは言える。
「レジナスさん。私はレジナスさんにもリオン様にも
この先ずっと一緒にいて欲しいと思ってます。
レジナスさんが心配してるみたいに、ある日突然
消えたりなんてしないですよ。むしろレジナスさんの
方こそ、私がおばあちゃんになってもどこにも
行かないでずーっと私の側にいてくれますか?」
私の言葉がよほど思いがけないものだったのか、
レジナスさんは信じられない事を聞いたという風に
パチパチと瞬きを繰り返した。
と、思ったらがばっと抱き締められた。
勢いが良すぎてベッドに押し倒されたみたいになる。
「うわっ‼︎」
「・・・俺には過分な、勿体なさ過ぎる言葉だ。
ありがとうユーリ、こんなにも嬉しいことはない。」
そう言って私を抱き締めたまま、ぱっと顔を上げると
真剣な表情で私を見つめた。
「誓おう。この俺、レジナス・ヴィルヘルムは
いつ如何なる時もユーリを守り、想い、
その生涯をかけて愛し抜き一生その側にいると。
ユーリは俺がこの命を懸けて望む、世界で
たった一人の愛しい人、俺の唯一だ。」
そう言って、そっと私の両頬に口付けを落とし
「・・・唇への口付けを許してもらっても?」
律儀に許可を求めて来た。誠実な夕陽色の瞳に
情熱をたたえて射抜かれるように見つめられ、
そんなことを聞かれたら断れるはずがない。
むしろ断れる人がいたら相当の猛者だ。
真っ赤になったまま小さく頷けば、レジナスさんは
静かに私の唇に口付けた。一度顔が離れて、
今までに見たことがないような柔らかな笑顔を
見せたレジナスさんはまた二度、三度と啄むように
優しく私に口付ける。
ぎしっ、とベッドが軋んで私の体が深く沈み込んだ。
あ、あれ?歯止めが効かない・・・⁉︎
そう思った時、いつぞや前にもこんな事があって
レジナスさんが歯止めが効かないと思ったような
気がした。それはいつのことだろう?思い出せない。
とりあえずストップをかけなければ、これ以上
エスカレートされても困る。
ただでさえ今の私はベッドに押し倒されているし、
ここにいるエル君や他の人達にこんなところを
見られたら大変だ。
私をまだ抱き締めたままのレジナスさんの背中を
バンバン叩いて、苦しいです!と声を上げる。
そこでやっとレジナスさんは我に帰ったようだった。
すまない!と赤面しながら言って私をベッドの上に
引き起こしてくれたその姿はもうすっかり
いつも通りのレジナスさんだ。良かった。
普段は冷静沈着で今の私よりも立派な大人なんだし
お願いだから自重して、レジナスさん・・・。
137
あなたにおすすめの小説
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる