【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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第十四章 手のひらを太陽に

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シェラさんの着せ替え人形のように着替えさせられて
猫耳ヘアにされた後は一路モリー公国へと急ぎ馬車を
進めた。

「オレ達に先行して騎士を二人モリー公国に走らせて
います。そのためリオン殿下と別行動でオレ達が着く
こともあちらには伝わっているはずですよ。到着後は
ルーシャ国へ訪問したミオ宰相が迎えてくれることに
なっていますが、ユーリ様も宰相にはルーシャ国で
お会いしましたよね?」

到着後のことについて説明してくれていたシェラさん
にそう聞かれた。

うん、覚えている。宰相さんがルーシャ国を離れると
いうその日に初めて会った。

40代後半くらいかな、知的な顔をした誠実そうな人
だった。若干お疲れ気味だったのはきっとリオン様や
陛下に招待された、お茶会という名の誘導尋問に
引っかかってしまったり何かと苦労をしていたから
だと思う。

なんだかかわいそうになったので、では次はモリー
でお会いするのを楽しみにしていますと握手の手を
差し伸べられた時に、癒しの力をこっそりと使って
しまったくらいだ。

「ミオ宰相さん、リオン様がバロイに立ち寄ることに
なったって知ったら胃を痛めていそうですね・・・」

「仕方ありませんよ。むしろ殿下がバロイの気を
逸らしてくれている間にユーリ様が薬花に加護を
付けてしまう方がいいのかも知れません。」

「頑張ります!」

薬花が枯れて絶滅してしまわないように加護をつけて
ついでに病弱だという王子様の調子もみる。

今の大公閣下もお年だと言うから、大公閣下のことも
見てあげた方がいいかも。

そんな話をシェラさんとしていたら、いつの間にか
馬車はモリー公国へ入っていたらしい。

ここまで来ればとりあえず安心です、と言った
シェラさんが窓に引かれたカーテンを開けて外の
様子を見せてくれた。

目に飛び込んでくるのはまぶしい緑と色とりどりの
花、青い空。モリー公国の首都に入ったらしいけど
ルーシャ国と比べてこじんまりとした建物が多い。

「国としての規模はルーシャ国の王都を倍にした程度
と聞いておりますからそれほど大きくはありませんが
見ての通り自然の豊かさから花と緑の公国と言われて
いるようです。今見えている緑も、薬草や香草などが
多いですね。」

「だから流行り病に効く薬花なんてものもあるんです
かね?」

「途中の商いでも、モリー公国で採れた薬草は高値で
取引されていました。それらのおかげでこの国が
潤っているのであれば薬花のためにユーリ様を必死に
なってお招きしたのも頷けます。」

私の豊穣の力に国の財政がかかっているなんて
責任重大だ。こんな猫耳とか付けてる場合じゃない
よ・・・?とシェラさんを見たけど、よくお似合い
ですからご心配なく、と微笑まれて終わった。

そうしてそのまま馬車は走り続け、いつのまにか
大きな門も通り過ぎていた。

「もしかして今のは王宮の門ですか?」

「はい。身分証とミオ宰相が前もって預けてくれて
いた認印入りの紹介状を見せたので、このまま王宮の
賓客用の宮殿まで進みます。」

気が付けば私達の馬車の前に先導の騎士さんらしい
人が馬に乗って走っていた。

やがて大きな窓が開け放たれた開放的な雰囲気の
建物の前で馬車は静かに止まった。

「長旅お疲れ様でございました。モリー公国への
来訪を心より歓迎申し上げます。」

私を縦抱きにして馬車を降りたシェラさんを出迎えて
くれたのは、まるで侍従さんのようにうやうやしく
深く腰を折ってお辞儀をするミオ宰相さんだった。

詳しくはないけど、宰相さんていうのは国の政務にも
大きく関わる、王様の右腕的な人じゃないのかな?

そんな偉い人がわざわざ出迎えてくれた上にこんな
低姿勢にさせてしまうなんて、と慌ててシェラさんの
腕の中から私は降りようとしたんだけど、残念な
ことにがっちりと支えられていてびくともしない。

「ミオ宰相自ら出迎えをしていただくなど一介の
商人には光栄過ぎて勿体無いことです。」

ミオ宰相さんが一緒に私達を出迎えたモリー公国の
他の人達の前で私に向かって癒し子様・・・と
話しかけるより早くシェラさんが牽制するように
お礼を述べた。

その態度にハッとして空気を読んだミオ宰相さんは
口をつぐむ。

その様子にシェラさんは満足そうに頷くとそのまま
私を腕に抱いたまま紹介した。

「こちらはオレが最近気に入っている少女でしてね。
オレの仕事を手伝わせる事もありますが基本的には
ご覧のように、片時も離さずこうして側に置いてただ
ひたすら愛でております。ですから滞在中もこの子は
オレと一緒の部屋でお願いいたします。」

一緒の部屋⁉︎まさかそこまで徹底するなんて。
ちょっとやり過ぎじゃないのかな、これは本当に
後でリオン様に怒られるやつだ。

そう思って注意の意味でシェラさんの服をぎゅっと
握れば、

「照れております。彼女の愛らしさについてはオレも
皆に見せびらかして自慢したい反面、誰にもその
美しさを見せたくないと思う独占欲もありまして。
申し訳ありませんが早々に部屋へ案内していただいて
よろしいですか?彼女を休ませてから、残念ながら
別行動になってしまったリオン殿下より賜って
おります品々の目録を贈呈致します。」

自国の王子殿下からの贈呈目録を渡すよりも、まるで
自分の気に入りの少女の機嫌取りの方が大事だと
言わんばかりのシェラさんの態度に、私の正体を
知らないミオ宰相以外のモリー公国の人達は呆気に
取られている。

なんというかもの凄く体裁が悪い。

とりあえずその場の私に出来る精一杯の挨拶として
黙ってぺこりとお辞儀をした。

私が頭を下げるとベールに付いている鈴がちりんと
鳴る。そこで初めてモリー公国の人達は私の姿が
・・・正確には髪型だけど、それが変わっている
ことに気付いたみたいだ。

なんせそれまではシェラさんのあの自重しない、
見る人誰もが惹きつけられる色気のある美貌に皆が
見惚れていた。

いつもの襟まできっちり閉めている騎士服姿じゃなく
て、胸元を開けた隙だらけのその格好は側から見れば
本当にただの軽薄なプレイボーイにしか見えない。

おかげでその腕に抱かれている私が霞む程の色気
ダダ漏れ状態だったのだ。

ある意味私が目立たなくて良かったけどシェラさんに
紹介されて頭を下げた私の鈴の音で、さすがに私にも
注目が集まった。

「え・・・?人間・・・か?」

「魔物と人間のハーフ?そんなの見た事も聞いた事も
ないですが・・・」

「さすが商人、変わったものを連れ歩いていますね」

「食べ物は何を食べるんでしょう・・・?」

「でも小さくてかわいいですわ、害はないのでは?」

「おとなしく腕に収まっていますしね・・・」

「一言も話しませんが人間の言葉は通じるので
しょうか」

モリー公国の人達、一応気を使ってヒソヒソ声で
話してるけど全部聞こえてるから!

ルーシャ国から遠く離れたこの国まではさすがに
まだ猫耳の話は聞こえてきていないらしい。

そして誤解を招くほどシェラさんの作り上げた
マリーさん直伝の猫耳ヘアは完成度が高かった。

私が被る色の濃いベールは猫耳部分を含めて変わった
頭の形をした人間じゃない生き物であることを隠す
ためのものだと思われたらしい。

多分、ベールで顔の上半分が隠れてその表情が
見えないのも人間かどうか判断しかねる材料に
なったんだろう。

おかげで物珍しげに見られた上に珍獣扱いされた。

さすがにそれは予想外だったらしくシェラさんも
おやおや、と小さく呟いている。

そんな中、ルーシャ国ではこの髪型が流行っていると
知っていてかつ私の正体も分かっているミオ宰相さん
だけが無礼を働いたと青くなっていた。

「おっ、お前達!大事なお客様のお連れに失礼な態度
を取らないように‼︎早くお部屋にご案内を!」

動揺して冷静さを失った宰相さんは、私が人間で
これはただの髪型だという説明をし忘れたまま私達を
宮殿へと案内した。

私達に同行し、商人に扮した騎士さん達はモリー公国
の人達のそんな反応に

「ユーリ様のこの良さが分からないなんて勿体ない」

「ここは一つ、俺たちがもっと頑張ってこの髪型の
良さを分からせるべきじゃないのか」

「おい、誰か猫耳カチューシャは商品で持って来て
ないのか⁉︎」

とか好き勝手な事を言っている。

・・・せっかく猫耳を知らない国に来たのにそれを
普及させようとするのは止めて欲しい。

あれがここでも流行るくらいなら、この国にいる間の
私は魔物とのハーフの謎の猫耳人間で押し通しても
いいとちょっと思ってしまった。
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