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第1章
それは脆く、そして儚く散った ―帝国聖騎士団隊長side―②
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城門を潜って愕然とする。
魔物の姿はおろか、死体さえ見当たらなかったのだ。
(何がどうなってるのだ…!)
しかも目の前には何体もの氷の巨人兵が待ち構えていた。
「止まるなっ!走れっ走るのだっっ!」
恐怖で立ちすくむ者の背中を叩き促しながら氷の城を目指す。
しかしそう簡単には通らせてくれない。
巨人兵が一降りすれば数人の騎士がぶっ飛ばされ、一踏みすれば数十人の騎士が潰された。
「たい…ちょうっ…。おれはっ、やぐにだでばじだ…がっ。」
「っ、ぁあ!お前の働きに感謝する!!」
倒れていく騎士の一人が俺に手を伸ばし、
その手を強く握れば笑って絶命した。
―何もしてやれない、この無念を。
(巨体の割りに動きが速い、攻撃されればまず助からない…。
だがここで諦めてたまるか―)
「隊長っ、ここは食い止めますから先に進んでください!!」
「すまない、生きて戻ってこい!」
―無念に散った仲間の為にも。
―今ここで耐えて戦う仲間の為にも。
俺が仇を討ってやる…………っ!
★★
城の扉を潜り抜ければ先程の喧騒とは正反対に辺りは嫌に静かだった。
(城の中まで氷なのか、どうりで体が寒いわけだ。)
震える体を擦り警戒を強める。
―コツ…コツ……コン
「第一関門突破オメデトー、はい、ヨクデキマシター(棒)」
「ご託はいいっ!糞餓鬼さっさと降りてこい、正々堂々勝負しろっ。」
俺の苛立ちを知ってか、ニヤニヤ笑って俺達を見下ろしている。
「そうカリカリすんなって、ここまで来れたご褒美にハンデくれてやっても良いんだけどさ?
とりあえず、避けろな?」
「今度は何をす「っ隊長ぉおゴガッ…」
なっ!?」
俺を右に押し出した瞬間、騎士の口から大量に吐血し鈍い音と共に地面に倒れた。
肺の辺りを何かで貫通したような穴があった。そこから血が一滴さえ出ていなく不気味さが増す。
「隊長さんは運がいいな?」
―運がいい、だと…?
仲間を犠牲にして自分が生き残ったからか?死なずに済んだからか?
「へぇ…?考え事とか余裕ってトコか。
ならもっとオレを楽しませてくれよ?」
奴の回りに小さい玉のような物が無数に浮かんでいた。
「や、やめ―ぎぃやあああああつぃ!体がっやげるっっ。」
「た隊長っ早く!ここから離脱をっ。」
「おれぇどっおれぇどあじっあじぃが、あじギャ………。」
「ガァアアアぅゴっがぁグギャッアギ…」
叫び声、呻き声、狂声―が耳を塞いでも聞こえ、誰の物か分からなくなった手足や臓器が地面に散らばる惨状に俺は呆然と立ち尽くす。
その時だった、俺は強風で入ってきた扉の反対に思いきり飛ばされた。
「こんな所で立ち止まらないで下さいよ。
後は…頼みました、隊長。」
振り返れば一人の騎士が俺を見ている。
ようやく騎士の真意に気づき、次の階へ続く扉へ向かって走った。
階段を駆け上がりドアを開けると、目と鼻の先に迷路と書かれた立て札が無造作に置いてあった。
(俺より先に行った騎士達が見当たらないが次の階へ行ったのか?
もしそうならば追い付かなくては。)
冷や汗を拭きながら必死で出口を探す。俺の背丈を倍近く越えた壁のせいでどこが出口か分からず苦戦する。
しばらくさ迷った俺は出口と思わしき扉を発見した。
扉のドアノブを捻る時にふと、右側に数字が書かれているのを目にする。
(32…何だ、これは。)
いや、今は気にしている場合じゃない。
再度ドアノブを捻り上に続く階段を駆ける。
魔物の姿はおろか、死体さえ見当たらなかったのだ。
(何がどうなってるのだ…!)
