異世界に転生しても彼らはブレない

前世が蛍の人

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第1章

蒼き蝶に導かれて

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ユナ・ベラールとロイ・ベラールに助けられ、彼らのいる異世界へと輪廻転生した雪那が長い眠りについた頃――。

アルファス大陸の北の端。
草原が果てしなく広がる静かな場所に巨大な魔方陣が現れた。
膨大な魔力があふれ、こぼれ出たものは暴風と化したうずに変質し、大地を削る。
しばらくして魔方陣は光りの粒子となって消え去り、辺りは何事もなかったように静寂に包まれた。

魔方陣が消えた場所に6つの影。
異世界に散りばめられた輪廻転生後の彼らだった。

「…オレ、蝶を追いかけてここまで来たはずなんだけど。ここ、どこだ??」
呆然としながらも最初に声をあげたのは立派な衣装を着た青年。

「ッ!そういえばユキ!!どこだっ、返「…おい。お前、何者だ?ゆきとはなんだ?蝶を追いかけてきたと言ったな?答えろ。」
青年の声をさえぎって問いかけたのは、向かい合わせに座っていた全身黒ずくめの男。

「矢継ぎ早に聞くなっつーの!
それに、オレがオマエに答える義理なんてねぇん…だ…けど、、って!もしかしてオマエ、クレイか!?全然かわってねぇーな(笑)
オレだよ、チャシャ猫のチャシャ!!」

「く…れい?ちゃしゃねこ?なんだ、それは。」
言っている意味が分からないと首をかしげる。

「おいおい、忘れてんのかよ。あー…、そうか、最初はそうなるわな、オレも混乱したし…。」
彼はブツブツとつぶやき、なんか納得している。そして彼らに問う。

「とりあえずオレの質問に答えてくれよ、オマエらは何色の何を追いかけてここまで来た?」
青年――チャシャはため息と共に、この場にいる全員に目を合わせた。

「「「「「 蒼い…蝶だ(よ)」」」」」
その問いに誰もがはじかれたように周りを見る。

「ああ、蝶だ。それも蒼い蝶々。…この蝶にオレは見覚えがある。アイツがよく書いていたし、オレらのシンボルだったよな??
まさかこれも忘れたなんて言わせねーぞ。」

「ちょっと待ちなさいよ!あんた、さっきから何様のつもり?
まるでこの状況を知ってるかのように聞こえるんだけど。
ここへ呼んだのはあんたなの?」
チャシャの2つ右に座っていた女は少し興奮気味に聞いてきた。

「おう、大体な。でも、呼んだのはオレじゃない。んー…オマエはYU「「あああぁっ!!」」ちょっ、今度は何だ!?」

「「『Six or Seven』のシンボルマーク!!
蝶といえばユキ姉の十八番おはこじゃんっ。」」

「six or Seven…蒼い蝶……雪ちゃんっそうよ、雪ちゃんよ!!
あたし、なんでこんな大事な事忘れていたのかしら!ちょっとなんでチャシャは覚えてたの!?後、名前はビアンカって呼びなさいよ!!
って言ってる場合じゃない、あたしの雪ちゃんはどこ!?」

「私としたことが、あれだけ音楽活動にたずさわっていて、しかもマネージャーも兼任していたはずなのにすっかり忘れていたなんて……。
一生の不覚です、時間にルーズの君が覚えていましたね。」
上から順にYUI (のちにビアンカ)→春斗はると秋斗あきと→クロードが思い出したとばかりに口々に言い出した。

「ハルとアキは今更だこの阿呆ぅ。
それからビアンカだっけ?いつからユキはオマエのもんになったんだ。
後、クロード?笑ってる割には目が本気マジなんだけど、怖いんだけど!?」
的確にツッコミを入れるチャシャ。
それぞれ転生前の記憶を取り戻して喜ぶ―、一部を除いて。

