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【PW】AD199909《箱庭の狂騒》
かつての災厄
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かつての栄華は、どこにも見当たらない。
それは、テレビで見る、どこかの国の戦場風景と何も変わらなかった。
ただ、その規模が余りにも広大だった。
千代田区周辺の高層ビル群は、もぬけの殻の廃墟で夜になるとそれは大きな墓石にも見えた。
暁達の帰国は、本来の羽田空港に向かう予定だったが戦場に近く、攻撃の恐れもあり、それよりも安全な埼玉の朝霞駐屯地へと変更された。
そこで聞かされたのは、余りにも予想外な内容だった。
アインによる決起より以前に首都直下型の地震が起きたと言うのだ。
それに伴い、港区、千代田区等の首都圏もダメージをくらいそれの復興準備をしようとした矢先にアインによる武装蜂起が起きたのだという。
最初の拠点は、地震で同じ様に津波被害にあった神奈川県の横浜だったらしい。
港に着いた大型船から武装した兵士達が降りてきて、避難民達にこの場を立ち退くか、それとも我々の味方になるかの2択を迫ったらしい。
そして、そのどちらも選ばなかった者は、殺され、見せしめとして晒された。
地震の被害で日本政府がアインに対して対応とれたのは、彼等の侵略行為から1週間後の事だった。
災害後の情報の錯綜と混乱により対応が遅れたのだ。
そして、その情報は帰国する暁達に対してもスッポリと抜け落ちるというお粗末な状態も生んでしまった。
武装蜂起から1ヶ月経ち、戦線が分けられた事による、多少の落ち着きを見せつつもあるがそれもギリギリのラインとも言えた。
警察官、消防隊員、自衛官、いずれも過酷な訓練を受けてきている彼等だからこそ、未だに気を保っているのだろうが、その顔色には明らかに疲労の影が見え隠れしていた。
「これだとなかなかヤバいんでない?」
ハルは、朝霞駐屯地内の様子を眺めながら呟き、暁や縁は、何も答えずにただ肩を竦めるだけだった。
暁達は、ザルビアからの帰国後、検疫等の為に駐屯地内での待機が命じられ1週間が経過していた。
家族や恋人、友人の安否は、無事を知りつつも会えない状況に加えて駐屯地内の殺伐とした雰囲気もまた日に日に深くなっていく。
戦況が今どうなっているのか情報の共有は対策本部でしか行われておらず末端部隊である暁達にその情報が降りてくる事は、なかった為にネットやテレビ等の流れる情報を確かめる事しか出来なかった。
それから数時間後、漸く暁達にも命令が下る事となる。
任務は、戦線付近である文京区にある都立白秋医大の周囲の安全確保と救助ラインの確保だった。
横浜から勢力を伸ばしているアインは、大田区、港区から北上して今は、千代田区の東京駅付近へと迫っている状況だった。
都立白秋医大は、神田川沿いにあり、隔てた向こう側は、戦地になる千代田区の末端になる、本来ならば入院患者などは、退避させている筈だったが震災の為に後手に周り今も多くの患者が運び込まれる程の野戦病院とかしていた。
暁達が到着した際も多くの一般市民達が病院の中に居た。
それぞれが怪我や病気によって身動きが取れず、病院内で息を潜める様に過ごしていた。
期間は、1ヶ月、暁達はまず手始めに別の隊と共に埼玉にある病院へと迎えるルートの経路と安全を確保する為に周囲の安全確保へと動いた。
実際は安全圏内である文京区だったが予想に反してアインの斥候達は、周辺に待機していた。
人数は、20名程と少ないながらもその誰もが接続者であり、周辺の一般市民や死霊達を操り、監視していたのだ。
接続者一人で一般兵の50名分の仕事をこなすと言われていたがその接続者達は、その言葉に違わない仕事をこなしていた。
しかし、こちらも暁、縁、煌佑、そして晴人の最も深奥に近づいた接続者達の揃い踏みだったのもあり、2週間も過ぎる頃には、殆どの接続者を捕獲または、討伐していた。
だからこそ、見落としてもいたのだ。何故彼等がこんな場所に20名の接続者達を配置していたのかを。
ハルもそれを後々になり後悔をしていた。
もっと早くに気づくべきだったと。
「確か、3週間目になって黒革の仮面、マルクトが目撃されたんだっけな」
