【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
311 / 777
第十五章 レニとユーリの神隠し

12

しおりを挟む
「キリウさん、耳栓よろしくお願いします!」

レンさんはパシンと自分の拳をもう片方の手に
打ち付けて気合いを入れるとまっすぐ前を見ている。
その方向からかすかに狼の遠吠えみたいなものが
聞こえた気がした。

「了解、気を付けてな。炎狼から感じる魔力の質が
ちょっとおかしいから、もしかするとハーピーに
操られてるかも。」

「うわ、めんどくさい。だから嫌いなんですよ
ハーピーって。あの耳障りな声もイライラする。」

ブーブー文句を言うレンさんにキリウさんが手を
かざせば、レンさんの体は一瞬だけ青白い光に
包まれた。

「防御魔法完了、っと。ちょうど炎狼の姿も見え
始めたな。よーし行ってこーい‼︎」

キリウさんにぽんと肩を叩かれて荒れ地の向こうを
指差されたレンさんが

「俺は犬ですか」

ちょっとだけ嫌そうな顔をしたものの、じゃあお先に
とキリウさんが指差した方へと走って行く。

「あっ!見ろユーリ、炎狼だ‼︎」

レニ様が馬の上で腰を浮かせてレンさんの走って
行った方を指差した。

狼みたいな遠吠えがうっすらと聞こえたと思ったら、
今はもうレニ様の指差した方からこちらに向かって
来る大きな狼の群れが見えている。

その体に纏っている炎の色も鮮やかに、まるで炎の塊
がこちらへ迫ってくるようだ。

大きさ的には狼っていうか小さめの象くらいは
ありそうなんだけど、あれ?炎狼ってあんなに
大きかったかな?

騎士団の演習見学で見た擬似魔物の炎狼はもっと
小さかったような・・・。

するとレニ様が「ウソだ、炎狼があんなに大きいわけ
ない‼︎」と大声を上げた。やっぱりそうだよね?

だけどキリウさんは私とレニ様にも手をかざして
レンさんにつけたみたいな青白い光を纏わせながら

「え?いやあんなもんでしょ?纏ってる炎はヨナス神
の影響でちょっと火力が強いかも知れないけど・・・
ああ、もしかしてイスラハーンにはこの大きさの炎狼
がいないのかな?」

と不思議そうな顔をした。

・・・百年前の魔物ってこんなに大きかったんだ。
思わずレニ様と二人で顔を見合わせてしまった。

こんなに大きくて強そうな魔物を倒して平和な国の
基礎を作ってくれたレンさん・・・勇者様の凄さと
ありがたさを改めて実感する。

「よし、レニ君とユーリちゃんにも防御魔法をかけて
あげたから、これでハーピーの攻撃も心配しなくて
いいからね。」

「ハーピー?防御魔法?」

レニ様がきょとんとしている。あ、知らないんだ。
私は魔物辞典で読んだから知ってるよ。

まあミミックワームと同じで実際に見たこともその
魔法を体感したこともないけど。

「あれ、これもイスラハーンにはいない?いいねぇ
平和で。ハーピーは鳥の体に人間の顔を持った鳥の
魔物だよ。その声に魔力があって、聞いた者の気を
狂わせたり自在に操ったりするからね。耳栓代わりに
その魔力を弾く防御魔法をかけてあげたんだよ」

ほら、さっきレンの奴も耳栓よろしくって言ってた
でしょ?とキリウさんが顎でレンさんの駆けて行った
方を指し示せば、ちょうどそちらではあの大きな
炎狼が一頭、空に向かって蹴り上げられていたところ
だった。まるでレジナスさんみたいな馬鹿力だ。

