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第1章
お前ら、いい加減にしろ。 ー雪那sideー
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長い眠りについてから、どれくらい時が流れただろう。
まだ力が戻っていない雪那だったが、ある程度動けるようになった。
(ユナさんが教えてくれたけど…皆、無事かな)
転生してから一度も会えていない彼らを思い浮かべる。
(まだ体力も魔力も戻ってないから何も出来ないし、退屈だな…。ん?なんか上が騒々しいけど。)
呑気にそんなことを思っていると、辺りが光に包まれる。突然の眩しさに目を閉じて縮こまっていると声が聞こえてきた。
「おおっ…、これは美しい。おい、お主たちはこれを我が王宮に持って帰れ。儂の玉座の後ろに飾ろうじゃないか。」
「それはそれは!いいご提案で!ございますね!アルブ・フォン!・ディライド様!」
どうやら国の王は、雪那の存在に気づいていないらしい。
(この国の王は、人を物のように扱って…ふざけるな。)
雪那の魔力に反応して彼女の回りに広がっていた氷が暴れだした。王の部下たちは、それに巻き込まれて氷漬けとなってしまっても王は声一つあげない。
「軟弱な者たちばかりだな。仕方ない、これの存在を他国に知られぬ様、このまま地下の奥深くに隠しておくのだ。これの魔力はいくらでも使い道があるからな…、良いな!!」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
(人を勝手に暴いておいて、地下に放置だって?しかも利用価値があるとかほざいている。全く、眠るならもっと別の場所で眠れば良かった…。場所まで指定出来なかったからしょうがないけど、やられっぱなしも嫌だから抵抗してやる。)
――ピキッ…。
「ん?なんじゃ??」
―――ピキッバキバキッ、(((ヒュンッ!ドゴッッ!!)))
雪那を包んでいる氷が急成長し、天井に向かって伸びていく。天井につくなり、氷は四方に張り巡ってやがて動きを止めた。
(ゆっくり彼らを待つ暇もない…。)
天井に避難した雪那は、下で慌てている王の姿を冷たい目で軽蔑する。
★★
それから3ヶ月後、相変わらず視察に来る一行
を上から眺めていた。別段、何かが変わった訳ではないが気になることが一つあった。
(宝石の光が反射して眩しいんだけどっ、どれだけ着飾りたいの!?…ふぅ、遮断したから何とかマシになった。あれは商人か、人の魔力で生み出された産物を奴が売っていたのか。)
雪那は奴らのやり取りを目に焼き付けておく。
(目覚めたら、今までの対価をキッチリ奴らに払ってもらわないと。)
話を終えたのか、商人と付き人が帰っていく。
王も、何人かに命令をすると出ていった。それからはずっと人間達が同じ作業を繰り返している。
(まだ眠い…。)
まだ目覚めの時を迎えていない彼女は、氷に守られながら眠りについた。
★★
更に2ヶ月と少しの月日が流れた頃、事態は急変した。
この頃になると雪那は、だいぶ体力と魔力が回復し、ある程度なら自在に氷を操れるようになった。
――ドゴオォォォォォオンッッ!!!!
(今の音は何?)
雪那は飛び起きて辺りを見渡すが、変わった様子がない…。
(もしかして、遠くの方で何かやっている?)
早く目覚めたくても、ここから出る方法が分からない雪那は必死に考える。
そんな時だった。
「これ以上先には進めないね。…ん?天井に張り巡らせてある、あれは一体何だろう?」
誰かの声が下から聞こえた。
(誰か来た。)
「もしかして、あの泉の先が氷で覆いつくされいたのって…」
「アキの思っている通りだと思うぜ、最下層までかなり距離があるってのにすげーな。」
ウンウンっと、チャシャが感心している。
(えっ!?皆がいる!私はここにいるよ!!)
「確かに凄いけどどうすっ!チャシャっ危ない!!!!」
「え?っうお!」
誰かがとっさにチャシャを庇った。その直後に2人の前で何かが爆発する。チャシャを庇った人がとても痛々しい。
(そんな…、私はまた見ているだけなの?誰も助けられないの?)
「「「ラシュ((兄))!!!」」」
ラシュの元に慌てて3人が駆ける寄る。
「ぐっ…。チャシャ…、怪我はない?」
「傷が治らねぇっ!!しかもお前っ、右腕が!!なんで俺を守ったんだよっ、オレより弱いくせになんでっっ!!」
チャシャはボロボロと涙を流しながら誰かを抱きしめる。
(早く!じゃないとその人が死んじゃうっっ!!)