暁が流れてくる情報を口にするとハルは、苦笑ながら頷いた。
「そして、それと同時に誠が白秋病院に入院されている事も知りました。それも昏睡状態で、アイツの体には、マルクトの蔦が絡みつき、奴が接触した事がわかりました」
「だから、お前はマルクトが誠を殺そうとしているとわかったのか?」
ハルは、その言葉に首を横に振った。
「その逆です、俺はマルクトが次に誠の体を狙っていると思ってました、だから眠りにつかせてその魂を殺そうと思っていたんです」
ハルのその答えに、暁は何処かでだからかと納得しまった。
何故自分がそう思うのか、それは暁自身もわからなかったがそれを埋める様に次の記憶が頭の中で蘇った。
白秋病院の任務の際にマルクトが近くに居ると知ったハルは、病院の警護に付かずマルクトを探し回る事に務めていた。
しかし、ハルの努力虚しくマルクトは、その影すら踏ませる事は無かった。
そんなある日、マルクトの姿が東京駅方面で目撃されたと知り、ハルはその現場に急行した。
それが罠だとも知らずに、それは暁達も同じだった。
一人で奔走するハルを心配だったのは勿論だが中東で見たマルクトの力に対しても大きな危機感を持っていた。
それが全てに裏目に出たのだ。
「俺が気づけたのは、白秋病院が爆撃されて火の海に沈む時でした…」
ハルは、そう言いながら苦笑いを零した。
「誠は、殺されずにいただけだった。マルクトの中に残ったシンが最後に抵抗して眠りにつかせる程度に済ませていた、そしてその次のタイミングで俺達が警護任務に着いた…でもそれすらも俺の暴走で無駄にした…」
「それは、違う」
自らを嘲笑するハルに暁は、キッパリと答えた。
「本当なら俺がそれらを止める立場にいた、判断を間違えたのは、お前じゃなく俺だ…」
明らかな情報不足に判断ミス、そして部下の監督しきれていなかった事、それは全て部隊の長であった暁のミスだった。
そして、何よりもそこでハルは、大切な存在を失った。
そして、それをかつての暁は最後まで心の奥底で後悔として残っていた。
今それを感じると暁の奥底で何かが揺らりと動いた。
「謝ってすむわけでもない、だがあの場面でお前を失うワケにもいかなかったし、何よりも俺はアイツを許せなかった…だから全てを焼き尽くすと決めた…」
暁の口から漏れた言葉は、暁であり暁では、ない。
暁自身もそれを嫌という程に理解していた。
「何の因果か俺は、今ここに存在する事が出来ている、まだあの時の様には、いかないのもわかっている、だがこのまま見過ごしてしまったらあの時の二の舞だ、それは避けたい。ハル教えてくれ、今の俺に何が出来る?」
ハルは、そんな暁を見ながら首を横に振った。
「ダメだ、アンタはまた無茶する気か?」
「今お前が無茶してるのに、俺だけ何もするなんて俺が出来ると思ってんのか?」
その応えにハルは、口元を緩めた。
「止めても無駄っすよね」
「探偵の師匠は、俺だろ?」
暁の応えにハルは、終いには、声に出して笑っていた。
「それいいますか?そうっすよね、腐ってた俺の性根叩き直したのアンタでしたね」
ハルのその言葉にバーテンダーとして燻りながらも己の正義の為に拳を振るっていたハルの姿が暁の中に蘇った。
懐かしい話だ、警察を辞め、それでも彼女の死の真相を探りながら探偵と情報屋をやっていた時に1つの依頼で出会ったのがハルだった。
ハルは、バーテンダーの仕事柄か色んな会話を耳にしていた、それは企業の情報から犯罪者達の腐った自慢話まで、本当に色んな話を聞いていた。
その中でハルの中の何かがフト切れてしまった。
ほんの些細な出来事だった、腐った親がまだ小学高学年になった少女を借金のカタに売ろうとしていた話を聞いた時だった。
そこでハルは、封じていた武術を解いたのだ。
暁がハルの存在を知るのは、それよりも少し後の事だが、ハルはそれからも暴力の被害者になる話を聞けばそれを止める為に動いていた。
無論それを面白く思わないそれを生業に生きている奴等から目をつけられ、結果灰色ゾーンの暁にもハルを探す様に依頼が飛んできた。
それがハルと暁の本当の意味での出会いでもあった。
自暴自棄で冷めているわけでもなく、熱によって浮かされてるわけでもない。
その眼を見た時にコイツは化ける。
暁は、何処かでそれを直感していた。
