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番外編
かわいい子には旅をさせよう 10
翌朝、天幕の中でマリーさんに身支度を整えてもらっているとシェラさんが私を呼びにやって来た。
「おはようございますユーリ様。よく休まれたようですね?こちらも外は何の異常もなく朝を迎えました。騎士達も戻って来て、例の籠も完成しておりますよ。」
どうぞ確認の上、騎士達にお声掛けをしてあげてください。と早朝の爽やかさとはかけ離れたいつものあの色気たっぷりの笑顔で朝から微笑まれる。
「えっ、もう出来上がってるんですか⁉︎」
外はまだ薄明るい程度でさえずる鳥の声も少ない本当に早朝なんだけど、一晩で材料を手に入れてすでに籠を作り上げているとか騎士さん達すごい。
私の護衛が任務なのに思いつきで本当に申し訳ないことをした。もし疲れていたら癒しの力を使わなければ、と急いで外に出る。
するともやのような白い霧が薄く漂う少し肌寒い空気の中、待ち構えていたようにずらりと並んで待っていた騎士さん達が挨拶をしてくれた。
その数人の手には籠がある。私が両手でギリギリ抱えられる位の、思っていたよりも大きくて立派な物だ。
網目もきっちりと揃い詰まっていて丈夫そうで、籠に付いている持ち手の部分もしっかりしている。
「わ、すごいです!こんなにも立派な籠を一晩で4個も作り上げるなんて・・・!」
思っていたことを素直に口に出して感心すれば騎士さん達も嬉しそうにしてくれて、口々に
「お褒めに預かり光栄です!」
「ユーリ様のために腕によりをかけました‼︎」
「獲ってきた獲物も解体の上、可食部だけにして積み込みまで済ませてます!」
と言う。その顔には笑顔が溢れていて一晩中シェラさんの命令に従っていた割には疲れている様子は見えなかったけど・・・。
「本当にありがとうございます!じゃあ並んでいる端の人から順番に私に手を差し出してもらえますか?」
そう提案した。見た目には出ていなく無自覚でも、疲れているかも知れない。
私に出来るお礼はその疲れを少しでも取ってあげることくらいだ。
一度に全員まとめて癒してあげてもいいけど、せっかくだから感謝を込めて一人一人の手を取って癒してあげたい。セルフ握手会みたいなものだ。
手を出してくださいと言った私に騎士さん達はどういう意味?とみんなきょとんとしている。
だけど察しのいいシェラさんだけは眉をひそめて不満そうな表情を隠そうともしなかった。
「ユーリ様、何もそんな事をしなくても。何のために昨晩早く休んでいただいたと思っているのですか?それに、出来るだけ魔力は温存してくださいとお願いしたはずですよ。」
「でも私に出来ることはこれくらいですから。それに、この程度の癒しの力を使ったところで疲れることなんてないですよ!魔力の消費はおいしい朝ごはんを食べればすぐに回復しますし。」
そんな私達のやり取りに、それまで意味も分からず見守っていた騎士さん達が途端に色めき立った。
「まさかユーリ様のお力を使っていただけるんですか⁉︎」
「まじか・・・」
「そんな事をしていただけるなんて」
「オレ、ユーリ様が王都全域の人間を癒した時って辺境警備の任務でその恩恵を受けてなかったんだよなぁ、めちゃくちゃ嬉しい!」
まだ力を使ってもいないのにすでに相当期待されて喜んでもらえている。ほらね、こんなに期待されているならそれに応えなきゃ。
その様子に、温かいお茶を片手に成り行きを見守っていたユリウスさんも
「シェラザード隊長、無駄っすよ。こうなったらユーリ様は頑としてやる事はやりますから。それに癒し子が自分に与えられた力を使って良いことをするのに、それに従わない道理はないっすからね。」
と私に加勢してくれた。こういうあたりはさすが、召喚者に理解が深くてその力の使い方を指導する立場にある魔導士だ。
なのでさすがにシェラさんもしぶしぶ折れてくれて、
「そのかわり馬車での移動中はオレの言うことを聞いてしっかり休んでいただきますからね。」
と言われた。
「勿論です、ありがとうございます!」
馬車での移動なんてただ座っているだけだから休めない方が難しいよね?とこくこく頷けば、
「約束ですよ?」
と念を押された。
「はい!約束します‼︎」
まだ心配そうなシェラさんを安心させようかな?と指切りげんまんでもしようかとサッと小指を差し出したら、しげしげとそれを見つめられる。
「・・・失礼ですが、それは何でしょう?」
あれ?指切りってこっちの世界にはないの?
