【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

かわいい子には旅をさせよう 9

「明日の朝、ユーリ様が朝食を取られる前までには必ず籠を準備します!」

パンが無限に湧き出てくる籠を作りたいと、思いついたことを何げなく口にしたら護衛騎士さん達がみんな私の前に平伏する勢いでそう言う事態になってしまった。

なんかものすごい無茶振りをしたみたいで申し訳ないな・・・と、

「あの、無理しないでくださいね?ツルを探すにも森の中は暗いし危ないかも・・・」

と声を掛けたけどシェラさんはそんな私をひょいと抱き上げて話を遮る。

「シェラさん⁉︎」

「ユーリ様。中央騎士団の、それもユーリ様の護衛に選ばれるほどの者達を侮ってはいけません。」

そうにっこり微笑んで続ける。

「野営地での寝ずの番のために夜目もよくきく者達も多いですし、どんな武具も扱えるように手先も器用です。また、戦闘能力も当然優れておりますので、もしかするとツルを見つけるついでに目的地の食糧の足しにする獣まで狩ってくるかも知れませんよ?明日の朝を楽しみにしましょうね。」

その言葉に私の前で頭を下げていた騎士さん達がヒュッと息を呑んで空気が凍りついた。

「おい・・・この隊長、さりげなく俺たちの仕事を増やしたぞ⁉︎」

「これは暗に、食糧も取ってこいってことだよな・・・?」

「絶対そうだろ、マジで朝まで俺たちをユーリ様から遠ざけるつもりだ!」

「この隊長にしてみればユリウス様とお付きの侍女なんていないも同然だからな、このだだっ広い野営地でユーリ様とほぼ二人きりになるつもりじゃねぇか・・・!」

ヒソヒソ、コソコソとざわついている場を尻目にシェラさんはあくまでもにこやかだ。

「馬車へ積んできている町への支援物資の他に、更に追加で保存食にもなりそうな獣肉の類でも持参できればユーリ様のお心遣いに町の者達も感謝するに違いないですからね。」

なんてことを私を腕に抱いたまま言っている。

ちなみに今回、水害での被災者のためにリオン様の指示で町への支援物資を道中の妨げにならない程度に荷馬車にも積んで持てるだけ持ってきていた。

確かにそれに追加で更に食糧が増えれば町の人達も助かるかもしれないけどさあ・・・。

「シェラさん、なんで騎士さん達の負担を増やすようなことするんですか!」

「この程度のことを負担に思うような者はおりませんよ。万が一そんな者がおりましたら、中央騎士団の名折れです。それにこれは癒し子のご威光を高め、町の住民たちにも感謝される尊い行為ですのに、それを嫌がる者などいるわけがありません。」

そう言ってちらりと騎士さん達の方を見やった。そこまで言われたら騎士さん達もやらないわけにはいかない。

くっそ、と悔しそうな声の後に

「おい!食ったら三人一組で隊を作れ!集合時間と探索方向を決めてさっさと行ってくるぞ‼︎」

やけくそ気味な号令がかかった。

それに対して、おお!とこれまたヤケクソなんだか気合いが入っているんだか良く分からない気勢の上がった声を尻目に、シェラさんは私を抱えたまま足取りも軽くスタスタと歩き去る。

「えっとあの、もう10歳児じゃないのでわざわざ私を抱いたまま歩かなくてもいいんですよ?降ろしてください!」

ほんの数十メートル先の場所まで縦抱っこで行くとか過保護が過ぎる。

女児でもあるまいし、ただでさえ体力がないのにますます歩けなくなりそうだと訴えても

「ダメです。暗い所を歩いて砂利を踏んずけて足を痛めたり小石につまずいて転ぶかも知れません。それに、目的の町に着くまではほんの少しでも体力と魔力を温存しておいていただきたいですからね。」

