異世界に転生しても彼らはブレない

前世が蛍の人

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第1章

三つ目の願いは

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彼らが願った三つ目―。

「――――――。」


――――――――――――――――――――――――
彼らの願いを聞き終えた2人は、あの白い空間で彼らの行く先を見守っていた。

『最後の最後まで、彼らには驚かされたな。』

『えぇ……。でも、嬉しかったわ。私たちが世界の柱から創造主を引き継ぎ、今では人々の記憶から忘れられた存在となってしまった。
…ここへ雪那ちゃんが堕ちてきたとき、不謹慎だけど心が踊ったんだもの、会えるって思って。』
ユナは目を伏せ、悲しそうに笑った。

『それは僕も思ったよ。あれだけ傷ついても光を失わない魂を見たのは久しぶりだった。』
ロイは一度話を止め、

『彼らと出会ったことが偶然ではなく、必然だったのかも知れないな。
三つ目の願い…、ユナは本当にこれで良かったのか?』

『私は良いと思うわ。私たちのファミリーネームを与え、彼らの行く末を見守ること…。その魂たちが天へと還る、その日まで―。』
ユナはロイの側に寄り、微笑ほほえみながら言う。
2人は彼らに視線を戻した。


――――――――――――――――――――――――
場面は変わり、草原が広がるこの場所で。

「そう言えばさ…ビアンカやハルとアキ、クロードのステータスの確認しなくて平気なのか?オレら全員が把握してないとマズいよな?」
そう言って4人に聞くチャシャ。

「ステータスの確認をしておいた方が今後のためになるでしょうし、そうしましょうか。」

「「僕らもクロさんに賛成~」」

「あたしもー、見たことないから気になるわ。」
それぞれが賛成、と言うことで…。
 

名前: クロード・ベラール(Lv.96)
種族: 超耳長ハイエルフ
HP: 506,855/506,855
MP: 970,997/970,997
職種: 魔導療癒師マジックヒーラー
スキル: (共有されたスキルは除く)回復、治癒魔法M 風、光、闇系統魔法M 精霊魔法M 弓弦術M 生産M 操作M
ユニークスキル: 精霊契約  先読み  スペルマスター
加護: 風王狼の加護
称号: 輪廻転生者  苦労人  賢者の卵


名前: ビアンカ・ベラール(Lv.31)
種族:スライム(混合特殊型)
HP: 20,799/24,770
MP: 26,789/29,987
職種: 戯遊詩人
スキル: (共有されたスキルは除く)乱舞M 歌による味方の身体全能力向上3魅了7料理M 家事M 融合、分裂M 
生産M  捕食M 操作M
ユニークスキル: 擬態  変体(形状記憶型)  擬態時、変体時の状態変化  スキルイーター  吸血
加護: なし
称号: 輪廻転生者  喰らう者  


名前: ハルト・ベラール(Lv.17)
種族: 小人トロント族(奴隷)
HP: 6,427/11,427
MP: 6,128/9,078
職種: 錬金術師
スキル: (共有されたスキルは除く)水、光系統魔法M 鉄槌槍術M 俊足M 鍛冶3 生産M
ユニークスキル: 一心同体(アキト)  鉄壁
加護: なし
称号: 輪廻転生者  アキトの兄  呪われた者


名前: アキト・ベラール(Lv.19)
種族: 小人族(奴隷)
HP: 9,354/15,866
MP: 3,654/12,247
職種: 錬金術師
スキル: (共有されたスキルは除く)火、闇系統魔法M 鉄槌槍術M 剛力M 鍛治6生産M
ユニークスキル: 一心同体(ハルト)  怪力
加護: なし
称号: 輪廻転生者  ハルトの弟  呪われた者

「クロードがこの中で一番強いな。」
クレイは4人のステータスを見て頷いている。

「いやいや、まずつっこむべき内容がいくつかあったよな!?あるよな!?
ビアンカのあれ、何?オマエ、スライムなのっ?今時のスライムはあんな強いわけ??称号に喰らう者って一体何喰ったんだよっっ!!」

「あたし、今までずっと吸血鬼だとばっかり思ってたわ…。あ、でも忙しい時に自分の体がいくつもあったら楽なのにって考えてたら出来たのよね。」
ビアンカの答えにチャシャは青ざめる。
ふと、クロードが気になる文字を発見。

「…ハルさんとアキさん、奴隷と表記されていますが何があったんです?事の次第によっては相手側を抹消しなければいけませんね。」
クロードは双子のステータス画面を睨み、そう呟く。

「里の奴らに売られたんだよ。双子は災いを招くんだって。奴隷市場で奴隷印を入れられて売りに出されたけど、誰も僕らを買い取らなかったよ。奴隷商の店主は悪い人じゃなかったから、人並みの生活は保障してくれたけどね。」

「なら、どうしてお前たちは傷だらけなんだ?」
不思議だとばかりにクレイは聞く。

「奴隷商店が盗賊に襲われて、ハルと一緒に命からがら逃げて来たんだ…。追っ手から逃げている間ずっと生きた心地しなかったよ。」

「アキの言う通りだよ。蝶を追って来なかったら僕らは生きてなかった。」
―辺りに殺気が漂う。

「…よし、今はとりあえず双子に我慢してもらおう。悪いな、セツと合流出来たら皆で奴らを根絶やしにする。」

「「「「「意義なし」」」」」

―――――――――――――――――――――――
クレイとクロードは、レベルの低い4人の指導を行う。最低でもレベルが100以上になれるよう、魔境の森で彼らはレベル上げとスキルの熟練度の向上のため、修業に明け暮れた。

