七人の魔族と森の小さな家

サイカ

文字の大きさ
60 / 87

60 反応

しおりを挟む


 エイダンの家に来てから数日……


よく眠れている私とは対照的に何故か疲れが溜まっていく様子のエイダン……

「兄上……」

エリオットも心配そうにしながらも渋々仕事へ行く日々……

「エイダン、やっぱり私部屋を移動するよ。せっかく眠れるようになったと言っていたのにこれじゃぁ……」

そう提案してみたけれどもエイダンは首をふり

「部屋は変えないよ。それよりもハルにお願いがあるのだが……」

エイダンのお願いを快諾したその日の夜……

帰ってきたエリオットと三人で夕食をとった後、エイダンに先にお風呂に入ってもらう。

私が後片付けを始めるとエリオットが手伝ってくれる。

私の仕事だから手伝わなくていいと言っているのだけれど、作ってもらっているからと……意外と律儀だな……

少し仕事を片付けるから先に風呂に入っていいと言い部屋へ戻るエリオットを見送りながらそんな時も手伝ってくれるなんて……と、こんなことがあるから好感度が上がったり下がったりでいまいち掴み所がないというかなんというか……

エイダンがお風呂から出てきたのでお茶をいれてから私もお風呂を済ませる。

エリオットにお風呂をどうぞ、と声を掛けてから髪を乾かして、私のお茶とエイダンのお茶もいれ直して二人でソファーに座る。

これがエイダンのお願い……

寝る前にお茶を飲みながら二人でゆっくり過ごす。

「最近はどんな本を読んでいるの?」

「好きな食べ物は?」

「小さい頃は兄弟でどんな遊びをしたの?」

こんな他愛のない会話をしながらしばらくすると……

エイダンが私に寄りかかりそのままコテンと……膝枕状態になってしまった。

エイダンはスヤスヤと眠っている……

せっかく眠れているエイダンを起こしたくはないけれどこのままの体勢で朝までは……

どうしよう……と思っているとエリオットがお風呂から出てきた。

「エリオット……」

エイダンを起こさないように小さな声で呼ぶ。
クッションを取ってもらうか一階の客室のベッドに運んでもらおうと思った。

「なんだよ」

呼びつけたことが気に入らない様子……ごめんって……
でもほら、

「眠れたの……」

とそっと話すけれどその体勢を見て目を見開き大きな声で怒り出しそうなエリオットにシィーッ……とする。

「兄上……良かった……」

うん、そうだね……
そうなんだけれどもどうしよう……と困り顔の私を見てエリオットがため息をつく。

そして私をじっと見つめて…………見つめ……なに?

