【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

かわいい子には旅をさせよう 15

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「まったく、どうしてあんな風に周りに誤解されそうな言い方をするんですか。」

宿のベッドに腰掛けて私はプリプリ怒ったけど、シェラさんはそんな私にも平然としている。

それどころか、むしろあの色気たっぷりの微笑みを顔に浮かべて

「オレの話をどう取るかは相手次第ですが、間違ったことは申しておりませんよ?事実、こうして手取り足取りお世話をしているわけですし。」

と私の編み上げブーツの紐を解いてそれを脱がせながら楽しそうにした。

ちなみにシェラさん、立ち膝をついた自分の膝の上にクッションを置いて、そこに私の足を乗せてブーツを脱がせている。

人様の、しかも国有数の騎士さんの膝を足台にして靴を脱ぐなんてと何度断ってもやめないのでもう諦めたけど。でもやっぱり申し訳ない。

「まあ、もしこの町の者達が何か誤解をしていそうならばユリウス副団長がその誤解はうまく解いておいてくれるでしょう。彼も余計な仕事や面倒ごとは増やしたくないでしょうしね。」

左足のブーツを脱がせ、そのまま絹の靴下もするりと脱がすとマリーさんから受け取った温かいタオルで私の足を丁寧に包み込んだシェラさんは話しながらそのまま右足のブーツも脱がせにかかる。

「オレ達の後を付いてきていたはずのユリウス副団長がいつの間にかいなくなっていたでしょう?あれはきっとそういうことですよ。」

「あ、そういえば・・・」

シェラさんがまるで自分が私の特別な護衛騎士であるかのような紛らわしい言い方をして恥ずかしくなったから、せっかく神殿まで集まってくれていた町長さんや町の人達にも

『き、今日はこれで!明日からもよろしくお願いします‼︎』

なんて挨拶もそこそこに、逃げるようにして宿へ来てしまった。

せっかく作ったワイン樽やパン籠の使い道については詳しい説明もせずに放置してきたも同然だ。

「初めての本格的な任務だったのに、初っ端から失敗してる・・・失礼なことをしてしまいました・・・!」

もっと周りに気を配るべきだった。そう反省して落ち込んでいたらシェラさんは慰めてくれたけど。

「失敗などしておりませんよ。皆、ユーリ様の使われた御力に心を奪われ感謝をしていて、目を輝かせていたではありませんか。むしろ公衆の面前でのオレとの仲睦まじいやり取りを気恥ずかしく思ったユーリ様が足早にその場を去ったのを、微笑ましく見ていたはずです。どうぞお気になさらず。」

「それ、ものすごくシェラさんの主観で語っていませんか?」

あれのどこが私とシェラさんの仲睦まじいやり取りだったんだろうか。どう考えても私が恥ずかしかっただけじゃない?

と、そこで部屋の扉が軽くノックされてユリウスさんが現れた。

「ユーリ様と自分に関係することは何があっても全部前向き思考なのがいよいよ怖いんすけど!ユーリ様も、いつもは情緒が死んでるくせにこういう時だけは恥ずかしがって顔を真っ赤にして逃げるとか何なんすか、かわいい‼︎」

え、何それ私に文句を言ってるのか褒めてるのかどっち?

ユリウスさんも人のことは言えない程度には情緒が不安定じゃないのかな、やっぱり働き過ぎじゃないだろうか。

大丈夫?と小首を傾げていればシェラさんが

「ところでユーリ様のご加護が付いた木樽やパン籠についてはどうなりましたか?」

と私が一番気にしていたことを聞いてくれた。

「勿論、中身が減ることも腐ることもないって説明はちゃんとしてきたっす。木樽もパン籠も数があるんで、どう分配してどこに配置するかはこれから町の人達で決めてもらうっすけど。・・・っと、それから町長からのお願いを一つ預かって来たっす。」

私とシェラさんが神殿を出た後のことについて話してくれたユリウスさんがそう言って、それに対してシェラさんは

「おや、こんな地方までユーリ様を出向かわせておいて更にお願いとは図々しい。」

と鋭くキラリと目を光らせた。

「ちょっとシェラさん!」

私はまったく構わない、と注意する。何しろやれることは何でもやろうと思ってここまで来たのだ。

「マジでアンタのそのブレないところだけは尊敬するっす・・・。いや、今のユーリ様にとっては大したことじゃないっすよ。町の中心にある井戸水の出が悪いので、出来たらそこからまた綺麗な水が出て来るように祈って欲しいそうっす!」

呆れた目でシェラさんを見たユリウスさんはそう私に笑いかけた。

なんだ、そんなことならお安いご用だ。ダーヴィゼルドの山に開けた大穴に泉を湧き出させたのと同じ要領だ。

それにしても・・・。

「もしかしてそれも水害の影響ですか?」

「そうみたいっす。井戸水に関係している地下水脈にも影響があったのかもしれないっすね。それに土砂崩れで汚泥処理に当たっていた人達も、呼吸器に病を抱えたり体調を崩したりしてるらしいんで・・・思っていたよりもたくさんユーリ様の力を借りることになりそうっす。」

さすがユリウスさん、この町に着いてからもそんなところまで調べてくれていたなんて。

「大丈夫です、何でもやりますよ!シグウェルさんの魔法実験に付き合わされるのに比べたら、こんなの何でもないです‼︎」

元々、神殿まで来れないくらい体調の悪い人は家を訪問して治そうと思っていたしね。うんうん頷いて応じれば、

「うわー・・・それ、絶対団長の耳に入らないようにした方がいいっすよ。そんな事を言われてるって知ったら最後、『やはり普段から少しきついくらいの魔法訓練をしている方が任務にも役立つということだな』ってまた無茶な実験に付き合わされるっす。」

