【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
310 / 777
第十五章 レニとユーリの神隠し

11

しおりを挟む
お前はユーリにくっつき過ぎだ!次の休憩の時は
自分がお前の馬に乗る!とレニ様はキリウさんに
向かって騒いだけど、私としてはルーシャ国の大事な
王族のレニ様は勇者様と一緒にいてもらう方が安全で
安心できる。

「レニ様、尊敬する勇者様と一緒の馬なんだから
いいじゃないですか。みんなに自慢できますよ?」

そう宥めれば私の後ろのキリウさんも感心する。

「さっきから思ってたけど、イスラハーンまでオレや
レンのやってる事って話が届いてるんだね?いやー
良かったなレン、あっちこっち駆け回って寝る間も
惜しんで魔物退治に精を出した甲斐があったな!」

「でもまだまだですよ。人間の住める範囲はそんなに
増えてないし、土地は痩せてるし。せめてみんなが
もうちょっと魔獣のおいしさに気付いてくれれば
食料事情くらいは良く出来るんだけどなあ・・・」

小麦の生産が増えてくれればパスタとかパイ生地とか
パンとかもっといっぱい作りたい、コロッケパンとか
焼きそばパン食べたい!とレンさんは呟いている。

牛と羊もまだまだ少ないからバターもチーズも
足りないんですよ、カルボナーラやピザはいつ
食べられるようになるのかな・・・と遠い目をして
たそがれている様子は食べ物のことを考えていると
知らなければちょっとカッコ良くさえ見える。

もしかして勇者様の行動原理は食欲なんだろうか。
もしここにエル君がいたら冷たい目で見られること
確定だ。

「いやいや、いくら食料が必要だからっていっても
倒した魔獣を片っ端から料理して食っていくのは
どうかと思うよ?もうちょっとこう、世間一般の
勇者様とか召喚者のイメージってものを考えて欲しい
よね?オレんちがレンのイメージを保つための工作を
するのにどれだけ苦労してか分かる?」

「えっ、俺はてっきりキリウさんはちゃんと俺の
魔獣料理レシピを記録してくれてるとばかり思って
たんですけど⁉︎王都に帰って落ち着いた頃にレシピ本
を出版してくれるんですよね⁉︎」

「出版したところで誰がそんな気持ち悪い本を買う
のよ・・・。オレが記録してんのはレンの戦闘と
辺境探査の記録だよ、食ったもんの記録も一応私信と
しては残してるけど公表はしないからな。」

そんな・・・楽しみにしてたのに、とレンさんは
ショックを受けている。

心なしかレンさんの馬の歩みが落ちた。

自分の魔獣料理の本が出版されないのがそんなに
ショックなのかな。

「ミミックワームの料理とか、結構食べるのに勇気が
いったけどおいしかったからみんなにもぜひ知って
欲しかったのに・・・。トゲトカゲの捕まえ方も絶対
ためになるはずなのに・・・。」

まだそんな事を言っている。それを聞いたキリウさん


「いやレン君?ミミックワームなんてあんなお化け
ミミズの料理レシピを知りたい人なんて誰もいない
からね?逆にドン引かれるよ?ていうかあの時は
オレも普通に引いてたから。料理の腕はあるのに
選ぶ食材がゲテモノ寄りって言うかセンスがない
んだよなあ・・・」

そんな本出せるわけないでしょ、出したところで
禁書か発禁処分だよ!とレンさんの馬に並んで
そう話している。

ミミックワームは図鑑で見た。ニシキヘビくらい
大きくて赤いミミズだ。口の中にはギザギザの歯が
いっぱい並んでいて、湿った沼地の泥の中に潜んで
いては通りすがりの人の足にそのギザギザの歯で
ガブリと噛みついてくるらしい。

実物は見た事はない。図鑑で見ただけだけど、その
ギザギザの歯が並んだ赤くてぬめったようなミミズの
イラストは気持ち悪かった。

それなのに、あれを食べた?

「え・・・ウソですよね?あんな気持ち悪いものを
食べたんですか?それにトゲトカゲも毒があるのに
食べられるんですか?」

思わずつい聞いてしまった。ダーヴィゼルドの山中
では、トゲトカゲの毒毛の攻撃にすごく苦労した。

まさかあれも食べられるなんて。ヒルダ様もそんな
ことは言ってなかったはずだ。

するとレンさんの顔がぱあっと輝いた。

「そうなんだよ!トゲトカゲは毒があるし可食部は
少ないんだけど、その少ない可食部がすごくおいしい
んだ!あいつらって毒毛を飛ばす時には必ず地面に
踏ん張るでしょ?そこに雷魔法を流して気絶させて
からこう毒毛をね・・・!」

まるで同士を見つけたかのように嬉々としてトカゲの
捕まえ方から料理の仕方までを教えてくれようとした
レンさんを並べた馬から手を伸ばしたキリウさんが
その口をおさえて黙らせた。

