オアシスの番人事情

前世が蛍の人

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初任務

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王の求婚者、えーっと…姫達が住んでいる後宮ハレムは色彩が細かく見る位置によって7色に見えるほど鮮やかで華やかな所だった。
そして今、自分は何故かその姫達にやたらと注目の的になっている。

「貴方が今日から私達を守ってくれる人何でしょう??やはり噂通りの美しさだわっ」
噂って…ここに来てまだ2時間も経ってないよね?え、早くない??
一人で悶々と考えていると、一人の姫がやや上から目線で聞いてきた。
緊張しているように見えるからかな、何だか可愛く見える。

「貴方、名前はなんと仰るのかしら?
このわたくしに教えなさい」

「ムルーク王より、ここを守護するよう仰せつかりました。
トイと申します。」

「(素っ気ない…でも……そこがイイっ!!)
そ、そう…トイ様とお呼びしますわ」

「ではトイ様!私と一緒にお茶しましょ♪」
おう、この姫様いきなり来るね!?
というか、任務中にお茶なんて飲めないよね!?

「折角のお誘いですが申し訳ありません。
お断りをさせていて頂きます」
失礼とは思うけど、こっちは仕事をしに来た訳で。
だからはっきり断っても自分は悪くない、と思う。
多分自分が断ると思っていなかったんだろう、姫達が固まっている隙に辺りを一望できる場所へ移動した。
例え勤務労働が半日しかなくても真面目にこなす、それがトイなのである。

そんな彼を見つめる姫達の思いはというとー。

(なによ…なによなによ!!
私の美しさになびかない男なんていないと思っていたのに…っ!!こうなったらどんな手を使っても振り向かせてやるんだから!!)

(トイ様…素敵……わたくしの話し方を眉一つ動かさずに相手をなさってくれた…嬉しいぃ♥
あの方をもっと知りたいわ…!)

(肌は白いのに髪の色は黒…なんて珍しいの、あの見た目で男なのは勿体無いわ!
ムルーク王はさぞかし残念がっていることでしょうね?
フフフッ…♥♥)

(トイ様が私に微笑んだ私に微笑んだ私に微笑んだ…、ふにゃあぁぁあん♪)
……見事に彼女達の心を色んな意味で鷲掴みにしていた。

ーそれから日が傾き始めた頃。
アークから声をかけられた。

『そろそろ交代の時間だ』

「もうそんな時間?
時計が無いって結構不便だな…」

『ここでは太陽と月の傾き方で判断する。とけいとは一体何だ?』

「1日の正確な時間を知る道具だよ、例えばー…」
砂の上に簡易的な日時計を作ってみせた。
小学生の理解の実験を思い出すな…。

「こうしてこうやって…。
アークが太陽の傾き方で判断するって言ったじゃん?
影を利用するとこんな感じになるんだよ」
木の棒を立てた時にできた影は約4時30分を示していた。

『これがそのとけいというものか…。トイの世界ではこれが当たり前なのか?』

「時計にも色々あるけど今教えられるのはこれだけ。

…とりあえずその交代する相手の所へ急ごうよ。
ちょっ…後ろ見るな、主に自分が危ない。」

『あいつらには俺の姿は見えん。
つまりお前が一人で何かやっていると思われているぞ』

「それ周りから見たら危ない奴確定じゃん!それ先に言ってよ!!」
恥ずかしかったじゃん!!


小走りで廊下を歩くトイの後ろを姫達は優雅に追いかける。こちらの事情などお構い無しで、捕まれば……そこの君の想像に任せよう。
まるで肉食獣から逃れる気分で廊下を歩く歩く。
もしこの必死さが伝わるなら今、誰でもいいから助けて欲しいと切実に。

そう願うトイだった。
…なんとか女人禁制エリアに入り落ち着きを取り戻すと交代相手の部屋をノックする。

「交代だ、ドアを開けてくれ」

「……」

「ん…?留守か??」

「………どぁああああーっ!なんだ?!
おいっ、ウィルスいきなりなにすんだよ!」

『はぁ…。貴方に来客ですよバラル』

「は?なんかあったっけ??
ーやっべ、交代時間じゃんかっっ。何でもっと早く起こしてくれねぇんだよぉおおおおお!!!」

『何度も起こしましたよ?
それに私は貴方のお母さんじゃないので自分のことは自分でやりなさい』

「んんんんぅん!んぅう!」

『食べるか服を着るか怒るか話すかちゃんと分けてやりなさい…、全く』
そしてー、突然ドアが開かれその人が現れた。

「遅れてすまん!今準備すっか…ら……」

『おい、こいつ固まっているが』

『無理もないでしょうけれどね。
バラル、こんな所で固まらないで下さい。時間が無い上に迷惑ですよ』
眼鏡をかけた長身の魔神ジンが先程の彼の頭に目掛けて容赦なく手刀が振り下ろされた。
あれって地味に痛いそう、かなり良い音してたし。

「あだっ!痛ぇーよ!
つーかなんでここに女がいーあだっ!、は?!
お前男なのかよ!?
そのなりでっ!?」

『申し訳ありませんトイさん。
この馬鹿にはきつく言っておきますから気を悪くされないで下さいね』
ウィルスはバラルの首根っこを掴み頭を下げた。

「あ、いや、別に、大丈夫ー」

『さっさと交代しろ。
トイは朝からろくに休んでないんだぞ。
ぶっ倒れたら責任とれるのか?』

「いやアークが火に油を注いでどうするんだよ…。
バラルさんとウィルスさんだっけ?こっちは気にしてないから交代よろしくお願いします」

「呼び捨てでいいぜ!
俺もトイって呼ぶからよ!」

「そっか、ならバラル。よろしく」

「おう!」

『…本当にアークには勿体ない適任者ですね。
どうです?1日限定で私の適任者になっててみては如何です??』

「え、…あ…そ『断る。』」

『アーク、貴方には聞いてません』

「ひでぇっ!!
俺に何の不服があるってんだよ!!」
ぶつくさ文句を言いつつも仕事の引き継ぎ内容を聞くバラル。
ようやく引き継ぎができ自室に戻ろうとしてある重大はことに気づいた。

「あー…そう言えば自分の部屋は反対側のエリア何だった…、はぁ……」

バラルは不思議そうに聞く。
「来た道を戻ればいいだけだろ、ため息をつくほどなのか??」
手短に訳を話すと、バラルは「ま、その顔なら当然かもな!」と笑顔で言い切った。

『ではバラル、彼の部屋まで警護して差し上げなさい。
寝坊しておきながら彼を待たせ、あまつさえ女性と間違えるなど…』

「だぁあ!!
言われなくたってそのつもりだってーの!!
よしトイ、俺が守ってやんよ!」
まぁ…誰かいる方が近寄りづらくよね。

「よろしく」
バラルと共に用意された部屋まで歩いていく。

ーーしばらく廊下を歩く二人。

「なぁ…トイ、俺に対する目がすげぇ痛いのは気のせいか?」

「……気のせい、だよ(多分)」

「おい。目が泳ぎまくってるぞ、トイ」

「泳いでなんかない」

『トイは誤魔化しが下手だな』

「……うるさい」
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