もっともらしい理由を言い、私を抱きしめる腕にぎゅっと力を込めて抱え直したシェラさんはその話はおしまいだとばかりに別の話を始めた。

「ユーリ様はお食事を終えましたらお休みの準備をなさってください。天幕は小さいですがマリーと二人、充分な休息を取れるようにしてありますので。今夜はオレとユリウス副団長がユーリ様の天幕の外で一晩中寝ずの番をしますから、安心してお休みくださいね。」

「え?ユリウスさんも?」

何で俺が、と大きな声を上げるユリウスさんの姿が簡単に想像できるんですけど。

それに魔力の温存のために私を早く休ませるなら、今回唯一魔導士として同行しているユリウスさんもそのためには休ませた方がいいんじゃ?

「翌朝、目的地に着くまでの間ユーリ様の馬車で仮眠することを交換条件にしましたら夜番もすんなりと了承してくれましたよ。ユリウス副団長ほどの人物でしたら一晩程度の疲れや魔力はそれ位の仮眠でも充分回復できますし。」

「あ、なるほど」

そういえば今日も馬じゃなくて馬車に乗りたかったって言ってたもんね。じゃあ明日は目的地に着くまでは私の馬車でゆっくり寝てもらおう。

「ユリウス副団長が馬車に乗るとそれまで彼が使っていた馬が空きますからね。それにはこれから騎士達が作るツル籠や狩ってくる食糧を付ければ良いでしょう。」

「物資を増やしてそれを乗せるために馬を空けるとか、そこまで考えてユリウスさんに夜番を頼んだんですか?」

うまいこと出来てるなあと感心すれば

「オレは常にユーリ様のためには何が最善かを考えておりますので。いかがです?こんなに便利で役立つ男は手放したくないでしょう?ずっとお側に置いておきたくなりませんか?」

至近距離で目元の泣きぼくろも色っぽく金色の瞳を笑ませてそんな風にアピールされた。

「ええ・・・?」

えーとそれはやっぱり前に言ってた嫁入り道具的な意味で?でも・・・。

「便利で役立つから側に置くとか役に立たないからいらないとか、人をそんな風に使える道具かどうかで判断するのはちょっと違うんじゃないかなーと思うんですけど。」

元の世界にいた時、ほんの些細な仕事上のミスで「本当に使えねぇヤツだな、おい‼︎」と上司に強く叱責されたことを思い出す。

その上司、自分より弱い立場の人には誰に対してもそんな感じだったけどあの言葉ってホントに傷付くんだよね。

どんなに軽口で冗談めかして言われても心が折れてしまう言葉だから、例えそう思うことがあっても私は絶対にそれだけは言わないでいようって心に誓ったっけ。懐かしい。

だからシェラさんも、私に対して便利に使える存在だから側に置いた方がいいなんて、なんだかちょっぴり自分を卑下したみたいな言い方でのアピールは例え冗談でもしないで欲しい。

そんな風に思うのは少し真面目に考え過ぎかな?と思いつつ答える。

「シェラさん、私はシェラさんが役に立つとか便利かどうかで判断して側にいてもらったりしませんよ?もし仮にシェラさんが凄腕の騎士さんじゃなかったとしても・・・普通の侍従さんや街の人だったとしても仲良くしたと思います。」

多少性格にクセはあるけど、皮肉は言いつつ他の人達にも一応親切なところはあるし、気遣いも細やかないい人だと思う。

きっと違う出会い方をしていてもシェラさんとは友達になれたんじゃないかな?