だからこそ、周囲を騙してハルを助ける事を選んだ。
そしてハルは、化けた。それが良い方向なのかどうかは、わからない。
だが、嫌いじゃない。
それが暁の本心だった。
「ハル、もう一度聞く、俺は何が出来る?」
「アキさんがどうしたいかにもよります」
「これ以上、マルクトの思い通りにさせたくない」
暁がそう応えるとハルは、静かに黙りながらゆっくりと俯いた。
「それなら俺を信じてくれますか?賭けにもなりますけど」
ハルのその言葉に暁はゆっくりと頷いた。
「先輩!!!」
唐突に右耳に崇央の声に暁は、ハッと我に返った。
目の前には、先程の神秘的な世界は消え失せ、見窄らしい雑居ビルの一室に多くの人達がいる風景になっていた。
「隊長?」
マツが恐る恐る声を掛け、それに他の人達も暁をどこか心配する表情で見ていた。
暁は、ゆっくりと片手を上げて首をゆっくりと回した。
「本気かよ?」
暁のそんなフトした行動に崇央は呆れた声を上げ、マツもまた眉間にシワを寄せた。
流石に色んな場面を共にしてきた2人にはバレるものなのだと暁は、自分の単純な行動パターンに苦笑いが零れてしまった。
「そういう事、いいか?」
暁がそう聞くと崇央は、視線を藤と星見に向けた。
「黙らすことが出来るならどうぞ?」
崇央がそう言うと暁は、ゆっくりと2人に視線を向けるた一瞬だけ強く力の解放をイメージした。
次の瞬間、藤と星見、それにマツが暁から顔を顰めながら逸らした。
「あっつつ!!」
「なに!!?」
「ちょっ…隊長なんで私までなんですか!?!?」
「あっすまん、そこは、制御できなかった」
暁は、マツにそう謝罪しながら立ち上がると崇央に手を差し出した。
「この3人は、暫く何も見えない。今のウチなら問題無くいける」
暁のその言葉に崇央は、溜息を漏らしながら胸ポケットからリボルバー式の拳銃を取り出すと暁の手の上に置いた。
「力業にも程があるでしょそれ?」
そう言いながら崇央は、暁の胸ぐらを掴んだ。
「勿論生きて帰ってきますよね?」
そう真っ直ぐ見る眼に暁は口元をゆっくりと上げた。
「大量の始末書と梨花に言いたい事もあるからな」
その応えに崇央は、鼻をひとつ鳴らしながら手を離した。
放たれた暁は、直ぐさま、拳銃とハルの作った小太刀サイズの木刀をベルトに収めると一室を後にした。
それは、テレビで見る、どこかの国の戦場風景と何も変わらなかった。
ただ、その規模が余りにも広大だった。
千代田区周辺の高層ビル群は、もぬけの殻の廃墟で夜になるとそれは大きな墓石にも見えた。
暁達の帰国は、本来の羽田空港に向かう予定だったが戦場に近く、攻撃の恐れもあり、それよりも安全な埼玉の朝霞駐屯地へと変更された。
そこで聞かされたのは、余りにも予想外な内容だった。
アインによる決起より以前に首都直下型の地震が起きたと言うのだ。
それに伴い、港区、千代田区等の首都圏もダメージをくらいそれの復興準備をしようとした矢先にアインによる武装蜂起が起きたのだという。
最初の拠点は、地震で同じ様に津波被害にあった神奈川県の横浜だったらしい。
港に着いた大型船から武装した兵士達が降りてきて、避難民達にこの場を立ち退くか、それとも我々の味方になるかの2択を迫ったらしい。
そして、そのどちらも選ばなかった者は、殺され、見せしめとして晒された。
地震の被害で日本政府がアインに対して対応とれたのは、彼等の侵略行為から1週間後の事だった。
災害後の情報の錯綜と混乱により対応が遅れたのだ。
そして、その情報は帰国する暁達に対してもスッポリと抜け落ちるというお粗末な状態も生んでしまった。
武装蜂起から1ヶ月経ち、戦線が分けられた事による、多少の落ち着きを見せつつもあるがそれもギリギリのラインとも言えた。
警察官、消防隊員、自衛官、いずれも過酷な訓練を受けてきている彼等だからこそ、未だに気を保っているのだろうが、その顔色には明らかに疲労の影が見え隠れしていた。
「これだとなかなかヤバいんでない?」
ハルは、朝霞駐屯地内の様子を眺めながら呟き、暁や縁は、何も答えずにただ肩を竦めるだけだった。
暁達は、ザルビアからの帰国後、検疫等の為に駐屯地内での待機が命じられ1週間が経過していた。
家族や恋人、友人の安否は、無事を知りつつも会えない状況に加えて駐屯地内の殺伐とした雰囲気もまた日に日に深くなっていく。