しかも目の前には何体もの氷の巨人兵が待ち構えていた。
「止まるなっ!走れっ走るのだっっ!」
恐怖で立ちすくむ者の背中を叩き促しながら氷の城を目指す。
しかしそう簡単には通らせてくれない。
巨人兵が一降りすれば数人の騎士がぶっ飛ばされ、一踏みすれば数十人の騎士が潰された。
「たい…ちょうっ…。おれはっ、やぐにだでばじだ…がっ。」
「っ、ぁあ!お前の働きに感謝する!!」
倒れていく騎士の一人が俺に手を伸ばし、
その手を強く握れば笑って絶命した。
―何もしてやれない、この無念を。
(巨体の割りに動きが速い、攻撃されればまず助からない…。
だがここで諦めてたまるか―)
「隊長っ、ここは食い止めますから先に進んでください!!」
「すまない、生きて戻ってこい!」
―無念に散った仲間の為にも。
―今ここで耐えて戦う仲間の為にも。
俺が仇を討ってやる…………っ!
★★
城の扉を潜り抜ければ先程の喧騒とは正反対に辺りは嫌に静かだった。
(城の中まで氷なのか、どうりで体が寒いわけだ。)
震える体を擦り警戒を強める。
―コツ…コツ……コン
「第一関門突破オメデトー、はい、ヨクデキマシター(棒)」
「ご託はいいっ!糞餓鬼さっさと降りてこい、正々堂々勝負しろっ。」
俺の苛立ちを知ってか、ニヤニヤ笑って俺達を見下ろしている。
「そうカリカリすんなって、ここまで来れたご褒美にハンデくれてやっても良いんだけどさ?
とりあえず、避けろな?」
「今度は何をす「っ隊長ぉおゴガッ…」
なっ!?」
俺を右に押し出した瞬間、騎士の口から大量に吐血し鈍い音と共に地面に倒れた。
肺の辺りを何かで貫通したような穴があった。そこから血が一滴さえ出ていなく不気味さが増す。
「隊長さんは運がいいな?」
―運がいい、だと…?
仲間を犠牲にして自分が生き残ったからか?死なずに済んだからか?
「へぇ…?考え事とか余裕ってトコか。
ならもっとオレを楽しませてくれよ?」
奴の回りに小さい玉のような物が無数に浮かんでいた。
「や、やめ―ぎぃやあああああつぃ!体がっやげるっっ。」
「た隊長っ早く!ここから離脱をっ。」
「おれぇどっおれぇどあじっあじぃが、あじギャ………。」
「ガァアアアぅゴっがぁグギャッアギ…」
叫び声、呻き声、狂声―が耳を塞いでも聞こえ、誰の物か分からなくなった手足や臓器が地面に散らばる惨状に俺は呆然と立ち尽くす。
その時だった、俺は強風で入ってきた扉の反対に思いきり飛ばされた。
「こんな所で立ち止まらないで下さいよ。
後は…頼みました、隊長。」
振り返れば一人の騎士が俺を見ている。
ようやく騎士の真意に気づき、次の階へ続く扉へ向かって走った。
階段を駆け上がりドアを開けると、目と鼻の先に迷路と書かれた立て札が無造作に置いてあった。
(俺より先に行った騎士達が見当たらないが次の階へ行ったのか?
もしそうならば追い付かなくては。)
冷や汗を拭きながら必死で出口を探す。俺の背丈を倍近く越えた壁のせいでどこが出口か分からず苦戦する。
しばらくさ迷った俺は出口と思わしき扉を発見した。
扉のドアノブを捻る時にふと、右側に数字が書かれているのを目にする。
(32…何だ、これは。)
いや、今は気にしている場合じゃない。
再度ドアノブを捻り上に続く階段を駆ける。
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