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第1章
ベルゼルク国の王位継承権第2位ラシュ皇子現れる
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「……。ヒトチガイダトオモウヨ。」
「ちょっとチャシャっ!目が泳いでるって馬鹿!」
動揺で明後日の方向に目が泳いでいるチャシャに、ビアンカは叩く。
そこに、トイレから戻ってきたクロードが顔をしかめる。
「何をやっているんですか、貴方たちは。…あの失礼ですが、どちら様で?」
クロードは男を訝しそうに見る。
「これは失礼しました。私の名前は…っと、ここでは落ち着いて話せないのでどうでしょう、場所を移動しませんか??」
男は低姿勢ながらも拒否を許さない物言いだった。
3人は仕方なくギルドを出て男に着いていき、近くの店に入った。
男は店の人に何かを伝え、人払いを済ませてから本題に入る。
「いきなり連れてきてすみません。これから話すことは絶対に他言無用でお願いします。
私はベルゼルク国王が父、元王位継承権第2位のラシュ・フォン・ベルゼルクと申します。」
男は3人の前で、ベルゼルク国王の息子だと爆弾宣言をした。
「…それをオレらの前で言うってことは、もう気づいてんだろ?そうゆートコ、全然変わってねぇな。しかも、あんな所で出くわすとは思わなかったぜ。」
チャシャは諦めたとばかりにため息を吐く。
一方、クロードとビアンカは驚きのあまり席を立ってしまった。
「っ、これは驚きました…。なぜ皇子である貴方があのような場所にいらしたので?」
「敬語はいらないよ。あと、ラシュでいいよ。僕も敬語は疲れるからなしでいいかな?」
ラシャの問いに2人は頷き、話しは再開する。
「数年前に嫌になって逃げたんだよ、王位継承を巡って血を分けた兄弟で殺しあうなんて僕には出来ない…。だから僕はもう皇子じゃなくてただの冒険者だ。それにしても、ナージュは随分変わったね。」
ラシュは嬉しそうに笑った。チャシャは5番目の弟で、王位継承を放棄するまでは仲良くしていた。
「オレはナージュじゃなくてチャシャだから。王位継承を放棄したのアレ本気だったんだな、誘拐されたとか噂されてたけど。」
「うん、表向きはそうだよ。そうか…チャシャか、良い仲間と出会えたんだね。」
「ラシュさんがわざわざ逃げ出さなくても、王位継承を放棄すると宣言すれば良かったのでは?」
「鋭いね…、実は小さい頃から冒険者に憧れていんだ。年を重ねるごとに、王族というしがらみが鬱陶しくなってね。いつかは解放されたいと思ったけど、一歩が踏み出せずにいたんだ。そんな時、チャシャが背中を押してくれたんだよ。」
「…オレ??なんか言ったっけ?」
「『王族だって人だよ?何で我慢しなきゃいけないの?』って…ね。」
王族として生まれた瞬間から人の上に立ち、国や国民を守る義務がある。たとえ、当事者が望まなくても。
けれども、ベルゼルク国王には8人の息子と1人の娘がいる。ラシュやチャシャが王位継承を放棄しても6人の中から選べばいい。
「王族って大変なのね~、チャシャが王族だった頃の自分を知る者たちから記憶を消したがる訳ね…。でも、何で記憶から消したはずのチャシャを忘れてないのかしら?」
「なに!?そんなことが出来るのかっ、教えてくれ、どうすればいいっ!」
凄い勢いでチャシャに迫る。
「顔、近い近いっ!オレの場合、特殊だから出来たんだよ!!それより、何でオレを覚えてんだよ!!」
「それは僕にも分からないな。記憶が消せないなら仕方がないね。
今の話で僕の素性を明かしたよ。今度は君たちが話す番だ、話してくれるよね?」
ラシュは不敵に笑う。その姿は、チャシャが笑う時に似ていた。
「最初からこれが狙いだったのですね…。話しても構いませんけれど聞いたら最後、我々から逃げられませんよ?宜しいので?」
