第18分隊イロリ《ワケあり分隊長と個性だらけの部隊員達》

山月 春舞《やまづき はるま》

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鉱洞整備

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 スリングは、ミツリの扱いに困っているというのが本音だった。
 ミツリは元々軍部の通信課からの参加でだが通信課は業務の性質上から軍部局でありながら通信局からの出向者も多く、ミツリもその出向者なのだ。
 本来なら首都であるユーランドで事務作業をしてるのであろう人材をカナイは、この分隊のメンバーに入れたのか正直そこだけは理解できなかった。

「分隊長って、男色なんですか?」

 イトの街中を歩いているとミツリからの唐突な問いにスリングの時が停まった。

「違うが…は?」

 事前の話も何もない唐突なミツリの一言にスリングは、困惑して訊き返すとミツリは、静かに頷いた。

「なら、ニーナさんと付き合ってるとか?」

「どれだけ頭が沸いたらそういう発想になる?」

「いや、消去法でもしかしてで訊いてみました」

「何の消去法だよ?」

 スリングのその問いにミツリは、そっと首を横に傾げた。

「私、通信局からの出向なんですが、軍部局に来てから多くの隊員からナンパされたり言い寄られたりしていたんです、だけど、この分隊に来てからそんな事が無くなったので、なんでだろうなって思ってまして」

「そこからどうして、俺が男色になったり、あの男色好きっと交際しているとかの発想になるんだよ?」

「こういうのって隊長とかの性格が反映されると思うんです、だから隊長がそういう趣味の方なのかと思いまして」

 大筋は、間違っていない、確かにそういう隊長の気質で隊の空気は決まるもんだ、しかい肝心な事がわかっていないとも言えた。

「他の隊員の好みまでは、知らんが、この隊にその手のタイプがいないのは俺の性格云々より姐さんの存在がデカ気がするが?」

 スリングのその応えにミツリは、何かを考える様に少しだけ視線を上に向けた。

「ダーナさんの奥さまですね、どうも分隊長と旧知の間柄だと感じますけど」

「教官が同じなんだ、以前は同じ訓練を受けた中だよ」

「ニーナさんも?」

 ミツリの問いにスリングは、頷くとまだ煮え切らないのか、どう質問するべきなのかっと思案していた。

「本当は、何が訊きたい?」

 スリングが、そう訊くとミツリは、背筋を伸ばしたかと思うと首を横に傾けた。

「訊きたいっと言うより、気になる事が多いんです、この部隊」

 真っすぐな目で応えるミツリにスリングは、目に付いたテイクアウトが出来る珈琲屋が目に入り指を差した。

「長話になりそうだから、飲みながらでもいいか?」

 その応えにミツリは、頷いた。
 スリングは、2人分の珈琲を注文して受け取るとミツリに渡して店外の席に対面で座った。

「そんで気になる事ってなんだ?」

 煙草を燻らせながらスリングが問うとミツリは静かにスリングの目を見ていた。

「分隊長は、今回の人事に何も感じないんですか?」

「っというと?」

「少佐である分隊長に、中佐のルミスさんに少佐のニーナさん、明らかにおかしな人事です。本来分隊の最高階級で准尉です、なのにそれよりも4階級が上の少佐が隊長なんて本来ならあり得ません、それに分隊長は普通の少佐クラスではないですよね?」

「そのこころは?」

「年齢、あと戦闘の際の能力です、少佐クラスで作戦内の戦闘に参加するなんて聞いた事が殆どありません、本来なら作戦の指揮をするのが仕事の筈なのに、他の兵より高い戦闘力を有して前線にでるなんて、信じられない話です」

 簡潔で真っすぐな応えにスリングは、どうしたもかと思案しながらミツリの言葉に耳を傾けた。

「ですが唯一、その条件に当てはなるとすれば噂程度の話でしか出てこない、魔導師隊の魔導師兵ならば辻褄が合う」

 ミツリの推理にスリングは、自らの行動に反省をしたが、状況を鑑みればそれが妥当な手立てだった分、どうしたものかとも考えた。

「まぁここまで来て、変に隠し事は、するつもりがないが、まぁお前自身の為に言うなら言いふらさん様にっという釘だけは、刺させて貰おう」

 スリングのその一言にミツリは、少しだけ息を飲んだ。

「お前の言う通り、俺は、魔導師隊であり、魔導師兵だ、だがこれはあくまで機密事項でもあるので気を付けて扱ってくれ、下手に監察に目をつけられたくないだろ?」

 スリングの告白にミツリは、ゆっくりと息を吐くと静かに顔を近づけヒソヒソ声で話してきた。

「それは、今のこれもだいぶ不味い状況でしょうか?」

「んなわけあるか、これが戦時中の真っ只中ならまだしも国境近くとは、いえ、危険性の低いこの土地でそこまでの警戒状況でもあるまいよ」

 その返答にミツリは、から笑いをしながら安心した様に背もたれに体を預けた。

「あと今回の人事だが、あの3人に限って言える事があるとすれば俺の巻き添えだ。さっきも言ったが姐さん、ニーナは、同じ教官の元で魔術訓練を受けた中で一緒に何度も戦場に出向いた事もある」