ぽかんとしてそれを見ていたら、ピュルルル・・・
と甲高い鳥の声が辺りに響いた。

「あれがハーピー。・・・結構いるなあ。」

頭上を見上げたキリウさんにつられて私も上を見れば
いつの間にか私達の頭上を十数羽の大きな鳥が旋回
していた。

黒がかったウェーブした髪の女の人の顔が翼を持って
飛んでいる鳥の体に乗っている。魔物図鑑で見た
通りだ。

ハーピー達がピューイ!と声を高く揃えて鳴けば、
レンさんを囲んでいる炎狼の炎が更に赤々とその
輝きを増して燃え盛ったようだった。

「鳴き声に魔力を乗せて炎狼の魔力を増幅させてる
のか。・・・よしユーリちゃん、さっきも聞いたけど
オレの剣技と魔法どっちが見たい⁉︎」

「え?」

独り言を言ったと思ったらにこやかにキリウさんは
私に向き直った。

「やっぱりオレもちょっといいところを見せたい
じゃない?どっちもすごくかっこよくてオレは自分で
選べないからユーリちゃんに選んで欲しいな!」

レンさんは一人で炎狼の相手をしているというのに
キリウさんは自画自賛をして随分とのんきだ。

「何を見せられても惚れ直すとかないですよ?
そもそも惚れてないんですし。」

一応念を押す。

「見たら惚れるかもよ?さあどっちにする?」

あの紫色の瞳を輝かせてずいとせまってくる。

ウッ、止めて欲しい。眩しい。

「じゃあ魔法で!」

シグウェルさんに似た顔でせまられると、あの
火の玉豪速球みたいな口説き文句を言われたのを
思い出して顔が赤くなりそうだ。

そんな事になったらキリウさんに自分のことが好き
なのかと勘違いされてしまうのでそれはいけない。

とりあえず、すごい魔導士だっていうキリウさんの
魔法を見せてもらえば後で何かの参考になるかも
知れないと、慌てて魔法を選ぶ。

「うん、魔法ね。じゃあハーピーを落とすからよく
見ててね、ユーリちゃんがこれから魔法を使う時の
勉強になるかもしれないよ。」

にこにことそう言ったキリウさんは、すいともう一度
頭上を見上げて私達の上を旋回するハーピー達の位置
を確かめた。

そうして視線を戻すとその顔から今までの笑顔はなく
真面目な表情でスッと目を閉じるとその両手をパンと
打ち付けた。

「盾」

柏手を打つようなその手の音と言葉に反応して、
瞬時に空を舞うハーピー達をぐるりととり囲むように
中空に巨大な盾がいくつも浮かぶ。

ほこ

また短くそう言ったキリウさんが打ち付けて重なって
いた両手をゆっくりと開けばその手の間にずらりと
いくつもの金色に光る槍のようなものが現れた。

つらぬけ」

目を開けて自分の前に並んだ金の槍を放り投げる
ように空に浮かぶ盾に向かって両手を広げると、
槍は物凄いスピードでハーピー達ではなくその盾に
向かって飛んでいく。

「ハーピーを倒すんじゃないのか⁉︎」

レニ様が何してるんだ?と声を上げた。

と、カンッ、キンキンと鈴みたいな澄んだ音を立て
ながら盾にぶつかり反射した槍が反射によって増した
スピードと威力で四方八方からハーピー達の体を
貫いて撃ち落としていった。

ハーピーが槍を避けようとしても、盾に反射した
それがどこから飛んでくるのか軌道が読めない上に
すごいスピードで突き刺さってくるので避けようも
ないみたいだった。

金の槍に貫かれたハーピー達は、さっきまでの甲高い
声とは全然違うギャア、と言う濁ったひどい声を
上げて私達の近くにぼたぼたと落ちてくる。

確かハーピーってこの死ぬ時の断末魔にも魔力が
あるんだよね。それを聞いた人は死ぬとか気が狂う
とか、まるでマンドラゴラを引き抜いた時みたいな
ことが辞典に書いてた。

多分キリウさんが防御魔法をかけてくれていなければ
私もレニ様もその断末魔の声にやられていたのかも
知れない。

そんな事を考えていたら、気付けば頭上を飛ぶ
ハーピーは一羽もいなくなっていた。

全部地面に落ちている。瞬殺だ。

「すっげぇ、カッコいい!なんだこの魔法!」

ついさっきまで私から離れろだなんだとキリウさんに
怒っていたレニ様が目をキラキラさせて興奮して
いる。

「あんなに反射する槍なんて、絶対避けられない!
あれなら竜も倒せるんじゃないか⁉︎」

そう言ったレニ様にキリウさんはまたにこにこと
笑顔を見せた。

「有効範囲はもっと広げて反射させることもできるし
槍以外に剣も出せるけど、さすがに竜は倒せない
ねー。せいぜいが足止め程度にしかならないかな。
まあでも、決まった範囲の敵を一気に短時間で殲滅
できるから見栄えがして効率的だし、敵の戦意を
削ぐのにも使えるからそういった使い方もおすすめ
だよ!」

レニ様の素直な賞賛に気をよくしたキリウさんが
色々教えてくれた。

見た目が派手な魔法だから確かに見た人は呆気に
取られるんだろうなあ。

でもこれ、大きな盾をたくさん空に浮かべるとか
槍を無数に出してそれを正確に盾にぶつけて反射
させるとか、簡単そうに見えて魔力をたくさん
使うしそのコントロールも難しいんじゃないかな。

私達の世界に戻れたら、その時はシグウェルさんに
聞いてみよう。

そんな風に考えていたら、そのシグウェルさんに似た
顔をずいと近付けてキリウさんに見つめられた。

「どうだったユーリちゃん!カッコよかったでしょ?
結婚して!」

・・・話に脈絡がない。せっかく凄いと思っていた
のに脱力してしまった。





しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...