「やめてくんない⁉︎ユーリちゃんがゲテモノ魔物料理
に興味を持ったらどうすんの?新婚生活の食卓が
ミミズだのトカゲ料理しか並ばなくなったら結婚即
離婚の危機だから!」

「まだそんな妄想の話をしてるんですか?結婚は
しないって言いましたよね?」

「言われてるうちに段々としたくなってくるから
大丈夫!」

呆れた私に、並行して走る隣の馬に乗るレンさんの
口をおさえたままで後ろから顔を覗き込んできた
キリウさんはウインクをする。

器用な人だ。そしてメンタルが強い。その時だ。

「んんーっ?むぅ、んむっ・・・‼︎」

私の方を見たまま口をおさえられているレンさんが
必死に何かを言っている。

「おいお前、勇者様が何か言ってるだろ!その手を
離せよ、あとユーリのことも見過ぎだから‼︎」

レニ様の抗議にあー、とキリウさんは姿勢を元に
戻してレンさんの顔から手を離した。

「ふざけ過ぎた?悪い悪い、でもこれくらい大丈夫
だろ?」

「・・・っ、はぁっ、俺達だけじゃないんですよ?
子どももいるのにもし何かあったらどうするんです⁉︎
良かった、気付いてないのかと思った・・・‼︎」

良く分からないやり取りをしながら二人はぴたりと
馬の歩みを止めた。

「・・・?どうしたんですか、行かないんですか?
それとも休憩ですか?」

「んー、まあね。」

不思議に思っていると、キリウさんが馬から降りる。

そしてそのままその辺に落ちていた木の枝を拾うと、
おもむろに私達を囲むようにガリガリと円を描き
だした。

円を描き終わると、木の枝はそのままざくりと地面に
突き刺してキリウさんはそれに手をかざす。

するとその枝は淡く光りあっという間に一本の木に
成長してしまった。

すごい、私の使う豊穣の力にも引けを取らない。

植物の成長を促したりする魔法は花を一つ咲かせる
ことさえ普通は大変だって聞いた。

それなのに、なんてことはないようにキリウさんは
やってのけている。

目を丸くした私がまだ乗ったままの馬と、レニ様の
乗っている馬の二頭がその木に結ばれた。

いつの間にかレンさんも馬から降りていて、準備運動
をするみたいに体を伸ばしたりひねったりしている。

「ユーリちゃん達はこの円の中から出ないでね。
一応結界も張ったから、ここから出さえしなければ
安全だよ。」

そう言ったキリウさんがまたパチリとウインクした。

「一体何の話ですか?」

不思議に思えば、遠くを見たままレンさんが言う。

「魔物が来るよ。俺とキリウさんで片付けるから、
二人とも絶対にここから出ないでね。」

「えっ⁉︎」

慌てて私やレニ様もレンさんの見ている方を見た。

だけど目の前に広がっているのはただの広大な荒れ地
だけだ。

「ユーリ、お前、魔物の気配とか感じるか・・・?」

俺は全然わかんない、とレニ様が呟く。

私も分からない。そもそもそんな気配を感じ取れる
ように私の魔力は出来ていないのだ。

「どう、キリウさん。食べられそうな奴はいるかな」

レンさんの言葉にキリウさんはガックリと肩を
落としている。

「そっちかよ!・・・残念ながら多分いない。空から
感じる気配はお前の嫌いなハーピーだし、駆けて
くるのは・・・炎狼だなあれは。どっちもヨナスの
力で強化されてそうだ。」

「しつこいなあ。町から離して全部倒したつもり
だったけど、取りこぼしてた分につけられていた
のかな?」

さえぎるもののない場所でオレ達を囲んで
一気に仕留めようと機会を狙ってたのかもな。」

二人のやり取りから察するに、魔石鉱山への道中
どこかの町を魔物から救ったはずがその残党に
つけ狙われていたらしい。

「今からここに魔物が来るんですか⁉︎」

周りはどこにも隠れる場所のない平坦な荒れ地だ。

もし魔物の数が多くて囲まれたら手に負えないんじゃ
ないだろうか。

顔色を失った私とレニ様を見たレンさんとキリウさん
はにっこりと笑った。

「すぐ終わるから大丈夫。怖かったら目を瞑って
しゃがんでるといいよ。炎狼もハーピーも食べるのは
おすすめ出来ないからご馳走できないのが残念だな」

「ユーリちゃん、オレの剣技と魔法、どっちが
見たい?どっちもカッコいいよ?惚れ直すよ?」

呑気に二人ともお互いの性格がよく分かるセリフを
私達に言うものだから、なんだか体の力が抜ける。

「・・・ここでちゃんと待ってますから。
よろしくお願いします。」

気負わない二人には、そんな事くらいしか私が掛ける
言葉はないのだった。


















しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」 ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。 竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。 そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。 それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。 その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた! 『ママ! 早く僕を産んでよ!』 「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」 お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない! それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――! これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。 設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。

処理中です...