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46 お酒
しおりを挟む今夜はみんなでお酒を飲もう。
みんなの家での夕食後、少し落ち着いた頃に街で買ったお酒を出す。
「お酒にそんなに詳しくないから適当に選んでみたのだけれどみんな飲めるかな?」
みんなが集まって来る。
「酒はそんなに飲んだことはないけれどみんな飲めるよね」
とアレスが言うと頷くみんな。
早速グラスを人数分用意するとルウが運んでくれる。
せっかくだから暖炉の前で飲もうということになってみんなラグの上にクッションを持って行ったりソファーを動かしたりそれぞれリラックスできる場所を作る。
グラスを渡して乾杯っと言うと首を傾げられてしまったけれど……それぞれ口を付け始める。
みんなお酒に酔ったらどうなるのだろう。
アレスはゆっくりと味わうように飲んでいる……大人だ。
レトは香りから何が入っているのか当てながら飲んでいる……研究者っぽい。
ライオスはペースが早めで少し心配になるような飲み方……大学生か。
グレンはグラスに口を付ける回数は多いけれど少しずつしか減っていない……弱いのかも。
ロゼッタはコクコクと上品に飲みながらもミアの様子を見ている……酔わないのかな。
ミアは最初の一口は恐る恐るという感じだったけれど好きな味だったのかゴクゴクと飲み始める……強いのか。
ルウはお酒を片手に私を見ている……飲まないの?
ここでみんなにも聞いておこう。
「この森は魔族の国になるんだよね? 街とかもできるのかな?」
魔族をわざわざ集めたりはしないとルウは言っていたけれど、国と言えば街……というのは人間的な考えなのかな。
「まだできたばかりのようだし、どうなっていくのかわからないよね」
アレスが暖炉の火を見ながら答える。
「みんなは魔王様に会ったことはあるの?」
どんな人なんだろう……
「私は優しい人だと思うよ」
アレスも優しい顔をしている。
「か、可愛いし」
レトも可愛い……可愛い感じなのか。
「面白過ぎっ……くっ」
何か思い出して笑っている? ……ライオス。
「安心する」
包容力があるということかな……グレンが真っ直ぐこちらを見ている。
「まぁ、時々間抜けよね」
魔王様にも辛口なロゼッタ……外では気を付けてよ……
「好き」
ミアは好きみたい。
なんだか思っていたよりも親しみやすい感じなのかも。
魔王と聞いてなんとなくみんなが言っていた真逆の人を思い浮かべていた。
いつの間にか先入観を持っていたのか……気を付けないといけないな……と思っていると
「そんな感じだよ、たぶん」
とアレスが言う……会ったことはないのか。
まぁ王様だからそうそう会える人でもないのかもしれない。
そう考えているといつの間にかアレスの顔が目の前に……近い。
アレスの長い指が私の顎に触れ顔を上げる。
「ハル、今夜は私の部屋で寝ないか」
なっ……
「本を読んであげる」
そう言ってフニャリと笑う…………酔っている?
アレスは酔うと本を読んでくれるのか……初めて会うタイプだ。
そんなアレスの後ろでレトがシクシクと泣いているのが見えた。
アレスにちょっとごめんね、と言いレトの側へいく。
「レト、どうしたの?」
座っているレトの前に立ち涙を拭きながら聞くと
「うっ……ハル……き、嫌いにならないで……」
嫌いにって……なんで……
「レト、嫌いになんてならないよ」
そう言って頭を撫でる。
「ほ、本当?」
うん、と頷くとよかったぁ、と言い私の手を取り自分の頬に当ててからチュッチュッと口を付けをする。
レトは酔うと泣き上戸で……これは何て言うのかな……わからない……
ガシャンッ
とグラスの割れる音……酔っ払いかな……
ライオスが割れたグラスをみて笑っている。
ちょっ……危ない!