ユーリ様は迂闊に自分から墓穴を掘りに行くからくれぐれも言動には気を付けないと、と忠告された。

そしてそのまま

「アンタも」

とユリウスさんは私の右足のブーツと靴下を脱がせてタオルで包み込み温めているシェラさんをちらりと見た。

「リオン殿下達への報告に困るようなことはしないで欲しいっす!何なんすか、膝の上に乗せたユーリ様の足から長靴下を脱がせるとか、羨ま・・・じゃなくてやらしいにもほどがある‼︎」

「本音が漏れておりますよ」

「は?な、何のことだか分からないっすね!」

挙動不審に目を泳がせたユリウスさんにシェラさんは

「まあいくら羨ましいと言われても、ユーリ様のお世話をするこの立ち位置は譲るつもりはありませんけどね。オレ以上にユーリ様のお気持ちに寄り添ったお世話を出来る者などいるわけがありませんし。」

なぜか勝ち誇ったような顔でそう言ったシェラさんは私の両足に巻いて温めていたタオルを外すとお風呂へと促す。

「とはいえ、さすがに入浴のお世話まで出来ないのは残念ですが。さあどうぞ、マリーが待っておりますよ。」

そんな事を言いながら、私がベッドから立ち上がって床に足をつく絶妙なタイミングでその足元にさっと室内履きのフワフワスリッパを出された。

その絶妙さと言ったら、私の足が床に着くか着かないかというところでいつの間にか左足から順番にスリッパが履かされているのだ。

すごい。私はただ足を床につけようとしただけなのに。

ていうかシェラさん、私がティーカップを持つ手が左なのと同じで歩き出しや馬車に乗る時、靴を履く時、・・・元の世界で言えば自転車に乗る時にも左足から動き出すクセがあるんだけど、もしかしてそういうのを分かってる?

そうでなければ今みたいにごく自然に、何の違和感もなくいつの間にかスリッパを履いてるとかある?

人間、色んなクセがあるけど私が左足から踏み出すクセを知らなければこんなにスムーズに履き物を履かせてくれるなんてない。

何しろ私が左手でティーカップを持つクセをいつの間にか把握していたシェラさんのことだ、普段私が意識していないこんな些細なクセも知っていたかもしれない。

あれ?そういえば今までってどうだったっけ?

馬に乗る時とか、靴を履かせてもらう時とか、シェラさんが側にいる時ってどうしてた・・・?

立ち上がったまま、ついその場でうーんと考え込んでしまったら

「ユーリ様?どうされました?」

「え、大丈夫っすか、立ちくらみでもしたっすか?」

シェラさんとユリウスさんの2人に誤解を与えて心配されてしまった。

「ああ、いえ、違うんです。ええっと、シェラさん?もしかして私が左足から歩き出すクセがあるの、分かってたりします・・・?」

気になることは本人に聞くのが一番だ。とシェラさんを見上げれば、面食らったようにパチパチとあの金色の瞳を瞬いたシェラさんは次の瞬間、ここ最近で一番というほどの色気をその顔に乗せて、うっとりとした笑顔を私に見せた。

「さすがオレの女神、その慧眼には恐れ入るばかりです。まさか気付かれるとは思いませんでした。」

「やっぱり⁉︎」

「本来であればご奉仕する相手に気付かれることも意識させることもなく、本人は自然に振る舞っているとしか思わない状態でいるようにするのが理想なのですが・・・。とはいえ、ティーカップの時もそうですが、気付いていただけるとそれはそれで嬉しいものですねぇ。」

そんな風に言ってシェラさんは一人嬉しそうにしているけど。

いやいや、今までシェラさんと話して来た中でも、もしかして過去には侍従の経験でもあるのかな?とうっすら思ったりしたけど、それって相当レベルの高い話じゃない?

要はお世話してるのに、されてる方はそれに気付かないくらい日常動作にシェラさんのご奉仕とやらが溶け込んでいるわけで。

「シェラさんって、すごく厳しく侍従さんの訓練でも受けたことがあるんですか?それともキリウ小隊の隊長さんにまでなる人って、そこまで出来る人じゃなきゃいけないんですか?」

どっちにしろ凄いのに変わりはないけど。感心して思わずそんな事を聞けば、

「そうですねぇ、これはオレだからこそ成せる特技とでも申しましょうか。ダーヴィゼルドでも言ったかもしれませんが、こうしてみるとオレの全ての労苦はユーリ様に出会い、この身を捧げてご奉仕するために必要な事だったのでしょうね。」

ふふ、と金色の瞳を笑ませて幸福そうな笑顔を見せられた。

厳しい侍従さんの修行?も癒し子原理主義者にして見れば、ご本尊様や教祖様に奉仕するためなら何の苦労でもないってことかな。

「そんなに神経を張り詰めてまで私のお世話をしなくてもいいんですよ?」

一応無駄とは思いつつ、そんなに気を遣わなくてもいいと言ってみたけど案の定、

「とんでもない。まさかこんな些細なことまで気付いてくださるとは思いも寄りませんでした。おかげでより一層お慕いする気持ちも深まりましたよ、どうぞこの先も存分にご奉仕させてください。」

となぜか手を取られてうやうやしく口付けられた。

そしてそんな私達のやりとりを見ていたユリウスさんは

「また一つ、殿下に報告出来ないことが増えたっす!」

と声を上げたのだった。
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