「元からそのつもりさ、僕の弟を口説き落としたんだ。だから僕は、君たちに興味が湧いた。」
チャシャの身内だと知ったときから逃がす気はなかったが、向こうも逃げる気がないなら好都合だ。
クロードは経緯を簡単に話す。ラシュがまだ信用できるに値していないので、雪那の存在は秘密のままにしておく。
「なるほど、チャシャは君たちと知り合いなんだね。いつ知り合ったかはまた今度聞かせてもらうよ。」
「ラシュはこの国の秘密…、知ってるんでしょ?興味本意で首をつこっむと危ないわよ?」
「…正解。でも、知っておいて損はないよ。」
「で、その心は?」
「こんな面白い事を、見逃すわけにはいかない(笑)」
「おい、今のが100%本音だろっ!コイツ、本当にオレの兄貴なのかっ!?」
「「すごくチャシャ(さん)に似てる(ますね)」」
少し雑談を交えてお互いを知ったところでラシュは、アルブローザ帝国の現状を語る。
「半年前に、この国で聖水が莫大に売れているんだよ。1度僕も白銀貨2枚で買ってみたけれど、凄い純度が高くて驚いたね。普通、純度を上げるのにそれ相応の魔力を込めなければ出来る代物じゃない。今は見かけなくなったけれど隠れて売っているはずなんだ…。」
「白銀貨2枚ってぼったくりじゃん。で?その聖水って物は、どれくらい魔力を込めるのに必要なんだ?」
「ざっと、王宮に仕える高位宮廷魔導師30人分の魔力だよ。」
「「「!!!」」」
「魔道具で調べたら粉々に砕けたから間違いない。帝国は、一体どこからあの聖水を手にいれているんだろうね?調べようにも警備が厳重で僕じゃ無理だった。」
「ひとまず、クレイさんたちへ報告しましょう。ラシュさんは私と一緒に来てください。チャシャさんとビアンカさんは先に宿に戻り、指示があるまで待機していてください。」
「「了解。」」
――――――――――――――――――――――――
<備考>
銅貨…1円
大銅貨…100円
銀貨…1,000円
大銀貨…10,000円
白銀貨…1000,000円
黒銀貨…10000,000円
「ちょっとチャシャっ!目が泳いでるって馬鹿!」
動揺で明後日の方向に目が泳いでいるチャシャに、ビアンカは叩く。
そこに、トイレから戻ってきたクロードが顔をしかめる。
「何をやっているんですか、貴方たちは。…あの失礼ですが、どちら様で?」
クロードは男を訝しそうに見る。
「これは失礼しました。私の名前は…っと、ここでは落ち着いて話せないのでどうでしょう、場所を移動しませんか??」
男は低姿勢ながらも拒否を許さない物言いだった。
3人は仕方なくギルドを出て男に着いていき、近くの店に入った。
男は店の人に何かを伝え、人払いを済ませてから本題に入る。
「いきなり連れてきてすみません。これから話すことは絶対に他言無用でお願いします。
私はベルゼルク国王が父、元王位継承権第2位のラシュ・フォン・ベルゼルクと申します。」
男は3人の前で、ベルゼルク国王の息子だと爆弾宣言をした。
「…それをオレらの前で言うってことは、もう気づいてんだろ?そうゆートコ、全然変わってねぇな。しかも、あんな所で出くわすとは思わなかったぜ。」
チャシャは諦めたとばかりにため息を吐く。
一方、クロードとビアンカは驚きのあまり席を立ってしまった。
「っ、これは驚きました…。なぜ皇子である貴方があのような場所にいらしたので?」
「敬語はいらないよ。あと、ラシュでいいよ。僕も敬語は疲れるからなしでいいかな?」
ラシャの問いに2人は頷き、話しは再開する。
「数年前に嫌になって逃げたんだよ、王位継承を巡って血を分けた兄弟で殺しあうなんて僕には出来ない…。だから僕はもう皇子じゃなくてただの冒険者だ。それにしても、ナージュは随分変わったね。」
ラシュは嬉しそうに笑った。チャシャは5番目の弟で、王位継承を放棄するまでは仲良くしていた。