戦況が今どうなっているのか情報の共有は対策本部でしか行われておらず末端部隊である暁達にその情報が降りてくる事は、なかった為にネットやテレビ等の流れる情報を確かめる事しか出来なかった。
それから数時間後、漸く暁達にも命令が下る事となる。
任務は、戦線付近である文京区にある都立白秋医大の周囲の安全確保と救助ラインの確保だった。
横浜から勢力を伸ばしているアインは、大田区、港区から北上して今は、千代田区の東京駅付近へと迫っている状況だった。
都立白秋医大は、神田川沿いにあり、隔てた向こう側は、戦地になる千代田区の末端になる、本来ならば入院患者などは、退避させている筈だったが震災の為に後手に周り今も多くの患者が運び込まれる程の野戦病院とかしていた。
暁達が到着した際も多くの一般市民達が病院の中に居た。
それぞれが怪我や病気によって身動きが取れず、病院内で息を潜める様に過ごしていた。
期間は、1ヶ月、暁達はまず手始めに別の隊と共に埼玉にある病院へと迎えるルートの経路と安全を確保する為に周囲の安全確保へと動いた。
実際は安全圏内である文京区だったが予想に反してアインの斥候達は、周辺に待機していた。
人数は、20名程と少ないながらもその誰もが接続者であり、周辺の一般市民や死霊達を操り、監視していたのだ。
接続者一人で一般兵の50名分の仕事をこなすと言われていたがその接続者達は、その言葉に違わない仕事をこなしていた。
しかし、こちらも暁、縁、煌佑、そして晴人の最も深奥に近づいた接続者達の揃い踏みだったのもあり、2週間も過ぎる頃には、殆どの接続者を捕獲または、討伐していた。
だからこそ、見落としてもいたのだ。何故彼等がこんな場所に20名の接続者達を配置していたのかを。
ハルもそれを後々になり後悔をしていた。
もっと早くに気づくべきだったと。
「確か、3週間目になって黒革の仮面、マルクトが目撃されたんだっけな」
暁が流れてくる情報を口にするとハルは、苦笑ながら頷いた。
「そして、それと同時に誠が白秋病院に入院されている事も知りました。それも昏睡状態で、アイツの体には、マルクトの蔦が絡みつき、奴が接触した事がわかりました」
「だから、お前はマルクトが誠を殺そうとしているとわかったのか?」
ハルは、その言葉に首を横に振った。
「その逆です、俺はマルクトが次に誠の体を狙っていると思ってました、だから眠りにつかせてその魂を殺そうと思っていたんです」
ハルのその答えに、暁は何処かでだからかと納得しまった。
何故自分がそう思うのか、それは暁自身もわからなかったがそれを埋める様に次の記憶が頭の中で蘇った。
白秋病院の任務の際にマルクトが近くに居ると知ったハルは、病院の警護に付かずマルクトを探し回る事に務めていた。
しかし、ハルの努力虚しくマルクトは、その影すら踏ませる事は無かった。
そんなある日、マルクトの姿が東京駅方面で目撃されたと知り、ハルはその現場に急行した。
それが罠だとも知らずに、それは暁達も同じだった。
一人で奔走するハルを心配だったのは勿論だが中東で見たマルクトの力に対しても大きな危機感を持っていた。
それが全てに裏目に出たのだ。
「俺が気づけたのは、白秋病院が爆撃されて火の海に沈む時でした…」
ハルは、そう言いながら苦笑いを零した。
「誠は、殺されずにいただけだった。マルクトの中に残ったシンが最後に抵抗して眠りにつかせる程度に済ませていた、そしてその次のタイミングで俺達が警護任務に着いた…でもそれすらも俺の暴走で無駄にした…」
「それは、違う」
自らを嘲笑するハルに暁は、キッパリと答えた。
「本当なら俺がそれらを止める立場にいた、判断を間違えたのは、お前じゃなく俺だ…」
明らかな情報不足に判断ミス、そして部下の監督しきれていなかった事、それは全て部隊の長であった暁のミスだった。
そして、何よりもそこでハルは、大切な存在を失った。
そして、それをかつての暁は最後まで心の奥底で後悔として残っていた。
今それを感じると暁の奥底で何かが揺らりと動いた。
「謝ってすむわけでもない、だがあの場面でお前を失うワケにもいかなかったし、何よりも俺はアイツを許せなかった…だから全てを焼き尽くすと決めた…」
暁の口から漏れた言葉は、暁であり暁では、ない。