「えっ?分隊長が何かしでかしたんですか?ルミスさんやニーナさんでは、なく?」

 思わぬ、ミツリの進言にスリングの思考が止まった。

「それは、どいうこと?」

 そう徐に訊くとミツリは、なんとなしに応えた。
 スリングが以前に在籍していた王宮警護官は、軍部局とは、別な場所に基地を設けている。
 なので、軍部基地の中で何が起こっているのかは、正直知らないのが事実だ。
 そして、ミツリは軍部局着きの通信部で、基地内で起きた事は、その日の内に耳に入る部署だ。
 そんなミツリがよく聞いていたのが給養員による、隊員達へ対する折檻の報告と一部の隊員達の服毒事件の話だった。
 無論、折檻の主犯はルミスなのだが、折檻を受けていたとされる隊員達の素行もよろしくなく、暴行に悪戯による破壊、陰湿な嫌がらせなのどが問題視されてる隊員達ばかりだった。
 そして、ミツリが今回の人事異動の発端だと思ったのは、服毒事件の方だ。
 その事件は、服毒事件と言うべきなのかどうかと賛否両論に分かれるらしいが、ある日、基地の中でもあまり評判の良くない課長等が医務室に異臭が続いていると相談しに来たのがきっかけだったらしい。
 その騒ぎに隊員達が基地周辺を調べるが危険性は、なく。異臭を感じるのも特定の人物のみで、死に至る危険性も無い為に軍部局も大事にしなかったが共通の行動で見る限り、武器課の薬物係に行った後に異変が起きていた事が判明していたらしいのだ。
 その話を聞いて、スリングの頭の中にニーナの一言が頭を過ぎった。

 《私が!?有り得ないここでどんだけ我慢して大人しくしてると思ってんの!!?》

「いや、我慢してねぇし、やってんじゃねぇかあのバカ」

 スリングの口から徐に心の言葉が漏れ、それと同時に天を仰いだ。
 人は、変わらない。相変わらずだった。
 そう思いながら煙を空へと吐いた。

「大丈夫ですか?」

 遠い目になるスリングにミツリが恐る恐る訊ね、それに応える様に顔を下ろすとスリングは、数度頷いた。

「大丈夫、なんつうか、軍部に居ても相変わらずだったんだなぁ~あの2人って何か懐かしい気持ちになっただけだから」

「こんな事よくあったんですか?」

「訊くな、思い出すと恐怖と呆れしか出てこないから」

 無論、あった、スリングの経験上、まだ軽い方の部類とも言えた。
 もう少し、この人事が遅ければ何人か大変な重病人になっていただろうととも思っている。
 だが、この2人を簡単に糾弾出来ないのも事実だった。
 恐らく、スリングが同じ立場なら同じ様な事をしていたであろう自信もあるのだ。
 それと同時にあの2人に直ぐに自分がやらかしたと思われるのも正直不満があると言えば嘘では、ないがそれを今さら言っても意味が無いので心の内に収めた。

「これで、どうしてこういう人事になったか納得してもらえたか?」

 スリングのその問いにミツリは少しだけ考える素振りを見せてから、静かに頷いた。

「まぁもし分隊から異動したい場合は、言ってくれこっちでも掛け合ってみるから」

「まぁそうなった時は、お願いします、多分そういう事には、ならないっと思いますけど」

 ミツリのその一言にスリングは、不思議に思い、首を横に傾けるとミツリは小さな溜息を漏らした。

「先程も言いましたけど、軍部に居るとナンパとか隊員の言い寄りが本当に多くて正直、面倒だったんです、平の隊員ならまだしも士官クラスの中年とか、からも酷くて辟易としていたんですよね、オマケに課長とかは助けてもくれなかったので今の環境は正直、楽なんですよ」