突然、膝の上が軽くなる。
エイダンの身体か浮かびエリオットが二階へ連れていく。

エリオット……魔法が使えるんだ……

エイダンは弟は人間だと言っていたけれど、エリオットにも魔族の血が流れているのか。

……でもどうしてエイダンは知らないのだろう。

階段を下りてきたエリオットに

「魔法が使えるんだね」

目が金色に変わっている……

「お前、魔族の知り合いがいるだろう」

ど……どうして……

「…………」

「突然目の前で魔法を使われてもたいして驚かなかったし、この目を見ても怯えていない。兄上は自分のことを話したか?」

コクリ、と頷く。
少し寂しそうに笑いそうか、と言い

「今は何も聞かないでおいてやる。その代わり、僕のことを兄上にも誰にも言うな、絶対に」

と睨まれて……コクリと頷く。
私を睨んでから寝る、と言い部屋へ戻っていくエリオット。

あんなに兄好きなのに秘密にしているのはなぜだろう……

考えたところでこちらのこともあるから詮索は出来ないのだけれど…………



ーー エリオット ーー


「しばらくの間、兄上のところで世話になります」

「なんだ……なんだと?」

父上がこちらを睨み母上は……信じられないものをみるような視線を向ける。

「何を言っているのかわかっているのか?」

「エリオット、貴方は貴方に相応しい方々と交流していればいいのよ」

この人達は変わらないな……
二人にニコリと微笑む。

「わかっていますよ、母上」

「いや、お前はわかっていない。なぜあんな半端者のところへなど行く」

……半端者ね……聞き慣れているはずなのに思わず笑顔がひきつりそうになる。

「父上、魔族が国をつくったのですよ。情報が必要だとは思いませんか」

ピクリ、と父上の眉が動く。

「その為に兄を利用するということか」

プライドの高い貴族ほど情報に踊らされる。
確実な情報を持っていれば優位に立てる。

だから僕は知っている、こう言えばこの人達が僕の欲しい答えを言うことを……

「兄上の家は魔族の国の中にあります。未だ謎に包まれている魔王のことも、いち早く情報が得られるかもしれません」

まぁ! と母上が嬉しそうに目を見開く。

「この前のお茶会で王妃様が魔王様について知りたがっていると噂になっていたわ」

まぁ、確かに、と父上も頷き

「あんな奴でもそれくらいの役には立つか。これ以上バーデット公爵家に大きな顔をされては堪らないからな」

腹違いとはいえ王弟を任されているバーデット公爵家は陛下にも信頼されている。

これまで遠ざけられていた王弟が最近では城にいることが多い。だから余計に焦っているのだろう。

「だが、半端者とはいえ魔族の血が流れているのだからくれぐれも気を付けて、上手く使うのだぞ」

「そうよ、貴方に何かあったら私……」

大丈夫です、上手くやりますよ、と微笑む。
可哀想に……この二人が憐れでしかたがない……

思わず笑いだしそうになるのを堪えて部屋を出る。

兄様よりも僕の方が魔族らしいと知ったらどんな顔をするのだろう。

魔力も性質も優しい兄様よりも僕の方がより魔族らしいと知ったら……

兄様も僕も人間として生きてきたけれど、ここにきて選択肢が増えた。

魔族の国……

そろそろ両親を殺して兄様とこの家で暮らすつもりだったけれどその必要もなくなったか?

兄様とならどこでだってどんなところでだって生きていける。

気掛かりなのは……やはり魔族……
群れることのない魔族を惹き付ける魔王の存在か……

それから最近兄様の周りに現れたハルとかいう女。

回りくどく調べたところで彼女の情報は少ない。
パーティーで直接探ろうとしたが……

彼女は何かに守られている。

ハルは……人間なのか?
僕達と同じように魔族の血が……?

いや、そんな風には思えない。

何かに守られていることにも気が付いていないようだったからやはりハルの近くに魔族が……

だが……なぜわざわざそんなことを……
さっさと閉じ込めてしまえばいいのに。

パーティーで踊っていたあの魔族の男か?
親しそうな感じでもなかったしハルの後にも何人かと踊っていた。

だとすると他にいるのか……それともハルも気づいていないハルの不思議な力か……

バカバカしい……

彼女はなんというか……考えなしで計算高さがない。

思っていることもすぐ顔に出るから僕のことをどう思っているのかもわかりやすい。

正直、同族だとは思いたくない。

間抜けだし……チビだし……生意気だし……可愛げがない。
けれども兄様が……兄様は気に入っているようだった。

冬の間ハルが兄様の家に滞在すると聞いて急いで僕も段取りを組んで兄様の家へ向かうと……

本当にいた。

兄様の命の恩人だと聞いたがこんな得たいの知れない女と兄様を二人きりにするわけにはいかない。

僕が兄様を守らないと。

一緒に生活をしてみるとハルは魔道具があるのに使わないことがあったり時間を掛けて家事をしたりと変わったところがあった。

兄様もハルの隣で楽しそうに食事をしたり手伝いをしたり……これまで見たこともない表情をみて思わず

「夫婦みたいだな……」

そう呟いてしまった。
しまった……と思ったが兄様の嬉しそうな様子を見て僕も嬉しくなってしまった。

ハルは……モグモグと一人食事を続けている……コイツ……
兄様のこの表情を見て何も思わないのか?
目は見えているのか?


ハルが来てからだから間違いなくハルのせいなのだが……
兄様がなぜかまた眠れなくなってしまい数日がたったある夜、

「エリオット……」

風呂上がりにソファーに座っているハルに呼ばれた。
近づいてみるとハルの太ももの上に兄様の頭が……

静かにするよう言われ兄様が眠っていることに気が付く。

よかった……気持ち良さそうに眠っている。
眠っている場所が気にいらないが……

困った様子のハルを見て考える。

僕もハルも兄様を起こしたくはない。
けれども移動はさせたい。

ハルはどういう反応をするだろ。

兄様の身体を優しく持ち上げる。
ハルは一瞬……驚いたようだったが……一瞬だった。

兄様をベッドに寝かせそっと頬に触れる。

魔族がなぜ群れないのか……何となくわかる気がする。

兄様……父上も母上も僕に魔力があると知ったらどんな顔をするのだろうね。

落胆 怒り 恐怖 その全てかな。

兄様を家から追い出した両親は僕を大切に育てたのだと思う。

けれども、僕の大切なものを大切にはしてくれなかった。
その両親のせいで兄様と暮らせないのなら……

彼らは僕の邪魔でしかない。

僕の邪魔になるものは全て払い落とし、消してしまいたくなる……

でもそれも兄様が悲しむのなら僕には出来ないのかもしれない。

兄様の髪に触れ額に口付けをする。


さて……ハルをどうしようか……

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...