「オレはナージュじゃなくてチャシャだから。王位継承を放棄したのアレ本気だったんだな、誘拐されたとか噂されてたけど。」
「うん、表向きはそうだよ。そうか…チャシャか、良い仲間と出会えたんだね。」
「ラシュさんがわざわざ逃げ出さなくても、王位継承を放棄すると宣言すれば良かったのでは?」
「鋭いね…、実は小さい頃から冒険者に憧れていんだ。年を重ねるごとに、王族というしがらみが鬱陶しくなってね。いつかは解放されたいと思ったけど、一歩が踏み出せずにいたんだ。そんな時、チャシャが背中を押してくれたんだよ。」
「…オレ??なんか言ったっけ?」
「『王族だって人だよ?何で我慢しなきゃいけないの?』って…ね。」
王族として生まれた瞬間から人の上に立ち、国や国民を守る義務がある。たとえ、当事者が望まなくても。
けれども、ベルゼルク国王には8人の息子と1人の娘がいる。ラシュやチャシャが王位継承を放棄しても6人の中から選べばいい。
「王族って大変なのね~、チャシャが王族だった頃の自分を知る者たちから記憶を消したがる訳ね…。でも、何で記憶から消したはずのチャシャを忘れてないのかしら?」
「なに!?そんなことが出来るのかっ、教えてくれ、どうすればいいっ!」
凄い勢いでチャシャに迫る。
「顔、近い近いっ!オレの場合、特殊だから出来たんだよ!!それより、何でオレを覚えてんだよ!!」
「それは僕にも分からないな。記憶が消せないなら仕方がないね。
今の話で僕の素性を明かしたよ。今度は君たちが話す番だ、話してくれるよね?」
ラシュは不敵に笑う。その姿は、チャシャが笑う時に似ていた。
「最初からこれが狙いだったのですね…。話しても構いませんけれど聞いたら最後、我々から逃げられませんよ?宜しいので?」
「元からそのつもりさ、僕の弟を口説き落としたんだ。だから僕は、君たちに興味が湧いた。」
チャシャの身内だと知ったときから逃がす気はなかったが、向こうも逃げる気がないなら好都合だ。
クロードは経緯を簡単に話す。ラシュがまだ信用できるに値していないので、雪那の存在は秘密のままにしておく。
「なるほど、チャシャは君たちと知り合いなんだね。いつ知り合ったかはまた今度聞かせてもらうよ。」
「ラシュはこの国の秘密…、知ってるんでしょ?興味本意で首をつこっむと危ないわよ?」
「…正解。でも、知っておいて損はないよ。」
「で、その心は?」
「こんな面白い事を、見逃すわけにはいかない(笑)」
「おい、今のが100%本音だろっ!コイツ、本当にオレの兄貴なのかっ!?」
「「すごくチャシャ(さん)に似てる(ますね)」」
少し雑談を交えてお互いを知ったところでラシュは、アルブローザ帝国の現状を語る。
「半年前に、この国で聖水が莫大に売れているんだよ。1度僕も白銀貨2枚で買ってみたけれど、凄い純度が高くて驚いたね。普通、純度を上げるのにそれ相応の魔力を込めなければ出来る代物じゃない。今は見かけなくなったけれど隠れて売っているはずなんだ…。」
「白銀貨2枚ってぼったくりじゃん。で?その聖水って物は、どれくらい魔力を込めるのに必要なんだ?」
「ざっと、王宮に仕える高位宮廷魔導師30人分の魔力だよ。」
「「「!!!」」」
「魔道具で調べたら粉々に砕けたから間違いない。帝国は、一体どこからあの聖水を手にいれているんだろうね?調べようにも警備が厳重で僕じゃ無理だった。」
「ひとまず、クレイさんたちへ報告しましょう。ラシュさんは私と一緒に来てください。チャシャさんとビアンカさんは先に宿に戻り、指示があるまで待機していてください。」
「「了解。」」
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<備考>
銅貨…1円
大銅貨…100円
銀貨…1,000円
大銀貨…10,000円
白銀貨…1000,000円
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