「それは、よかった」

 スリングのその一言にミツリは、表情を崩さずに続けた。

「ただもちょっと情報を共有をしていただけるともっと助かるんですけどね」

 その苦言に煙草を吸う、スリングの手が停まった。

「何か言えない事情があるんでしょうが、こっちも色々手を回しておかないと矛盾点で上層部から突かれますよ?」

「それが、不正だったらどうするつもりだ?」

「多少は、見て見ぬふりをします、どうせ一介の通信員でしかない私にどうこう出来る問題でもないんで何か起きた場合にその手の嫌疑は掛けられにくいっと思いますし、でも分隊長的はバレたくないんですよね?そう思うならなおさら私を上手く使う方が得策だと思いますよ」

 中々な豪胆なミツリのセリフにスリングはその考えを不思議に思った。
 スリングとミツリとの付き合いは、まだ1ヶ月程度でここまで肩入れするモノだろうか?たとえこの環境が良いと言っても不正の片棒を担ぐなど本来はしないのが真っ当な判断だ。
 なのにミツリは、それを前提に行動をするっと言っているのだ、何か裏があるっと見るのが筋だろう。
 しかし、この短絡的な行動は、どうも嚙み合わない。
 もし相手に本当に信頼を買いたい場合、こうも堂々と相手に迫るのは逆効果になる可能性が高い。
 本来ならもっとバレずに情報収集する方が得策だ。
 短絡的な行動を取る場合は、何らかの焦り抱えている事が多いのだが今のミツリの態度は、焦りと言うよりも不満や憤りっという感じだった。

「とりあえず、善処します」

「出来るだけお願いします」

 正直、今のスリングには、ミツリの真意を探るには、情報が少なくどうしようも出来ないと判断し保留にした。
 珈琲を飲み終えてから2人は、ギルドに向かうと以前より少しだけ増えた人が行き交いボードで仕事の確認をしていた。
 その光景を不思議に思いながらスリングは、カウンターへ向かうとデンシアと話をしたいと告げると奥の部屋へと案内された。
 部屋に入ると壁に掲げられた地図を見ながらデンシアが何かを考えこんでいたがスリングの顔を
 見るなり笑みを浮かべて応接用のソファーへと座る様に促しそれに従った。

「怪我したって聞いた時は、どんなものかと心配したけど、それだと大丈夫そうでなにより」

「ご心配をおかけしました、にしてもギルドが何か盛況ですけどなにかあったんですか?」

「あぁあれ、あれは鉱洞までの道を整備してもらう為に動いて貰っているんだ、元々の道があるんだけど長い年月で所々塞がれてしまってね、そこを今直しているところなんだ」

「なら、鉱洞前の拠点整備は、暫く先では?」

「いや、出来るだけ同時進行で進めたいんだよね」

「それは、なぜ?」

 スリングが訊くとデンシアは、人差し指と親指で丸を作った。

「今は、ギルドの本部からの助成金でどうにかしているけど、不味いのも事実なんだよね」

 理由としては、真っ当な答えだ。
 ギルドと軍部の協定では、依頼を申し出された場合、出来る範囲内では、その依頼を受けるとういう協定が結ばれている。
 だから、余程の理由がない限りそれを断る事は、出来ない。
 分隊長のそれは、その理由に該当は、恐らくしないだろうっとスリングは、考えていたがどうしても懸念が残るのも事実だ。
 周辺の怪物の種類が確定していないのと、何よりも気になるのがゼン・ヤマダルの遺産だ。
 これをの見逃せば最悪隊員の命を落とす事にも直結してしまう。
 現に先日の一件で自分の命を落としかけたのだ、もしあの場に自分ではなく、他の隊員だったっと考えると生存していたかどうかも怪しい。その事を想定して考えるとおいそれっと頷く事が出来なかった。

「今回は、大丈夫、周辺にはそこまでの怪物は降りてきてないから」

 そんなスリングの考えを読んだ様にデンシアが笑みを浮かべながら呟く。

「どうして?魔力感知が引っ掛からないからか?」

「それもあるけど、彼のモノの存在を感じたっていうのがでかいかな」

「彼のモノ?」

「白い狼さ、君も見たんだろ?」

 そのデンシアの言葉にスリングは、口を噤む。
 それは、あの夢の中で青年と共にいた、白い大狼の姿が脳裏に過ぎるがそれが今デンシアが言っているそれと同一の存在なのかわからなかったし、何よりもあれは夢の中での出来事であり、現実とは、違うのだ。

「その狼の気配が街の周辺、ひいては鉱洞付近まで伸びていては、並の怪物は、もう寄って来れない」

 口を噤む、スリングを他所にデンシアは言葉を続ける。
 どう切り返すのが良いのか、スリングはその応えがなかった。
 実際問題、自分でもあれが何者であの青年が本当にスリングの知る人物なのか、そしてなぜあの夢に出てきたのか分からない以上、なにも答えられないというのが本音だった。

