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しおりを挟むイアン様とリアム様がルルーカ侯爵家にやってきた。
私の迎えに来てくれたのだけれども。
ハリスさんとセドリックさんも一緒だ。
リアム様が私の姿をみて目を見開く……そうだった、メイド姿では初めましてだった。
「あ……あの……リアム様……」
「………………」
何か言ってください……
「ノア……すまない……」
いえ、リアム様のせいではないし……私全く抵抗がないので……この格好。
それに、言ってしまえばカイル様のせいだから。
ハリスさん、セドリックさん……こっちのメイド服もいいな、とか感想を言わないでください。
「ルシェナにも無理をさせてしまって……申し訳ない」
私……リアム様に謝らせてばかりだ……
「そんな……リアム様、私はお力になれて嬉しいです」
ルシェナ様が頬を染める。
「ルシェナ嬢の演技は相当上手かったようだな、カイルが悔しがっていたよ」
面白そうに笑うイアン様。
「しばらくからかってやるのもいいかもしれないな、ルシェナ嬢に対する誤解も解かなくてはいけないしな」
おや、カイル様はしばらくイアン様からかまってもらえそう。
「さぁ、こちらでお茶にしましょう。ノアは荷物をまとめて着替えてきてね」
着替えも用意してくれたらしい。
部屋に行くと女の子らしい可愛いワンピースがかけてあった。ルシェナ様が選んでくれたのかな。
「三毛猫さん、ダンストン伯爵家に戻るよ。久しぶりにクルクスさんに会えるね」
そう言って撫でると三毛猫さんも嬉しそうにスリスリしてくる。
荷物を持って皆さんの元へ行く前に奥様に挨拶をしに行く。
ノックをして奥様のお部屋へ入る。
「ノア、いろいろとありがとう」
奥様の体調が回復してきているからか不思議とお部屋の雰囲気も明るくなったような気がする。
「マイロはおかしくなんてなっていなかったわ。私達家族みんなで女神様にお会いしたのよ」
私以外誰もいないけれど内緒話をするようにこっそり教えてくれる奥様。
「動けるようになったらやりたいことがたくさんあるの、女神様は見ていてくださるわよね」
……なぜ私に言うのか……
「奥様、本当に良かったです。女神様もきっと見ていてくれると思います」
嬉しそうに微笑む奥様にお世話になりました、ありがとうございました、とお礼をいいお部屋を後にする。
それから今度は使用人の皆さんの元へ挨拶をしに行く。
アリアは
「ダンストン伯爵家に戻っても頑張ってね、奥様が順調に回復されるように私達も頑張るわ」
と微笑み、カミラメイド長は
「奥様が回復されたらきっとあちこちに行きたがるでしょうからこれから忙しくなりますよ」
やれやれと嬉しそうに笑う。
皆さんに挨拶をしてルシェナ様の元へ向かうとマイロ様と旦那様もいる。
「ノアーッ」
マイロ様が駆け寄ってきて抱きつく。
グフッ……結構な勢いだ……でも私は熊さん親子のぶつかり稽古で鍛えられているからね。しっかりと抱きとめる。
「旦那様、マイロ様お世話になりました」
頭を下げて、それから……
「ルシェナ様、クレメン侯爵家では無理をさせてしまい申し訳ありませんでした」
「ノア……言ったでしょう? 私は演劇が大好きなのよ。緊張はしたけれど楽しかったわ」
フフフッと思い出し笑いをするルシェナ様。
確かに私も戸惑うくらい別人になっていた……
「ルシェナ嬢は演劇がお好きなのか……今回のお礼にチケットを贈らせていただくよ。よければリアムにエスコートをさせよう」
イアン様の申し出にルシェナ様の頬が染まる。
「そ、そんなっ……私も楽しかったですし、元々ノアにはお礼をしたいと思っていましたし……その……」
ルシェナ様が言葉につまりうつむく……
「ルシェナ、僕も演劇は好きだ。エスコートさせてくれないか」
リアム様が微笑みルシェナ様はみるみる赤く……
「んんっ……ルシェナ、無理はしなく」
「リアム様、お願いいたします」
ルシェナ様可愛い……旦那様撃沈……
