【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
711 / 776
番外編

かわいい子には旅をさせよう 10

しおりを挟む
翌朝、天幕の中でマリーさんに身支度を整えてもらっているとシェラさんが私を呼びにやって来た。

「おはようございますユーリ様。よく休まれたようですね?こちらも外は何の異常もなく朝を迎えました。騎士達も戻って来て、例の籠も完成しておりますよ。」

どうぞ確認の上、騎士達にお声掛けをしてあげてください。と早朝の爽やかさとはかけ離れたいつものあの色気たっぷりの笑顔で朝から微笑まれる。

「えっ、もう出来上がってるんですか⁉︎」

外はまだ薄明るい程度でさえずる鳥の声も少ない本当に早朝なんだけど、一晩で材料を手に入れてすでに籠を作り上げているとか騎士さん達すごい。

私の護衛が任務なのに思いつきで本当に申し訳ないことをした。もし疲れていたら癒しの力を使わなければ、と急いで外に出る。

するともやのような白い霧が薄く漂う少し肌寒い空気の中、待ち構えていたようにずらりと並んで待っていた騎士さん達が挨拶をしてくれた。

その数人の手には籠がある。私が両手でギリギリ抱えられる位の、思っていたよりも大きくて立派な物だ。

網目もきっちりと揃い詰まっていて丈夫そうで、籠に付いている持ち手の部分もしっかりしている。

「わ、すごいです!こんなにも立派な籠を一晩で4個も作り上げるなんて・・・!」

思っていたことを素直に口に出して感心すれば騎士さん達も嬉しそうにしてくれて、口々に

「お褒めに預かり光栄です!」

「ユーリ様のために腕によりをかけました‼︎」

「獲ってきた獲物も解体の上、可食部だけにして積み込みまで済ませてます!」

と言う。その顔には笑顔が溢れていて一晩中シェラさんの命令に従っていた割には疲れている様子は見えなかったけど・・・。

「本当にありがとうございます!じゃあ並んでいる端の人から順番に私に手を差し出してもらえますか?」

そう提案した。見た目には出ていなく無自覚でも、疲れているかも知れない。

私に出来るお礼はその疲れを少しでも取ってあげることくらいだ。

一度に全員まとめて癒してあげてもいいけど、せっかくだから感謝を込めて一人一人の手を取って癒してあげたい。セルフ握手会みたいなものだ。

手を出してくださいと言った私に騎士さん達はどういう意味?とみんなきょとんとしている。

だけど察しのいいシェラさんだけは眉をひそめて不満そうな表情を隠そうともしなかった。

「ユーリ様、何もそんな事をしなくても。何のために昨晩早く休んでいただいたと思っているのですか?それに、出来るだけ魔力は温存してくださいとお願いしたはずですよ。」

「でも私に出来ることはこれくらいですから。それに、この程度の癒しの力を使ったところで疲れることなんてないですよ!魔力の消費はおいしい朝ごはんを食べればすぐに回復しますし。」

そんな私達のやり取りに、それまで意味も分からず見守っていた騎士さん達が途端に色めき立った。

「まさかユーリ様のお力を使っていただけるんですか⁉︎」

「まじか・・・」

「そんな事をしていただけるなんて」

「オレ、ユーリ様が王都全域の人間を癒した時って辺境警備の任務でその恩恵を受けてなかったんだよなぁ、めちゃくちゃ嬉しい!」

まだ力を使ってもいないのにすでに相当期待されて喜んでもらえている。ほらね、こんなに期待されているならそれに応えなきゃ。

その様子に、温かいお茶を片手に成り行きを見守っていたユリウスさんも

「シェラザード隊長、無駄っすよ。こうなったらユーリ様は頑としてやる事はやりますから。それに癒し子が自分に与えられた力を使って良いことをするのに、それに従わない道理はないっすからね。」

と私に加勢してくれた。こういうあたりはさすが、召喚者に理解が深くてその力の使い方を指導する立場にある魔導士だ。

なのでさすがにシェラさんもしぶしぶ折れてくれて、

「そのかわり馬車での移動中はオレの言うことを聞いてしっかり休んでいただきますからね。」

と言われた。

「勿論です、ありがとうございます!」

馬車での移動なんてただ座っているだけだから休めない方が難しいよね?とこくこく頷けば、

「約束ですよ?」

と念を押された。

「はい!約束します‼︎」

まだ心配そうなシェラさんを安心させようかな?と指切りげんまんでもしようかとサッと小指を差し出したら、しげしげとそれを見つめられる。

「・・・失礼ですが、それは何でしょう?」

あれ?指切りってこっちの世界にはないの?