★★

それから月日は流れ――。
彼らは修業を終え、各国を渡り歩いていた。現在、ある国を目指して旅をしている最中であった。
極限にまでそれぞれが修業をした成果もあり、人の足で6日かかる旅をわずか2日でたどり着いてしまった。

―ここはアルブ・ローザ帝国。
かつて、弱小国と呼ばれ他国に度々狙われていた。
しかし、国王が隠居し世代交代が行われてから状況が一転。現国王は、次々と敵国を締め上げ領土を広げていき、国は帝国と改め、今の姿となった。
表門で滞在許可証を発行してもらった一行は、改めて気を引き締める。他国で情報収集している時、ここ最近、帝国が怪しい商売を始めているという不穏な情報を耳にしたからだ。更に詳しい情報の収集や食料の補充、調合に必要な材料等の調達のためラブラ通りを訪れた。

「あちこち見て回ったけど、怪しい雰囲気でもないけどな。」

町の一角でチャシャはぼやいた。
「あの情報が嘘なら良いんだけど…。なんか、嫌な予感がするのよ。」
ビアンカは町の様子を観察する。
行き交う人々の誰もが活気に満ち溢れていた。

「以前ここを訪れましたが、特別変わった様子はありませんでしたね。さて、計画通り、私とチャシャさん・ビアンカさんで冒険者ギルドに向かいましょう。何かしら噂が流れているかも知れません。クレイさんとハルさん、アキさんは裏情報を集めながら必要な物品を調達してください。こちらは終わり次第、念話で連絡をとり現地に集合しましょう。」
クロードの説明が終わり、怪しまれない程度に二組に分かれて行動を開始。
クレイたちは頷き、人混みに紛れ込んで消えた。

「それでは、我々は冒険者ギルドに向かいましょう。チャシャさん、これは任務ですよ?くれぐれも喧嘩を吹っ掛けるような、ハメを外さないでくださいね。ビアンカさんは、常に笑顔でいることを心がけてください。」

「うぐっ、なぜにバレたし…。ハイ、スミマセン。」
チャシャに大人しく返事をさせ、心底嫌そうな顔をしていたビアンカをなだめていざ冒険者ギルドへ。

しばらく歩いていくと冒険者ギルドに到着。
外見は茶色と白がベースのこじんまりとした木造の建物と、目立たない風貌だった。扉の横に立て掛けてある看板がなければ分からなかっただろう。
クロードはギルドの扉を開け、2人を中に入れる。
昼を過ぎたギルド内では、沢山の冒険者で溢れていた。既に席についている強者たちが、入ってきた3人を値踏みでもするような目で見る。
しかし3人は視線をものともせず、真っ直ぐ受付へ足を進める。

「こんにちは。」

「こんにちは。本日はどういったご用件でしょうか?」

「別件の依頼でこの国を訪れたのですよ。折角来たのですから、観光がてら何か出来る依頼をと思いまして。」

「まぁ!そうなんですね。でしたら、こちらの依頼をお願いしても宜しいでしょうか?他の依頼に比べて期間は比較的に長く、報酬も多く手に入ります。」

「魅力的な依頼ですね、分かりました。その依頼を受注します。」
クロードは契約金を受付嬢に支払う。

「お預かりします。―はい、確かに受けとりました。私は手続きをして参りますので、少々お待ちください。」
そう言って、受付嬢は奥に下がった。
待っている間、クロードはトイレのため席を外し、チャシャとビアンカは軽い気持ちで依頼表を見に行った。面倒事な事になるとも知らずに。

「おい、ガキ共。オメーらみたいなあまチャンが来るところじゃないぜ。邪魔だ、そこ退け。」

「「は?」」

「おいおい、このバズーカ様が通る道の邪魔をしちゃマズイッすよ。ん?よく見れば2人共、可愛い顔してっすね~♪俺達の女になれば許してやるっすよ。」
Cランク冒険者のパーティー「バズーカバスター」の問題児、バズーカたちに2人は絡まれた。

「…は?女??オレが?!ナイわー、いくらなんでもこれはナイわー。うわー、オレ泣いちゃう。嘘だけど。」

「あたしが可愛くて美しいのは当然なんだけど、チャシャが…ねぇ……。目が節穴なんじゃないかしら?」

「―無視するとはいい度胸じゃねぇーか。オメーら、表出ろ。存分に可愛がってやる。」
2人が、完全にバズーカたちを無視したのをきっかけにキレ始めた。
その時、バズーカたちの前に立ち塞がる影。

「君たち、一体何しているのかな?…Cランク冒険者とお見受けするけれど、ここがどんな場所でどうする所か知っているよね?」

「それがどうしたってんだっ!!」

「なら、場合によってはランク剥奪もありうることは勿論…知っているんだね。」
男の言葉にぐぅの音も出なくなり、空いたテーブルを思いきり蹴飛ばして外に出た。

「あいつ、Cランクかよ。オレらより弱いやつが意気がるなっての。」

「バズーカ君はこのギルド内で優秀な成績を叩き出したんだよ。けれど、別の国から強い奴らが集まってきて人気がだだ下がりなんだって。それにい…え?」
男は何気なくチャシャを見て、息を止めた。

「…?なんだ??オレの顔になんか付いてる?
女っぽいとかぬかしたらその顔面、血祭りにする…ぞ………。」 

「いや…、人違いだったらごめん。君、もしかしてナージュかな??」

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