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しおりを挟む翌朝、少し量の増えた奥様の朝食を運ぶ。
奥様のお部屋へ行くと今日は旦那様もいる。
「おはようございます」
ご挨拶をすると
「おはよう、ノア。主人と会うのは初めてかしら」
「やぁ、会ったことはあるけれど挨拶はまだだね」
そう……あの時慌てていて挨拶もしていなかったのだ……
「まぁ、それではやはりノアのことだったのね」
クスクスと笑う奥様……と、とりあえずご挨拶をしよう。
「旦那様、あの時はご挨拶もせずに失礼しました。ノアと申します」
「私はフレディだ、よろしく。あの時は……フフッ、驚いたよ」
どうやら柵の向こう側に動物たちが群がっていて何かと思って近づいてみると人の足だけが見えたらしい。
動物たちが旦那様に驚いて去ってしまった後には横たわる私が……死んで……動物たちに食べられていたのかと思っていると起き上がり柵を超えてあっという間にいなくなった……と。
お屋敷のメイド服を着ていたからすぐに見つかるとは思っていたらしいけれど……
「そうか、君だったか。オリビア、きっと会えると言っただろう?」
そう言って微笑み合うお二人。
……なるほど、あの時ドアの前で立ち聞き……コホン、聞こえてきたお二人の会話は私の事でしたか。
それにしても旦那様……雰囲気が柔らかくなったような気がする。
ノックが聞こえてマイロ様とルシェナ様がお部屋にやってきた。
「おはようございます、お父様、お母様」
お二人がそれぞれ挨拶をする。
少しだけ……マイロ様の元気がないような……
「お母様、僕……昨日はトーカにお会いできなかった……嫌われてしまったのでしょうか……」
チラリ……と、マイロ様……なぜこっちを見る。
昨日はマイロ様のお部屋に寄らなかったから……
「トーカとは?」
旦那様とルシェナ様が首をかしげる仕草がそっくりで微笑ましい。
「女神様のお名前よ」
奥様が答える。
「女神様って……マイロが言っていた黒髪黒目の……?」
ルシェナ様がまたこの子は……と心配そうにマイロ様を見る。
「あぁ、昨夜……私達もお会いしたのだよ。そうか……トーカ様と言うのか」
心配そうなルシェナ様を撫でながら旦那様が話す。
「オリビアを……お母様を治してくださったのだよ」
ルシェナ様が目を見開き旦那様を見つめる。
「本当に……? お母様はよくなったの……?」
あぁ、と旦那様が微笑み頷くとルシェナ様がポロポロと涙を溢す。本当ならまだまだ甘えたい年頃だもの。
奥様がいらっしゃい、とルシェナ様を抱き締めて
「心配をかけてごめんなさい……」
今日も食事を残さず頂くわ、と微笑む。
「私も女神様にお会いしてお礼を言いたいわ」
「僕も! また会いたい! また来てくれるかな……」
わ、私に言われてもなぁ……と、とぼけた顔を作る。
話をそらそうと奥様に
「体力がだいぶ落ちていると思いますのでいきなり立ち上がらずにまずはベッドの上で身体を動かしたりマッサージをしたりするのがいいと思います」
焦らずゆっくり……転んでケガをしてしまってはまたしばらくベッドから出られなくなってしまうからね。
「ありがとう、ノア。そうするわ。ルシェナが貴方を連れて来てくれてからなんだかいいことばかりのような気がするわね」
奥様がルシェナ様を撫でながらそう言うと
「僕もっ、僕もそう思います」
マイロ様も同意する。
エヘヘと照れ笑いをしているとルシェナ様がそうだわ、と
「ノア、明日リアム様とイアン様があなたを迎えにこちらにいらっしゃるそうよ」
……ダンストン伯爵家に帰れる……クルクスさん私を覚えてくれているかな……
「ノア、いなくなってしまうの?」
うっ! マイロ様そんな目で見つめないで……
「ルシェナ様には助けていただいて……お屋敷の皆様にもよくしていただきました」
ありがとうございます、と頭を下げる。
「ノア、嫌だよ……もっと一緒にいたいっ」
ギュゥッと抱きついてくるマイロ様……可愛い。
「ありがとうございます、そう言って頂けて嬉しいです」
しゃがんでマイロ様を撫でる。使用人がこんなことをしてもいいのかな……と思ったけれども皆さん何も言わずに微笑んでいる。
「ずいぶんと懐かれたのね」
フフフッと笑いながら奥様が
「私達も寂しいわ。でもねマイロ、ルシェナとリアム様は同じ年でお友達なのよ。きっとルシェナがお茶会にご招待すればリアム様と一緒にノアも来てくれるわ」
そうねぇ……と奥様が少し考えて
「ルシェナがリアム様と結婚するのもいいかもしれないわね」
そう奥様が言ったとたんルシェナ様の顔が真っ赤に……
そのまんざらでもなさそうな顔を見て焦る旦那様……
「ル、ルシェナにはまだ早いのではないかなぁっそういう話は」
そうかしら? とクスクスと笑う奥様。
「それでは僕はトーカと結婚しますっ」
ハイッと手を上げて宣言するマイロ様……可愛すぎかっ
さすがに結婚は無理だけれど……けれども人生は何が起こるかわからない。もしかしたら私の子供とマイロ様が結婚するかもしれない。
子供…………私の……? 自分で思ったことに戸惑い思わずお腹に手を当てる……そんな私の様子を見てルシェナ様が……
「ノア? お腹が空いたの?」
あ、違います。
それからマイロ様が私の耳元で
「今夜、女神様に会えるかな……」
と囁く。だからなぜ私に聞く……可愛いけれどもっ
「きっと会えますよ」
その日の夜…………
お部屋へ行くとマイロ様は起きて待っていた。
「こんばんは、トーカ」
ニコリと微笑むマイロ様にこんばんは、と挨拶を返す。
「トーカ、僕決めました。公爵家も継ぐけれど医学の勉強もします。人の役に立つような……人を助けられるような立派な大人になりますっ」
だから……と片ひざをついて小さな花束を差し出すマイロ様。
「僕と結婚してくださいっ!」
可愛い……真剣に一生懸命に思いを伝えてくれるマイロ様に思わずキュンッとしてしまう。
「マイロはきっと……素敵な男性になりますね。これからたくさんの出会いもあるでしょう」
だから、
「その言葉はまだ取っておいてください。今は……」
マイロ様から花束を受け取り
「マイロの大切な気持ち、ちゃんと受けとめました」
ありがとう、と微笑むとマイロ様は眉を下げて一瞬泣きそうになったけれどすぐに表情を引き締めて
「僕、頑張りますっ。勉強も公爵家の仕事も。胸を張って大切な人に思いを伝えられるように」
何度でも……と小さな声が聞こえた気がした。
それから二人で奥様のお部屋へ向かうと、旦那様とルシェナ様も奥様の側で待っていてくれた。
「はじめまして、女神様。お母様とマイロを助けてくださりありがとうございます」
そうだった、この姿でルシェナ様と会うのは初めてだった。
初めまして、と挨拶をしてから
「最後にもう一度だけ……」
ヒール……フワリ、と光の粒がキラキラと舞う。
皆さん驚いているけれど怖がってはいない。
「ありがとう……ございます」
旦那様が奥様の手を握りながらお礼を言う。
「トーカ、また会えるよね……?」
マイロ様が私を見つめる。
私はコクリ、と頷き微笑む。
公爵、という肩書きは影響力がある。
ルルーカ公爵家から何かがいい方向に動いていけばいいな……私も見守っていこうと思う…………
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