【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

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第十七章 その鐘を鳴らすのはわたし

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「じゃあやりますよ」

あの紫色の霧を吸い込まないように、寄せ付けない
ようにと目を閉じて祈りながらエル君に手をかざす。

すると自分の両手がぽうっと暖かくなったのを
感じて、ユリウスさんが

「エル君もユーリ様も体が金色の光に包まれて
いるっすよ!」

と教えてくれた。

かざした手から暖かさを感じなくなったので目を
開ければ、エル君が自分の体を見てあちこち確かめて
いるところだった。

見たところ、金色の光は体の中にすっかり吸収されて
しまったらしく普段と特に変わった様子もない。

ファレルの神官さん達も「これが癒し子様の加護の
力ですか」とか言っている。

「じゃあ中に入ってみますね」

そう言ったエル君は私が気を付けて、と声を掛ける
間もなくあっさりと結界の中へと踏み込む。

「・・・やっぱり。」

もう一度自分の体を確かめたエル君は頷くと私達の
方へ腕を伸ばしてみせた。

「分かりますか?ユーリ様のおかげで霧は僕の体に
入り込めないでいます。」

伸ばされた腕を見れば、薄い膜が張られているかの
ように霧はエル君の体に纏わりついているようで
弾かれている。

「どれくらい持つのか分からないのでちょっとだけ
行ってきます。すぐ戻りますから」

「あっ、エル君⁉︎」

言うが早いかエル君はあっという間に霧の向こうに
姿を消して見えなくなった。

するとそこでユリウスさんが、

「さっきエル君が面白いことを言ってたっすね。」

そう口を開いた。なんのこと?首を傾げれば、

「ほら、霧の影響を受けないのは魔狐以上の上級魔物
じゃないかって話っす。」

「そういえばそんな事を言ってましたね。」

「一理あるなあと思って。人そのものにユーリ様の
加護を付けてこの中に送り込むのもいいんすけど、
そういう魔物の加工物にユーリ様の加護を上掛けして
持たせる方がいいんじゃないかって思ったんすよ。
そしたらそれが壊れかけたら加護が切れかけてるって
分かって救助活動の退避の目安にもなるし。中の探索
もそこにいる人達も助けやすいって言うか」

「確かに今私がエル君に付けた加護がどのくらいの
間効くのか分かりませんけど・・・。でも魔狐の
コートはたまたま着て来ただけで、さっきエル君も
言ってたみたいにそんな加工が出来そうな魔物の物
なんてすぐには準備出来ないですよね。」

ファレルにそんな魔狐以上に強い魔物の加工物を
都合良く保管してあるわけでもないだろうし。

一応神官さん達の方を見てみたけど、みんな首を
横に振っている。やっぱり。

だけどユリウスさんはやだなあと笑った。

「ユーリ様、忘れたんすか?今王都にはちょうどいい
のが大量に保管してあるじゃないっすか。それを
団長に送ってもらうんすよ。」

「あっ・・・!」

ヒルダ様の贈ってくれた氷瀑竜。思い当たった私に
ユリウスさんが頷く。

「そうっす。氷瀑竜なら上級も上級、最上級クラスと
言ってもいいくらいっすからね。装飾品や盾の加工用
にあれの鱗もかなり大量に贈られて来ていたはずっす
よ。団長が擬似魔物の材料にくすねて使い込む前に
連絡を取って送ってもらうっす。」

いやあヒルダ様が女傑な上に竜殺しが得意な人で
良かったっす!とユリウスさんは笑い、それを聞いて
いた神官さん達は氷瀑竜?と聞き間違いかとお互いの
顔を見合わせている。

「まさかこんなところでヒルダ様からの贈り物が
役に立つなんて思いもしなかったです・・・!」

これで集落の人達を助けられる目処がつく、と
安心していればシェラさんは残念そうに

「よろしいのですかユーリ様。竜の鱗を加工した
装飾品など、滅多に作られない貴重な物ですのに。」

そう聞いてきた。

「勿論です!人助けに使うことが出来るなんて、
こんなに嬉しいことはないですよ?ヒルダ様もきっと
喜んでくれます!」

「そうですか・・・ではこの騒ぎが落ち着いたら
ユーリ様にはそれに見劣りしないほど素晴らしい
物を贈りますね。」

そんな事を言って微笑まれた。

「え?いえ、別にそんな無理しなくても・・・」

「まあまあ、そう遠慮なさらずに。」

シェラさんはそう笑うけど、いつの間にか私の服やら
アクセサリーやらを大量に買い込んでくる人だから
その消費に歯止めが効かなくなりそうで怖い。

そんな事を考えていたら、戻って来た!と言う
神官さんの声にハッとする。

集落の方を見ればぼんやりとしたシルエットが
こちらへ近付いて来ていた。

だけどエル君にしてはなんだか大きいような・・・?

よくよく見れば、エル君はその小柄な背中に二人も
人を担いで来ていた。

結界の中から無事に出てくるとその人達をどさりと
おく。

「神殿の中までは入りませんでしたけど、ざっと
一回りして見てきました。集落にいる人達の人数の
把握は出来たと思います。それからとりあえず、
適当に連れて来れるだけの人達も連れて来て
みました。」

後で地図に倒れている他の人達の居場所も書かせて
下さい。そう言っているエル君に駆け寄る。

「エル君!無事で良かったです‼︎」

「ユーリ様の加護のおかげです。まだ加護は持ちそう
でしたけど、とりあえずの偵察でしたので心配を
かける前に戻って来ました。僕がもっと大きければ
もっとたくさんの人達を連れて来れたんですけど」

力不足ですみません。そう頭を下げられる。

「力不足なんて全然そんな事ないですよ!それに
私の言うことを信じて動いてくれてありがとう
ございます!」

思わずぎゅっとその両手を握って感謝をすれば、
いつもならその手を振り離されそうなのにこれまた
珍しくエル君はそれを拒まなかった。

「お役に立てたのなら何よりです。」

無表情にそう頷いて、「でももっと大きかったら
もっと役に立てます・・・早く背が伸びれば
いいのに。」と呟いていた。

そんな私達にユリウスさんが声を掛ける。

「ユーリ様、とりあえず今日はここまでで一旦
神殿に戻るっすよ。エル君が助け出して来た人達、
見たところ無傷でただ眠っているみたいっすけど
早く介抱してあげたいし、団長にも連絡を取って
氷瀑竜の鱗を魔法陣で転送してもらうっす!」

「あ、じゃあ私もシグウェルさんへの連絡に同席して
いいですか?さっき力を使った時に見えた物とか
説明をしてアドバイスをもらいたいです。」

「勿論すよ!」

ユリウスさんは快諾してくれ、とりあえずそれで
一旦その場所は離れることになった。

またすぐに、必ず助けに来るから。

集落の中で眠り続ける他の人達を思いながら、
離れる前にもう一度そちらを見やりシェラさんの
馬に一緒に乗ってその日はそれで神殿へと戻った
のだった。






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