「えーと、私の世界での『約束は絶対守ります』っていうおまじないみたいなものです。知りませんか?」
「勉強不足で申し訳ありませんが存じ上げませんねぇ・・・。もしかすると勇者様の残した軌跡が書かれている文献や王家には伝わっているかも知れませんが、市井には伝わっておりません。」
私をがっかりさせて申し訳ないという顔をしたシェラさんを慌ててフォローする。
「いえ、いいんですよ!教えますからやってみましょう?シェラさんも私と同じように小指を出してください!」
お願いすれば、男の人にしては白くて綺麗な優美ささえ漂う小指が差し出された。それに私の小指を絡める。
「⁉︎」
まさかそんな風にされるとは思わなかったんだろうか、いつも微笑みを浮かべている金色の瞳が見開かれてシェラさんは珍しく動揺したみたいだった。
というか、シェラさんどころか周りで見ていた騎士さん達もそんな仕草を見たことがなかったのか、なぜかざわついた。
驚かせてごめんね、と思いつつ小さい時以来、久しぶりにあの歌を歌う。
ー・・・指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます、指切った!
ぴっ、と絡めた小指を離して
「はい、これでちゃんと馬車で休憩を取るって約束をしましたからね!これが『約束を破ったら罰を受けます』っていう私の世界ではよく子ども同士がするおまじないみたいなものですよ。」
そう教えてあげたら、飲んでいたお茶をげほごほとむせたユリウスさんに怒られた。
「ちょっとユーリ様!恋人同士でもないのに、何を公衆の面前で指を絡ませたりしてるんすかいやらしい‼︎あとその歌、怖っ!子どもの遊びみたいなおまじないなのに、約束破ったら針を千本飲ます⁉︎やらしい行為に過激な歌とか、ユーリ様の元いた世界って一体どうなってるんすか!」
「え?」
指を絡めたって言ってもたかが小指一つだよ?それにあの歌の内容も別に本当にそうするわけじゃないし・・・。
そう思って首を傾げたけど、よくよく周りを見てみれば騎士さん達も赤面してまだざわついている。
あれ、もしかしてこういう指を繋いだ約束とかって本当に友達同士ではやらないんだ?
恋人みたいな親しい間柄でしかやらない事で、しかも人前でやったら恥ずかしいやつ?
騎士さん達の様子から空気を読んでやっと理解する。どうやら人前で指を絡めるのはこちらの世界ではあまりメジャーじゃないらしい。
ていうか、周りに公認されているような恋人同士しかしない?
「あ、そういえば・・・」
王都郊外のシグウェルさんのお屋敷で星の砂に加護を付ける時、シグウェルさんの魔力も混ぜるためにその手を取った。
その時、繋いだ手が離れないようにとしっかり指を絡めて手を握ったらシグウェルさんもビックリしていたっけ。
あれっていきなり指を絡めた恋人繋ぎをされたからだけでなく、恋人でもない人に突然そうされたから・・・だよね?
でもその後、街歩きをする時に私が迷子にならないようにと手を取ってくれた時は、シグウェルさんの方から「離れないように」って周りにたくさんの人がいる中でも、進んで恋人繋ぎをされたんですけど。
あれは一体・・・?