「つまり、警護ルートは安全だと?ならこちらに警護を頼まなくても良いのでは?」

 黙るスリングに代わり、ミツリがデンシアに言った。
 その言葉に自分が客観視を書いて欠いていた事に気づいたスリングは、溜息と共に煙草を燻らせ様とするがそれをミツリの咳払いに止められた。

「無論、その通り、だけどそれでギルドメンバーが納得しない、特に今回は狩人じゃなく炭鉱夫達だ、彼等は、戦う能力はあっても技術はない。下手に怪物に襲われたら一溜りもない、そう警戒してる、たげどウチには、狩人達は、ほぼ居ないし、いても炭鉱夫達からすると心許ない、だけど依頼と報酬から彼等自身はこの仕事をこなしたい、だから軍の警護でどうだろうかと交渉したら、納得して貰えたんだ」

 デンシアの説明にミツリがスリングに視線を向ける。

「要は、俺達はあくまでも見てくれの保険だと?」

「そっ危険もない、安全な仕事、報酬もそこそこ、悪い話じゃないでしょ?」

「だが、上手い話ほど、後が怖いってのもあるよな?」

 スリングのその返答にデンシアは、首を横に傾けた。

「悪いけど、こっちにはこれ以上の話はないよ?」

「俺が言いたいのは、そうじゃない、油断大敵だって言いたいんだよ」

 この言葉に嘘は、ない。
 デンシアが現状、スリング達を罠に嵌めるメリットは、ない。
 だからと言ってこの状況を手放しで受け入れるわけにもいかない。
 だとしてやれる事があるとすれば、この話を断るという方向性でいくか、別の道を探すかの2択になる。
 協定を考えればこの話を断る事は、出来ない。もし本隊に言えば応援を求めた上での遂行を命令されるだろう。そうなるとゼン・ヤマダルの遺産で一悶着が起きるのは、目に見えてもいる。
 そうなると別の道で取れる手立てもおのずと限定されてしまうのだ。
 スリングは、そう考えると面倒になり、徐に溜息を漏らしてしまった。

「とりあえず、話はわかった。返事はいつまでがいい?」

 スリングの言葉にデンシアは、ゆったりと笑う。

「出来れば2、3日のウチには欲しいかな、こっちも来週には、動きたいし」

 こちらの反応で返事は、わかっているのだろう。だがあえてそこに触れない辺り、やはりこのデンシアは、一癖あるタイプだと感じた。
 スリングは、生返事をして、ギルドを後にした。

「依頼受けないんですか?」

 帰り道にミツリが何となしに訊ね。スリングは、煙草を咥えながら肩を竦めた。

「協定を知ってるだろ?受けないわけにはいかんだろ、それは向こうもわかってるさ」

「なら、何故時間を置くのでしょ?」

「こっちも考える時間が欲しいのよ」

「何を考えるのです?お言葉ですが今回の依頼は、そこまで難しい事でしょうか?」

「なら、チダルとフルーテルだけで行かせてみるか?」

 スリングのその問いにミツリは、苦笑いを零した。

「それは、極端過ぎません?」

「まぁな、だけど、人員とその日程の調整、諸々の擦り寄せは、必要だろ、だから考える時間を貰ったんだよ」

「でも、その様子だと、もうメンツ決めてますよね?」

 ミツリの言動にスリングは妙な引っかかりを感じて立ち止まった。

「やけに、メンツを気にかけるな?どうしてだ?」

 スリングのその問いにミツリは、口を噤む。

「お前まさか、ついて行く気とかじゃないよな?」

「そのまさかなら、どうします?」

 その返しにスリングは、呆れた声を上げた。

「あのな、遊びに行くんじゃないんだぞ?」

「でも、安全ならいいじゃないですか、ここに来てからほぼ毎日デスクワークで皆みたいにたまには、外を行きたいんですよ」

「いや、まぁそれは、わかるが、てかこの前、鉱洞の時に着いてきただろう?」

「だからですよ、分隊長が怪我負うまで楽しかったですよ、ピクニックみたいで」

 いや、人が仕事している間に何してんだよ?
 そう漏れそうになる言葉を抑えながらスリングは、溜息を漏らした。

「って事で検討お願いしまーす」

 そう、軽やかなに告げるとミツリは、さっさと先を歩き出した。
 何故だろう、少しだけカナイがミツリをこのメンバーに入れたのかわかった気がした。
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