「えーと、私の世界での『約束は絶対守ります』っていうおまじないみたいなものです。知りませんか?」

「勉強不足で申し訳ありませんが存じ上げませんねぇ・・・。もしかすると勇者様の残した軌跡が書かれている文献や王家には伝わっているかも知れませんが、市井には伝わっておりません。」

私をがっかりさせて申し訳ないという顔をしたシェラさんを慌ててフォローする。

「いえ、いいんですよ!教えますからやってみましょう?シェラさんも私と同じように小指を出してください!」

お願いすれば、男の人にしては白くて綺麗な優美ささえ漂う小指が差し出された。それに私の小指を絡める。

「⁉︎」

まさかそんな風にされるとは思わなかったんだろうか、いつも微笑みを浮かべている金色の瞳が見開かれてシェラさんは珍しく動揺したみたいだった。

というか、シェラさんどころか周りで見ていた騎士さん達もそんな仕草を見たことがなかったのか、なぜかざわついた。

驚かせてごめんね、と思いつつ小さい時以来、久しぶりにあの歌を歌う。

ー・・・指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます、指切った!

ぴっ、と絡めた小指を離して

「はい、これでちゃんと馬車で休憩を取るって約束をしましたからね!これが『約束を破ったら罰を受けます』っていう私の世界ではよく子ども同士がするおまじないみたいなものですよ。」

そう教えてあげたら、飲んでいたお茶をげほごほとむせたユリウスさんに怒られた。

「ちょっとユーリ様!恋人同士でもないのに、何を公衆の面前で指を絡ませたりしてるんすかいやらしい‼︎あとその歌、怖っ!子どもの遊びみたいなおまじないなのに、約束破ったら針を千本飲ます⁉︎やらしい行為に過激な歌とか、ユーリ様の元いた世界って一体どうなってるんすか!」

「え?」

指を絡めたって言ってもたかが小指一つだよ?それにあの歌の内容も別に本当にそうするわけじゃないし・・・。

そう思って首を傾げたけど、よくよく周りを見てみれば騎士さん達も赤面してまだざわついている。

あれ、もしかしてこういう指を繋いだ約束とかって本当に友達同士ではやらないんだ?

恋人みたいな親しい間柄でしかやらない事で、しかも人前でやったら恥ずかしいやつ?

騎士さん達の様子から空気を読んでやっと理解する。どうやら人前で指を絡めるのはこちらの世界ではあまりメジャーじゃないらしい。

ていうか、周りに公認されているような恋人同士しかしない?

「あ、そういえば・・・」

王都郊外のシグウェルさんのお屋敷で星の砂に加護を付ける時、シグウェルさんの魔力も混ぜるためにその手を取った。

その時、繋いだ手が離れないようにとしっかり指を絡めて手を握ったらシグウェルさんもビックリしていたっけ。

あれっていきなり指を絡めた恋人繋ぎをされたからだけでなく、恋人でもない人に突然そうされたから・・・だよね?

でもその後、街歩きをする時に私が迷子にならないようにと手を取ってくれた時は、シグウェルさんの方から「離れないように」って周りにたくさんの人がいる中でも、進んで恋人繋ぎをされたんですけど。

あれは一体・・・?

ユリウスさんの指摘や赤面してざわつく騎士さん達の様子に訳が分からなくなっていれば、

「ユーリ様・・・皆の目の前でその可愛らしい小指を絡めてくれただけでなく、オレのために美しい歌声で愛らしい歌まで歌い聞かせて約束してくれるなど・・・」

ついさっきまで私と絡めていた小指のある方の手をぎゅっと拳に握るとそれを胸元に寄せて俯きながら、シェラさんはいつも以上の色気をその顔に乗せてほんのり頬を赤らめ、上目遣いで私を見やった。

「まるで愛の告白ではありませんか」

「なんで⁉︎」

違うから!ただの指切りげんまんだから。そこに私の何がしかの感情は一つも込められていない。

「責任、取っていただけるんですよね・・・?」

慌てている私に、察しのいいシェラさんなら私のさっきの指切りには何の他意も含まれていないと分かっていそうなのに、わざとらしくそんな事まで言われてしまったのだった。





しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...