「それでは、そろそろ失礼しようか」
イアン様が言い、馬車へ向かう。
お見送りに来てくれた皆さんにお別れを言い馬車に乗り込む。
こうしてルルーカ公爵家での短いメイド生活も終わり、私はようやくダンストン伯爵家に帰ってくることができた。
イアン様とリアム様に改めて謝ってお礼を言うと、疲れただろうから今日は休んでいいと言われた。
ハリスさんとセドリックさんにもお礼を言うと、とりあえず部屋に荷物を置いて、今日はゆっくり休めと言われた。
すぐにクルクスさんに会いに行こうかと思っていたけれど、着替えもしないといけないしとりあえず寮の部屋に向かう。
なんかすごく久しぶりな気がする。
三毛猫さんは足元をトコトコと付いてきてくれている。
皆さん仕事中だから誰もいない寮の中は静かだ。
三毛猫さんと一緒に自分の部屋に入ると何だか急に眠くなる。
思っていたよりも疲れているみたい。
ベッドに横になると三毛猫さんが顔の辺りにモフッと……
クスクスと笑いながら三毛猫さんを撫でるとフワフワと温かさが気持ちよくて目を閉じて……そのまま眠ってしまった。
外が暗くなり始めた頃、私は目を覚ました。
喉が渇いていることに気が付いて三毛猫さんを撫でてからそっとベッドを出る。
一階にはまだ誰もいないけれどそろそろみんな帰ってくる頃かな? お茶を飲もうとお湯を沸かす。
お茶をいれているとトマスとテオが帰ってきた。
「おかえりなさい。お茶飲む?」
そう聞くと一瞬固まる二人。
「?」
首をかしげる私にスタスタとトマスが近づいてきて
「ただいま、可愛いお嬢さん。こんなところにいるのを他の人に見られたら大変だから俺の部屋にいこう」
ちょっと何言ってるの……?
「ふざけてるの? もぉ、飲むの? 飲まないの?」
テオが
「飲む」
と一言。トマスは
「か、可愛い……」
と一言。もう三人分のお茶をいれるよ。
お茶をいれている間もトマスは私の後ろをウロウロと……
落ち着かない様子。
「はい、どうぞ」
と二人の前にもお茶を出すとテオが
「ありがとう、それから……おかえり」
そう言ってくれた。
「うん、ただいま」
と微笑むとトマスが驚いて
「テオの知り合いなのか!? こんな可愛いコと!?」
まだふざけてる……
「トマス、私の事を忘れたの? ノアだよ」
「ノアっていうのかぁ、可愛いね…………ってノア!? うちのノア!?」
うちのって……なぜかちょっとテレる……エヘヘ。
うおぉぉぉーーっと頭を抱えるトマス……騒がしいな。
「ノアっこのっ……紛らわしい格好をするなよ! チクショウッ……可愛いなぁっ」
怒るか褒めるかどちらかにして欲しい……それに紛らわしい格好って……ハッ!……
ここでようやく気が付いた……着替えていなかった……髪も胸もそのままだ……数週間こっちの格好が当たり前過ぎて……
いやっまだ大丈夫! 二人にしか見られていないからっ……
ドアが開き他のみんなが帰ってきて……
「俺、先に風呂に入っていいかー?」
「おー、後で俺も……」
「!」「!」「!」「!」「!」・・・・・・
あ……気付かれた…………
うおぉぉぉーーっと雄叫びをあげるみんな……
「お、おいトマスっ! 誰だよその可愛いコ!」
ジリジリと近づいてくるみんなを憐れみの目で見つめるトマス……ちょっと失礼じゃないかな……
私の事を見て、アルとイーサンだけはどこかでみたような? と首をかしげている。
「ノアだよ」
ハァ、とため息をつきながらみんなに教えるトマス……
「そっかぁ、ノアちゃんっていうのかぁ。可愛いね、付き合っている人はいる?」
「もう暗くなるし今夜は俺の部屋に泊まりなよ」
「俺の部屋に美味しいお菓子があるから一緒に食べようよ」
もうやったんだよトマスとこのくだり……私もだんだんトマスと同じような憐れみの目になる……なぜみんな部屋に連れ込もうとする……
そんな中ハリスさんとセドリックさんも帰ってきてなんの騒ぎだ、と言う…………
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