「ラシュ、今、クロードが急いでこっちに向かってる!だからっ、なんとか持ちこたえてくれっ。」
そんな彼らを嘲笑うかのように、敵が近づいてくる。
(さっき爆弾みたいなのを投げた奴っ、皆を助けたいのに!何で!?)
「何だよ、今のでたった1人しかダメージ喰らってないぞ?」
「へぇ…こいつらやるじゃん♪少しは楽しめるかな…グフフッ。」
チャシャはそっと、ラシュにマントをかけ立ち上がる。そして、
「1人残らずぶっ潰してやる。」
(チャシャ!!駄目ぇーーーっ!!!)
「じゃあ、君の相手は僕だね♪ちゃんと僕を楽しませなきゃダメだよ?」
チャシャは真っ正面から攻撃をしかけた。
「チャシャ兄、援護を「お前らの相手はこっち。」!?」
「アキ!」
(アキが危ないっ!)
ハルがアキと背中合わせに立ち、攻撃体制に入る。クレイは瀕死のラシュを守るため、その場から動けない状態だった。
(お願い、死なないで。)
★★
闘いが始まってから一時間近くが経過しているというのに、氷がびくともしない。その間にも彼らは必死になって闘っている。
(あぁもうっ!!)
「2人が1人になるとか気持ち悪っっ。しかも面倒くさいくらい強くなってるし…。」
そう言いつつも、攻撃を交わしている敵に、
(お前の面の方が100倍キモい!!)
ハルとアキの悪口を許せなかった雪那は、上から愚痴る。
一方、チャシャと一対一で闘う敵は強く、どちらも退かない状態になっている。
「凄い凄い凄い凄いっ、君は強いね!こんなに楽しいのは久しぶりだよっアハハハハハッ、楽しい!」
――ブチッ…。
(お前ら、いい加減にしろ。)
―チリンッ…
(永遠に溶けぬ無慈悲な氷よ…。
私の怒りを哀しみを纏え……。
1人たりとも逃がすな、その身を氷牢獄へと突き落とせ。)
そして雪那は目覚めたのだった。
まだ力が戻っていない雪那だったが、ある程度動けるようになった。
(ユナさんが教えてくれたけど…皆、無事かな)
転生してから一度も会えていない彼らを思い浮かべる。
(まだ体力も魔力も戻ってないから何も出来ないし、退屈だな…。ん?なんか上が騒々しいけど。)
呑気にそんなことを思っていると、辺りが光に包まれる。突然の眩しさに目を閉じて縮こまっていると声が聞こえてきた。
「おおっ…、これは美しい。おい、お主たちはこれを我が王宮に持って帰れ。儂の玉座の後ろに飾ろうじゃないか。」
「それはそれは!いいご提案で!ございますね!アルブ・フォン!・ディライド様!」
どうやら国の王は、雪那の存在に気づいていないらしい。
(この国の王は、人を物のように扱って…ふざけるな。)
雪那の魔力に反応して彼女の回りに広がっていた氷が暴れだした。王の部下たちは、それに巻き込まれて氷漬けとなってしまっても王は声一つあげない。
「軟弱な者たちばかりだな。仕方ない、これの存在を他国に知られぬ様、このまま地下の奥深くに隠しておくのだ。これの魔力はいくらでも使い道があるからな…、良いな!!」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
(人を勝手に暴いておいて、地下に放置だって?しかも利用価値があるとかほざいている。全く、眠るならもっと別の場所で眠れば良かった…。場所まで指定出来なかったからしょうがないけど、やられっぱなしも嫌だから抵抗してやる。)
――ピキッ…。
「ん?なんじゃ??」
―――ピキッバキバキッ、(((ヒュンッ!ドゴッッ!!)))