ごめんね、ちょっと行ってくる、とレトの頭を撫でてからライオスの元へ。
「ライオス、危ないから」
そう言って床に散らばった割れたグラスを片付けようとすると
「触るなっ」
と私の手を握り、突然大きな声を出すライオスに驚いて見ると
「怪我するだろう……」
と……酔っ払いに心配されたぁ……
箒をとりに行こうと握られた手を引くと余計に強く握られた。
「こんなのすぐに直せるから」
そう言って魔力でグラスの破片を集めて元通りにくっつける。
くっつけるというか……本当に元通り。
「はぁー……すごいね。ヒビも入っていない……こんなこともできるんだ」
ライオスは照れているのかそっぽを向いているけれど……私の手を握ったまま……ハァ……とため息をつく。
「……鳥かごに入れておきてぇ……」
……な……なんて? 私のことじゃないよね? サイズ的に無理だし……
ライオスは分かりやすく酔っ払うけれど言っていることがよくわからなくなる……きっと明日には覚えていないんだろうなぁ……
ライオスと私の繋いでいる手を見ながらツカツカと無表情でこちらに来るグレン。
「グレン?」
目の前に来たグレンが手を振り上げて……
「いってぇっ」
チョップで私とライオスの手を離す。
ちなみにグレンのチョップはライオスの手にだけ当たった……器用。
「ハル……」
あれ? グレンの顔が少し赤い。
「グレン、酔っているの?」
ううん、と首を振るとふらつくグレン。
フフッ、酔っている人って酔っていないっていうよね。
グレンに肩を貸してソファーに座らせる。
お水を持ってくるね、と言いグレンの腕を私の肩から外そうとするとそのまま抱き寄せられる。
「ハル、冷たくて気持ちいい……」
そう言って私の首元に顔を埋める……くすぐったい。
たぶん私が冷たいんじゃなくてグレンが熱いんだよ。
「はい」
ロゼッタが水の入ったコップを差し出してくる。
「あ、ありがとう、ロゼッタ。ほら、グレンお水だよ」
うん、と頷きコップを受けとるグレン。
グレンがお水を飲んでいる間にロゼッタに腕を引かれる。
勢いで立ち上がりロゼッタに引かれるがままついていくと、ラグの上にペタリと座り込みリボンを差し出すロゼッタ。
「ほどけたから……」
結び直したらいいのかな。
リボンを受け取りロゼッタの髪に触れる。
「ロゼッタの髪は綺麗だね。今度街に行ったらもっといいリボンを選んでくるよ」
別に……とロゼッタの眉間にシワが寄る。
「……ハルが選んでくれたものならなんでもいい」
……説明しよう。
一見怒っているように見えて実は照れているだけという毎度お馴染み、ロゼッタの可愛いところが出ました。
「はい、できたよ」
リボンを結び終えてロゼッタの頭を撫でる。
「ありがとう、ハル」
…………ロゼッタが振り返り私を見上げて笑っている……
自然な笑顔が可愛い……子供みたいに素直で可愛い……
「可愛いっ!」
えーー!? ロゼッタは酔うと素直になるのかなぁ、可愛いなぁ! ここぞとばかりに撫でまくる。
クスクスと笑って可愛いロゼッタに夢中になっていると……シュルッ……と首に何かが巻き付く。
「ハル……私もリボンがほどけちゃった」
ミア……ちょっ……絞まってる絞まってるっ……
首に巻き付いたままのリボンを引き寄せて私を隣に座らせるミア。
そして抱きついてくる……この体勢ではリボンを結んであげられないけれど……
ミアは普段から甘える時にくっついてくることが多いけれどお酒を飲むと更に……母親を一人占めしたい子供のような……独占欲みたいなものがでてくるのかな。
私に抱きついているミアの頭を撫でると満足そうに微笑む。本当に子供みたいで可愛い。
首からリボンを取ってミアの前に座る。
結構お酒を飲んでいたけれど大丈夫かな。
ニコニコしているけれど少し眠そうだし……そう思っているとロゼッタがお水を持ってきてくれてミアに飲ませてくれた。
ロゼッタって一見気位が高そうだけれど凄く気が利く。
痒いところに手が届くというのか……周りをよく見ているんだろうな。
同じ職場にいたら物凄く仕事がはかどりそう。
ロゼッタとミアが微笑み合っているのを見ながらリボンを結び終えると身体がフワリと浮く。
驚いているうちにルウの隣に着地する。
「ハル、みんなの世話ばかりしていないでハルも飲もう」
とルウにグラスを渡された。
「ありがとう、ルウ」
グラスを受け取り一口飲む。
甘いのに爽やかで飲みやすいお酒。
ルウも私と話しながら一杯二杯と空けていくから私もつられて飲んでしまう。
お水を飲もうと立ち上がるとふらついてまた座ってしまった。
そんなにお酒には弱くないはずなのに……いつもならこれくらいでは酔わないからこの世界のお酒が強めなのかな。
なんだか楽しくなってくる。
「フフフッ……」
ハル? と私の顔を覗き込むルウの顔を両手で挟む。
本当にかっこよくなっちゃって……こんなに素敵な上に優しいし頼りになるし……側にいると安心する……でも時々私と一緒にいるせいで無理をしていないか心配になるなぁ……
「ハル……大丈夫だから……僕は無理なんてしていない。もっとハルに頼って欲しいし……ずっと側にいたいと思っている……」
少し頬を染めてそう言うルウ……
「あれ? 私声に出していた?」
それがおかしくてまた笑ってしまったけれど
「ありがとう、ルウ」
ルウが言ってくれたことは覚えている。
ルウを抱き締めてもう一度ありがとう、という。
「ハル、そろそろ家に戻ろう」
少し頬を染め、そう言って私を抱き上げるルウの体温が温かくて眠くなる……
うん……とルウに身体を預けて目を閉じる。
ルウが歩き出すとその心地よさに意識が沈み始める……
「みんな、酔った振りも程々に……」
ルウが振り返ってみんなに何か言ったような気がしたけれど……
翌朝、私はお酒を飲んでからの記憶が曖昧で……
飲むのは自宅だけにするようにとルウから注意を受けてしまった……
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