暁自身もそれを嫌という程に理解していた。
「何の因果か俺は、今ここに存在する事が出来ている、まだあの時の様には、いかないのもわかっている、だがこのまま見過ごしてしまったらあの時の二の舞だ、それは避けたい。ハル教えてくれ、今の俺に何が出来る?」
ハルは、そんな暁を見ながら首を横に振った。
「ダメだ、アンタはまた無茶する気か?」
「今お前が無茶してるのに、俺だけ何もするなんて俺が出来ると思ってんのか?」
その応えにハルは、口元を緩めた。
「止めても無駄っすよね」
「探偵の師匠は、俺だろ?」
暁の応えにハルは、終いには、声に出して笑っていた。
「それいいますか?そうっすよね、腐ってた俺の性根叩き直したのアンタでしたね」
ハルのその言葉にバーテンダーとして燻りながらも己の正義の為に拳を振るっていたハルの姿が暁の中に蘇った。
懐かしい話だ、警察を辞め、それでも彼女の死の真相を探りながら探偵と情報屋をやっていた時に1つの依頼で出会ったのがハルだった。
ハルは、バーテンダーの仕事柄か色んな会話を耳にしていた、それは企業の情報から犯罪者達の腐った自慢話まで、本当に色んな話を聞いていた。
その中でハルの中の何かがフト切れてしまった。
ほんの些細な出来事だった、腐った親がまだ小学高学年になった少女を借金のカタに売ろうとしていた話を聞いた時だった。
そこでハルは、封じていた武術を解いたのだ。
暁がハルの存在を知るのは、それよりも少し後の事だが、ハルはそれからも暴力の被害者になる話を聞けばそれを止める為に動いていた。
無論それを面白く思わないそれを生業に生きている奴等から目をつけられ、結果灰色ゾーンの暁にもハルを探す様に依頼が飛んできた。
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自暴自棄で冷めているわけでもなく、熱によって浮かされてるわけでもない。
その眼を見た時にコイツは化ける。
暁は、何処かでそれを直感していた。
だからこそ、周囲を騙してハルを助ける事を選んだ。
そしてハルは、化けた。それが良い方向なのかどうかは、わからない。
だが、嫌いじゃない。
それが暁の本心だった。
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「アキさんがどうしたいかにもよります」
「これ以上、マルクトの思い通りにさせたくない」
暁がそう応えるとハルは、静かに黙りながらゆっくりと俯いた。
「それなら俺を信じてくれますか?賭けにもなりますけど」
ハルのその言葉に暁はゆっくりと頷いた。
「先輩!!!」
唐突に右耳に崇央の声に暁は、ハッと我に返った。
目の前には、先程の神秘的な世界は消え失せ、見窄らしい雑居ビルの一室に多くの人達がいる風景になっていた。
「隊長?」
マツが恐る恐る声を掛け、それに他の人達も暁をどこか心配する表情で見ていた。
暁は、ゆっくりと片手を上げて首をゆっくりと回した。
「本気かよ?」
暁のそんなフトした行動に崇央は呆れた声を上げ、マツもまた眉間にシワを寄せた。
流石に色んな場面を共にしてきた2人にはバレるものなのだと暁は、自分の単純な行動パターンに苦笑いが零れてしまった。
「そういう事、いいか?」
暁がそう聞くと崇央は、視線を藤と星見に向けた。
「黙らすことが出来るならどうぞ?」
崇央がそう言うと暁は、ゆっくりと2人に視線を向けるた一瞬だけ強く力の解放をイメージした。
次の瞬間、藤と星見、それにマツが暁から顔を顰めながら逸らした。
「あっつつ!!」
「なに!!?」
「ちょっ…隊長なんで私までなんですか!?!?」
「あっすまん、そこは、制御できなかった」
暁は、マツにそう謝罪しながら立ち上がると崇央に手を差し出した。
「この3人は、暫く何も見えない。今のウチなら問題無くいける」
暁のその言葉に崇央は、溜息を漏らしながら胸ポケットからリボルバー式の拳銃を取り出すと暁の手の上に置いた。
「力業にも程があるでしょそれ?」
そう言いながら崇央は、暁の胸ぐらを掴んだ。
「勿論生きて帰ってきますよね?」
そう真っ直ぐ見る眼に暁は口元をゆっくりと上げた。
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