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アシノ領主のお仕事
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そんな時だった、村に1人の男が籠に詰めた石炭を背負いながら現れたのは。
白髪にガッシリとした体格、肌は、白かったが顔などは、土埃まみれの凡そ綺麗とは、程遠い男だった。
昼間、ゼン達が用水路の計画を建てていると村の出入口に立ち、その男は呆然としていた。
その姿に気づいたウズロが
「バトカン!」
っと手を挙げながら声をかけ、白髪の男バドカンは、恥ずかしそうに会釈をしていた。
「久しいな、ウズロ…すまんが折り入って頼みたいことがある」
バトカンは、掠れる様な声でそう言いながら背負っていた籠を下ろすと真っ直ぐにウズロを見た。
「これで食料を分けて貰えないだろうか?少しでもいい…頼む…」
バドカンは、跪きながら頭を下げ、今にも地面擦り着けそうになるのを慌てたウズロがその肩を止めた。
「どうしたい?」
そんな騒ぎに気づき近づいたのは、木材を運んでいるガルダンだった。籠の中をそっと覗き石炭を見ると何度か頷くと顎髭をさすりながら。
「コイツは、いい石炭だ。いくらだい?」
そう声をかけたがバドガンは、戸惑いながらウズロを見て首を横に振った。
「金なんて要らないんだ、食糧をくれないか?村の食糧がもう底をつきそうなんだ。」
俯きながら地面を見つめたバドカンの態度にガルダンは、戸惑いながらフト、ゼンの方向を向いた。
ゼンと目と目が合い、顎でこっちに来る様に催促するがゼンは、ゼンで正直手が離せない状態だった。
用水路の経路を一つ間違えれば路の配置も変えなければならない、指示を間違える訳には、いかないのだ。
それにバドカンとウズロの会話は、しっかりとゼンにも届いているので正直気になってもいるのだ。
しかし、こちらもこちらでちゃんと伝えておかないと間違ってしまいそうなので気が抜けない。
とりあえず、ゼンはガルダンに対して平手を出し待ってくれと合図を出しながら指示を出した。
それから数分後、しばらく放っておいても大丈夫な状態になり、漸くガルダンの元へと向かうことが出来た。
「んで、食糧が欲しいって話だけど何があった?」
ゼンが近づき開口一番でそう聞くとバトカンは、戸惑いながらゼンの顔を見ていた。
あっそっか。
「すまん、自己紹介がまだだったな、私はこのアシノ領の新しい領主になった、ゼン・ヤマダルっと言うものだ、それでそなたはサザレ村の村長のバトカンで間違いないな?」
ゼンがそう自己紹介を終えるとバトカンは、頭を地面へ打ち付けるかの様な勢いで下げると微かに震えていた。
何が起きたのかわからないゼンは困惑しウズロを見ると、ウズロは苦笑いをしながらゼンを見て近づくと耳打ちをしてきた。
「以前の領主様に、汚い身なりで近づいて、こちらかの渡す食糧を止められたことがあって多分それを気にしているのだと思います…」
以前の領主、確かベルデン・バイモンだったか。
本当にろくな事をしない奴だ。会うことがあったら痛い思いをさせてやろうか?
ゼンは、そう思いながら呆れたため息をひとつ漏らすと頭を下げるバトカンの肩に触れた。
「以前の領主が嫌な事をしていた様だな。すまんな、だが頭を上げてくれないか?ちゃんと話をしたいんだ」
ゼンがそう言うとバトカンは、ゆっくりと頭を上げ、恐る恐るゼンの顔を見た。
「どうか…領主様…食糧を…お恵み下さい…」
「わかった。とりあえず話を聞かせてくれ」
ゼンは、そう言うとウズロ、ガルダンと共にバトカンを洋館に招き入れ、セリーナに冷たい茶を出す様に命令をした。
稽古場と応接間は村の女性と子供の住む共同スペースになっているのでそのまま3階の自室へ招くと椅子に座らせるとセリーナもまたタイミング冷たい紅茶を4つ運んできた。
カップに注がれた緋色の液体をマジマジと見ながらバトカンは、どうしたらいいのか分からない様子でゼンを見るとゼンは、お手本を見せる様に一口飲んだ。
それを見習い、バトカンも一口飲むと気に入ったのか一気に飲み干した。
「まぁ~」
そんなバトカンの姿に驚いた声を上げたセリーナだが余程喉が渇いていたとわかったのか直ぐに部屋を出ると今度は、おかわりが出来る様にポットごと持ってきた。
ゼンは、バトカンのカップに冷たい紅茶を注ぐとバトカンは、直ぐに飲み干し、少し落ち着いたのか小さなため息を漏らした。
「美味いか?」
「はい!とても!」
先程の掠れた声とは、違いハキハキとした声と目に光が差し込んでいた。
「それで、バトカンよ、少し話を聞かせて欲しいんだが」
「…はい…なんでございましょうか…?」
ゼンが本題へと切りこもうとするとバトカンもまたその瞳に緊張感を走らせる。