そんな事を考えて答えたら珍しく色気が抜けた顔でパチクリと瞬かれた。

「それは、もし役立たなくてもオレの顔がいいから側に置いておく価値があるからで・・・?」

「なんでですか!全然違いますよ、やめて下さい⁉︎人が顔で側に置く人を決めてるみたいな言い方するの!第一私、一度もシェラさんのその怪しい色仕掛けみたいなのに引っかかったことないでしょう⁉︎」

あれ、なんか全然私の言いたいことが伝わってない気がする。

「顔とか役に立つとかじゃなくて、ええと・・・そう!中身です‼︎シェラさんの、そのシェラさんらしい性格がいいところだと思うんです‼︎そういうところが好きなんです、なので便利だから側に置いておくとお得ですよとかそーいうアピールはいりませんからね⁉︎そのままでいてください!」

必死で自分の思っていたことを伝われ!と言い募ったら、

「オレのことがお好きですか」

瞳を輝かせて言われた。あ、よしよしちょっとは自己肯定感が上がったかな?

「はい!どんな出会い方をしていても、私とシェラさんは絶対友達になれたと思います!」

更に励まそうと、シグウェルさんに続くズッ友だ!と力強く頷いたら、途端にその瞳からキラキラ感が消えて悲しげにされた。なんで?

「ユーリ様がオレのことをそう思われていたとは・・・。オレはユーリ様のことを友人だと思ったことは一度もないのですが」

「え?だって慕ってるって」

「はい、この世の何よりもお慕いしておりますよ?ユーリ様はオレにとって唯一無二のお方です。」

それなのに友達じゃないってことは、やっぱり異様に私を奉っている様子からしても、癒し子原理主義者として教祖様を拝むみたいな気持ちなんだろうか。

私としてはもうちょっとこう、親しい友人関係くらい気の置けないくだけた間柄になりたいんだけど。そんな気持ちで

「私、もっとシェラさんと仲良くなれるように頑張りますね・・・⁉︎」

と決意したらシェラさんも同意するように頷いて私を見つめてきた。

「そうですね。オレもユーリ様にもっと言葉を尽くしてこの身を捧げ、オレにそのお心を傾けていただけるように頑張ります。」

「うん?え?あっ、ハイ・・・?」

なぜか真剣な眼差しで見つめられたので戸惑う。二人とも同意した内容は同じはずなのに、私とシェラさんではなんだか温度差があるような・・・。

何でかな?とシェラさんの腕の上で小首を傾げていたら、

「他に人がいないからって何を二人していい雰囲気になってるんすか!リオン殿下に道中の報告をする俺の身にもなって欲しいっす!これ、なんて報告すればいいんすか⁉︎」

パンケーキを片手にユリウスさんがまたきゃんきゃん吠えた。

「あっ、ユリウスさんズルイです!私よりも先にパンケーキ食べてるじゃないですか!おいしそう‼︎」

ユリウスさんが手にしているふかふかで柔らかそうなパンケーキは、その間に赤いジャムみたいなものが挟まっているのが見える。あれはきっとさっきシェラさんが煮詰めていたイチゴソースだ。

「いいじゃないすか、俺はこれから寝ずの番だから体力補強が必要なんす!ユーリ様の分はちゃんとマリーさんがクリームまで絞って作ってくれてるから、早く食べてしっかり休むっすよ!」

そう言われたのでシェラさんから降ろしてもらってさっそくマリーさんの準備してくれていた簡易テーブルへ駆け寄る。

後ろからはシェラさんが

「ユーリ様、急ぐと転びますからお気をつけください」

と声を掛けてくれた。

「大丈夫ですよ!」

おいしそうなパンケーキにウキウキして声を弾ませ、シェラさんににっこり手を振ってマリーさんとユリウスさんの方へと向き直る。

だから後ろでシェラさんがそんな私を見つめていたのにも、

「オレの気持ちが全く伝わっていないのは残念ですが・・・。容姿ではなく中身を好ましいと言ってくれた人は初めてですね。こんなにどうしようもない人間に対してそんな事を言ってくださる貴女は本当にオレにとって唯一無二のお方です。」

オレもそんな貴女だからこそ、例え貴女が癒し子でも何でもない、ただの無力な女性だったとしてもお慕いするこの気持ちは絶対に変わらないでしょう、と呟いて私に対する想いが強まったのにも全く気付いていなかった。





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