「おい、クレイ!オマエもなんとか言ってくれよ!!オレじゃ全部対処しきれない……ん?
なぁ、オマエの回りめっちゃキノコ生えてんだけど、どうした?」

「俺が…。
セツを忘れて今まで生きていたなんて…………。
俺はどうしようもない奴だ………………。」
黒ずくめの男、クレイがキノコの発生源になっていた。

(((((……うん、そっとしておこう。)))))
とりあえず放置することに決定。


――――――――――――――――――――――――

ようやく落ち着いたところで、本題に入った。

「状況を整理するが、俺たちは前世で死んで輪廻転生とやらをした。で、蝶に追ってここにいる。これであっているか?」

「すげーザックリしてるし…。まぁ、それで間違いねぇよ、問題は、なんでユキがここにいないかだよな。オレらは蝶に導かれてここにいるってことはユキもいるはずなんだけどさ?」

「う~ん、おかしいわね。クロードは何か知ってる?」

「そうですね、蝶そのものが雪那さんっていう可能性はどうですか?巨大な魔方陣に、我々がここに集まった理由…とても興味深いです。」

「「ユキ姉が蝶…、良いかも。」」

「2人とも、話しから脱線しちゃ駄目よ。」
圧倒的に情報が不足しているため、話しが進まない6人。
そこに、天から助けが舞い降りた。
文字通り、天から降りてきて。

『その事について、これから私たちが説明するわ。』
天から舞い降りた2人、彼らを転生させた張本人ユナ・ベラールとロイ・ベラールだ。

『そんなに警戒しないで、雪那ちゃんが心配なら私たちの話を聞くのが賢明よ。』
クレイ・チャシャ・ビアンカは一瞬だけ攻撃態勢をとったが、次の言葉で動揺してしまった。
その様子を見てユナは満足そうに頷き、話し始める。

『聞く気になったのね?
貴方たちがここに集まった理由は少し長くなるわ――…」
彼らが輪廻転生をした理由、雪那だけここにいない理由を一部始終語った。その間、彼らは一言も喋らず、真剣な表情で二人の話を聞く。

『――という理由で今、貴方たちは雪那ちゃんと私たちの力でここに集まったのよ。』

『安心しろ、雪那さんは生まれ変わるための準備に入った。それよりも、彼女の心配の前に君たちの心配をすることだな。
今のままでは彼女に会う前に死ぬぞ?』
ロイの言葉に、先に反応したクレイは怒気を含めた声で静かに反論した。

「言われなくとも、計画はしっかり立ててから行動するつもりだ。
そもそも…、あんたたちの力不足で俺たちは一度死んだ。
身体の感覚が徐々に麻痺し、助けたくとも動けない、何もしてやれない、悔しい思いで死んでいく。
神様だが何だか知らないが、死を経験したことない奴が簡単に死を口にするな。」

『…すまない、辛い過去をえぐるようなまねをした。僕たちは罪を許してもらうつもりはない。
が、君たちにつぐないをさせてほしい。本当にすまなかった。』

「別に、もう終わった事だ。セツのアフターケアも、あんたたちのお陰で心配事が一つ減った。
感謝する。」

『えぇ、その辺は抜かりないわよ。貴方たちの心が寛大かんだいで良かったわ…。
全員のお願いを聞くことは出来ないけれど、3つまでなら創造主の権限により、叶えさせて頂きますわ。
さぁ、どんな願いか言ってごらんなさい。』
どうやら2人が願いを3つ叶えてくれるらしい。
6人は話し合った後、代表としてクレイが願いを口にした。

「まず一つ、俺の持っている隠密系・暗殺系・妨害系スキルを、セツを含め、メンバー全員に共有・適応出来るようにしてほしい。」
陽影族やえいぞくの一人であり、次期頭領として頭角を表していたクレイ。彼が扱うスキルはいくつかの条件があるため、メンバー全員が使えるようになるのは大変ありがたいのだ。

『あい分かった。君のユニークスキルを除いたスキルの共有は完了した。スキル等の隠蔽いんぺいをしたければ、ステータス画面を開いて操作するんだ。試しにここで開いてみなさい。』
ロイはスキルの確認ついでに操作の仕方を教える。

名前: クレイ(Lv.83)
種族: 影人族<変異種>
HP: 875/108,834
MP: 2,088/70,775
職種: 影法師
スキル一覧: 亜空間収納M 身体強化7気配察知M 魔力察知M 気配遮断M 魔力遮断9魔力妨害M 隠密M 暗殺M 索敵M 暗視M 影移動M 状態異常無効M 鑑定5念話M 剣術M 暗器術M 意志疎通M
ユニークスキル: 暗殺の奥義  蟲毒こどく使い  剣鬼  幻影使い  
加護: なし
称号: 輪廻転生者  影の申し子  