「今現在サザレ村は、食糧難だと言うがそれはこの村から食糧の受け渡しが止められてからの話か?」
そう聞くとバトカンは、首を小さく横に振った。
白髪にガッシリとした体格、肌は、白かったが顔などは、土埃まみれの凡そ綺麗とは、程遠い男だった。
昼間、ゼン達が用水路の計画を建てていると村の出入口に立ち、その男は呆然としていた。
その姿に気づいたウズロが
「バトカン!」
っと手を挙げながら声をかけ、白髪の男バドカンは、恥ずかしそうに会釈をしていた。
「久しいな、ウズロ…すまんが折り入って頼みたいことがある」
バトカンは、掠れる様な声でそう言いながら背負っていた籠を下ろすと真っ直ぐにウズロを見た。
「これで食料を分けて貰えないだろうか?少しでもいい…頼む…」
バドカンは、跪きながら頭を下げ、今にも地面擦り着けそうになるのを慌てたウズロがその肩を止めた。
「どうしたい?」
そんな騒ぎに気づき近づいたのは、木材を運んでいるガルダンだった。籠の中をそっと覗き石炭を見ると何度か頷くと顎髭をさすりながら。
「コイツは、いい石炭だ。いくらだい?」
そう声をかけたがバドガンは、戸惑いながらウズロを見て首を横に振った。
「金なんて要らないんだ、食糧をくれないか?村の食糧がもう底をつきそうなんだ。」
俯きながら地面を見つめたバドカンの態度にガルダンは、戸惑いながらフト、ゼンの方向を向いた。
ゼンと目と目が合い、顎でこっちに来る様に催促するがゼンは、ゼンで正直手が離せない状態だった。
用水路の経路を一つ間違えれば路の配置も変えなければならない、指示を間違える訳には、いかないのだ。
それにバドカンとウズロの会話は、しっかりとゼンにも届いているので正直気になってもいるのだ。
しかし、こちらもこちらでちゃんと伝えておかないと間違ってしまいそうなので気が抜けない。
とりあえず、ゼンはガルダンに対して平手を出し待ってくれと合図を出しながら指示を出した。
それから数分後、しばらく放っておいても大丈夫な状態になり、漸くガルダンの元へと向かうことが出来た。
「んで、食糧が欲しいって話だけど何があった?」
ゼンが近づき開口一番でそう聞くとバトカンは、戸惑いながらゼンの顔を見ていた。
あっそっか。
「すまん、自己紹介がまだだったな、私はこのアシノ領の新しい領主になった、ゼン・ヤマダルっと言うものだ、それでそなたはサザレ村の村長のバトカンで間違いないな?」
ゼンがそう自己紹介を終えるとバトカンは、頭を地面へ打ち付けるかの様な勢いで下げると微かに震えていた。
何が起きたのかわからないゼンは困惑しウズロを見ると、ウズロは苦笑いをしながらゼンを見て近づくと耳打ちをしてきた。
「以前の領主様に、汚い身なりで近づいて、こちらかの渡す食糧を止められたことがあって多分それを気にしているのだと思います…」
以前の領主、確かベルデン・バイモンだったか。
本当にろくな事をしない奴だ。会うことがあったら痛い思いをさせてやろうか?
ゼンは、そう思いながら呆れたため息をひとつ漏らすと頭を下げるバトカンの肩に触れた。
「以前の領主が嫌な事をしていた様だな。すまんな、だが頭を上げてくれないか?ちゃんと話をしたいんだ」
ゼンがそう言うとバトカンは、ゆっくりと頭を上げ、恐る恐るゼンの顔を見た。
「どうか…領主様…食糧を…お恵み下さい…」
「わかった。とりあえず話を聞かせてくれ」
ゼンは、そう言うとウズロ、ガルダンと共にバトカンを洋館に招き入れ、セリーナに冷たい茶を出す様に命令をした。
稽古場と応接間は村の女性と子供の住む共同スペースになっているのでそのまま3階の自室へ招くと椅子に座らせるとセリーナもまたタイミング冷たい紅茶を4つ運んできた。
カップに注がれた緋色の液体をマジマジと見ながらバトカンは、どうしたらいいのか分からない様子でゼンを見るとゼンは、お手本を見せる様に一口飲んだ。
それを見習い、バトカンも一口飲むと気に入ったのか一気に飲み干した。
「まぁ~」
そんなバトカンの姿に驚いた声を上げたセリーナだが余程喉が渇いていたとわかったのか直ぐに部屋を出ると今度は、おかわりが出来る様にポットごと持ってきた。
ゼンは、バトカンのカップに冷たい紅茶を注ぐとバトカンは、直ぐに飲み干し、少し落ち着いたのか小さなため息を漏らした。
「美味いか?」
「はい!とても!」
先程の掠れた声とは、違いハキハキとした声と目に光が差し込んでいた。
「それで、バトカンよ、少し話を聞かせて欲しいんだが」
「…はい…なんでございましょうか…?」
ゼンが本題へと切りこもうとするとバトカンもまたその瞳に緊張感を走らせる。
「今現在サザレ村は、食糧難だと言うがそれはこの村から食糧の受け渡しが止められてからの話か?」
そう聞くとバトカンは、首を小さく横に振った。
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