ユリウスさんの指摘や赤面してざわつく騎士さん達の様子に訳が分からなくなっていれば、
「ユーリ様・・・皆の目の前でその可愛らしい小指を絡めてくれただけでなく、オレのために美しい歌声で愛らしい歌まで歌い聞かせて約束してくれるなど・・・」
ついさっきまで私と絡めていた小指のある方の手をぎゅっと拳に握るとそれを胸元に寄せて俯きながら、シェラさんはいつも以上の色気をその顔に乗せてほんのり頬を赤らめ、上目遣いで私を見やった。
「まるで愛の告白ではありませんか」
「なんで⁉︎」
違うから!ただの指切りげんまんだから。そこに私の何がしかの感情は一つも込められていない。
「責任、取っていただけるんですよね・・・?」
慌てている私に、察しのいいシェラさんなら私のさっきの指切りには何の他意も含まれていないと分かっていそうなのに、わざとらしくそんな事まで言われてしまったのだった。
「おはようございますユーリ様。よく休まれたようですね?こちらも外は何の異常もなく朝を迎えました。騎士達も戻って来て、例の籠も完成しておりますよ。」
どうぞ確認の上、騎士達にお声掛けをしてあげてください。と早朝の爽やかさとはかけ離れたいつものあの色気たっぷりの笑顔で朝から微笑まれる。
「えっ、もう出来上がってるんですか⁉︎」
外はまだ薄明るい程度でさえずる鳥の声も少ない本当に早朝なんだけど、一晩で材料を手に入れてすでに籠を作り上げているとか騎士さん達すごい。
私の護衛が任務なのに思いつきで本当に申し訳ないことをした。もし疲れていたら癒しの力を使わなければ、と急いで外に出る。
するともやのような白い霧が薄く漂う少し肌寒い空気の中、待ち構えていたようにずらりと並んで待っていた騎士さん達が挨拶をしてくれた。
その数人の手には籠がある。私が両手でギリギリ抱えられる位の、思っていたよりも大きくて立派な物だ。
網目もきっちりと揃い詰まっていて丈夫そうで、籠に付いている持ち手の部分もしっかりしている。
「わ、すごいです!こんなにも立派な籠を一晩で4個も作り上げるなんて・・・!」
思っていたことを素直に口に出して感心すれば騎士さん達も嬉しそうにしてくれて、口々に
「お褒めに預かり光栄です!」
「ユーリ様のために腕によりをかけました‼︎」
「獲ってきた獲物も解体の上、可食部だけにして積み込みまで済ませてます!」
と言う。その顔には笑顔が溢れていて一晩中シェラさんの命令に従っていた割には疲れている様子は見えなかったけど・・・。
「本当にありがとうございます!じゃあ並んでいる端の人から順番に私に手を差し出してもらえますか?」
そう提案した。見た目には出ていなく無自覚でも、疲れているかも知れない。
私に出来るお礼はその疲れを少しでも取ってあげることくらいだ。
一度に全員まとめて癒してあげてもいいけど、せっかくだから感謝を込めて一人一人の手を取って癒してあげたい。セルフ握手会みたいなものだ。
手を出してくださいと言った私に騎士さん達はどういう意味?とみんなきょとんとしている。
だけど察しのいいシェラさんだけは眉をひそめて不満そうな表情を隠そうともしなかった。
「ユーリ様、何もそんな事をしなくても。何のために昨晩早く休んでいただいたと思っているのですか?それに、出来るだけ魔力は温存してくださいとお願いしたはずですよ。」
「でも私に出来ることはこれくらいですから。それに、この程度の癒しの力を使ったところで疲れることなんてないですよ!魔力の消費はおいしい朝ごはんを食べればすぐに回復しますし。」
そんな私達のやり取りに、それまで意味も分からず見守っていた騎士さん達が途端に色めき立った。
「まさかユーリ様のお力を使っていただけるんですか⁉︎」
「まじか・・・」
「そんな事をしていただけるなんて」
「オレ、ユーリ様が王都全域の人間を癒した時って辺境警備の任務でその恩恵を受けてなかったんだよなぁ、めちゃくちゃ嬉しい!」
まだ力を使ってもいないのにすでに相当期待されて喜んでもらえている。ほらね、こんなに期待されているならそれに応えなきゃ。
その様子に、温かいお茶を片手に成り行きを見守っていたユリウスさんも
「シェラザード隊長、無駄っすよ。こうなったらユーリ様は頑としてやる事はやりますから。それに癒し子が自分に与えられた力を使って良いことをするのに、それに従わない道理はないっすからね。」
と私に加勢してくれた。こういうあたりはさすが、召喚者に理解が深くてその力の使い方を指導する立場にある魔導士だ。
なのでさすがにシェラさんもしぶしぶ折れてくれて、
「そのかわり馬車での移動中はオレの言うことを聞いてしっかり休んでいただきますからね。」
と言われた。
「勿論です、ありがとうございます!」
馬車での移動なんてただ座っているだけだから休めない方が難しいよね?とこくこく頷けば、
「約束ですよ?」
と念を押された。
「はい!約束します‼︎」
まだ心配そうなシェラさんを安心させようかな?と指切りげんまんでもしようかとサッと小指を差し出したら、しげしげとそれを見つめられる。
「・・・失礼ですが、それは何でしょう?」
あれ?指切りってこっちの世界にはないの?