「「ねぇ、神様?Mって何?」」

『レベルがMAXになると、このような表示になるんだ。スキルの共有を受けた者たちはレベル5からになっている。
後で調整しなさい。』

「…クレイさん、貴方、何故こんなにHPが低いのですか?
見る限りだと3桁に突入してますが。」

「あら、本当ね。よく見ればボロボロじゃな~い(笑)」
心配そうな顔でクロードは聞き、ビアンカは隣でクレイをいじっていた。

「チッ……ほっておけ。」

『そろそろ本題に戻るが。二つ目はどうする?』
我こそは!と言わんばかりに手を挙げたチャシャ。

「二つ目なんだけどさ、オレの種族何とかならない?
一人だけ人族とか、この中で一番最弱なんだけど。」
実は、ここに来てすぐにステータス鑑定をこっそりしていたチャシャ。自分だけが人族である事実を知って、心の中で神様を呪ったのは秘密だ。

『そうか、変えられないことはないが代償が大きい。それでも良いのか?
因みに、転生後の君自身を知る者たちから記憶の消去とスキルが大幅に変更される。』

「よっっしゃぁあああ!!!!!
王族から解放されるぅ♪あの陰険ジジイどもと永遠におさらばだぜ!」

「チャシャ兄…皇子サマだったんだね。お疲れ様。」

「チャシャ兄、解放されて良かったね!」

「ブフッッ、お前が皇子って(爆笑)キャラ崩壊もいいとこだなw」

「あんたのキャラじゃないよね((爆笑))
お、お腹ッ、笑い過ぎてお腹痛い(涙)」

「チャシャさん…(暖かい目)」
それぞれがチャシャに言いたい放題言って笑い転げていた。

「うっせぇーよ!!だから言いたくなかったんだ!
オレだって、自分のキャラじゃねぇのは百も承知だっつーの!!」
チャシャは赤面したまま怒鳴った。

『はいはい、そこまでにしておいて。今から貴方の種族変更を行うからこちらに来てね。』
ユナはチャシャを呼び、呪文のような言葉を言いながら彼の目をふさいだ。すると、一瞬まばゆい光が!っとなってすぐに終わっていた…あっという間の出来事だった。

『ふぅ、終了したわ。どうかしら?』
恐る恐る目を開けてみると、そこには猫耳を生やした青年が立っていた。

「サンキュー、これでオレも人外の仲間入りだぜ。

しかも念願の猫人族…、最っ高ぅ♪」
チャシャは無類の猫好きで、来世は猫になりたいと本気で言っていた。

『一応、ステータスの確認をしてね。』
チャシャのステータス画面を覗きこむ一同。

名前: チャシャ(Lv.1)
種族: 猫人族ネコビトぞく(希少種)
HP: 17/17
MP:29/29
職種: ???
スキル: (共有されたスキルは除く)心理眼1千里眼1拳闘術1格闘術1銃撃1話術1亜空間移動1
ユニークスキル: 隷属れいぞく獣召喚  幻の眼  驚異の身体能力  肉体の上限突破
加護: バスティラドの加護
称号: 輪廻転生者  猫に愛された者  種族を超えた者

((((( 限度を知らない猫馬鹿がここにいた )))))

『バスティラドとは…、面白い奴を味方につけたな。』

『本人が喜んでいるし、これはこれで面白いわ。最後に三つ目はどうしたい?』

「最後はセツの願いを叶えてくれ。」

『『…………。』』

「おい、どうした?そんな阿呆けた顔して俺の顔に何かついているのか?』

『…驚いた。君たちの願いを彼女に譲るのかい?』

「当たり前じゃない。むしろ、ここにいない雪ちゃんが一番頑張ったのに、一番最初に願いを叶えてもらわなきゃ不公平でしょ?」
当然だとばかりに頷く彼ら。

『雪那ちゃんは、とても愛されているわね。ふふっ、彼女には目覚めた時にギフトが贈られるわ。
だから問題ないわ。』

「なら、三つ目は……。」







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