雪那を包んでいる氷が急成長し、天井に向かって伸びていく。天井につくなり、氷は四方に張り巡ってやがて動きを止めた。
(ゆっくり彼らを待つ暇もない…。)
天井に避難した雪那は、下で慌てている王の姿を冷たい目で軽蔑する。
★★
それから3ヶ月後、相変わらず視察に来る一行
を上から眺めていた。別段、何かが変わった訳ではないが気になることが一つあった。
(宝石の光が反射して眩しいんだけどっ、どれだけ着飾りたいの!?…ふぅ、遮断したから何とかマシになった。あれは商人か、人の魔力で生み出された産物を奴が売っていたのか。)
雪那は奴らのやり取りを目に焼き付けておく。
(目覚めたら、今までの対価をキッチリ奴らに払ってもらわないと。)
話を終えたのか、商人と付き人が帰っていく。
王も、何人かに命令をすると出ていった。それからはずっと人間達が同じ作業を繰り返している。
(まだ眠い…。)
まだ目覚めの時を迎えていない彼女は、氷に守られながら眠りについた。
★★
更に2ヶ月と少しの月日が流れた頃、事態は急変した。
この頃になると雪那は、だいぶ体力と魔力が回復し、ある程度なら自在に氷を操れるようになった。
――ドゴオォォォォォオンッッ!!!!
(今の音は何?)
雪那は飛び起きて辺りを見渡すが、変わった様子がない…。
(もしかして、遠くの方で何かやっている?)
早く目覚めたくても、ここから出る方法が分からない雪那は必死に考える。
そんな時だった。
「これ以上先には進めないね。…ん?天井に張り巡らせてある、あれは一体何だろう?」
誰かの声が下から聞こえた。
(誰か来た。)
「もしかして、あの泉の先が氷で覆いつくされいたのって…」
「アキの思っている通りだと思うぜ、最下層までかなり距離があるってのにすげーな。」
ウンウンっと、チャシャが感心している。
(えっ!?皆がいる!私はここにいるよ!!)
「確かに凄いけどどうすっ!チャシャっ危ない!!!!」
「え?っうお!」
誰かがとっさにチャシャを庇った。その直後に2人の前で何かが爆発する。チャシャを庇った人がとても痛々しい。
(そんな…、私はまた見ているだけなの?誰も助けられないの?)
「「「ラシュ((兄))!!!」」」
ラシュの元に慌てて3人が駆ける寄る。
「ぐっ…。チャシャ…、怪我はない?」
「傷が治らねぇっ!!しかもお前っ、右腕が!!なんで俺を守ったんだよっ、オレより弱いくせになんでっっ!!」
チャシャはボロボロと涙を流しながら誰かを抱きしめる。
(早く!じゃないとその人が死んじゃうっっ!!)
「ラシュ、今、クロードが急いでこっちに向かってる!だからっ、なんとか持ちこたえてくれっ。」
そんな彼らを嘲笑うかのように、敵が近づいてくる。
(さっき爆弾みたいなのを投げた奴っ、皆を助けたいのに!何で!?)
「何だよ、今のでたった1人しかダメージ喰らってないぞ?」
「へぇ…こいつらやるじゃん♪少しは楽しめるかな…グフフッ。」
チャシャはそっと、ラシュにマントをかけ立ち上がる。そして、
「1人残らずぶっ潰してやる。」
(チャシャ!!駄目ぇーーーっ!!!)
「じゃあ、君の相手は僕だね♪ちゃんと僕を楽しませなきゃダメだよ?」
チャシャは真っ正面から攻撃をしかけた。
「チャシャ兄、援護を「お前らの相手はこっち。」!?」
「アキ!」
(アキが危ないっ!)
ハルがアキと背中合わせに立ち、攻撃体制に入る。クレイは瀕死のラシュを守るため、その場から動けない状態だった。
(お願い、死なないで。)
★★
闘いが始まってから一時間近くが経過しているというのに、氷がびくともしない。その間にも彼らは必死になって闘っている。
(あぁもうっ!!)
「2人が1人になるとか気持ち悪っっ。しかも面倒くさいくらい強くなってるし…。」
そう言いつつも、攻撃を交わしている敵に、
(お前の面の方が100倍キモい!!)
ハルとアキの悪口を許せなかった雪那は、上から愚痴る。
一方、チャシャと一対一で闘う敵は強く、どちらも退かない状態になっている。
「凄い凄い凄い凄いっ、君は強いね!こんなに楽しいのは久しぶりだよっアハハハハハッ、楽しい!」
――ブチッ…。
(お前ら、いい加減にしろ。)
―チリンッ…
(永遠に溶けぬ無慈悲な氷よ…。
私の怒りを哀しみを纏え……。
1人たりとも逃がすな、その身を氷牢獄へと突き落とせ。)
そして雪那は目覚めたのだった。
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