「えーと、私の世界での『約束は絶対守ります』っていうおまじないみたいなものです。知りませんか?」
「勉強不足で申し訳ありませんが存じ上げませんねぇ・・・。もしかすると勇者様の残した軌跡が書かれている文献や王家には伝わっているかも知れませんが、市井には伝わっておりません。」
私をがっかりさせて申し訳ないという顔をしたシェラさんを慌ててフォローする。
「いえ、いいんですよ!教えますからやってみましょう?シェラさんも私と同じように小指を出してください!」
お願いすれば、男の人にしては白くて綺麗な優美ささえ漂う小指が差し出された。それに私の小指を絡める。
「⁉︎」
まさかそんな風にされるとは思わなかったんだろうか、いつも微笑みを浮かべている金色の瞳が見開かれてシェラさんは珍しく動揺したみたいだった。
というか、シェラさんどころか周りで見ていた騎士さん達もそんな仕草を見たことがなかったのか、なぜかざわついた。
驚かせてごめんね、と思いつつ小さい時以来、久しぶりにあの歌を歌う。
ー・・・指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます、指切った!
ぴっ、と絡めた小指を離して
「はい、これでちゃんと馬車で休憩を取るって約束をしましたからね!これが『約束を破ったら罰を受けます』っていう私の世界ではよく子ども同士がするおまじないみたいなものですよ。」
そう教えてあげたら、飲んでいたお茶をげほごほとむせたユリウスさんに怒られた。
「ちょっとユーリ様!恋人同士でもないのに、何を公衆の面前で指を絡ませたりしてるんすかいやらしい‼︎あとその歌、怖っ!子どもの遊びみたいなおまじないなのに、約束破ったら針を千本飲ます⁉︎やらしい行為に過激な歌とか、ユーリ様の元いた世界って一体どうなってるんすか!」
「え?」
指を絡めたって言ってもたかが小指一つだよ?それにあの歌の内容も別に本当にそうするわけじゃないし・・・。
そう思って首を傾げたけど、よくよく周りを見てみれば騎士さん達も赤面してまだざわついている。
あれ、もしかしてこういう指を繋いだ約束とかって本当に友達同士ではやらないんだ?
恋人みたいな親しい間柄でしかやらない事で、しかも人前でやったら恥ずかしいやつ?
騎士さん達の様子から空気を読んでやっと理解する。どうやら人前で指を絡めるのはこちらの世界ではあまりメジャーじゃないらしい。
ていうか、周りに公認されているような恋人同士しかしない?
「あ、そういえば・・・」
王都郊外のシグウェルさんのお屋敷で星の砂に加護を付ける時、シグウェルさんの魔力も混ぜるためにその手を取った。
その時、繋いだ手が離れないようにとしっかり指を絡めて手を握ったらシグウェルさんもビックリしていたっけ。
あれっていきなり指を絡めた恋人繋ぎをされたからだけでなく、恋人でもない人に突然そうされたから・・・だよね?
でもその後、街歩きをする時に私が迷子にならないようにと手を取ってくれた時は、シグウェルさんの方から「離れないように」って周りにたくさんの人がいる中でも、進んで恋人繋ぎをされたんですけど。
あれは一体・・・?
ユリウスさんの指摘や赤面してざわつく騎士さん達の様子に訳が分からなくなっていれば、
「ユーリ様・・・皆の目の前でその可愛らしい小指を絡めてくれただけでなく、オレのために美しい歌声で愛らしい歌まで歌い聞かせて約束してくれるなど・・・」
ついさっきまで私と絡めていた小指のある方の手をぎゅっと拳に握るとそれを胸元に寄せて俯きながら、シェラさんはいつも以上の色気をその顔に乗せてほんのり頬を赤らめ、上目遣いで私を見やった。
「まるで愛の告白ではありませんか」
「なんで⁉︎」
違うから!ただの指切りげんまんだから。そこに私の何がしかの感情は一つも込められていない。
「責任、取っていただけるんですよね・・・?」
慌てている私に、察しのいいシェラさんなら私のさっきの指切りには何の他意も含まれていないと分かっていそうなのに、わざとらしくそんな事まで言われてしまったのだった。
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